廻る『世界』   作:一般人A

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課題の所為で投稿が遅れてしまいました。すいません。
書きながら疑問に思ったんですけど承太郎とDIOって最終決戦の際にそら飛んでますよねあれ、OVAの方ではスタンドが地面を蹴って飛んでるんですけどそれにしても飛びすぎですよね。やっぱり『凄み』が原因なんでしょうか。


変化

 奴の動きと呼応する様に私の足が動く。意識せずとも前へと進み、スタンドを出現させる。

承太郎とはこのループする世界の中で数百回、数千回と闘い続けた。承太郎は知らぬだろうが私は奇妙なことにジョナサンと似た尊敬の念まで承太郎に感じている。その青みがかった瞳は炯眼としており、気後れなどは一切感じさせない。

 

 どんな強力なスタンドでも運命を、世界を否定することはできないというのに、何故そこまで堂々としていられるのだろうか。貴様が私と同じ立場に立ったとしても同じ言葉を言えるのか。徐々に承太郎との距離は狭まっていく。

 だが不思議なことに私には承太郎やジョナサンが否定している姿が見えない。同じ言葉をちゃっちゃと言う姿が容易に想像できる。恐怖に屈服しない勇気と他人を思いやる優しさ、いかなる困難をも跳ね除ける精神力、所謂『黄金の精神』でも持っているのだろう。自身の宿命を潔く受け入れながらも抗うその矛盾した意思。私の人間を否定することとは正反対の肯定……

 どうやら私にも臭い人間らしい言葉を吐く程度の人間らしさは持っていたらしい。

 

 

 

 たとえ『運命の奴隷』であってもいい。だが

誓おう抗おうと。身体が朽ちたとしても、この世界から私という存在がなくなろうとも、全てが無駄になろうとも、抗うと…………

 

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 

「近づかなきゃテメーをブチのめせないんでな」

 

 石畳と靴が触れメトロノームのように音楽を奏でる。俺は思考を早める。DIOのスタンド能力は時間、時間を止めるスタンド。それはジジイが伝えてくれたバトン。恐ろしいぜ、もしも俺たちが一斉にDIOへ攻勢に出ていたならば、死んでいただろうな。しかしヤベェな、時間を止めるといっても何秒だ?いや最低でも3秒ってところか。それ以上止められるならジジイどころか俺もまとめて始末されているだろうからな。

 しかしなどうする、このまま何も考えずに突っ走って攻勢に出たところで俺の首が飛ぶだけだ。やれやれ厄介なスタンドだぜ。

 時間が止められるってことは自分だけの世界を創れるってことだ。つまり俺がその時間に、世界に入門して来たと誤認させることが出来れば、少しは時間を稼げるかもしれねぇ。時間を止められる相手に時間を稼ぐってのはおかしなもんだが。

 

 

 

───そしてその思考直後 即発‼︎────

 

 

 

 

承太郎のスタープラチナがDIOの顔面に叩き込もうと拳を振る。だがそれよりも早く『世界』の拳が承太郎の頭部目掛けて振り下ろされる。承太郎の脳裏に『死』の一文字が浮かぶ。

 ところがそれは人間に残る野生の本能か、瞬時に行動を起こし『世界』の拳をスタープラチナで防ぐ。両者とも油断はしない。孤軍奮闘の闘いである。

 

 

 

 

 危うく殺られるところだったぜ。だがわかったことがある。それはDIOのスタンドは時を止めなくとも俺のスタンドと張り合えるほどのパワーとスピードを、遠距離には行けないがそれを補う精密的な動作力を持っていること、そしてなにより重要なのは俺と同じタイプのスタンドであることだ。このタイプのスタンドは今までの敵の中でも見たことがなかった。

 つまりだ、俺のスタンドは特殊な能力を持ってないスタンドかと思っていたが、あいつと同じ時を止めれる可能性があるということだ。しかし俺は未だに時が止まった感覚を感じれてねぇ。感覚を掴むことができたなら勝利の目が見えてくるんだが。こればかりはあいつが慢心してくれることを祈るしかねぇ、挑発に乗って頭に血が上ってくれればいいが……

 

 

「きさまよりどのくらい『世界』のスタンドパワーが強いかちょいとためしてみたかったが」

 DIOの傲慢らしさが滲み出たように腕を組み、横柄な口調で話す。嘲笑う様子は一見油断を感じさせるが、一切の隙はない。

 

