秋月 奏は勇者でない   作:結城 颯

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 毎度の如くサブタイが思い付かないので、小説仲間に聞いたら「好きな作品とか見てるやつ参考にするといいですよ」と言われたので、早速実戦投入しました。ヤバいですね!


10.煮干しを訪ねて 〜好奇心は最高の唐揚げ弁当〜★

「えーっと、あと買う物は」

 

 買い物メモとカゴの中を交互に確認し、スーパーを散策する。生活用品や消耗品が無くなってきたので、こうして買い出しに来ている。

 

「これでメモのやつは大丈夫っと。あと必要な物は無かった様な気がするし、こんなものかな? 」

 

 レジに向かおうとすると、弁当コーナーが視界に入る。そういえば、今日のご飯をどうするか決めてなかったっけ。

 

「夕飯に弁当はありだと思いませんか?思いますよね?そう、思うんですよ。なので弁当にしようと思います。唐揚げ弁当が残ってるといいなー! 」

 

 誰かに言い聞かせるように、ため○ならない論法を活用して早足で弁当コーナーへと向かう。

 夕方という時間帯は、ほとんど弁当が残ってはいない。しかし、神は言っている。ここで死ぬ運命じゃあないと。目的の唐揚げ弁当が、残っているじゃあないかと。

 

 嬉々として唐揚げ弁当に手を伸ばすと、隣からも別の手が伸びてくる。

 

「あっ」

「あっ」

 

 お互い間抜けな声を出しながら、ツインテの女の子と顔を見合う。

 

「えっと、どうぞ」

「えっと、どうぞ」

 

 1字1句同じ発言をし、沈黙が流れる。日本人特有の、そして変な所で発揮される譲り合いの精神。

 

「ボクはいいから、良かったらどうぞ」

 

「いいわよ。アンタが買っていきなさい」

 

「いいよいいよ。家に帰ったらパンあるから」

 

「ドヤ顔で何を言ってるのよ。なおさら食べなさいよ。私は別のやつを買うから」

 

 そう言って唐揚げ弁当をこちらへ移動させ、女の子は別の弁当を手に取る。

 

「えっと、ありが………って、もう行っちゃった。なんだかカッコイイ感じの女の子だったなぁ」

 

 買い物カゴは、煮干しの袋でいっぱいだったけど。美味しいけどね、煮干し。

 

 後日。再びスーパーでツインテの女の子と遭遇した。ご近所さんだったのかな?それにしては今まで見かけた事なかったけど。まあ何はともあれ、言いたい事があったからヨシ!

 

「言いそびれちゃったけど、昨日はありがとうね」

 

「別にいいわよ。他にも弁当はあったんだし」

 

「それもそうだけどね。でも唐揚げ弁当も美味しいよ?格別だよ?食ってみな、飛ぶぞ」

 

「相○食堂か!はぁ……言っとくけど、今日はもう売ってなかったわよ」

 

「ダニィっ!?やはり売り切れるのが早い………って、今日も弁当なの? 」

 

「悪い?そう言うあんたも、今日も弁当っていう口ぶりだったけど? 」

 

「唐揚げ弁当が残ってたらそうしようと思ったんだけどね。今日は昨日の買い忘れを済ませに来たんだ」

 

 メモしたものを全部買ったとしても、そもそもメモに書いてなければ意味が無い。そう学びました。相田み○を。

 

「ふーん、そう」

 

 興味無さそうな返事をし、女の子は去っていった。弁当と煮干しの袋が入った買い物カゴを手に。………昨日も煮干しを買ってなかったっけ?

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「あれ?かなちゃん何食べてるの? 」

 

 おやつとして持ってきた物を摘んでいると、物珍しそうに袋を覗いてきた。

 

「煮干しだよ。ユウちゃんも食べる? 」

 

「ありがとうー!いただきまーす」

 

「奏ちゃんにしては珍しい物を食べてるわね。また何かの影響でも受けたの? 」

 

「受けたと言えば受けたかなー」

 

 連日煮干しを買い込んでいる女の子を見たせいか、無性に煮干しを食べたくなった。ピーナッツや柿の種と一緒に入ってるのしか食べて来なかったけど、煮干し単品でも美味しいね。

 

「あっ、そうそう。今日は転入生が来るらしいよ」

 

「転入生? 」

 

「朝職員室から聞こえたんだよ。成績優秀の生徒が増えるって。しかもこのクラスに」

 

「ほへ〜。私なんか小テストでも駄目なのに、凄い子だね」

 

