夕方 勇の家
どさりとソファーに私は身を沈めた。
言うまでもなく適性検査でどっと疲れたのだ。
全ての距離、それも芝が違うコースを最後に感じが違うダートを1回づつ走った。
さらに走った後でアンケートに記入するのだ。
走りやすかったとか走るときに痛みは走るかとか
本当に健康診断とかそういった雰囲気だったのだ。むろんそれを実施していた二人の学生さん。
エアシャカールとアグネスタキオンと言っていた二人は私のデータを興味深そうに除いていた。
その時の二人は紹介されたときの普通のウマ娘ではなく、
私をウマ娘ではなく実験動物(データを取るための存在)として見ていて、
何か私の知らない別の生き物のように見えた。
秘書さんとウララさんは山に行くと言って、二人はそれぞれ猟銃と弓を持って狩りに出かけた。
『ひと狩りいってきまーす』といってたけどウララさんも適性検査ではなかったのかしら?
何故、山なのかしら?
検査が終わった後にウララさん達は戻ってきたけど猪を狩ってきたのはどういう事なのかしら?
あの検査役二人は驚いてたようだけど
「おう、お疲れさん」
シャカールさんが部屋に入ってきて持っていたスポーツドリンクを私に投げ渡してきた。
「どうしたんです?」
スポーツドリンクを受け取りゆっくりと起き上がった。
「メシの時間ダ、メシは食えるか?」
「え、はい。食べれますけど?」
むしろ、台所でおいしそうな匂いがするのでおなかが鳴りっぱなしなのだ。
「上等じゃネェか、その歳であれだけ走って飯食えるってのは丈夫な証拠だ+評価だナ」
一気にスポーツドリンクを飲み、いるはずの子の行方を尋ねた。
「ウララさんは?」
「あいつは猪を解体してからメシの手伝いしてるな」
「ええぇ?」
「びっくりするほどタフだぜ」
「あの、ウララさんってどういう子なんですか?」
「本人のプライバシーもあるからあんまり言えネェが能力が独特すぎて参考にすらならネェ」
「そうだねぇ、彼女自身が現状日本のウマ娘界でのオンリーワンと言ってもいいだろうね」
そういいながらタキオンさんも一仕事すんだのか書類をもって今に現れた。
「そんなにすごいの?」
「私の研究にも参考にならないぐらいオンリーワンだねぇ。秘書君、ご飯はまーだーかーいー」
「少しぐらい待ちなさい。そんなに早く食べたいのなら君も準備を手伝いなさい」
「しょうがないねぇ、ほーらーシャーカール、君も手伝うんだよ」
「チッ、舌が肥えやがって」
そういいながらシャカールさんもノートをしまって立ち上がり、
いやいやながらも手伝うシャカールさんも餌付けされてるように思った。
絶対楽しみにしてるわね。尻尾が揺れてるもの
「仕方ないだろう。秘書君のジビエは絶品だ」
「それに対しては異論はネェ」
「私が捕ってきたイノシシじゃないぞ。ウララ君だ」
この頃のウマ娘は狩猟が出来ないといけないルールでもあるのかしら?
「それは興味深い。夕食はすぐできるのかい?」
「あいつ、アウトドアなら何でもできんじゃねぇのカ?」
「勿論だ。お嬢様悪いが理事を連れてきてくれ、仕事部屋にいる」
仕事部屋と書かれているプレートが張り付けてある妙に重厚な扉が私の前にある。
この部屋がおとう様の部屋なんだろう。微かにハーブの匂いが流れてくる。
ノックをするが反応がない、もう一度ノックをするがまったく反応がない。
最終通告でもう一回ノックをしても反応がないので私は重い扉を開いた。
仕事部屋
扉を開くと大音量ロックと濃厚なハーブの香りが流れ込んできた。
部屋は書類で散らかっている机と煙が充満していた。
「どうした?」
おとう様はやっと気づいたようでタバコを吸いながらロックを止めた。
「ご飯よ。それとタバコ吸いすぎよ!」
窓を空気を交換しながら吸っていたタバコを奪い吸殻入れに押し付けた。
「タバコじゃない、アロマだ」
「だからこんなにハーブの匂いがすごかったのね」
「体に気を使った結果だ」
「気に使いすぎがやりすぎになるわよ。仕事?」
「ああ、年明け発表の最終チェックだ」
「年明けの発表?」
「重要な発表だ簡単に明かせん奴だ。今日の晩飯は?」
「知らないわよ。ただジビエという事しかわかってないわ」
「ああ、マズルとウララが狩ってきたんだな」
「みたいね。ジビエっておいしいの?」
「マズルの出したジビエはハズレはねぇ。イタリアンも和食も作れる」
本当に完璧系の秘書さんなのね
「和食も作れるの?」
「おうよ。しかも豪勢系じゃなくて普通の奴だな豚汁とかボタン鍋、豚カツとかだな」
「そうなんだ。おとう様も?」
「一気に大量に作れる料理は得意だな。カレーとか鍋とか」
「えっ、おとう様は料理できるの?」
「そりゃな、弟子が沢山いる家の三男坊なんだから料理もなんでも手伝ったもんさ」
「そうなの? おばあ様が用意してたんじゃないの」
そういえば居なかったけど体の調子が悪かったのかしら?