「ま、ためすほどでもなかったようだがな」

 

 

 

「ほぅ、俺の目が腐ってなきゃ俺にはためすってよりかは殺すように見えたんだが、随分と臆病だなDIOさんよ」

 承太郎も負けじと口を開き口論する。口論の中、承太郎の脳内ではDIOを倒すために必要な条件が箇条書きに書かれる。

 

 俺がDIOに勝つ為に必要なことは3つ。DIOが能力を発動させ時間が止まる感覚を覚え、そして尚且つその停止時間に生き残ること。停止時間内を生き延びる為にDIOの世界に俺が入門して来たと誤認させることだ。成功するか失敗するかはわからねぇ、だがそんなことはどうでもいい成功させる。成功しなきゃ死ぬだけだからな。

 

「ふん殺すように見えただと? ただ私はここで始末できれば僥倖だっただけだよ。ジョースターの血統は侮れないからな、まぁ所詮は質の良い猿にしか過ぎんがな」

 

「しかしどうしてこうジョースター家というのはここまで負けず嫌いなのだ。残念だがそんなわかりやすい挑発には私は乗らんぞ承太郎ォ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 このループには一つの大きな特徴がある。それは運命の流れに深く関係のない事柄は、本来の流れを無視して行動できるという特徴だ。

 これはループについて「言及してはいけない」条件があることと同じく一種のルールの様なものだろう。例を挙げるならば先程の承太郎と私の掛け合いだ。本来の流れ、一巡目の世界では承太郎と私は互いに煽り合いをした。この『煽り合い』が運命の流れである。要するに『煽り合い』という流れから逸脱する行為ができないのだ。

 このルールを守ればある程度の行動と会話が可能であるのだ。しかし私は抗うと決めたのだ、鮭が川の上流に向かうように運命の流れに逆らうと。もちろんルールがなければ嬉しいことこの上ないがな。

 

 

 

「「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」」」

「「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」」」

 激しいラッシュ。それは別に強大なスタンドパワーの影響で宙に浮くわけでもないのにも関わらず、まるで浮いているように見えてしまう。互いの魂のぶつかり合いがそう見させているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 しかしながら以前と違うな。磁石はつけられているだろうが、私の身体には傷一つ付かん。それにこの目でスタープラチナの拳の動きが少し読める。忘れていたな、久々に感じるぞ闘いの高揚感を。フフフ運命への反骨精神が私の力の糧になっている感触がある。今に見ていろ承太郎、貴様を今度こそ完膚なきまでに殺してやろう。

 

 

「「「無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ」」」

 ボディに『世界』の一撃がヒットし、血反吐を吐き、大きく仰反る承太郎。DIOは追撃を喰らわそうとするがそれを許す承太郎ではなかった。この間数秒の攻防である。

 承太郎は平静さを保てないでいた。それはDIOがなんらかの思量を働かせていたことに感づいたからでもあったが、最もな原因は仲間の死であった。DIOに会うことも叶わなかったアブドゥルとイギー、抵抗虚しくも殺されたであろう花京院、そして祖父ジョセフの死。背中に背負う斃れた仲間達の魂が承太郎に重くのしかかっていたのだ。

 

 

「「「(油断はせん!)───『世界』───

      時よ止まれェーーーーーッ」」」

 世界から音が消えた。車が走る音や空気を風が切り裂く音も聞こえない無音のDIOだけの世界である。

 

 

 

 

「フフフ、承太郎貴様「同じタイプのスタンド」などと抜かしていたな」

「この世界の中で見えていようと聞こえていようと関係はないが……」

 DIOは承太郎の右手に自身の左手を近づける。すると承太郎の右手が動いたが、DIOの顔に動揺の二文字は存在していなかった。それは彼が承太郎が動けないと知っているからに他ならない。

 

「ラッシュ比べの際に私の手に磁石をつけていたな、自身の手の磁石と反応する強力なヤツを

仕込んでいたんだよなぁ承太郎ォ」 

 承太郎にその死神の声は聞こえない。策が見破られていることに気づいていない。そして彼の願いは儚く散った。 

 

