こちらテラ人外専用スレ板です   作:野菜大好き丸

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非掲示板回(二回目)


幕間③【狂気乱武】

 月夜の空に、大小の違う何かが宙に舞う。

 

 月明かりに照らされると、小さい方は小弩が取り付けている甲冑の左腕だった。小弩は所々熱し溶かされ、肩当と肘当は酷くひしゃげて変形していた。

 

 そしてもう一つの大きい方は──

 

『ガ……グゥアァァ…………』

 

 右腕と右半身を削り取られた砕竜は、力無く呻きながらその巨体が崩れ落ちるように倒れる。同時に、砕竜の目の前に千切れ飛んだ彼の右腕が落ちていった。

 

 

『Aaaaaaaaaaaa!!』

『クゥエァァァァ!!!!』

 

 倒れ伏した砕竜を背に、隻腕となった鎧騎士─バサスロニキと所々鱗と甲殻が焼け焦げた烏竜─ガルルガネキが勝鬨を上げる。死闘の一騎討ちは、彼らが制した。

 

 勝鬨を上げ終えた彼らはそのまま砕竜の亡骸へと近づいていく。

 

『『……………………』』

 

 一人と一頭は物言わぬ強者に黙祷を捧げる。そしてバサスロニキは腰に帯刀してたナイフ取り出し片腕で亡骸の解体を行い、ガルルガネキは亡骸の血肉を啄み喰らう。

 それは死闘を交えた者として、弱肉強食の理に従った彼らなりの強者への敬意にも見えた。

 

 

『…………ッ!』

 

 強者に対する礼儀の最中、バサスロニキは突如背後から迫る何かを感じ取り、右腕の小盾で即座にそれを防ぐ。迫り来るそれはアーツの刃であり、小盾に防がれると同時に霧散した。

 

「ほぉ……反応は悪くないな……」

「アッハハ! 隙だらけと思ったんだけど防ぐなんてね!」

『Aaaaa……?』

『クゥエァ……?』

 

 

 彼らの前に現れたのは不敵に、そして好戦的な笑みを浮かべるループスの女性とサルカズの男性─ラップランドとエンカクであった。先程のアーツの刃はラップランドが剣で抜き放ったもので、彼女からすれば挨拶代わりのものだった。

 そんな見知らぬ来訪者に怪訝な声を上げるバサスロニキとガルルガネキ。

 

「それにしても君の体は面白いね。まさか生身の人間じゃなくて動く無人の鎧だったなんて。流石のボクでも予想してなかったよ。ああ、戦ってみたら面白そうだ!」

「一つ惜しいのは隻腕なことか。全力を出せる状態で戦いたかったが、それでも少しは楽しめるだろう」

『Fuuu……』

『クゥエ』

 

 

 戦意高揚させる襲撃者に対し面倒臭そうに、そして若干の苛立ちを含みながら反応するバサスロニキとガルルガネキ。普段の彼らであれば意気揚々に戦いに臨んでいるが、今の彼らは不機嫌さを隠してなかった。

 彼らは先程まで砕竜との熾烈な死闘を繰り広げ、死闘を制した高揚感を噛み締めていた。そして勝者の特権として、獲物を堪能しようとした所を目の前の相手に水を差されたのだから。

 

 

 ──故に、彼らにとって目の前の二人に対する印象は決まっていた。

 

『──Aaaa!!』

「なっ!?」

 

 バサスロニキは瞬時に二人との間合いを詰め、有無を言わさず小盾でラップランドに殴りかかる。ラップランドも相手の速度に驚愕しながらも狂喜に震えながらも即座に剣を抜き放つ。放たれた小盾と剣はぶつかり合い、譲らずジリジリと拮抗する。

 

 

『Guuu!』

「単純な力はそっちが上かな? ……けど、左がお留守だよ!」

 

 小盾と剣の鍔迫り合いの中、ラップランドはもう片方の剣を敵の左半身へと振り下ろす。腕のない方に攻めかかることは傍から見れば卑怯に見えるが、殺し合いの世界ではそんなの関係無い。ラップランドはただバサスロニキの弱点を狙っただけに過ぎず、バサスロニキもそれを見越した上で戦いを仕掛けてきたのだから。

 

 ──だからこそ、バサスロニキは自分の弱点を正直に狙ってくれたことに内心ほくそ笑んでいた。

 

『……Fuuu!』

「っ!?」

 

 刃が鎧に迫る間際、バサスロニキは魔力を用いて小盾の裏についてる固定ベルトの金具を破壊する。小盾の固定が緩み腕が小盾から外れたことでバサスロニキは鍔迫り合いから身体が自由となる。

