『ブラット!聞こえる!?』
突然鳴り響く無線、ジェシーの声からは焦りと苛立ちが感じ取れた。先程、銃器店での銃声を聞き付けたのか徐々に細い通路に侵入しつつある感染者。無駄な戦闘を避けるように改装中の店舗へ2人は入った。
「トラブルか。何があった?」
商品の陳列どころか内装すら施されていない、がらんどうな店舗の中を通り感染者を避けて大通りへ。立ち止まることなくブラッドが何事かと無線機へ状況を確認する。
『オティスさんから聞いたの「誰だそいつ?」あー……守衛室の警備員の方!……とにかく!このモールの照明は22時に自動的に消灯するように設定されてるの!』
ブラッド、そして無線のやり取りを隣で聞いていたエコーは同時に自身の腕時計を見る。
「後、2分しかないじゃないか!!どうして重要な事を今になって言うんだ!!」
『私だってさっき聞いたばかりよ!照明の設定の操作は此方ではおこなえないみたい……』
19時を越えた辺りから感染者の動作は、より狂暴に、より俊敏になってるように感じられる。最も元々が緩慢な動きの為、誤差範囲でしか感じ取れないのだが……。だか、その状況で視界が制限されればどうなるのか?
「………ああ、此方は此方で何とかする。ありがとう」
無線に返答しエコーへ振り返るブラッドに状況は把握したと頷き返すエコー。
「聞いての通りだ、もうすぐモール内は闇に包まれる。この状況で行動するのは危険だ。君は安全な店舗に立て込もって、朝になるまで待て。」
危険をおかしてまで活動する必要はない。時には待つことも重要なのだとブラッドは少女に言い聞かせる。
「その言い方だと…貴方は一緒に行動するつもりはないのですね?」
「ああ、銃器店の店主の件もある。出来るだけ早いうちに物資を確保しておきたい。」
仮に生存者が居たとして、全ての人々が助け合えるとは限らない。中には貴重な弾薬や食糧を独占しようとする者も必ず出てくる。ならば、そういったもの達が占領する前に必要な物資を集めておきたいとブラッドは説明した。
「それなら私も手伝った方が良いのでは?」
「気持ちは有り難いが……はっきり言って足手まといだ。これから先は命の保証は出来ない。ここは大人に任せて子供は寝る時間だ。」
朝が来れば迎えに来るとエコーに告げるブラッド。
「貴方みたいな大人がこの世界に多ければ……もっと世界は綺麗だったのでしょうね…」
ブラッドには聞き取れない声量で呟くエコー。
それは、子供達を訓練と称し実弾飛び交う戦場へ送り込んだもの達への苦言でもあった。
「本部の糞共も彼の爪の垢を煎じて飲んで欲しいわ。」
エコーの行動は現在記録中。勿論、この愚痴もしっかり記録されているのだが……こんな町に私を送り込んだのだ、この程度の愚痴くらいは溢す権利があるとエコーは開き直っていた。
「分かった。気をつけて。」
「君も。この辺は改装中の店が多い。バリケードを作りやすいと思うが一人で大丈夫か?」
心配そうに少女に問うブラッドに表情筋があまり機能してないが精一杯の笑顔で問題ないと返すエコー。
そして2人が互いに背を向けた瞬間、モールは闇に包まれた。
SEPTEMBER19 22:45(day1
ノースプラザ連絡通路
絶食した際の人の活動時間はどのくらいなのだろう?
食料を摂取せずに餓死するまでの時間は一週間程度と言われている。
水分を補給しなかった場合の生存可能時間はさらに短く、およそ3日。
(既にこの町でアウトブレイクが発生して2日目が終わろうとしている・・・・このまま時が過ぎれば自体は収束へと向かう?)