「忌々しき承太郎よ、さらばだ」

 『世界』の鋭い蹴りが承太郎の腰椎めがけて放たれた。

 

 

 

 

 

 

「そして時は動き出す」

 解除と同時に承太郎は地面に叩きつけられる。地面には一つのクレーターが出来上がった。煙が舞い上がる中DIOはただ一点を見つめている。確実に殺したと思いながらもどこか不安を覚えているのは、今までの経験ゆえである。そして晴れて来た煙から見えたのは承太郎が確かに足を地につき立ち上がる姿だった。

 

 

 

 やはり死んでいなかったか。額に汗一つかかずに言い切れるのは吸血鬼ゆえか、承太郎がこの程度で死なないと知ってゆえなのか、DIOは考える。自身が本来の流れから異なる行動を取ったから承太郎も何かしらの異なる行動を取ったのではないかと。物語の終焉が決まった舞台でアクシデントが起こり演者がアドリブで物語を修正する様に、世界が運命通りにことが運ぶ様に世界の意思が働いたのではないかとDIOは考えた。

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 

 

「見えていたのか」

 

 DIOが問いかけてくるがその言葉は承太郎には届かなかった。何故俺は生きているんだ。俺は間違いなくDIOに腰椎を蹴られた。DIOのスタンドパワーは俺のスタンドと同じかそれ以上だ。威力は俺の腰椎ごとへし折るには十分な筈、だが俺の身体は骨が一二本折れた程度で殺されちゃいねぇ。

 当初の目的の時間が止められた感覚は覚えられ、停止時間内を生き延びることもできた。このことも重要だが、それよりも何故生き延びれたかが重要だ。この理由が知れればDIOへの勝利にまた一歩近づける。

 

「見えているのかと聞いているのだ承太郎ォ」

 怒鳴り声で承太郎に詰め寄るにも関わらず覇気が感じられないのは、DIOも所詮聞いても意味がないと知っているからだろう。

 

「さあな、なんのことだかわからないなDIO」

 そう言うと承太郎はスタンドを出現させ、地面を蹴らせる。DIOから遠くへと離れるようにと。これは逃げたのではない、戦略的撤退である。

 

 

 

 

 

 脳が焼き切れそうなまでに思考を回転させ承太郎が至った答えそれは『無意識のうちにスタープラチナが守っていた』という現実味のないものであった。

 いい加減不味いな。DIOが近づいて来ている。もう少し近づかれたら間違いなく時を止められるだろう。しかし思いついたはいいもののいかんせん信じれねぇな。無意識のうちにスタープラチナが行動したことなんて今までで一度もなかった筈だ。だがこいつが一番辻褄が合う。残念なことにDIOに勝てる一歩もクソもなかったがな。

 助かったのは僥倖だったがもういい。感覚は覚えた。一瞬、パンチ一発分だけだろうが動ける。間違いねぇそう断言できる。根拠とかそうゆうのじゃなくて確固たる自信がある。作戦は立てた。上手くいくそう信じるぜ。

 

 

 

「追いついたぞ承太郎ォ‼︎──『世界』──止まれい時よォーーーーーーッ」

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 奇妙な小僧よ承太郎。齢約17程度のガキがこの私と闘いそして勝ち続けている。こいつの青春が私との闘いで埋められると考えると笑いが出るな。思えばジョナサンと私の闘いも青春であった。ジョナサンとの闘いで私はさまざまな教訓を得た。ジョースター家の人間は爆発力を持っている。たとえ勝ったと確信してもなお油断できないものをもっているのだ。舐めてはならない、承太郎よ貴様の腹を貫かせてもらうぞ!!

 

 『世界』の一撃が承太郎の腹部へと吸い込まれた。しかしDIO思惑通りとはいかなかった。

 

「「「な、ナニィーーーーーッッ」」」

 DIOは驚く。承太郎は時が止まる前からスタープラチナを服の下に出現させており、『世界』の一撃を見事防いだのだ。DIOが気づくと同時に承太郎が動いた。スタープラチナがお返しとばかりにDIOの腹部へと強打を浴びせた。そしてDIOは大きく吹き飛ぶ。DIOは読み違えてしまったのだ、知っていたにも関わらず承太郎が闘いの中で急速に成長していることを。

 長い闘いはまだ始まったばかりだ。

 

            To be continued…




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