 バサスロニキが自由になると同時に剣と盾の競り合う力の均衡が崩れ、斬り掛かったラップランドの体勢は崩れて剣先はブレる。ブレた剣先はバサスロニキの鎧に掠めた程度に収まる。そして体勢が崩れて出来た相手の隙を見逃さないバサスロニキは素早い動きで右脚での回し蹴りをラップランドにぶちかます。

 一方、ラップランドは回し蹴りの直撃を避けるため咄嗟の回避行動に移る。しかし、体勢が崩れた状態だったため身体の反応は僅かに遅れ、胴体への直撃こそ免れたものの骨が軋む感触と共に、左腕に蹴撃をモロに食らってしまう。同時に左手に持っていた彼女の剣は強烈な痛みで思わず手放してしまい、それをバサスロニキは逃さず奪い取る。

 

「やってくれるね……! しかもボクの武器に手を出すなんて、随分手癖が悪いじゃないか……!」

『Guuu……』

 

 狂狼と狂騎士は睨み合う。

 互いに左腕は使用不能で、同じ得物を持ち合わせる状況。後は技量と力などの戦闘能力の差が勝敗を分かつ。

 

『「───っ!!」』

 

 声にならない咆哮を上げる二人の狂戦士は、剣という牙で喰らいつかんと獣の如く、けたたましい音を立てながら剣戟を繰り広げていった。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

『クゥエァッ!!』

「ほう、俺の相手はお前か」

 

 一方で、ガルルガネキは炎弾のブレスをエンカクに向けて連続で放つ。燃え盛る炎の塊に対し、エンカクは大太刀と刀で切り裂いていく。灼ける熱気を物ともせず、エンカクはガルルガの懐へと潜り込まんと接近する。

 

「フッ、貰った……っ!?」

 

 火炎を切り進み懐に入ったエンカクはそのまま両手に持った得物で目の前の烏竜を斬り掛かる。

 だがその寸前、エンカクは烏竜の顔をチラリと見た瞬間、烏竜が()()()()()ように見えた。同時に背筋が瞬時に凍る感覚を感じ取り、無理矢理斬り掛かる動作を中断してその場から距離を取ろうと離れる。

 しかし攻撃のため相手の懐に深く潜り込んでしまったのが仇となる。

 

『クゥエァァァァッ!!』

 

 ガルルガネキの口から鼓膜を劈く程の鋭い咆哮が響き渡る。近くにいる生物の聴覚にダメージを与えるその咆哮はただ大音量なだけではなく、咆哮の主が纏う強烈な威圧感を近くにいる相手の本能に直接訴える。

 それは同じく強大な力を持つモンスターや、歴戦の狩人ですらも対策してなければ怯んだり、思わず反射的に耳を塞いでしまうほどに。

 

 本来狩人が狩猟するモンスターのいないテラで生きる先民、その中で戦いに明け暮れる日々を送ってきた屈強な戦士もそれは例外ではない。至近距離で咆哮を受けたエンカクは武器を持ったまま反射的に耳を塞いでしまう。

 だが彼とて歴戦の戦士。この場に留まることが危険だと、足を止めず直ぐに後ろへと下がろうとする。エンカクがもしサルカズではなく、フェリーンなどの聴覚に優れた種族であればこうも動くことは叶わなかったのだろう。

 

 

『クゥエァッ!!』

「ぐっ!?」

 

 しかしガルルガネキがそんな相手の絶好の隙を見逃すはずも無い。相手が完全に後ろへ下がる前に螺旋を描くような動きのサマーソルトを繰り出し、三又の棘が特徴な尻尾の先端をエンカクにぶつける。

 エンカクは薙ぎ払ってくる尻尾に直撃し吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。だが上手く受け身をとって身体への衝撃を抑え、ガルルガネキを睨みながら体勢を整える。

 

『……クゥエァァァァ!』

「ふぅ……どうやらお前は、そこらの獣よりも断然頭が回るようだ」

 

 忌々しげに威嚇するガルルガネキに対し、不敵に笑いながら剣を構えるエンカク。しかし彼の脇腹から夥しく、若干黒ずんだ血が溢れ出していた。

 

(……ヤツの尾の先端には出血性の毒が、それも強力なものが含まれているようだな。こっちもタダでやられたわけじゃないが、大した傷にはなって無いようだ)

 

 そう思い耽るエンカクの目線の先は、三叉の棘の片方が切り取られ、甲殻に切り傷がついたガルルガネキの尻尾に向けられていた。

 それらの傷はエンカクがサマーソルトの一撃をもらう一瞬に、彼が刀で斬り付けて出来たものだ。しかしエンカク本人からすればあの尻尾を切り落とすつもりだったのだが、華奢な見た目に反して斬り付けた感触は硬く、切り落とせなかったことに内心驚いていた。

