「2人とも準備はいい?」
琴乃様を待たせる形となってしまっているが、心の準備に時間がかかってしまった。
「いつでもいいわ」
「大丈夫です!」
「京夏様、本当にやらせて大丈夫なんですの?」
「これは本人の希望なの。いつまでもこのままじゃダメだ!って」
「だからって結夢様とだなんて・・・ムチャじゃありません?」
ベスと京夏お姉様とのやり取りが聞こえる。
「いろいろと噂は聞いているわ尾上さん。よからぬほうもね」
「それは・・・」
よからぬ噂・・・それは手合わせでわざと負けて自分の強さをアピールしているんではないか、ということ。当人からすればとんでもない話なのだが、噂が噂を呼び、関係がないはずの
「誤解です・・・って言っても信じてもらえなそうですね」
言いながらCHARM───タングズニルを持って構える。
「そうね」
言って構える結夢様。その構え方が独特だ。
「手合わせ2本目。ルールは先程と同じ。危険だと判断したらその場で止めるわ」
ブリューナク───灯音様も使っているが、運用コストが高い、という話もある。それよりも。
さっきベスが苦労していたのは砂地での移動に慣れていなかったからだ。幸いお台場は郊外訓練での模擬戦では砂地移動がメインだったため、こちらとしては好都合なのだ。結夢様がどの程度砂地に慣れているか。
「はああああああああっ!」
キンッ!
先制を仕掛けてきたのは結夢様のほうだ。
「うっ・・・」
ブリューナクのブレードが重くのしかかる。
これが今までの私ならこのまま受け手に回っていただろう。
ウワサで耳にしたのだが、一柳さんは結夢様から直接指導を受けているとか。それはそれで羨ましい話だ。
なんとか隙を見図ろうにもタイミングがない。
「はっ!」
こうなったら当たって砕けろだ。正面から正々堂々と行くことにする。
キンッ!キンッ!
CHARM同士がぶつかる独自の音。
正面から行ったところでつば競り合いぐらいにしかならない。あ。CHARMだから
実はお台場時代に川村
『攻撃はあえて受けて、流して斬る』
その見極めが出来るかどうか。
「2人の動きが止まってしまいましたわ」
「お互いの出方を待っているんでしょう・・・」
冷静に今の状況を分析する。
「にしても───まさか砂地に慣れてるなんてね」
あえてエリザベスさんのほうを見る。
「な、なんですの?京夏様?」
「他愛ない喧嘩と思って黙って見てたけど・・・いい課題が見つかったわね」
無理もないだろう。メルクリウス時代、ほぼガンシップでの生活がメインのはずで、常日頃から海岸と触れ合っている私たちとは違う。
「もしかして・・・」
エリザベスさんは青ざめているが、
「もしかしなくても、ね。明日から海岸マラソン確定かな」
「今見る限りは・・・結夢様と・・・ほぼ互角だね・・・」
「これが明日香の本来の実力・・・のはずなんだけど・・・」
今日の明日香はこれまで見てきた手合わせと違い、明日香本来の実力を見ている気がした。
「これでもまだ誤解です・・・って言って信じてもらえませんか結夢様?」
結夢様の攻撃を受け流しつつ喋るも、
「そんな無駄口叩いている暇なんてあるのかしら?」
言葉とは裏腹に攻撃の精度が上がっていく。
(は、早い・・・!)
このままではいつもみたいに受け手になってしまう。
一方の一柳さんはいかにも尊敬の眼差しという目で結夢様を見ている。
(一柳さんには悪いけど、この勝負絶対私が勝つ!)
実は今回少し間合いの取り方を変えている。今までは対人戦だから・・・と少し引いた立ち位置だったのだが・・・対ヒュージ戦と同じにしている。ただ、これだけ動きやすくなっている、ということは、対ヒュージ戦でももう少し間合いを詰められるということでもあるのだが・・・。
「明日香の動きが・・・いつもと違う?」
それに気づいたのは灯音だった。
「いや、違わないわ。ただ、対ヒュージ戦と同じ動きね・・・」
それを琴乃がどう判断するか。
「明日香ちゃん・・・急いでる?というか、焦ってる?」
「どういうことですの?」
明日香のルームメイトでもある
「なんて言ったらいいのかな・・・結夢様に必死についていこうとして自分を見失っちゃってる・・・のかな」
「言われてみれば・・・わたくしと戦った時はもっとこう・・・冷静な判断をしていましたわね・・・」
気づいてないのは明日香本人か・・・。ここは
「はっ!」
キンッ!
