秋月 奏は勇者でない   作:結城 颯

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 今回も樹海の記憶『編集長、東郷美森』からのお話です。多分、これからも樹海の記憶や特典から書けそうなお話があったら、そこから持ってくる形での投稿となります

 本編を進めるとなると、アニメ5話以降からになってしまうので…………それまでに、やれるお話はやっておきたいと思います


14.物書きの苦難、無き締切に追われる者

 秋月 奏が所属する新聞部には、学期事に発行している小冊子がある。その学期で起きた出来事を面白おかしく纏めたもので、生徒や先生からも評判だ。

 

 そして、今学期も小冊子を発行するべくネタを集めたり記事を作ったりしているのだが────

 

「新聞部、まさかの大ピンチっ!! 」

 

 半ばヤケクソ気味になりながら、1人部室で編集作業をしていた。他の部員は風邪や食中毒、怪我なんかで相次いでダウンしており、編集作業を出来るのが奏しか残っていなかったのだ。

 

 今回は小冊子を発行出来ないかもしれないと言われたが、唯一生き残った奏は「人よ願え!あなた達に不可能はない!何故ならば───ボクがここにいる!!」と引き受けた。

 

 …………引き受けた迄は良かったのだが、思った以上の過酷なスケジュールだったのだ。他の人の調べていた最中のものや記事作成の引き継ぎ。各所に取材や調べ物をしたり等、学校だろうが自宅だろうが、日夜奮闘していた。

 

「まだまだ残ってるよぉ………ボッ○ンにでも助っ人を頼もうかなー。まあいないんだけどさー………」

 

 眠気と疲労で頭もろくに回っておらず、もはや半泣き状態で記事の下書きを書いている。助っ人………助っ人………。

 

「はっ、そうだ!ス○ット団だっ! 」

 

 閃いた直後、新聞部メンツに連絡を入れる。居るではないか、讃州中学校のス○ット団が!

 

 全員から返信が返ってきた所で、3年の教室。もとい風先輩がいる教室へと訪れる。

 

「ボクの名前は秋月 奏!多くの人達に助けられ、多くの人達の代わりにここにいる、新聞部のマスター!勝負だ………ゲーーー○ィアァァ(風先ーー輩)!!! 」

 

「当て字で物騒な事を言うんじゃないわよ! 」

 

「まあまあ。それは一旦置いといて、用件があります」

 

「急に落ち着くんじゃないわよ………それで、また取材の許可でも取りに来たの?毎度言ってるけど、マメねホント」

 

「いえ、今回は勇者部に依頼を頼みに来ました。内容はというと─────」

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「という訳で、みんな仕事よ! 」

 

「今度は何を請け負ってきたのやら……」

 

「それが一大事なんだよ、リンちゃん」

 

 風先輩と共に勇者部部室へと訪れ、扉からひょっこり顔を出す。

 

「あれ?奏さんも一緒なんですか?」

 

「もしかして、かなちゃんの依頼? 」

 

「最近疲れてるようだったけど、何かあったの? 」

 

「優しさが染み渡るわぁ。実はかくかくしかじかホトトギスで………」

 

 新聞部の状況。そして小冊子の発行が危ういという事を説明する。

 

「なんでそんな大変な事に……」

 

「いったいどんな冊子を作ろうとしてたのよ……」

 

 呆れる2人に、奏は部長の言葉を思い出す。『面白いもんを作るには、時に危険も伴う。虎穴に入らずんば虎子を得ず、って言うやろ?』と。そして偶然の不幸が重なった結果がこれなんです。

 

「そこで、我が勇者部に白羽の矢が立ったってわけよ! 」

 

「お、お姉ちゃん、まさか………」

 

「そうよ!そのまさかよ! 」

 

「今回はアタシ達勇者部が、新聞部の代わりに小冊子を発行します! 」

 

 風先輩と共にポーズを決めながら、依頼内容を発表する。

 

「わー!凄いですね! 」

 

「はぁ……つかの間の平和だったわね……」

 

「しかも時間が無いわよ!土日の間に記事を作って、週明けの月曜日には印刷所に持って行かないといけないの」

 

「それはいくらなんでも無茶では………奏ちゃんがいるとはいえ、記事作成の引き継ぎも時間がかかりますし……」

 