「お袋は俺を生んで亡くなった。寂しさはなかった弟子の人達も優しいし、家族も居たからな」
「そう…なのね」
「ヘイローの奴は…ああ、大体わかった。家事全然ダメだったんだろ?」
「わかるの?!」
「そりゃ…トレーナーだった時に色々とな」
「何となくわかるわ、料理できないのにから回って大失敗するパターン」
二人そろって深くため息をついた。
「娘よ、俺の嫁の事は忘れて晩飯に行くか」
「おとう様、おかあ様の事は忘れてご飯を食べましょうか」
「だな、ヘイローもうまいメシ食べてるだろうしな」
「そうね、だからこっちでもおいしいもの食べて自慢してあげましょう」
同時刻 都内高級レストラン
「どうしたんですか? 社長、ため息なんかついて」
「ごめんなさい。せっかく誘ってくれたのに」
「いいですよ。キングちゃんも再来年トレセンでしょ? 仕方ないですよ」
少しばかり憂いた綺麗な社長に見蕩れながら、今日の目的を再確認していた。
今日この場で社長、いやグッバイヘイローさんに告白する。
俺はこの人の事が好きだ。
娘のキングちゃんは少々気が強くて、意固地な処もあるが世話焼きのいい娘さんだ。
「それにしても、このレストラン雰囲気も食事もいいわね。取引の際に使ってみましょう」
「必死の食べ歩きの結果ですよ」
そう、この人に一目惚れした日から必死に探して、店の予約をもぎ取ったのだ。
「で、君はどんな話をしたいのかしら?」
覚悟は決まった。
「グッバイヘイローさん。結婚を前提にお付き合いしてください。愛しています」
「ごめんなさい」
速攻で玉砕した。
「理由はお聞きしても?」
胃にデカいもの突っ込まれた重みを感じながら、納得できる理由を俺は聞き出した。
「あの人と再会したからよ」
「あの人?」
「あの子の父親よ。あの人私を恨んでいなかったの、私があんなひどい別れ方したのに」
「旦那さんの名前は?」
「早乙女勇って、聞いたことあるでしょ?」
「あの人ですか」
そりゃ、
実家は日本の古典芸能家の三男坊、今はトレセン学園の理事ってどこのパーフェクト生物だ。
「欧州筆頭と結婚してるもんだと思っていましたよ」
二人でメディアに露出してるし雰囲気が熟年の夫婦のレベルだし、
行動や息が意識なして繋がってる。
おまけにウマ娘の当然の権利のごとく美人であり、
最初のトレーナーと担当という間柄だ勘違いしない方がおかしい。
「私もよ。でも違ったのよ、あの人は私の事を探していたの」
「そうだったんですか?」
「会社にも来ていたんけど、ちょうど忙しかった時があったでしょ?」
「ああ、あのデスマーチですね。覚えてますよ、忘れるわけがない」
わが社の危機とチャンス同時に同じ期限でやってきたのだから、あれは大変だった。
「その時なのよ。アポイント取ってきたの」
「うわぁ……それなんというかタイミングが悪い」
「その上、何かの手違いで面会リストから消えてたみたいなの」
「それはただ不憫としか……?」
そこでふと引っかかった。
「どうしたのかしら?」
「なんで早乙女さんの電話番号知ってたんですか?」
「私が探偵を雇って住所を調べてもらってたのよ」
そういって社長は話は終わりといわんばかりに席を立った。
「社長、明日急ぎの仕事はないので休みをもらいますね」
社長はため息をついて
「飲み過ぎない様にね」
そういってレストランを出ていった。
俺も会計をすまし(気づいたのか店の人がこっそり遅くまでやってるバーを紹介してくれた)
仲のいい部下たちに一斉に通知を送る。
『完璧に玉砕したので自棄呑み決行、俺のおごりなので参加したい奴は現地集合』