少しずつ結夢様との距離を詰めていく。
私の表情を見てか、一瞬フッと笑ったように見えてしまった。
(こんのおおおおお!)
そして結夢様が一瞬体勢を崩したようにも見えてしまう。
「ストップ!」
私の手合わせは琴乃様からの声で終わりを告げる事になる。
「琴乃様!なんであそこで止めたんですか?」
手合わせが終わった後。
琴乃様に止められてしまったが、結夢様を圧していたので実質私の勝ちなのだろう(一柳さんは納得しないかもしれないが。
「明日香ちゃん。あれ以上は危険って判断したからよ」
「それはわかるんですが・・・でも危険要素ってどこに・・・」
私はなぜ止められたのか?という疑問と後少しで勝てる!という気持ちだけが先走っていた。
「明日香。今のあなたの状態のことよ」
「京夏・・・お姉様・・・」
後ろから声をかけられる。
「でも、私にはあれが危険だなんて思えません!」
「気持ちはわかるわ。けど、明日香。冷静に考えてみて。もしこれが実戦だったらあなたはどうなってた?」
「そ、それは・・・」
つまり。冷静さを欠いた行動は正しい判断が出来ないから止められた、ということだが・・・。
「でも、常に冷静な行動なんて・・・私には出来る自身がありません・・・」
「確かにその通りよ。でもね明日香。これだけは覚えておいて」
京夏お姉様は続ける。
「どんな戦いにおいても個人的な感情移入は禁物よ。それはあなたも分かっているでしょ?」
個人的・・・。つい2ヶ月も経たない前の話だ。あの特型ラージ級を倒したときのことを忘れるはずもない。
ここ百合ヶ丘に来る前は個人的な感情移入とは無縁だった(はず。目標ができ、信頼できる仲間とも出会うことができた。
「はい・・・」
と返事はしたものの、私自身納得は出来ていない。
「・・・って言って納得するわけないわよね。けど、明日香。あなたには前歴がある。それは忘れているわけではないわよね?」
「もちろんです」
「だったら、なぜ普段感情を表に出さない結夢ちゃんが笑ったように見えたの?」
え・・・。
一瞬私の心が見透かされたように思えてしまった。
「なーんて、冗談のつもりで言ったんだけど、どうやら本当だったみたいね」
「・・・」
私は何も返せなかった。
「ごめん。みんな・・・私、寮に戻るね・・・」
「明日香ちゃん・・・」
円が声をかけようとするも、エリザベスさんに止められてしまっていた。首を横に振っている。
「今はそっとしてあげたほうがいいですわ。明日香さん、あれでいて繊細な方ですから・・・」
「京夏ちゃん。あれでよかったの?」
琴乃・・・。
「・・・正直わからない。けど、今の明日香は頑張るあまり突っ走るところがあるから」
正直明日香には少し言い過ぎたかな、とも思う。
「けど、昔の京夏ちゃんそっくり。あの時ほどじゃないけど」
「だよね・・・私も思ったわ。あ、今も・・・とか思ったでしょ?」
「まさか。今の京夏ちゃんは十分守護天使してると思うよ。結夢ちゃんはどうか知らないけど」
琴乃なりの気遣いなのか、最後の方は向こうに聞こえないように小さい声で呟くような感じだった。
「・・・明日香の様子見てくるね」
「・・・まさか京夏お姉様に言い当てられるなんてね」
寮の部屋に戻って最初の一言。私ってこんなナーバスだったっけ?
覚えているのは京夏お姉様に
実は私ってメンタル弱いのかな?そもそも弱すぎたらヒュージ相手に出来ないでしょ・・・とかいろいろなことが頭の中をグルグルする。
トントン・・・
誰だろう?
ガチャ・・・
予想通りの人物が入ってきた。
「明日香・・・」
「京夏・・・お姉様・・・」
「隣、いい?」
「ダメ・・・って言っても座ります・・・よね」
言って私のベッドの隣に座る。
「そうね・・・」
しばらく沈黙。
ところでお姉様は何しに私たちの部屋に来たんだろう?
「実はね───」
最初に口を開いたのは京夏お姉様のほうだった。
「この部屋、私と初花も使ってたのよ」
え?