「大丈夫、そこら辺は抜かりないよ。部長副部長、そして新聞部部員から許可を貰って、『勇者部特集号』にしてもいいみたいだから」

 

「ゆ、勇者部特集号……? 」

 

「つまり、全ページ勇者部にまつわる記事にしていいってことよ! 」

 

 その発表で一同から感嘆の声が上がる中、リンちゃんが『多大な犠牲を出した割には、記事は何でもいいのね』と呟いた気がしたが、無視した。なにせ時間が無いのだから。

 

 勇者部特集号という事もあり、パソコンが扱える東郷さんが編集長。そして各々担当記事を決めて作成、最終的に東郷さんに文字起こしをして貰う流れとなった。

 

 奏は編集長補佐として全体のサポートをしつつ、亡き(休んだ)部員達の記事を纏め、作成。発行するにもページ数が足りない様なら、これを付け加える予定だ。

 

「私と樹ちゃんが、勇者部の日々の活動記録だね」

 

「頑張ります! 」

 

「じゃあアタシは、うどん屋食べ比べ記事ね! 」

 

「どうせなら、新聞っぽく4コマ漫画とかもあった方がいいわね。私は記事よりもそっちを描くわ」

 

「では、私は社説ならぬ勇者部部説を」

 

「よーし!それじゃ、勇者部……と奏!執筆開始! 」

 

 号令と共に、各々作業に移る。奏は調べ物もあるため図書室と部室を行き来したりしていたのだが、勇者部の様子を見る限り順調そうに見えた。

 

 しばらくして、飲み物などの差し入れを持って部室へと戻ると、ちょうどユウちゃんの「出来た!」と声が聞こえた。

 

「お疲れ様でーす。飲み物買ってきましたよー」

 

「あら、ありがとう奏。気が利くわねー」

 

「手伝って貰ってる立場ですから。それで、ユウちゃんの声が聞こえたけど出来たの? 」

 

「うん!よかったら、かなちゃんと樹ちゃん、2人共読んでみてくれる? 」

 

「いいよー」

 

「分かりました。えーっと………」

 

【○‪‪月‪×日。今日は勇者部のみんなで側溝のどぶサライに行きました。手強い相手でした。でも頑張ってキレイに出来ました!】

 

 …………夏休みの日記かな?

 

「どう?どう?うまく書けてる? 」

 

「………とっても、友奈さんらしいと思います」

 

「うん、ユウちゃんらしいと思うよ」

 

 頭を撫でながら褒めると、嬉しそうに笑う。

 

「ホント?へへー。樹ちゃんも書けた? 」

 

「はい、一応……」

 

「「どれどれ? 」」

 

【○月×日。勇者部は老人ホームへ行きました。お婆さんやお爺さんとお手玉をして遊んだり、肩たたきをしてあげたり。】

 

「ふむふむ」

 

「ほうほう」

 

 流石いっちゃん。年下ながらしっかり書けてるなー。

 

【そして、1番お婆さん達を喜ばさせたのは、我が姉にして勇者部部長、犬吠埼風でした。】

 

「ふむ? 」

 

「んん? 」

 

【お散歩へ一緒に出掛けたり、いつまでもお婆さん達の話相手を笑顔を絶やさず続けたり……お姉ちゃんはやっぱりスゴイ!】

 

 …………風先輩に対する……日記かな?

 

「ど、どうですか? 」

 

「う、うん………樹ちゃんが、風先輩のことを大好きって気持ちが凄く伝わってくるよ! 」

 

「うん、きっと風先輩もこれを読んだら喜ぶと思うよ」

 

「本当ですか?えへへ、良かったです! 」

 

 いっちゃんにも頭を撫でながら褒めると、こちらも嬉しそうにしている。無理矢理誤魔化してる感はあるが、2人らしいと言えば2人らしい。ここは触れずに他の人の様子を確認しよう。

 

「風先輩、記事の進捗はいかがですか? 」

 

 ちょうど東郷さんと風先輩が話しており、進捗確認をしていたようだ。

 

「ふふん!とっくに出来てるわよ! 」

 

「流石です」

 

「早いですね!よっ、流石女子力王! 」

 

「ふふーん!次の記事もじゃんじゃん書くから、出来たのからパソコンに取り込んじゃっていいわよ」

 

「あっ、でもその前に、内容を確認させて貰ってもいいですか? 」

 

「あっ、そうね。風先輩、よろしいですか? 」

 

「ん?もちろんいいわよ? 」

 

「では、失礼します」

 

【うん、うまいうどんだ。いかにもうどんってうどんだ。もぐもぐ。このうどん屋は正解だった。】

 

 …………うどんの……感想日記、なのかな?

