「入院っ!? 」
ある日、ユウちゃん、東郷さん、リンちゃんが欠席していた。先生から話を聞くと、どうやら風先輩やいっちゃん、勇者部のメンバー全員が休んでおり、今は検査のため入院しているらしい。
突然の事で驚いたが、前に言われたお役目が関係しているとすぐに気付いた。
放課後になり、すぐさま学校から飛び出して病院へと向かう。お役目については説明出来ないと以前に言われたが、そんなの関係無い。友達が大変な事になってるなら、お見舞いに馳せ参じねば無作法というもの。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!友達の見舞いに参れとボクを呼ぶ!聞け、勇者部よ!!ボクは正義の戦士!秋月 奏っ!! 」
「病院内だから静かにしなさい! 」
「夏凜ちゃんも、ツッコミの声量を落とした方がいいわよ」
「あっ、かなちゃんだ!」
お見舞いの品々を持って談話室に現れたら、2年生組が集まっていた。
「まあまあ。あっ、これお見舞いの品だよー」
「ありがたいけど、お見舞いの品でお菓子やらジュースってのはどうなの? 」
「果物や花にしようかなとも悩んだんだけど、手軽の物がいいかなって。それより………みんな大丈夫なの? 」
入院の理由は聞かないが、せめて何事も無い事を願いたい。だが、答える前に3人の表情が一瞬強ばった。その時点で、何かがあったのは分かった。
「大丈夫だよ!私達は見ての通り、元気ピンピンだよっ! 」
「風は左目。樹は声が出せないようだけど、疲れから来てるようだから、すぐに治るって言ってたわ」
「私は検査で長い時間がかかるようだけど、問題ないわ」
だが、すぐに何事もなかったかのように、ユウちゃんは力こぶを作って明るく笑う。2人も気を使ってくれてるようで、それに寂しさと、自分の無力さを感じる。
何も出来ないと理解していても、その気持ちは拭いきれるものじゃなかった。
「そっか。なら、あとで2人にも顔を見せに行くよ! 」
だが、笑ってそう答える。今ボクに出来る事は、悔しい事に何もない。祈る事しか出来ない、ちっぽけな人間だから。
それでも、それすらも止めたら、本当に何も出来なくなるから。
「入院って言っても、検査だからそんなに長くないんだっけ? 」
「うん!明後日には退院出来るよ」
「よかった。それじゃあ、時間も時間だし、風先輩といっちゃんの所にも行ってくるよ。明日もまた来るね」
「別に無理して来なくてもいいわよ、たくっ」
「今日は来てくれてありがとう、奏ちゃん。またね」
「帰り気をつけてねー!またねー! 」
手を振りながらまた明日と言い、風先輩といっちゃんが居るであろう病室へと向かう。
2人にも大丈夫かと聞いたが、風先輩に至っては通常運転だった。むしろ眼帯でノリノリだったし。
いっちゃんは声が出せないため身振り手振りだったが、流石に不便だから、何かいい案がないか考えておこう。
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「あれ?もしかして、秋月 奏ちゃん? 」
「?はい、そうですけど」
翌日。今日もお見舞いに来ていた所、看護婦さんに呼び止められる。どうやら奏の事を知ってるようだが、こちらは看護婦さんの顔に見覚えがない。
「やっぱり。久しぶりね……って言っても、覚えてないか。前に貴女が入院した時の担当をしていた鈴木よ」
看護婦さんの言葉に、目を丸くする。確かに1度だけ入院した事があるが、その時の事はあまり覚えていない。
「そう、ですか。その節はお世話になりました。でも、ごめんなさい。その………あまり覚えてなくて」
「いいのよ。あの時は貴女も大変だったし、覚えてないのも無理もないわ。それより、今は貴女が元気そうでよかったわ」
「だいぶ経ちましたし、今はユウちゃん達や………友達がいるおかけですよ。1人じゃ、あのまま押し潰れていたと思うので」
「そう………でも本当に良かったわ。退院する時も暗かったから、ずっと心配してたのよ。いい友達に恵まれたのね」
「はい。大事な………大事な友達です」
微笑みながら答えると、鈴木さんは安堵の表情を浮かべて良かったと笑う。
「でーも。あまり病院内で騒がないようにね?他の人から注意されてるわよ?大声で叫ぶ女の子が来てるって」
「あっ、それはその………ごめんなさい。気をつけます」
「よろしい。それじゃあ、私も仕事に戻りますか。元気でね、秋月ちゃん」
「はい、ありがとうございました」
鈴木さんの背中を見送り、奏は友達だけじゃなく、いい大人にも恵まれていると実感する。
それと同時に、忘れたくなくて………でも、普段は意識しないようにしていた記憶が頭に過ぎる。その事で、気持ちが暗くなっていくのが分かる。
我に返り、これではいけないと自分の頬を数回叩く。お見舞いに行くのだから、暗い顔をしていては駄目だ。今大変なのは、皆なんだから。
気合いを入れ直し、スケッチブックとペン、お見舞いの品が入った鞄を肩にかけ直し、病室へと向かった。