「運命って不思議よね。まさかこんな形で引き継がれていくなんてね」
「何が言いたいんですか?お姉様。用がないなら帰って・・・」
いつかの私みたいに後ろから抱きしめてきた。
「やめてください!」
手で振りほどこうとするも、力をギュッと入れて離そうとしない。
「お姉様!」
嫌われてもいい。けど今は誰とも関わりたくない。と思っているが手を離してくれない。
「・・・さっきは悪かったわね。でもね明日香」
京夏お姉様は続ける。
「そこがあなたのいいところでもあって、悪いところでもあるのよ」
悪いところ・・・。
「自分を変えたいっていう気持ちもわかる。私もそうだったわ」
「そう・・・だったんですか?」
「
「・・・」
「琴乃にもそう映ったんじゃないかな?目標に向かって進むのは悪いことじゃない。けど、行き過ぎるところがある。私もね」
自分はそういう性格じゃない、と思っていたが、周囲からはそんな風に見られていたのか・・・。ひとりで突っ走って。ひとりで逃げ出して。
「もしかして・・・気がついてました?」
「ええ・・・って言っても気づいたのは私じゃなくて灯音だけど・・・」
気がついたときには京夏お姉様は私からは手を離していた。
「あの・・・灯音様なんですけど・・・」
これも私の悪いところだ。本人から直接聞こう。
「あ。いえ・・・なんでも・・・ないです・・・」
「変なの」
「で、あちらはなにをひそひそと話をしてますの?」
明日香ちゃんと京夏様がいなくなった後、一柳隊、ことラーズグリーズの神琳さんと雨嘉さん、楓さんの3人は残ったままナイショ話をしている。
「他所はよそ。うちは・・・うちだよ。エリザベスさん」
「それはそうなのですが・・・ああっもう!」
「そうだよベスちゃん。私たち負けてるんだから。ほら戻ろう」
とは言ったものの、寮に戻るわけにもいかないし・・・。
「・・・って寮の部屋はダメか。ラウンジ?」
ピピピ・・・
携帯端末の呼び出し音?
見ると明日香ちゃんからだった。
『円、ベス ゴメン。自分勝手に飛び出して。私はもう大丈夫』
「だって」
ベスちゃんに私の端末を見せる。
「よかったですわ。それにしても・・・まさか明日香さんが結夢様となんて思いもよりませんでしたが」
「なんて言ってるよ?と・・・」
「ちょっと!円さん!」
すると・・・。
『私の手合わせの当面の目標はアールヴヘイムの天葉様だよ』
「だって」
なんて返ってきた。明日香ちゃん目標高いなあ。私なんて・・・って口に出したら怒られそうだけど。
「まあ・・・目標は高いほうがいいに決まってますから、円さんもお持ちになればいいんですのよ」
目標・・・かあ・・・。今までは明日香ちゃんが引っ張ってくれて、明日香ちゃんの背中ばかり見ていた気がする。
「あの・・・琴乃様。ちょっといいですか?」
次の日。訓練が終わった後の帰り道。
「なあに明日香ちゃん?」
いつものようにニコニコ顔の琴乃様。
「私に薙刀を教えて下さい」
「・・・昨日京夏ちゃんに何か言われた?」
「・・・昨日の手合わせで思ったんです。今の自分に足りないものは冷静な判断力だって」
今思っていることを素直に言う。
「私はそうは思わないけどな。昨日止めたのはそのときだけの話」
「・・・私はそうは思わないです。今まで何人かのリリィと手合わせしてきました。けど・・・全員と負けてる。止められた理由はみんな同じでした。だから変わらなきゃって・・・思って、今まで頑張ってきました。でも、それだけじゃダメで・・・だから自分を変えたいんです」
「どうしたの明日香ちゃん?そんなに結果を急いで。十分実力はあるんだからそれ以上頑張らなくても・・・」
「それじゃ、ダメなんです・・・」
「琴乃様も知ってますよね?私の手合わせの悪い噂。今更払拭・・・できるかわからないけど、私は・・・実力で正々堂々名乗れるリリィになりたい。ただそれだけです」
「明日香ちゃん。手合わせは指標でしかないのよ?そんなムキにならなくても・・・」
「でも! でも・・・!」
昨日京夏お姉様に言われたばかりなのに何ムキになってるんだ私。気がついたら大声を出していた。
「明日香ちゃん落ち着いて・・・」
「明日香・・・」
丁度京夏お姉様が通りかかった。
「京夏お姉様からも何か言ってください!私、このままじゃダメなんだって・・・」