「勉強苦手だもんねー。ちなみにこの前の結果は? 」

 

「………ギリ平均です」

 

「ドンマイっ! 」

 

「聞いてきてそれはないよっ!? 」

 

 そこでチャイムが鳴り響き、朝のホームルームが始まる。先生が来て挨拶をすると、先程話してた通り、転入生が居ると発表される。

 

 ザワつくクラスをよそに、先生は外で待機している転入生を教室へと招き入れる。入ってきたその人物に目を丸くしていると、黒板に名前が書かれる。

 

「はい、本日から皆さんのクラスメイトになる、三好夏凜さんです」

 

 スーパーで連日会った、ツインテの女の子。ほへ〜と驚いていると、あちらも気付いたのか目と目が合う。夏凜はあっと口だけ開き、すぐに視線を逸らす。

 

 自己紹介とホームルームが終わると、クラスのみんなに囲まれる。流石に今声をかけるのは難しいと思い、奏は次の休み時間に夏凜の元に訪れた。

 

「やあやあ。この間ぶりだね。まさか転入生とは思ってなかったよ」

 

「あんたがこのクラスとは私も思ってもなかったけどね」

 

「世間の狭さを実感したよ。そういえば自己紹介がまだだったね。ボクの名前はナ○ナゾ博士!何でも知ってる不思議な博士さっ! 」

 

「どこの魔物のパートナーよっ! 」

 

「おおー、通じた!ちなみに名前は秋月 奏。親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼ぶように」

「あんたは悪平等(ノットイコール)かっ! 」

 

「すっごい、これも通じたよ。才能あるよ」

 

「褒められても全然嬉しくもないわよ、それ」

 

「まあまあ。お近づきの印に、お1つどう? 」

 

 煮干しの袋を差し出すと、夏凜は悩んだ様子で奏と袋を交互に見つめ、結果そっぽを向いた。

 

「いらないわよ。自分の持ってきてるし」

 

「そう言わずにどうです旦那?1杯いきません? 」

 

「おじさんか! 」

 

 ─────その日、少女は運命と出会う。そう、ボクはとんでもない子と出会ってしまったかもしれない。打てば響くとはまさにこの事。ボケに対し丁寧にツッコミを入れてくれる。こんなに嬉しい事はない。

 

「夏凜ちゃん………いやっ!親しみを込めてかっちゃんと呼ばせて貰おう! 」

 

「かっ……!?嫌よ、そんな変な呼び方っ! 」

 

「ええー?じゃあリンちゃんは?カッコ可愛い呼び名だと思うよ」

 

 別案としてにぼっしーとか出てきたけど、流石に怒られそうだから口には出さないでおく。でもそう遠くない内に呼ばれるんだろうなと思いました、まる。

 

「せめて普通に呼んでくれない……? 」

 

「愛称だと思ってよ。それに、アダ名は仲良くなる為のものでもあるし。それでどう?どう? 」

 

「…………さっきよりはマシね……」

 

 渋々とだが了承を得て、アンカリング効果って本当に通じるんだなと実感した。ちなみに、アンカリング効果は「○○円の所を、今なら○○円!えー、安い!」というものだってばっちゃんが言ってた。

 

「それじゃあ、改めてよろしくね、リンちゃん! 」

 

「はいはい、よろしく」

 

「うん!じゃあ早速だけど………」

 

 メモ帳とペンを取り出し、笑みを浮かべてリンちゃんに近づく。

 

「取材をさせて貰ってもいいかな?大丈夫大丈夫、質問に答えて貰うだけでいいから」

 

 1歩、また1歩と近付くと、リンちゃんはそれに合わせて後退る。あっちから見たら黒い笑みに見えたのか、どこか戦慄したような表情を浮かべている。

 

「い、嫌よ!なんか嫌な予感がするわ! 」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ、何も怖くないよー。次の記事のネタにするだけだから。これでも新聞部なんだ」

 

 更に近づくと、それ以上逃がさないと言わんばかりにリンちゃんは壁にぶつかる。

 

「逃げてもいいけど、転入生なんていう貴重なネタを見逃す程、ボクはヤワじゃないZE?昭和の起き攻めの如く突撃するZE? 」

 

 実質「答えてくれるまで逃がさない」宣言をし、リンちゃんに迫っていく。

 秋月 奏は新聞部所属。基本断られたら諦めるが、絶対に成すと決めた時、後退のネジを外してあるかの如く詰め寄る。そんなもんじゃ(断られたからって)憧れ(取材)は止められねぇんだ。

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