未だに原因の分かっていない感染者達。現時点で分かっている事と言えば、痛覚が鈍く異常な打たれ強さがある事、店内の食料に関心を示さずに人肉を求めさ迷っている事、感染経路は血液・唾液などの体液を通じた接触感染であること。
(いいえ・・・状況を楽観視しない方が良いわね・・・)
ただでさえ異常な事態、何が起こるか分からない。
(だからこそ、武器が必要になる。)
持ち込んだ弾薬は残り僅か。中庭で鹵獲したM2重機関銃は携帯するには重すぎる為、弾薬を抜いて無力化するしか方法はない。となれば、最終的には現地の武器になりそうな資材を使用して戦うしか手段がなくなってくるのだが・・・
『バキッ』という破壊音と共にロッカーの扉をこじ開ける。
ここは巨大なショッピングモールだ。買い込んだ商品の入ったカートをゴロゴロと押してモール内を歩き回るには不便すぎる。その為このモールには、駅前に設置されているような荷物を仮置きするためのコインロッカーかサービスカウンターが存在している。
それなりに音は鳴るが問題はない。消灯時刻を過ぎ、常備灯の薄明りしかない静まり返った店内。客引きの為のBGMもない静かな空間だが、先ほどから隣のエリアから
(理由はなんであれ私にとっては都合がいい。)
感染者が連絡路を渡り、
(あ・・・・これ、私の真後ろ通過するじゃナイデスカ・・・・)
現時点で感染者について分かっている事がいくつかある。
ロッカーにバールを差し込んだままの態勢で動作を停止する。
(彼らは音と視覚で捕食対象を認識している。)
ゆっくりと近づいてくる感染者。
(そして、嗅覚は大して役目をはたしていない。)
既にモール内では死肉のような腐敗臭、汚物や胃酸などを混ぜ合わせたような強力な刺激臭が立ち込めている。嗅覚が優れていればいる程この匂いは致命的なものとなる筈だ。
(多分・・・多分!!)
エコーの後ろで感染者が立ち止まる。
無意識にバールの持つ手に力がこもる・・・
脳裏には(まさか、蛇の様に
(音で集まり目視で捕食対象を判別する。ならば、そのどちらも発さずに徹底的に人としての気配を外部へと漏らさなければ、感染者にとって
と願いながら感染者が通過するのをひたすら待つ。
周囲を見渡し・・・・再び隣のエリアに足を進める感染者を視界の隅に捉え、エコーはゆっくりと息を吐きだした。
(息を殺すどころか呼吸するのも忘れてましたよ!・・・と!)
十分に感染者が離れた事を確認し、破壊音と共に扉をこじ開ける。そして中身を確認し、ビンゴとばかりに少女は口元を緩めた。
この国では銃の販売が許可されている一方、犯罪に使用された銃は持ち主が特定できるようにな仕組みになっている。ならば、何故銃を使用した犯罪は減らないのか?
仮に銃を購入した本人が事故や病気などで死亡したとする。そして10年間ほど登録者の居なくなったまま放置された銃は書類上所有者無しの存在しない銃となるのだ。
更に、バレルなどの部品を入手して交換した場合も同様に、施条痕が登録情報と異なる為に捜査の手が当人まで行きつきにくくなるという背景がある。
「そして、個人間の銃の売買は合法ってね。」
それらの銃には一定数の需要があるものだ。そして、買手や売り手にもお互いに接触したくないという心理がある。
そこで使用されるのが金額を受けっとった後に
中に保管されてたM1911ガバメントのコピー品を取り出し、まるで息をするかのような自然体で遊底の嚙み合わせ、チェンバーチェック、引き金を引き一連の動作確認を行う。
この銃の使用目的は予想通り使い捨て。トリガーは堅く、遊底にはカタつきがある。命中精度には期待は出来ないといったところが正直な感想。
(あるだけマシですけどね。)
(50発入り1箱、空の7発装填弾倉が2つ、そして本体)
素早く弾を弾倉に詰め込んで、初弾を薬室に送らずにそのままポーチの中にしまう。
『フランク、聞こえるか?ワンダーランドのライドマシンが暴走している様だ。手が空いてるなら様子を見てきてくれないか?』
『すまない。今生存者と共にセイフルームを目指しているところだ。送り届けた後に向かう。ブラット、先に行けそうか?』
『ああ、聞こえてる。こちらも物資を積み込んだカートで手一杯だ。そちらには迎えない。』
無線のやり取りがイヤホン越しに聞こえる。
『それと、同じくワンダーランドプラザだ。男女2人組がシューズ店に逃げ込んだのを監視カメラで捉えた。男の方は酷いけがをしている様だ。手を貸してやってくれ。』
『ああ、後でな。』
圧倒的な人手不足、そして民間人の保護が私達の主要任務ではない。
(ワンダーランドプラザならこの近くか・・・)
かと言って見捨てる道理もないか・・・