「ちょっとこっちにいらっしゃい」
強引に右手を引っ張られてしまった。
「あの・・・何を・・・」
「いいからこっち」
京夏お姉様に引っ張られたまま、講義棟から少し離れた小高い丘の上に連れてこられた。
「あの・・・こんなところまで連れてきて何を・・・」
「明日香。昨日から様子がおかしいわよ?どうしたの?」
「別におかしくはないです。私はただ・・・京夏お姉様に追いつきたくて・・・」
「私に追いついてどうしたいの?」
「・・・」
どうしたいって・・・。私は何も答えられなかった。
「何を焦ってるか知らないけど、焦ったところで結果は付いてこない。あなたもそれぐらいは分かってるでしょ?初心者じゃないんだから」
「・・・はい」
「明日から明日香はしばらくタングズニル使用禁止。乃莉子さんのところに行って空いてるグングニルにコアを付け替えね」
まさかグングニルを持つことになるとは。ユグドラシル製のCHARMは自分のタングズニル以外使ったことはない。ましてやバランスウエイトがないとなると・・・。
「はあ・・・自業自得とはいえ、何やってんだか・・・」
「初心に戻ったつもりでいればいいんじゃないかな?にしても意外・・・明日香ちゃんがグングニルかあ・・・」
天上の間。いつものメンバーとの会話。
「明日香やっぱスゲーや・・・あんなんで振り回してたのか・・・」
とはみどりだ。そもそもグングニルとでは重量バランスが違う。あの後乃莉子さんの工房に行ったが、
『ごめんなさい。今CHARMの予備も空きもないの。だからみどりさんのやつを使って。私からは京夏様に言っておくから』
ということで1週間限定だが、みどりのCHARM───グングニルを使うことになった。
「あんた・・・少しは恥じらいってものを知りなさいよ・・・よく素っ裸でいられるわね・・・」
ここにいる全員がタオルを巻いているのだが、唯一みどりだけが生まれたままの姿だ。
「だって同性じゃん?見られたって減るわけじゃないし」
「まあ・・・それはいいわ。で、ベスはどう思うの?」
「どうって・・・別に何も・・・まあわたくしのブラダマンテに比べたら性能なんて雲泥の差ですわ」
「・・・何わけわかんないこと言ってんの。なんで私がグングニル持たされたかって話」
ああ、と相づちを打ってから、
「京夏様はやはり明日香さんの守護天使ですわ。今の明日香さんに足りないものを理解されていますわね」
「そんなの・・・言われなくても分かってるわよ・・・」
だからこそ止められたし、克服したくて琴乃様に教わろうとした。
「そうじゃありませんわ」
えっ?
「それはご自分で考えてくださいな。わたくしからは何も申しませんわ」
翌日。訓練棟で訓練中に出撃命令が出た。出現場所に移動した私たち。
「灯音。ヒュージの数は?」
灯音様がレアスキル───鷹の目で周囲を確認する。
「えっと・・・大したことはない・・・と思うけど・・・ミドル級が5体・・・かな・・・ネストもある・・・真っ先に叩いちゃったほうが・・・いいかも・・・」
「じゃあネストの殲滅は・・・円、お願いね」
「はい!」
「エリザベスさんと琴乃を中心に私たちはサポートへ」
あの時と同じだ。また、私がAZから外された・・・。冷静に考えれば外されたわけではないのだが、このときの私はそう思ったのだろう。
「・・・さん」
誰かに呼ばれた気がした。
「明日香さん!」
GYAAAAAAAAAAA!!
キンッ!
咲良ちゃんに大声で呼ばれるまで気がついていなかった。
「うわあっ!」
「大丈夫ですか?いつもの明日香さんらしくない・・・」
前戦ではベスと琴乃様が筆頭になっている。本来ならばTZの位置にいる私がそのサポートに回らなくてはいけないのだが・・・。
『どんな戦いにおいても個人的な感情移入は禁物よ。それはあなたも分かっているでしょ?』
その言葉と、扱いに慣れていないグングニルに苦戦していた。
「くっ・・・」
キンッ!キンッ!
扱えない、と言っても立ち振る舞えないわけではない。が、また私は焦っていた。
本来の使用者がみどり、というのもあるかもしれない。だが、今の使用者は私だ。本来CHARMはコアを通して使用者のクセや扱い方を覚えてその通りに動いてくれるはず。もちろんマギが入らないわけではない。
(え・・・なんで!?なんで言うことを聞いてくれないの?)
