「待ちなさい明日香!」
京夏お姉様の静止も耳に入っていない私は一目散にヒュージに向かていく。
「はあああああああああああっ!」
斬りかかろうとするも、
キンッ!
目の前には京夏お姉様。
「落ち着きなさい明日香!何があったかわからないけど今は・・・」
「止めないでくださいお姉様!やっと見つけたんです!こいつを倒すまではなんとしても・・・」
言い終わる前に私の予想しなかったことが起きる。
パシッ!
「え・・・」
なんと、京夏お姉様がCHARMをその場に置いて私の頬を叩いたのだ。身勝手な行動をしているんだから当然なのだが。
唖然とする私。
「戻りなさい明日香。これは
「・・・はい」
「いきなりなんですの?人の話も聞かずにヒュージに向かっていくなんて・・・いつもの明日香さんらしくありませんわ」
「そうだよ明日香ちゃん。一体どうしちゃったの?」
「みんな、ごめんね・・・」
「どういうことか説明してもらえる?」
突然戦闘から始まり困惑している人も多いと思う。私たちは今ラージ級と戦おうとしているわけだが───
「あの個体・・・レストアです。そして私の憎っくき相手・・・」
「レストアってなんだ?」
と、みどり。
「一度負傷したヒュージがネストに戻って回復した個体のことよ。私たちはレストアード───略してレストアって呼んでいるわ」
初花様が説明してくれた。
「ということは・・・以前明日香さんはこのレストアと対戦したことがあると?」
「ええ・・・対戦どころじゃなかったわ!だからこそこの手で・・・」
「わかったから落ち着きなさい明日香。それで今回の作戦だけど・・・」
「その前に説明させてください。なんで私が慌てて駆逐しようとしているか」
息を整え一旦呼吸を置く。目の敵がいるのは分かるが、落ち着け私。
「あのヒュージ、最初のうちは大人しいです。時間が経つにつれて耳障りな音とともに凶暴化していきます。それだけならいいんですが・・・マギリフレクターを発動したら厄介です。ノインヴェルト戦術も効かなくなるかも・・・」
「マギリフレクター・・・か。あまり考えてる時間はないわね。明日香、今回あなたは前線に出ないでほしいの。悔しいだろうけど我慢して。エリザベスさん。今回あなたに前線を任せるわ」
「わかりましたわ京夏様」
この判断が吉と出るか凶と出るか。
「みんなは2人を中心にサポートを。それでも厳しければノインヴェルト戦術に移行します。1年生のみんなはこれが初めてになるけど、くれぐれも慎重にね」
まさか前衛から外されるときが来るとは。
「明日香。ちょっとこちらへ」
みんなから少し離れたところへ。幸いまだヒュージは攻撃範囲にはいないようだ。
「いきなり平手打ちしちゃったことは謝るわ。それよりどうしたの急に?」
「私もいきなり飛び出してしまってすみませんでした」
頭を下げた上で、
「1年半前・・・あのレストアに殺されかけたんです」
「え・・・」
「あのときはレアスキルに覚醒したばかりで自分自身が浮かれてたっていうのもあったんですけど・・・私が相手をしたときはミドル級だったのにまさかここまで・・・」
「でもミドル級相手にそこまで苦戦したのは・・・?」
「耳障りな音です。耳を劈くというか・・・とにかく立つものやっとなぐらいの音・・・あまり喋ってると時間がなくなります。急ぎましょう!」
「そうね・・・」
「はあああああああっ!」
キンッ!キンッ!
ベスが前衛にいるのがすごく違和感に感じるがそんなことを言っている場合ではない。
パンッ!パンッ!
私が後方射撃に回っているのは珍しい。それよりも───
パンッ!パンッ!
前衛にいないことをマギ弾に込めて撃っている自分がいるのが悔しい。
「明日香!悔しいのは分かるけど闇雲に撃たない!」
「すみません・・・」
今の自分は冷静さに欠けている。落ち着こうとすればするほど余計焦っているらしい。
「あの・・・やっぱり今の自分には我慢できそうもないです!ゴメン、ベス!場所変わって!」
「明日香!」
「ちょっと明日香さん正気ですの!?あとでどうなっても知りませんわよ!?」
キンッ!キンッ!