 状況的にはエンカクが不利。だが彼は嗤っていた。久方ぶりの死闘を興じれる強敵に心を踊らせていた。もっと戦おうじゃないかと彼の得物である太刀と刀にアーツの炎が纏い燃え盛る。

 

 そしてガルルガネキも先程の戦いでボルテージが再燃し、目の前の敵を見据える。傷はこちらの方が浅いが、油断すればあの刀の錆になるのは自分だと言い聞かせ、思考をより戦闘に特化した形へと変えていく。

 

『……クゥエァッ!!』

「さぁ、血で血を洗おうじゃないか!」

 

 狂烏と狂剣客は衝突し合う。闘争本能の赴くままに、全てを以て目の前の敵を葬ろうと戦いを繰り広げた。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 ──一方その頃、

 

「全く、ラップランドとエンカクは何処に行ったんだ……?」

「まさかあの爆発から姿を暗ませるとは、すまないドクター、私が見張ると言ってこの体たらくとは……」

「ニアールは悪くないさ。あの時に君を含めた重装隊が大爆発の衝撃を食い止めていなければ著しい被害を被っていたんだ。むしろよく頑張ってくれた」

「そうだよ! それにニアールさん、本当は前線から後退した方が良いんだよ。装備も半壊してるし医療オペレーターから応急治療を受けたとはいえまだ腕の痺れが取れてないんでしょ?」

「気を使わせて感謝するドクター、グラニ。けど私はまだ戦える。腕に痺れはあるが骨が折れているわけではない。それに盾も他の重装オペレーターから貸してもらったから守ることは出来るさ。しかし監視を怠ったのは事実だ。せめてミスの挽回はさせてもらえないだろうか」

「……はぁ、本当は下がらせたいけどそこまで言うなら……。けど無茶だけはしないように。本来自分達は観光に来てただけだ。休暇先で怪我なんて笑えないからね」

「ふふ、そうだな」

「話の途中で悪いけどドクター、こっちで戦闘音が聞こえるわ」

「っ! そうか……全員、直ちに音の鳴る方へ向かう! 行こう!」

 

 

 

 

「ふぅ……ようやく外に出られましたわ」

『ピキュ〜(訳:疲れましたね〜)』

「今回は本当に大変だったよ。もしはぐりん君達がいなかったらどうなっていたことやら……」

「それにしてもはぐりんさん、貴方は本当に珍しい生物ですのね。液体金属の生物なんて初めて見ましたわ」

「それ以上に私は貴方のアーツに興味を引きますわね。転移させたり人に姿を変えたりと……研究のためにこのまま連れて行こうかしら?」

『ピキッ!? ピキー!! (訳:いや、流石に解剖やホルマリン漬けにされる未来とか勘弁してください!)』

「スカイフレア、はぐりん君怖がってるよー」

「冗談ですわよ。もし攫ったらあのキチガイコンビに報復されますわ。そんな愚は犯しませんわよ」

「ですけど彼のアーツが気になるのは分かりますわ。もしかしたら鉱石病回復の手掛かりになる物があるかもしれないと思いたくなりますし」

「そういえば彼らはあの怪物、砕竜を討伐したのかな? 妙に静かだけど」

『ピキ〜……ピキュ? ピキー! (訳:負けるとは思いませんけど連絡は来てませんし……え、ライガーさん? 向こうで音がするって? 分かりました行ってみます!)』

「はぐりんさん!?」

「急に走り出してどうしまして!?」

「二人共、彼の後を追うよ! にしても彼、とても速いなぁ!」

 

 

 こうして二つの団体がバトルジャンキー共が争う戦いの場へと向かっていく。

 

 そして殺し合う彼らを見たそれぞれの陣営はこう思った。

 

 

 Sideドクター

((((遅かったか……! byスカジ除く全員))))

(なんだ、ただの小競り合いね。byスカジ)

 

 

 Sideはぐりん

((((え、何この状況? どうして彼らロドスと戦ってんの? by全員))))

 

 

 この後めちゃくちゃ全員で殺し合いを止めた。

 




簡易まとめ
ラッピー&エンカク「やーいw」
バサスロ&ガルルガ「なんだァ?てめぇ……」

ロドスシエスタ組「あーもうめちゃくちゃだよ」
ロドス火山組&はぐりん「噴火阻止したらと思ったら何か内ゲバ起きてるんですが…」

戦闘描写ムズい…ムズくない?
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