何度やってもヒュージにかすりもしない。距離感は合っているはずだ。
「明日香!一旦そこから離れて!早く!」
それにいち早く気づいたのは初花様だった。え、でも離れるって・・・。
考えていてもしょうがない。レアスキル発動!
シュバッ!
一旦その場から離れる。
「厄介だね」
「うん、そうね・・・・」
「どういうことですか?」
一時近くの廃工場に避難してきた私たちだが、ちょっと話が見えない。
「みんなよく聞いて。あのヒュージは私たちの感覚を麻痺させているわ」
つまり攻撃すればするほど、その感覚に惑わされる、ということだ。
「ヒュージに関する情報は百由さんの分析待ちだけど、それまでは私たちでなんとかするしかないわ。円、ネストのほうは?」
「えっと・・・ネストは破壊したんですけど、その後・・・CHARMがおかしくなって・・・」
ネストがその効果を抑制していた?ちょっとそれは考えにくい。
「あの・・・京夏様。1体バインド・・・なのかな・・・展開しているみたいです。ネストがあったときは効果はなかったみたいですけど・・・」
「咲良ちゃん詳しく」
つまり咲良ちゃんが言うにはこうだ。バインドがCHARMの効果を妨害している、と。通常ヒュージは負のマギを放出することがある。私たちリリィはその負のマギに浸食されると抑止力を失い、暴走する。狂酔の月持ち(特に琴乃様)であればなおさらだ。その類に近いのでは、と。
「だとしたら・・・物理攻撃は・・・一切効かないね・・・」
となると、ノインヴェルト戦術・・・なのだが・・・。
「明日香はどう思う?」
会話は聞こえている。みんなが話をしているときに一昨日からの会話と今の状況ばかりが頭をぐるぐる回っていた。
「・・・」
明日香からの返事は、ない。
「明日香」
もう一度尋ねる。やはり反応はない。
「・・・明日香ちゃん?」
「聞こえてないわね」
琴乃は苦笑いをしている。まったく・・・。
今の明日香は自分のことばかりで周囲のことが全く見えていない。こうなったのも守護天使である私に責任がある。
少し荒療治だが、こうするしかないか。
「明日香!」
私は大声で叫ぶ。
「え?」
次の瞬間。
パンッ!
「京夏様!?」
私は京夏お姉様に平手打ちされていた。しかもみんなの目の前で。もちろん周りのみんなは驚いている。
「いい加減にしなさい!今は何をしなくちゃいけない時かわかっているでしょ!」
叩かれた頬を押さえながら私は呆然とすることしかできなかった。
「・・・」
「これは隊長として聞きます。明日香、あなたの、LGでの役目は何?」
本来なら今現在の状況を把握して、それを分析してリーダーでもある京夏お姉様と一緒にどう行動すべきか判断する立場のはず。なのに私は・・・。
今の私はただの冷静さを失った1リリィにしかすぎない。これじゃ、LGサブリーダー失格だ私。
「・・・」
私は無言のまま、その場を飛び出してしまった。
「・・・バカ」
バカなのは私だ。逃げ出したところでなんの解決にもならないのに。何を意地張ってるんだろう・・・。オマケにヒュージだ。倒す方法も分かっていない。
1、2体ならデュエルでもなんとかなるだろうが、なにせ使い慣れていないグングニルだ。少しでもミスすれば間違いなく命の保証はないだろう。
GYAAAAAAAAAAAA!!
考えてるそばから出てきた。幸い例のCHARMに干渉するやつは出ていない。さっき咲良ちゃんが1体だけとは言っていた・・・ということは、
ガチャン!
グングニルをシューティングモードに切り替える。
「おおっと・・・」
重量バランスがわからなくて一瞬体勢を崩す。
(にしても、新しいCHARMはいいなあ・・・)
バランスウエイトなしのCHARMをマトモに扱うのは久しぶりだ。こんなに軽かったっけ?そういえばみどりは頻繁に乃莉子さんのところに持っていってた気がするが・・・もしかしてCHARMの扱い方雑?戻ったら説教だな・・・とか考えしまった。
(・・・戻ったらみんなに謝らなきゃ)
さて、気を取り直し、照準を睨む。
パンッ!