依然として感染者の注意を集めている暴走するライドマシンの方へエコーは足を向けた。
SEPTEMBER19 23:10(day1
ワンダーランドプラザ (フランク
生存者を守りながらゾンビ達をかき分けてセーフルームを目指し、休憩もろくに取らずに再び
足を止めればゾンビ達が群がり、バットを振る手を止めれば組みつかれる。バリケードを作り立て籠もる生存者を嘲笑うかの様に群がり破壊して生存者を捕食するゾンビ。
時間、そして人手が足りなかった。
「あんた!戦えるよな?一緒に生存者の救出を手伝ってくれ。」
「あんた正気か!?あんな地獄に戻るなんてまっぴらごめんだよ!」
命の保証などない。故に、ごく自然の反応だった。
誰しもがせっかく助かった命を他人の為に消費しようとは思わないものだ。
「あ~あんた。頑張れよ!世の中、良い奴ほど先に死んでいくからな。」
テロの標的になりやすい医療機関の者達・・・良い奴だろう。国民を守る為に戦う兵士達もまたいい奴だと言える。
先に死んでいく?当たり前だ。他者を守る為に矢面に立てばそれだけ自身に降りかかるリスクも増える。
「なあ、お前さん。それで引き篭もって生きながらえたあんた等は・・・いや、何でもない。」
救う価値のあった人間だったのか?自らが安全地帯に辿り着いた事を良いことに、まるで他人事の様に協力を拒む住人達にフランクは心の中で問う。
(関係ない、救出は俺の矜持の様なものだ。)
セーフルームでのやり取りを思い出しながら連絡のあった靴屋へと踏み入れた。
(ここには男女2人か・・・)
「やめて!撃たないで!!」
微かに聞こえる声。天井付近まである靴の入った箱が並べられた巨大な棚に遮られ声の主の姿は見えない。そして直後に銃声。
ーー穏やかじゃないーー
つい数時間前に遭遇した囚人達、自身に向けられた銃口の忌まわしい記憶が嫌でも脳裏をよぎった。
片手に持ったリボルバーの撃鉄を上げる。棚と棚、一列ずつ素人ながらも警戒しながら
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"」
「何があった!?」
店舗の最奥、フランクは人影を捉えた。声の方に駆け寄るとそこには泣き喚く女性、横たわる男性の死体。そして、見知った少女の姿だった。
「おい!何があったんだ!?」
「ぞい"づが!!わ"だじの"がれ"を"ゔっだ!!」
「彼は自身の意思で幕を引いた。」
「ぢがう!あんたが銃を彼に渡さなければ彼が死ぬ事は無かった!!」
一方は殺人と言い、一方は自殺と説明する。
2人の女性の訴えには相違があった。
こと切れた男性の骸の手には銃が握られておりエコーの言う通り
「・・・・はぁ。」
「ええ、まだ
「あんたが殺した!あんたが!あんたさえ居なければ!!」
一向に収拾のつかない状態。エコーからため息が漏れたのをフランクは見逃さなかった。
「それで、フランクさん。物騒な
「そいつを殺して!!」
銃を構えたままという事に気がつき、言われるがまま銃口を下げる。
「何があったんだ?」
「何もありませんよ・・・感染者が死亡した。それだけです。」
「その人殺しを撃って!!」
「・・・・彼女はこう言っているが?」
「・・・・・」
「彼自身が
心底うんざりした様な表情で少女は続ける。
「彼自身が望んだことです。」
「余計なお世話よ!」
「私は彼に食べられても良かった!彼と共に死ねるのならそれでも良かった!それなのに私の大切な人を奪っておいて助けてやったみたいな感じで言うな!」
返答する事無く男性の遺体に近づき、その手の中にある銃を拾い上げるエコー。
弾丸が薬室に装填されてる事を確認し、喚く女性に問う。
「面倒くさいのですよね・・・・なら、貴方もここで死ぬ?」
「待て!」
再び持ち上げられる銃、銃口は女性に向けられていた。
「ここは自由の国です。貴方の意思を尊重しますよ?」
「見た!?これがこの女の本性よ!薄汚い糞女!」
「落ち着け!!」
「いいから!銃を下ろすんだ!彼女は
彼女はゾンビではない。ましては囚人達のように危害を加える様な人間でもない。善良な
全く背景の見えない少女。
その立ち振る舞いは銃を向けられ取り乱す女性とは対照的。
向けた銃口は全くブレることはない。ここでフランクが説得を誤ると何の躊躇もなく引き金が引かれる光景が容易に想像が出来た。
「彼女は暴徒でも、テロリストでもない?」
「そうだ!彼女は善良な市民だ!ゾンビのように簡単に殺していい存在じゃない!」
「
「恋人が目の前で死んだんだ暴言は見逃してやってくれ。「なんでその女を撃たないのよ」あんたは黙ってろ!このヴぁか女!」」
エコーは少し考えた後に銃を下ろしポーチにしまいながらフランクに問う。
