秋月 奏は勇者でない   作:結城 颯

22 / 22
 お久しぶりです。1年ぶりの投稿で申し訳ありません………失踪するつもりは無く、きちんと完結まで持っていく所存です。

 言い訳するなら、ちまちま書き溜めしたり、リアルと別作業に時間割いてしまって投稿出来ませんでした。

 多分、またしばらく投稿期間が空くと思いますが、頑張っていきたいと思います


19.だからこそ★

 

 ユウちゃん達が退院する前日。退院祝いで何かやろうと模索していますが、連日の猛暑で苦しんでいる少女は誰でしょう?そう、ボクです。ガッデムホット。ゴッドホット。

 

「うっわ、今週も暑いじゃん………」

 

 週間予報を見て更に億劫になり、物置部屋へ向かう足取りが重くなる。

 行く理由としては、祝いといっても特になんもアイディアが思い付かず、物置部屋に行けば何か閃くんじゃないかなと思ったからだ。

 

 ただ、あの部屋は冷房などが行き届いていない為、少し居るだけで汗だくになる。換気と扇風機だけじゃ限界があるのですよ。

 

「ちょっと行ってくるわ。○の錬金術師、最後の錬成にな! 」

 

 自分を鼓舞するために両手を合わせ、物置の扉を開ける。中からは閉じこもった熱気が流れ込み、その先の地獄を無理やり体感させてくる。ファッキンホット。

 

 あまりの暑さに逃げたくなるが、中へと入り物色する。

 

「あれでもない、これでもない…………あ!これいいじゃん! 」

 

 数分で汗だくになりながらも、ある物を見つける。これで明日やる事は決まったと思い手に取ると、高温で手が火傷しそうになった。

 

「アツゥイ!!」被弾ボイス

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「さあ!ご唱和ください我の名を!ウル○ラマン、ゼーット!」

 

 翌日の昼休み。教室で皆とご飯を食べ終えた時に、ある物を机の上に取り出す。

 

「かなちゃん。それってかき氷機? 」

 

「そう、かき氷機だよ。みんなの退院祝いに何かしようかなーと考えた結果、この地獄みたいな暑さから閃いたの。かき氷パーティしようと! 」

 

「通りでクーラーボックスを持って登校してきた訳ね。また何か企んでるんじゃないかと思ってたけど」

 

「そうよ、そのまさかよ!東郷さんはまだ入院中だから、東郷さんが戻ってきたらまたやるよ! 」

 

 クーラーボックスを開けると、中には大量の氷とシロップが入っている。早朝に先生に頼み、家庭科室の冷凍庫で冷やして貰っていたのだ。

 

 カップと氷をセットし、ゴリゴリ削って第1陣のかき氷を作り上げる。

 

「お好みで練乳もあるよ。はいどうぞー」

 

「わーい!ありがとうー! 」

 

「いらないって言っても押し付けてくるだろうし、頂くわ」

 

「モチのロン!さあ、溶ける前に食べよー! 」

 

 苺のシロップをかけて、3人はかき氷を口に運ぶ。冷たさと甘みが口に広がり、暑さで火照っていた体が冷やされていく。

 

「つめたーい!シャリシャリしてて美味しいねー!」

 

「ん……? 」

 

 ユウちゃんの発言に違和感を感じ、食べる手が止まる。普段なら「あまーい!」と言ってる筈だが、なんというか………いつもと違う感想を口にしている。

 

 いっちゃんの声や風先輩の左目の事もあり、やっぱり何かあるんじゃないかと聞こうとした瞬間、激しい頭痛に襲われる。

 

「頭が………痛い……! 」

 

「一気に食べるから頭が痛くなんのよ。落ち着いて食べれば問題無………いたっ! 」

 

「アッハッハッハッハッ!リンちゃんも頭痛くなってるー!