次の日俺の事、多田野一成と部下たちは二日酔いになって宣言通り休む事にした。
夕食後
ご飯は終わり(ちなみにボタン鍋だった)シャカールさんが書類をみんなに渡して話を始めた。
「今日の検査結果報告始めるゾ、ほらページ開けまずはキングヘイローお前からダ」
ページを開くと私の大まかな情報が開示されていた。
「うん、さすがシャカールだねぇ」
サラサラと目を通してタキオンさんはしっかりと読んでいる。
速読とかいうレベルじゃないでしょあれ
「嬢ちゃんだが脚質的に長距離は苦手、中距離は少し苦手、距離の説明はいるか?」
「大丈夫よ。続けて」
「あいよ。マイルも少し苦手で短距離がベストの脚質ッてところだ。
現状での結論だけ言ってやる。クラシックとシニアの王道路線は諦めロ」
「そうだねぇ、長距離で2500のばせれば幸いといったところだね」
「つまり…私は」
「一番楽なのは短距離からマイルでやれば一番勝ち筋は見えるが、問題はそれだけじゃねゾ」
「まだあるの?!」
「バ場適性って問題だ」
「ダートの方が適性があると?」
「いや、ダートは日本もアメリカの方もネェ、それよか軽い和芝より重い洋芝の方に適性がある」
「一般的な中央のウマ娘よりも和芝の適性が低いという事さ、
和芝メインのヨーロッパ以外のでのレースでは大きなハンデを背負う事になる」
私のデータを見てタキオンさんはそう結論付けた。
「だったらキングちゃんはよーろっぱでははやいってことだね!」
「お、おう。そうだナ」
確かにウララさんが言っていることは間違いではない。
だが、ヨーロッパの方がレースの本場であり日本のウマ娘は殆ど勝てていないのだ。
日本のウマ娘とヨーロッパのウマ娘にはレベル差があると私も思っている。
「成程、確かにウララ君の勝てるかどうかは横に置いて、言っている事は理に適ってるねぇ」
「でしょ? キングちゃんびゅーんってはしってるのをわたしみたからしってるんだー」
「後は走法だな、これは回数重ねるしかないか」
「おとう様、いいの? 私がヨーロッパに行って?」
「正直なところ俺もヘイローもとてもとても寂しくなるがが無様な結果にはならんさ、
伝手もあるし留学は問題ない。むしろヨーロッパなら全然ありだ」
「ありなのかヨ?! おっさん」
「いや、普通にありだろ? 優秀な子を優秀なところで学ばせる。なんぞ問題があるか?」
「確かにそりゃロジカルだが」
「それより問題はキング、お前がどうしたいかだ」
「私が?」
「俺は道は示してやれる。だが道を歩くのはお前だ、自身がまったく別の道を作るかもしれん」
正直なところ私は分からない。
私はおかあ様に認められたいし、一流のウマ娘になりたい。
ヨーロッパで走るのか日本で走るのか私はどちらで走ればいいのだろうか?
「ごめんなさい。すぐには決められないわ」
「まぁ……そうなるよな、4月ぐらいまで決めてもらえると助かるな」
「わかったわ」
こうして、私がどうすれば一流のウマ娘になれるのか悩む日々が始まったのだ。
初登場かつオリジナル人物紹介
名前:多田野一成(ただのひとなり)
年齢:30代前半
設定と役割
グッバイヘイローの会社で副社長している人で会社の設立当初からいる人物
会社自体は業績上昇中の中堅企業(設立10年前後)
年上の部下との関係も良好だし、キングとグッバイヘイローとの関係も良好
勇の事をパーフェクト生物と述べているがこいつも大概
役割としてはグッバイヘイローとキングに振り回され相談されたりする。
被害者枠
なお、今回のキングの検査結果は某馬主無双するお馬のゲームとアプリのデータをちゃんぽんした結果