とりあえず1発。
GYAAAAAAAAAAAA!!
反応した。1本腕が私を襲う。
「はあっ!」
ザンッ!
1本は切り落とした。やはりか。あのバインド(?)展開外なら一切干渉は受けない。が、群れてないところを見ると一連と関係ない野良か?
だがヒュージには変わりない。
「ジャマよ!」
パンッ!パンッ!
牽制のために数発。
GYAAAAAAAAAAAA!!
レアスキル発動!懐に入り、踏み込んでブレードを下から上へ・・・あ、あれ?
ブレードが宙を舞う。
(やっぱりダメ・・・どうしたら・・・)
完全に空振った。直後、背後からヒュージの腕が来た!
バンッ!
「きゃあああああああああああ!」
廃ビルの壁に叩きつけられ、そのまま落ちた。
(自分勝手に飛び出して、自分勝手に行動して、やられて・・・)
多分だけど、今は誰も助けに来ないはず。頼れるのは自分しかいない。たかがミドル級1体だ。腕さえ切り落してしまえばなんとかなる。
身体を起こし、構え直す。そして・・・。
「こんのおおおおおおおおおおお!」
このレベルのヒュージだったら間違いなく行けるはず。なのに・・・。
バンッ!
「・・・っ!」
何度やっても同じ目に遭う。冷静になれ私。
(けど、ここで戻るわけには・・・!)
またくだらない意地を張る自分。なんで素直になれない?その時だ。
ピピピ・・・
え?携帯端末?
慌てて廃ビルの中に入る。見ると京夏お姉様からのメッセージだった。
『少しは反省した?コイツの弱点は私たちの聴覚よ。身近にあるもので耳を塞ぎなさい。そうすれば勝機はあるわ』
まるで見られているような文面・・・もしかして灯音様が鷹の目で私を見てる?まあそれはいい。聴覚?
耳を塞いだところで何か変わるとは思えないけど・・・。耳を塞ぐもの・・・耳を塞ぐもの・・・あれ?
廃ビルの中を見渡すと、見覚えのある光景だった。あれ、ここって・・・。
一見すると何の変哲もないオフィスだが、よく見ると奥に縦長の機械のようなものが見える。私には馴染み深いものだった。
(そうか・・・ここも・・・ヒュージに・・・)
私がビームライフルをやっていたことは前に話したと思うが、ここはその鎌倉府事務所だったところだ。ん?待てよ?
慌てて3階に駆け上がる。
幸い3階は手つかずで被害はないようだ。ただ、ホコリがすごい。
ガサゴソ・・・
とある一室に付き、あるものを探す。あ、あった!ただ、人数分あるのかな・・・。
ピピピ・・・
また京夏お姉様からのメッセージだ。
『人数分確保できたらすぐに戻ってくること。攻撃に関しては考えていることがあります』
・・・やっぱり見られてる?まさかね。いくら灯音様が鷹の目を使ったところで建物内部の私の様子までは見えないはず。
「やっぱり京夏様は明日香さんの守護天使ですわね・・・」
「い、いきなり何言ってるの!?エリザベスさん。LGメンバーとして当然のことをしているだけよ」
「そういうことにしておいて差し上げます。心配して損しましたわ」
明日香が飛び出した後───
灯音にレアスキル───鷹の目を使ってもらい、行方を探していた。が、偶然そこでヒュージと戦っている姿を見つけてしまう。
「しかし京夏も素直じゃないわね・・・素直に言ってあげればいいのに」
初花まで・・・。
「と、とにかく。今は明日香が戻ってくるのを待ちましょう。百由さんの調査に感謝だわ」
「よっと・・・」
久しぶりの感覚。と言っても半年ぐらいだろうか。お台場にいるとき、丁度ビームライフルからエアライフルに移行する人が多く、私もその流れに乗ろうとしていたが、そのときに予備隊のメンバーと揉めてしまった。それ以来ライフル関係は触っていない。
それはともかく、この事務所はライフルを使用したスポーツ全般を扱っている。私がさっき3階で探していたのはライフル射撃で使用する競技用のサイレンサー(兼耳栓)だ。
メッセージによれば、ヒュージのバインドは耳の三半規管を刺激するらしく、平衡感覚と距離感を麻痺させているらしい。三半規管を刺激させなければ何ら問題ないだろう、ということだった。
(よし・・・)
サイレンサーを装着し、再びヒュージを撃つために外へ。すると、
GYAAAAAAAAAAAA!!