 

【ほほう、このお店は釜揚げうどんオンリーか。いい匂いだ、タマナライ!うおォン!アタシはまるで人間火力発電所だ!】

 

 もはや訳が分からないよ、風先輩。

 

「どうよ!アタシの渾身のうどん記事! 」

 

「え、ええ………素敵だと思います。とっても………」

 

「あはは………あっ、東郷さんは勇者部部説だったっけ?どれくらい書けたの? 」

 

 乾いた笑いをしながら、話題を無理矢理変える。この記事がじゃんじゃん増えるらしいが、話題ごと逃げよう。

 

「ええ、とりあえず下書きだけだけど」

 

「見せて見せて! 」

 

「はい、どうぞ」

 

「「どれどれ……」」

 

【勇者部は自らの活動に一縷(いちる)の希望を見た。この戦いが皇国(こうこく)の未来を築く崇高な任務であると自覚し、(もっ)て国民の負託(ふたく)に応え……】

 

 …………国防だね、うん。ブレないね、相変わらず。

 

「どうでしょうか。割と自信作なのですが」

 

「え!?あ、ああ、うん!凄くいいと思うわ! 」

 

「うん、書いてて楽しかったんだろうなというのが伝わったよ。国防だけど」

 

「ありがとうございます」

 

「さ、さて!夏凜の方はどうなってるかなぁ!?行くわよ奏! 」

 

「は、はーい! 」

 

 2人で逃げる様にリンちゃんの様子を見に行くと、鼻歌を歌いながら作業していた。

 

「お、ノリノリね」

 

「リンちゃんは4コマ漫画だったよね。進捗どう? 」

 

「ふふん、ちょうど今描き終えたところよ」

 

「へ〜、どれどれ? 」

 

 リンちゃんの4コマ漫画を読むが、なんというか………こう、画力が………ねえ?

 

「どうよ?いかにも新聞に載ってる漫画っぽいでしょ? 」

 

「これが……? 」

 

「風先輩、しっ! 」

 

「はっ!い、いいいやなんでもない!う、うん、そうね………とってもアバンギャルド(前衛的)でいいんじゃない? 」

 

「なによ、褒めたって何も出ないわよ」

 

「あはは………」

 

 再び乾いた笑いを浮かべながら、こちらも下手に触れないようにしようと思ったのだった。というか、大丈夫なのかな今回の小冊子。

 

 そして翌日。今日は部室に泊まり込みで作業する事になった。俗に言う修羅場だ。

 

「新聞部の皆さんは、毎回こんな感じなんでしょうか………」

 

「まあ新聞部に限らず、締切に追われる人はこんな感じだよ。あとはまあ、早く更新しなきゃ。前回の更新から数ヶ月経ってる。お気に入りが減ってる。下書きが消えた、データが消えた。設定が複雑になった。早く更新しなきゃと締切抜きで追われる人も居るよ………ふふふ……

 

「か、かなちゃん? 」

 

「ふええ、よく体が持ちますね……」

 

「きっと頭のネジが何本か飛んでるんでしょうね」

 

 リンちゃんの発言に、一瞬だが全員こちらを見てきた。コラコラ失礼だね。頭のネジが外れてるんじゃなくて、ちょっとお転婆なだけだよ。

 

 そうして始まった記事作成2日目。作業してはまかないのうどんを食べて、また作業に戻る。これを繰り返していると、時刻は深夜0時を過ぎた。

 

 眠気に耐えれずに落ちる者、カフェイン中毒を起こし倒れる者。普段から遅くまで起きる事がないようだから、仕方ない事だ。カフェイン取りすぎて倒れたリンちゃんはあれだけど。

 

「東郷さんも休んだら? 」

 

