まさか私がこの
もう「お荷物」とか「いらない子」だなんて言わせない。そう、ここでなら私は・・・。
「やっと着いた・・・ここが百合ヶ丘かあ・・・」
真新しい制服に反して背中には使い込まれたCHARMケース。非常に不釣り合いなこの格好だが、いざ校門前に立ち、入ろうとするとやはり緊張する。
(よし、心機一転!頑張ろう!)
私立百合ヶ丘女学院。───リリィ養成機関の中で最も古く、憧れる人も多い。そんな由緒正しいところに、編入とはいえ入れたことがなにより嬉しい。
「どいてどいてー!」
「えっ?」
声をするほうを見ると、行き過ぎて戻ってきたのか、坂の上のほうからものすごい勢いでリリィがこっちに向かってくるではないか。
「わわっ!?」
スッ・・・
間一髪のところで避ける。レアスキルを使うほどではなかったが、気づくのが遅かったら正面衝突しているところだ。が、
バタン!
「いっ!」
その子は校門前の道路と横断歩道の堺の縁石に足を引っ掛けて派手に転んでしまった。
「いったあ・・・ごごごごめんなさい!大丈夫?」
彼女も新入生だろうか。真新しい制服、真新しいCHARMケース。私と同じくショートカットの子だ。
「え、ええ。それよりあなたは?」
「はい、大丈夫です!実は間違えて上の裏門のほうに行っちゃって・・・慌てて戻ろうと思って走ったら止まれなくなっちゃって・・・。でもぶつからなくてよかったあ・・・」
「それより結構派手に転んだみたいだけど、あなたのほうこそ大丈夫?ケガしてない?」
「はい・・・すみませんでした!」
その子は深々と頭を下げる。
(さて、改めて・・・いざ!)
「あの・・・」
と、私のほうをまじまじと見る。
「・・・?」
「あなたも新入生?」
ニコニコしながらショートカットの子は私のほうを見る。そんな期待の目で見られても困るんだけど・・・。
「新入生だけど、残念ながら私は編入生よ」
すると目の色を変えてきた。
「わあ・・・先輩リリィだー!どこの出身?名前は?前いた学園は?」
「ちょ、ちょっと待って!ストップ、ストップ!」
質問攻めのマシンガントーク・・・入学式初日からえらいことになってきた。
「あ。ごめんなさい・・・」
私が困ってると思ったのか、申し訳なさそうな目で見てくる。
「ここ、校門だよ?目立つから中に入って話しない?すっごい恥ずかしいんだけど・・・」
「あ・・・」
ようやく気づいたのか、みるみるうちに顔が真っ赤になっていく。もちろん周りからは注目の的だ。
「・・・中、入りましょうか」
「そ、そうね・・・」
地元東京を離れ、鎌倉府に来たが、見て驚くのは自然の豊かさだ。藤沢から電車に乗り、百合ヶ丘の最寄りに着くまで景色を眺めていたが、緑の木々が生い茂るいいところだなあと感じた。もちろんヒュージ迎撃の最前線であるため、学園周辺は被害を最小限に抑えるため関係者以外は立ち入ることができない。
学園内の敷地を進んでいると何やら人だかりができている。
「中等部以来お久しぶりです結夢様」
「何かご用ですか?遠藤さん」
「
「あの・・・あれってどういう・・・」
さっきの子が訪ねてきた。
「下級生が上級生に絡んで手合わせを申し込んでるみたいね」
ちなみに手合わせとは、リリィ同士がCHARMを交えて戦うことを指すのだが、修練目的以外での手合わせは禁止されている。この場合上級生リリィの誰かが判定人を立てて修練扱いにするはず。
にしても触らぬ神になんとやらだ。ああいうのは関わらないに限る。後にこの二人たちとは大きく関わることになるのだが・・・。
「さて、お互いの自己紹介もまだだったわね。私は・・・」
ゴーン!ゴーン!