 

「なんでかき氷って、食べると頭痛くなるんだろうね? 」

 

「理由としては、喉にある三叉神経が刺激されて、脳が冷たさを痛みと勘違いして頭痛を起こす。

あとは急に冷えるから、一時的に血流量を増やして体を温めようするから、頭につながる血管が膨張して頭痛を起こす。主にこの2つが原因らしいよ」

 

「ほへー。かなちゃん詳しいね」

 

「アンタが頭良さそうな発言していると違和感を感じるわね……」

 

「一応成績上位ですから!ちなみに、対策としてはゆっくり食べる事らしいけど、リンちゃんが証明したように、ゆっくり食べても痛くなる時は痛くなるよ」

 

「役に立たないわね……」

 

「まあまあ。それよりも、次もあるよ次もー」

 

「いただきまーす! 」

 

「2人共食べるの早っ!?そんなんだから頭が痛くなるのよ! 」

 

「まあまあ。第2陣のお上がりよ!」

 

「秋月ちゃーん。良かったら私達も貰ってもいい?」

 

「俺も俺もー」

 

 こちらの様子を遠目で見ていたクラスメイトが声をかけてくると、1人。また1人と集まってくる。みんなも暑さにやられているのか、冷たいものが恋しいのだろう。

 

「よろしい!では『かき氷屋アキヅキ』開店と致しましょう!並ぶがよい皆の衆! 」

 

 そうして、昼休みはひたすらかき氷を作っては皆に配っていった。「また秋月が何かやってるぞ」という話を聞きつけた他のクラスの人も来た。先生も注意をしつつも、ちゃっかりかき氷を食べていく事もあった。

 

 氷の在庫も勇者部の分を残して使い切り、かき氷屋アキヅキは閉店となった。けど、東郷さんが戻ってきたら時にまたやる。今度は小豆や抹茶とか、トッピング系でもバリエーションを増やしていこうと決心したのだった。

 

「って、違う違う。頭痛で聞きそびれだけど、聞きたい事があったんだった。ユウちゃんユウちゃん」

 

 家庭科室の冷凍庫に氷を入れたタイミングで思い出し、声をかける。

 

「なに?どうしたの?」

 

「やっぱり体調とか、その………身体のどこか、まだ悪かったりしてない? 」

 

「大丈夫だよ!私はいつでも元気いっぱいだよ! 」

 

「でも、かき氷食べてた時になんか………いつもと様子が変だったし………それに、いっちゃんや風先輩の事もあるから………」

 

「かなちゃんも鋭いなぁ。でも、2人と違って私は大した事ないよ。ちょっと味が分かんないぐらいだから」

 

 何事も無いように言われた事に、血の気が引き、ひゅっと口から息が漏れる。味が分からないって、それじゃあさっきのは………。

 

 良かれと思ってやった事が裏目に出る、と言うが、今それを痛感している。

 

「えっと………その、ごめんユウちゃん。余計な事しちゃって……」

 

 自責の念で潰されそうになり、俯きながら謝る。

 

「ううん、気にしないで。私達のためにしてくれたんだから、嬉しいよ!それに、ヒンヤリしたおかげで涼しくなったしね! 」

 

「でも───」

 

 続きの言葉を言う前に、ユウちゃんに抱き寄せられる。そして優しい声色で、そっと語りかけてくる。

 

「いつも心配してくれてありがとうね。確かに大変な事になったけど、私は勇者だから。だから大丈夫だよ」

 

 そう言って離れると、今度は両肩に手を乗せ、顔と顔が向き合う。

 

「それに、かなちゃんには『おかえり』って言って貰えてる気がするんだ。今日みたいに、楽しい事を用意して待ってくれているんだって。だから、頑張れるんだよ」

 

「ユウちゃん………」

 

 昔から変わらない、太陽のような笑顔。その笑顔に、温かさに、何度も救われてきた。だからこそ───

 

「相変わらず、ユウちゃんは優しいなぁ……」

 

 目の前に居ても聞こえない程、小さくそう呟く。

 

「え?何か言った? 」

 

「ううん、なんでもない。ありがとうね、ユウちゃん」

 

 だからこそ────。

 

「?そっか。じゃあ、そろそろ戻ろっか!あっ、まだ気にしてるんだったら、次は食感が楽しいやつがいいかなー。何かある? 」

 

「そうだねー。ポップロックキャンディとかかな?口の中に入れるとパチパチするんだよね」

 

「おおー!アレってそういう名前だったんだね。それは楽しみかも」

 

「任せて!東郷さんが戻ってきた時に、またやろっか! 」

 

 だからこそ───無理しないでほしい。幸せでいてほしいんだ。大事な、大切な、友達だから。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。