「ううん、平気。そう言う奏ちゃんも休んだら? 」

 

「ボクも平気だよ。手伝って貰ってる立場だし、慣れてるからね。でも、やっぱり東郷さんも休んだ方がいいよ? 」

 

「ふふっ、ありがとう奏ちゃん。でも、本当に大丈夫よ」

 

「むにゃ……ん……かなちゃん……東郷さん? 」

 

 話をしていると、目を擦りながらユウちゃんが起き上がる。

 

「あ……ごめん、友奈ちゃん。起こしちゃった? 」

 

「ううん、ごめん。いつの間にかみんな寝ちゃってたんだ……」

 

「夕方からずっと根詰めだったから、仕方ないと思うよ」

 

「そんな、2人共1番働いてるのに。休まなくて平気? 」

 

「うん……成り行きではあるけど、私が編集長だから」

 

「そして補佐だからね」

 

 だから気にしないでと言うと、ユウちゃんはごめんねと謝りながら、パソコンを覗く。

 

「わっ!凄いよ東郷さん!もう殆ど出来てる! 」

 

「どれどれ?おおー!本当だ! 」

 

「でも、記事の配置がどうにも気に入らなくて……」

 

「レイアウトかー。確かに、何か足りない感じはするね」

 

「うーん、私には十分凄く見えるけど。もう少しパーッと華やかな飾りを付けたりとか?曖昧な感想でごめんね」

 

「華やか……花……それよ、友奈ちゃん! 」

 

 ブツブツと呟いてると、何か名案が閃いたのか顔を上げる。その内容を聞き、東郷さんの指示のもと作業を進めるのであった。

 

 それから記事作成は滞りなく進み、この土日で小冊子分の記事も確保出来た。保険で用意していた奏の記事も、次回に使い回せる。無事山場を越えることが出来たのだ。

 

 そして、それから2週間後。勇者部特集号として小冊子が発行された。評判も上々で、完成度たっけぇなおいと新聞部の皆も喜んでいた。

 

「いやー、まさか押し花でレイアウトするとは。やるなー勇者部」

 

 東郷さんの案。それはユウちゃんの押し花をスキャナで取り込み、それらを使って文字通り記事を華やかにするものだった。それが功を奏したのか、実に勇者部らしい小冊子となった。

 

「東郷さんから案を聞いた瞬間、『やはり………天才か』と合掌しましたよ」

 

「そうかそうかー。かなやんもお疲れさん。ウチからも勇者部にお礼持ってくわ。まあ、別件ついでやけど」

 

「別件?あっ、ちょうど勇者部揃ってますよ」

 

「ホンマや。かなやん、ちょっと東郷やん呼んできて」

 

「?はーい」

 

 部長に言われるがまま東郷さんを呼ぶと、1つ咳払いをしてから本題に入った。

 

「東郷やんが編集長として小冊子の作成してくれたんやろ?完成度も高かったし、改めてありがとさん」

 

「いえ、編集長としての責任を果たしただけですから」

 

「話に聞いてた通り、責任感ある子やなぁ。なら、単刀直入に言わせてもらうわ。東郷やん、よかったら新聞部に入らん? 」

 

「ええ!? 」

 

 何故か奏が驚きのあまり声を上げるが、当人の東郷さんも一瞬目を丸くする。だが、すぐに首を横に振って断る。

 

「申し訳ありません。編集は確かに楽しかったですが………でも、私は勇者部が。友奈ちゃんと一緒にいられる勇者部が好きですから」

 

「………そっかー。残念やけど仕方ないわ。まっ、気が向いたらいつでもおいで。新聞部は歓迎するで」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 勇者部の元に戻る姿を見送り、部長は小さくため息を吐く。

 

「惜しい人材なんやけどなー。あんな顔で言われたら引くしかないかー」

 

「そうですねー。でも大丈夫ですよ、部長。ボクが!ここに!いる! 」

 

「せやな。かなやんにはいつも頼りにしとるで」

 

「おおぅ。冗談でボケたのに、実直な反応をされると照れますね……」

 

「あはは。可愛いなぁかなやんは」

 

 からかうように頭を撫でられるが、悪い気はしないのでされるがままにされる。とりあえず、今は小冊子が無事発行されたことを喜ぼう。

 

 

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