「こんのっ!このっ!」
「作戦変更!私たちは3人のアシストへ!まったく・・・」
京夏お姉様は呆れた顔をしてるが、実際のところはどう思っているのだろう。
「明日香ちゃん!こいつの弱点は?」
琴乃様が尋ねる。
「中央左の赤く点滅しているところ・・・あそこから耳障りな音が出ます!なのでそこを叩けば・・・」
「中央左ね・・・」
琴乃様が動きを一旦停止させ、目を瞑っている。
「あの・・・琴乃様、止まってる場合では・・・」
瞬間目を見開き一目散にヒュージに向かっていく。
「はああああああああああっ!]
ラージ級の懐中央左へ。
ガンッ!
GYAAAAAAAAAAAA!!
鈍い音とともにラージ級が暴れ出す。致命傷にはなっていないようだがダメージは与えられたようだ。
ヒュンヒュン・・・!
ラージ級からの攻撃!
「くっ・・・」
かろうじて避ける。
パンッ!パンッ!
後ろからの援護。この程度の攻撃は当然利くはずがない。
GYAAAAAAAAAAAA!!
ヒュンヒュン・・・!
ラージ級の攻撃が急に激しくなる。私の記憶ではこの後さらに耳障りな音が激しくなる。それがさらに進行するとマギルフレクターが発動して一切の攻撃が効かなくなったはず。
「京夏お姉様これ以上はマズいです!ノインヴェルト戦術を!」
「わかったわ!」
言うなり封を切った専用マギ弾をCHARMに装填する。
「いい?これは本番よ!絶対ミスは許されないわ!」
ダンッ!
まず最初にパスが渡ったのは───
「えっ!?わたくしですの!?」
一番ミスする率の高いベスに最初のマギ弾が行く。リスク回避としては最適解だと思う。パス回し対策としてリリィと全く関係ないラクロスやらされて(?)いたわけだが、ここでどうなるか。
「いいから早く!」
「わかりましたわ!灯音様!」
ヒュンッ!
マギスフィアが灯音様に渡る。
「・・・次、初花お願い!」
ヒュンッ!
初花様へ。
「まだ攻撃は大丈夫よね?」
初花様が確認する。
「はい!でも急いでください!」
とは私。
ヒュンッ!
何も言わずに投げた先は───
「ちょっと初花ちゃん!」
琴乃様の元へ。口調は怒り気味だが、本気で怒っているわけではないようだ。
「まったく・・・」
しょうがないなあ、といった感じの表情をしている。それを許している、ということは何か確実なものがあるからだろう。
「頼んだわ咲良ちゃん!」
ヒュンッ!
「は、はい!」
受けとるなり、
「えっと・・・」
CHARMを持ったまま固まっている。
「いいから早く!」
京夏お姉様から怒声が飛ぶ。珍しい光景ではあるが・・・。
「誰でもいいから受け取って!」
ヒュンッ!
「よっと・・・うわっ!」
すかさず取ったのはみどりだ。が、
GYAAAAAAAAAAAA!!
ヒュンヒュン・・・!
「うわっとっと・・・」
縮地を使いながら攻撃を巧みに避けてはいるが、マギスフィアを落とさないか心配だ。
「あああああ・・・落としそう・・・・」
「早くパスして!」
「わかってるよ!」
ヒュンッ!
残るは私と
「・・・」
受け取ったものの、何も喋らない円。
「・・・」
またしても沈黙。
「円!」
私の声でハッ!としたのか慌てた顔になり、
「ご、ごめん明日香ちゃんボーっとしてた・・・最後お願い!」
ヒュンッ!
「くっ・・・」
そしてラストは私だ。訓練時と違い、マギの量が桁違いに多い・・・すごく重く感じる。
ガチャン!
シューティングモードに切り替える。狙うは・・・ラージ級の右下の腹!
「これで・・・最後っ!」
ズガンッ!
衝撃が凄まじい。フンフヴェルトで慣れきっていた私にはかなりきつかった。
そして───
ドーン!
凄まじい音ともに衝撃と爆風が襲う。が、
GYAAAAAAAAAAAA!!
「え・・・」
こいつ・・・まだ動いてる!?
残ったマギの力を振り絞りレアスキル発動!
ラージ級の側に近づく。そして
ダッ・・・
上からCHARMを振り下ろし、
「くたばれええええええええええええええええええええええ!」
以降、私の記憶は、ない。
ちょっと短めですが調整のためなのでご了承ください。