男だと信じてもらえない男の娘アイドル(笑)   作:腐った林檎

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ワシの推しの子は『有馬かな』じゃ、異論は認めん。
あい らぶ かな-! びーまん ふぉーゆー!


天才子役

 

*有馬かな*

 

 天才子役と呼ばれてから私の芸能人生は一気に世界が変わった。

 前まではぶっきらぼうだったスタッフやマネージャーも急にうやうやしくなって、何でも私のいうコトを聞いてくれるのでまるで王様になった気分。

 

 演技も仕事をこなすにつれ着実と上手くなっていき、『十秒で泣ける天才子役』としての箔もかなりついてきた。

 だから、ちょっとだけ調子にノっていたのだろう。

 まだ芸能界という世界の広さを知らなかった私は、自分こそが頂点だと信じて疑っていなかったのだ。

 

 ――――――折主葉紙(オリヌシハカミ)と、星野アクアという天才達に出会うまでは。

 

 何度聞いたか分からない、カチンコの音が鳴り響く。

 

「ようこそおきゃくさん」

 

 今回私が出演する映画のあらすじは、ざっくり言うと『自分の容姿にとことん自信のない女が、何故か山奥にある怪しい病院で整形を受ける』っていう話。

 そして任された役は『その村の入り口で出会う気味の悪い子供』。

 本当は私一人って話だったんだけどね、監督が無理言ってド素人の新人子役をねじ込んだから余計なセリフが増えちゃってる。

 まあ天才子役との差を思い知ってもらおうかなと、口で弧を描いて気味の悪い子供を演じていく。

 普段通りにやれば何も間違えることはない。

 

「かんげいします……どうぞゆっくりしていってください……」

 

 (ふふふ、完璧だわ)

 

 セリフを言いきった私は心の中で自画自賛をする。

 見た?私の上手すぎる演技、同世代でもそうはいないレベルよ。

 それに対して――――――

 

 目元を帽子で隠し、横にいる少年と少女を横目で眺める。

 星野アクアだっけ?

 金色の髪と大人びた雰囲気が印象的だけど、名前は聞いたこともないド素人。

 同情するわ、急にプロの現場に連れてこられて何をすればいいのか分からないんでしょう?

 かわいそう……監督もヒドイことするものね。

 

 その隣にいるのは、折主なんとかさん。

 みてくれだけで言えば即戦力、だけどこちらも名前をきいたことないわ。

 どうせ監督が顔面に惹かれて出しちゃおうって思っちゃったのよね。

 演技はダメだろうけど、みてくれだけは本当に良いからモデルにでもなればよかったのに、かわいそう。

 

 本人に聞こえないことを良い事に私が毒吐いていると、二人は演技を始めた。

 あら始めちゃうの?そっから先は地獄なのに、残念。

 天才子役として、見守ってあげるから見苦しい様は見せないでよね――――――――――

 

「この村に民宿は一つしかありません。一度チェックインしてから散策すると良いでしょう」

「もし病院に来られた方ならば、そこの道を右に曲がるとすぐに見えてきますので。良ければ私達がご案内しましょうか?」

「え~もうボク帰りたいよ~。村長様からのお願いだからやってるけどさ、ボクいらないよ~」

「しょうがないでしょう。僕とキミ、そして彼女で案内してあげなさいと言われたんですから」

「そうだけどさぁ。……でも、お姉さんがどうしてもって言うんなら案内しちゃう……かも。なーんて、ふふふ」

 

 そこで、私の慢心は崩れ散った。

 

 何が、ド素人だ。

 私が見てきた子役の中で誰よりもそのキャラに成りきってる(・・・・・・・・・・・・)

 演じているのではない、まるでそれが自然体のように話している。

 私との“差”を見せつけられ、撮影の途中であることも忘れて唖然とした。

 

 そして、私が呆然としている内に撮影は終わっていた。

 

「カット!OKだ!」

 

「すごいね二人とも、お姉さんゾクッてきちゃった」

「そうですか?よかったー」

「ボク本当緊張しましたー……あ、あの。キミ、名前なんて言うの?」

「俺か?星野アクアだ」

「アクア……アクアくん。うん、かっこいいね!」

「キラキラネームすぎて俺は好きじゃないけどな……お前は?」

「折主葉紙。長いから、その、折紙って呼んで?」

「そうか、かわいい名前だな」

「え?」

「……いや、女っぽくてかわいいなって」

「あ、ああそういう。あのね、ボク実は男なんだ」

「は?つまらない冗談はよせ、笑えない」

「いやだからちんちんが」

 

 演技が終わった後、私は泣きながら監督に撮り直してとお願いした。

 しかし、その許可は下りなかった。

 撮影は無事終了したと無情にも告げられ、私はADが運転する車に乗せられることになった。

 

 帰りの車の中で会話はなかった。

 誰もが黙って、沈黙を保っていた。

 その静かさは、無言の圧力となって私に圧し掛かってくる。

 

 枯れたと思った涙が、また込み上げてくる。

 

「アクア、折紙……一人前に芸名なのね、覚えたわ。次は絶対負けないんだから……!」

 

 

 ―――――――この場での出会いは、長い年月が経ち大きな意味を持つ事になる。

 

 そして二年の年月が経過する。

 『売れるべくして売れたアイドル』アイが大きく飛躍する年だ。

 

 

 

 

 そして、芸能界の片隅で男の娘アイドル(予定)が小さくない飛躍をする年でもある。

 

 




折主

 ぶっつけ本番でどんな感じで演技すればいいのか分からなかったため素でいったら絶賛されてて草ァ。アクアに男であることを証明しようとちんちんぼろんしようとしたけどマジ顔で止められた。

星野アクア
 
 同じくぶっつけ本番でむちゃぶりされた人。勘違いではなく監督の意を読み取って演技したので普通に天才。初対面の美少女がズボン脱ぎだしてクソ焦った。

有馬かな

 十秒で泣ける天才子役。アクアの妹のルビーには重曹呼ばわりされ、人物紹介でも通称・重曹と書かれる可哀そうな人。折主の演技(素)に衝撃を受けて泣いた。
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