キングとおじ様   作:Cz75

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カプリコーン杯ブロンズだったので初投稿です。


第二話

 

 

 早朝 自宅

 

 

 突然だが食卓の雰囲気が最悪だ。

 俺の左右にキングヘイローとグッバイヘイローがいる。

「……」

「……」

 お互いを警戒しながら恐ろしい勢いで俺が準備したホットドッグを恐ろしい勢いで消費していく。

 彼女グッバイヘイローが奥多摩の俺の家に来たのは当然のことながら娘の安否を確認するため。 

 それと俺とキングの事で話し合うためであった。

 話しとイロイロな事をしていて半徹状態なのだが大筋と関係ないので置いておこう。

 その謎の緊張感に耐えかねて俺は介入することにした

「ヘイロー、キングに話すことがあるんじゃないのか?」 

「そうね、確かに話すことはあるわ、キングさん」

「な、なによ」

「トレセン学園入学の件、やってみなさい」

「いいの?」

「いいわよ。ただし条件があるわ」

「条件?」

「推薦枠ではなく一般枠で試験を受けること」

「自分の力を証明しろという事なのかしら?」

「そうよ、後トゥインクルシリーズを引退するまでに私を超えなさい」

「おかあ様を?」

「G1を7勝、やってみなさい」

「私と勇さんの子どもなんだからきっとできるはずよ」

 するりと爆弾を投下した。

「本当……なの?」

「ええ、他の人に体を許したことはないもの」

「おじ様、いえ、おとう様と結婚するの」

「そうね、でも勇さんにはキングさんが入学できればと言っているわよ」

「おかあ様?!」

「それでいいわよね? 勇さん」

「ああ、まさかここでぶちまけられるとは思わなかったが」

「ふふっ、昨日はやられっぱなしだったからお返し」

「完敗だ。ヘイロー」

義母(おふくろ)さんに連絡しとけよ。泣いてたぞ」

「え、お母様が?」

 信じられないといった表情をして彼女は驚いている。

 彼女の中では鬼軍曹のような義母(おふくろ)さんしかイメージがわかないのだろうから

「事件に関しては犯人がどうなったかは察してくれ」

 どこかで沈んでいるのだろというところは察しているが。

「そうね、忘れることにするわ」

「今日は親父の処に新年の挨拶に行くから」

「勇のお父様という事は早乙女流の?」

「ああ、嫁さん連れて挨拶に行かないといけないからな」

 

 

 昼 早乙女邸

 

 

 奥多摩から車を飛ばして休憩込みで大よそ3時間ほどかけて俺の実家に着いた。

「大きいのね。勇さんの実家」

 どんと存在感を醸し出す大きな武家屋敷、それが俺の実家だった。

「古くて由緒あるのが取り柄の家だけどな」

 そういいながら勝手知ってる勝手口から家に入った。

「あけましておめでとう。勇よく帰ったな」

 入り口には和服でめかしこんだ親父、早乙女虎徹が待っていた。

「おう、親父こそ今年もよろしく頼むぜ」

 そういって、親父は俺たちを家に招き入れ、居間に案内した。

「そこの二人が電話で話していたお前の嫁さんかい」

 親父たちの弟子が用意した茶をこたつに入って飲みながら、そう切り出した。

「ああ、グッバイヘイローとキングヘイローだ」

「こりゃ別嬪さんだねぇ、うまくやりやがって祝言はどうするつもりだい」

「キングの入学次第だ」

「トレセンか」

「ああ、再来年だな。来年は小学6年生だ」

「てぇことたぁ、教えるのか?」

「敦盛か?」

「そうに決まってんだろうがよ。お前の敦盛は早乙女家では随一だ」

「分からん。継ぎたくて、できるやつならだれでもいいけどよ」

「遺しておいてくれよ。あの敦盛にはその価値がある」

「考えておく、挨拶だけで今に通したわけじゃないだろ?」

「おう、お前の嫁さんと孫に会いたかった」

「普通の用事だな」

「しょうがねぇだろう、あのヘタレ共はやることやっといて孫作らねぇんだから」

「え、兄貴たちまだ子供で来てねぇのかよ」

「お前より先に結婚したのにお前の方が先にできるとはなぁ」

「あの、おじい様?」

「おおっすまんのう、二人ともおいてぼりにしてもうた」

「おとう様から聞いてなかったですけど、早乙女の家って何をしている家なんですか?」

「勇、お前教えてなかったのか」

「そりゃここで話した方が面白いからな」

「……道理じゃのう。では話すとするかのう」

 そういって親父はこたつから立ち上がり

「道場で見せたほうがいいじゃろうな、ついてきなさい」

 

 

 昼 早乙女邸 道場

 

 

 ピリッとした空気の中鋭く、そして大胆に扇を使って若い人が舞いを練習している。

 この道場には日本に昔からあった音楽があった。

「日本舞踊、歌舞伎、能といった日本芸能を江戸時代から蒐集、記録している家じゃよ」

 練習している人とそれを指導している人達の熱もある。

amazing(すばらしい)

 とおかあ様もそっとこぼすだけだ。

 私もその言葉に納得するしかない。

 ここにいる人たちは間違いなく一流なのだ。

 しばらくみているとおじい様は

「皆の邪魔になるから出るかのう」

 そういって私たちを道場から連れ出した。

「おじい様、どうすれば私はあの人達みたいに一流になれるのかしら?」

「そうじゃのう……そういった物はな、自分で一つづ拾い集めて積み上げていくものじゃよ」

「積み上げること」

「実績でもええ、やり方でもええ、そういった重いもんを積んでいく。

 気が付けばそうなってるじゃろうな」

「気が付けば?」

「気が付けばじゃ」

「なれるのかしら」

「わしにもわからん、じゃがやらん奴はなれん。悩める貝にこそ玉は宿るとも言うからの」

「そうよね。ありがとうおじい様」

「なに、可愛い孫の為じゃい。爺のたわ言ならいくらでも言ってやるわい」

 カカと笑いながら私の頭をぐりぐりと撫でた。

「お、おじい様やめてよ」

「たわ言の代金だと思って撫でられておけい」

 またカカと笑いながらぐりぐりと頭をなでる。

「親父、人の娘に何しやがる」

 おとう様は私を掻っ攫いおかあ様のそばに置いた。

「なんじゃい、嫉妬か大人げないぞ」

「大人げなくて結構、俺の娘に何しやがる!」

「勇よう」

「なんだよ?」

「嫁さん戻ってきてよかったな」

 ニカリと笑っておじい様は笑った。

「なんだよ急に」

「日本に戻ってきた時は随分と大人しかったがよ。今のお前はちょうどいいぐらいバカだ」

「チッ……帰るか」

「そうね、勇さん。私の家にお願いね」

「ああ、車出してくる」

 おとう様はそういって車庫に向かっていった。

 確かに簡単な挨拶だけだったけど結構な時間が過ぎていた。 

「キングヘイローさん。グッバイヘイローさん。独り言だ」 

「バカ息子の事、頼む」

「勇さんの病気ひどいんですか?」

「悪くならないがよくもならんと言っていた」

「やっぱり治っていなかったのね」

「おとう様は病気にかかっているの?」

「シャルコー・マリー・トゥース病、通称マリー病の新型にかかっているわ」




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