ヒュージ出現を知らせる鐘だ。
「うっそ・・・」
「どうしたんですか?」
「ヒュージが出たのよ」
「ええっ!?ヒュージ!?」
ここ鎌倉府でも特に学園一帯は特段出現率が高い。近くにアルトラ級ネストがあるのも関係しているのだろう。出現は時間を選んでくれないようだ。
ちなみにヒュージは大きさで呼び方が変わってくる。小さいほうからスモール級、ミドル級、ラージ級、ギガント級、アルトラ級だ。
「ええ。けど・・・私たちは入学式もまだだからいきなり出撃・・・はないわよ」
「よかったあ・・・」
さっきの子が胸を撫で下ろす。
もし出撃になるのであれば私たちの持っている携帯端末に何かしらの指示が飛んでくるはずで、今回は上級生リリィが担当することになる。
「じゃ、改めて自己紹介。私は尾上明日香。百合ヶ丘に来る前は御台場女学校にいたの。よろしく」
「敷井
百合ヶ丘の試験は大きく分けて2つあり、1つは別学園からの予備隊推薦枠だ。ちなみに予備隊とは中等部でのリリィ活動単位のことだ。もうひとつは一般学校と同じように試験を受験する方法だ。一般公開セレクションではスキラー値が50以上あれば誰でも受験ができるため、ここ百合ヶ丘では記念に・・・と受ける人が多いことで有名だ。その中でも合格ということは何かしら持っている、ということでもあるが・・・。
「敷井さんだって補欠合格でも入れるなんてすごいじゃない」
「尾上さんのほうがすごいよ。お台場だって百合ヶ丘と同じぐらいすごいところだもん。後、私のことは円でいいよ」
とニコニコしながら返してくれた。尾上さん、か。
「じゃあ、私のことも明日香でいいよ。あんまり名字で呼ばれるの好きじゃないし。で、円さん。あなたはどうしてリリィになろうと思ったの?」
「えっと・・・」
すると途端に黙ってしまった。
「言いたくないのならいいわ。リリィになる子って何かしら悩みだったり、人に言えないことを抱えてたりするから」
ピピピ・・・
私と円さんの携帯端末が鳴る。
「何の音?」
「携帯端末の音ね。ちょっとまって」
内容を確認する。見ると学園からのメールだった。
『工廠科の施設より実体標本化予定のヒュージが逃亡、現在捕獲または討伐中。なお、討伐には一部の新入生が参加。これにより入学式は新入生の無事と帰還を待って開催します。会場内で待機するように』
え・・・こんなことってあるの!?
まさか新入生が参加しているとは。おそらく経験者なのだろうが、手柄をあげてどこかの
「ねえ円さん」
「はい?」
「入学式、かなり遅くなりそうだから先に荷物を寮に置いてこない?」
と、携帯端末を見せる。
「・・・そうですね」
百合ヶ丘に限らず各学園は全寮制だ。ここ百合ヶ丘はニ人で各一部屋ずつ使うらしい。えっと、入居予定の部屋は確か・・・。
しばらく探したところでようやく自分の入る居室番号を見つけることができた。しかし、まだ円さんは私の隣にいる。
「あれ?円さん自分の部屋に行かないんです?」
「明日香さんこそ」
お互い顔を見合わせる。居室棟番号も部屋番号も見間違えてないはず。
「ということは・・・」
「もしかして・・・」
二人に送られてきた入学案内の通知書を見せ合う。そこに書かれていたのは、
『あなたの部屋はB棟45室です』
「え・・・」
「うそ・・・」
校門で偶然出会って、部屋まで同室とは。これでクラスまで同じだったら奇跡を越えて運命を感じてしまう。
運命、かあ・・・。
「ねえ円さん。こうなったのも何かの縁だし、いっそのことさん付けで呼ぶのやめよう?」
すると、
「わあ・・・うれしい。ありがとう明日香ちゃん!」
「いいよいいよ。それにね、同室のリリィってパートナーになりえるの。あ、パートナーって言っても怪しい意味じゃなくて、相談相手とかそういう意味ね」
中にはそういう関係になるリリィもいるらしいが。
「ということで・・・これからよろしくね。円ちゃん」
「これでよし、と」
御台場から持ってきた荷物類をひと通り片付け、割り当てられた机の椅子に座る私。
「・・・明日香ちゃん。カエル、好きなの?」
「そうなんだ・・・って見ればわかるか」
実は私、大のカエルグッズ好きなのだ。机の上にはありとあらゆるものがカエルで埋め尽くしている。百合ヶ丘の寮は御台場よりも狭い、と聞いていたのでかさばるもの(大きいぬいぐるみとか)は実家に送ってある。
「前いた学園の子に『あんた、やりすぎ!』って言われちゃったけどね」
「ははは・・・けど、いいなぁ・・・」
「なんで?」
「私には夢中になれるものがないから・・・」
と言って円ちゃんは落ち込んでしまった。その表情は何か寂しくも見える。
「私は・・・そんなことないと思うな」
「え?」
「せっかく百合ヶ丘に来たんだし、リリィになるって目標があるのに、夢中になれるものがないって、なんか変じゃない?」
「そう・・・だね。私、これから頑張って探してみる」
「じゃ・・・会場いこっか」
オリリィメインで進んでいきます。本編(メディア混合です)メインキャラ達はちょい役でしか出てきません(笑。
ハーメルン初投稿&久しぶりの書きモノ(リハビリ気味)で冒険&ブレブレになるかと思いますが気にしたら負けだよな・・・
(2022/4/13・追記)
初回投稿を見直し、大幅改稿を実施しました。リハビリが終わってるわけではないのでまだまだ改善の余地はあるかと思います。