心なしか口角が上がっていくように感じる。
「ところで・・・
「ああ!その通りだ!俺達が無事に脱出するためにはお互いの協力が必要だ、それはエコー・・君も分かるだろう?」
「・・・・・・」
少女は両手を口元の前で合わせる。
手で隠れた口元、その端がまるで三日月のように上がってるのが見える。
「私はずっと疑問に思っていました。貴方のおかげで答えに辿り着けそうです。」
「?」
「戦えば傷つき、傷口からは血が溢れる。」
「呼吸し、心臓は動いてる。そして、救いを求めてる。」
「ああ、俺達は生きている。「それって、貴方達の言うゾンビと何所に違いがあるのです?」」
その声には皮肉でもなく嘲る音色は含まれていない。唯々、答えを知らない子供のようにとても澄んだ目で少女は問う。
「貴方達が躊躇いなく
「彼らも生きている。そして自らの衝動を抑えることもできずに町をさ迷い、今も助けを待っている。私は善良な市民だった者達を
・・・それは、考えないように思考の片隅に追いやっていた事。ゾンビ・・・既に人間ではなくなってしまった者、殺すしか手段がないと自らに言い聞かせる為に無意識のうちに人という認識から除外していた心情を指摘され言葉に詰まる。
「・・・ほかに方法は無かった。」
助ける方法は現時点ではない、自身を守ってくれるのは力だけ。殺人はいけない事だ、だからと言って無抵抗のまま食い殺されていい筈がない。
「でしょうね。身近にあった法律や道徳は無用の産物と化し、私達は自身の判断で引き金を引くしかこの町で生きる術を知らない。だからこそ貴方に聞きたい。死にたいと願う者に私達が血を流して救う意味はあるのかと。」
少女は先ほどまで言い争っていた女性に目を移す。
「彼女は「大丈夫ですよ、今更彼女をどうこうしようととは思ってません。」」
「ですが、よく考えてください。今は自身達にとって不利益になるか否かで善悪を決めてる状況です。彼女のとった行動は果たして如何なものなのでしょう?」
先程死にたいと豪語していた女性は、自身に銃口を向けられたことに青褪め「死にたくない」とうわ言の様に呟くだけ。
言い換えるなら悲劇のヒロインの様に振舞い、同情を買い、フランクを煽ることで自身の手を汚さずに相手を害しようとした・・・と少女は語り掛けるようだった。
--それでも俺は生存者を助ける--
そうですか、と告げ先に店を退出する少女の背中を見送った。
ーー俺も答えが知りたいよ。狂ってるのはこの街なのか、それとも俺達なのか?ーー
ブラット・・物資集め担当「一番気に入ってるのは・・・・値段だ。(強奪)」
ジェシー・・居眠り警備員から消灯時間を聞き慌ててブラットに連絡(原作では警告すらなかったw)戦闘中に連絡入れてくる警備員の代わりに今作ではジェシーさんの出番を増やしたい!
靴屋のカップル
男・・・原作では女性を庇って怪我をしたとあるですが今作では庇って咬まれたとなってます。時間が残されていない事、セーフルームに辿り着いたところで助からない事を踏まえてエコーの説得を拒否し、最終的には自殺。(原作では会話しておけば助かる人、銃を渡すと死亡するので注意!)
女・・・自身のせいで怪我を負ったという罪悪感を上書きするかのように執拗にエコーを責めるようにな行動をとる。一種の防衛反応ともいえる。
フランク・・・片っ端から生存者を集めようとしたため統率が撮れておらず協力を拒否されている状況。ゲームではセーフルームに辿り付けれればクリアだが今作ではその後の人間関係に苦労している。
ゾンビ・・・ゲームで鉄パイプを刺した際に大量の出血をして死亡するように、バイオハザードの様に完全な死体が歩くとは別の状態。生きている人間が自我を失い暴走している様なもの。認知能力の低下、嗅覚、味覚はほとんど機能しているとは考えられにくい。
視覚、聴覚で対象を捕捉しているが、そもそも認知能力が低いのでポンコツ
エコー・・とある特殊部隊隊員。首元に鈴をつけているが戦闘行動中も鈴の音が鳴らないくらいの身のこなし、隠密行動に長けている。ゾンビの行動を観察し、周囲に同化することで無用な戦闘を回避している。(ゲームでフランクさんがゾンビに成りすます回避スキルに似たようなもの)
ライドマシン・・・次話!
作者・・・生存者は経験値!他に理由があるのかね?というクズムーブ。良心の欠片もない一番のサイコパスはこちらになります!(ドヤ
久々に原作を購入&プレイしましたが楽しいです★
絵師様・・・友人にして作者の無茶振りに応えてくれる神!足向けて寝れないね!
原作を参考資料としてプレゼント!ゾンビパラダイスに招待しました(;'∀')
とりあえず投稿!誤字見つけ次第修正していきます!