まだいた。もう一度攻撃を仕掛けてみるか。今度は外さない!
再び腕が私を襲ってくる。
もう一度レアスキル発動!懐に入り、踏み込んでブレードを下から上へ。
シュバッ!
(やった!)
ヒュージは真っ二つ。後はもう一度廃事務所に戻ってサイレンサーを取りに・・・あれ・・・。
視界がボヤける。うそ・・・こんなところ・・・で・・・マギ・・・切れ・・・。
バタッ・・・
「・・・明日香が・・・倒れた・・・?」
明日香!私は我を忘れて明日香の元へ向かう。
「明日香!」
CHARMを放り出し、すぐそばへ。
「明日香!しっかりして!」
気を失ったであろう身体を揺すり、心臓付近に耳を当てる。ビックリした・・・止まっているわけではないようだ。胸を撫で下ろす。以前の私ならここで怒りを爆発させ、暴走していたかもしれない。しかし、今は戦闘中。ましてやLGのリーダーだ。冷静に・・・あくまでも冷静に。
「みどり!明日香を中へ!早く!」
「お、おう・・・!」
「マギを使いすぎたんですわ。まったくムチャなことを・・・」
症状からしてそうだろう。この症状は主にフェイズトランセンデンス保有者に多く起きる。フェイズトランセンデンスは持っているマギを一度に集中して使用、放出することでヒュージに決定的なダメージを与えられる反面、そのマギを使い切ってしまい、戦闘不能となってしまうことだ。唯一その症状がないとされるSクラス保持者は咲良ちゃんと同じクラスでアールヴヘイムの遠藤
まったく、そんなところまで私そっくりじゃなくていいのに・・・。あの頃の自分がなんだか懐かしく感じてしまった。
「それで京夏様。どうなさいますの?」
「作戦を変更します。私はこのまま廃工場に残るわ。みどりは今すぐ明日香が入った事務所へ。わかりやすいところになにかアイテムが置いてあるはずよ。戻ってきたらさっきの通りで行くわ。いいわね?」
「はい!」
・・・みんなにも謝れず、勝手に飛び出して、勝手に行動して、挙げ句の果てにマギ切れ。自分勝手のオンパレードもいいところだ。
「・・・私・・・このままヒュージに呑まれちゃうのかな」
思わず口に出してしまう。
「・・・何勝手なこと言ってるの。明日香」
え・・・。
目を開けると目の前には京夏お姉様。夢を見てるのかな・・・?
「夢・・・だよね・・・?」
「こーら。あなたは夢なんか見ていないわよ。ほら」
ピンッ!
「あいたっ!」
いつかみたいにデコピン。
本物だ。見て安心したのか、目には涙。
「う・・・うわあああああああああああああああああ!」
そのまま抱きつき、そのまま大声で泣いてしまった。
「ごめんなさい・・・私・・・私・・・!」
「一時はどうなるかと思ったわ。後でちゃんとみんなにも謝りなさい。まあ・・・今回は私にも非があるのだけど・・・」
「なんでですか?悪いのは全部私で・・・」
「はいストップ。もしかして覚えてない?私が琴乃とのやりとりに割って入ったこと」
琴乃様とのやりとり・・・あ。
「あのとき・・・琴乃と明日香がケンカしてるものだと勘違いしちゃったのよね・・・で、後から聞いたら違うって・・・」
それでCHARMを使い慣れていないものを使って反省しなさい、ってことだったのか・・・。そして偶然が重なり今回の事態となったわけだ。
「私も謝るわ。ごめんね・・・明日香。自身の技術向上のために習うのであれば私は大歓迎よ。それと───」
一呼吸置いてから。
「なんでそんなところまで昔の私そっくりなのかしら。まったくビックリしたわ。まさかマギの使いすぎで倒れるだなんて・・・」
「ははは・・・」
私は苦笑い。過去に何回かマギ切れはあった。だがそれはラージ級2体相手とかそういうときだ。以前マギ保有量は個人差が出る、という話をしたと思うが、もし鍛えられるものなら鍛えたいところだ。
「私・・・頭の中がぐちゃぐちゃで、話かけられたときも上の空で・・・だから怒鳴られたときも、ついカッとなって・・・」
あのときは『京夏お姉様に怒られた』というのと、『守護天使を破棄されるんじゃ・・・』という想いが交錯していた。冷静になればそんなことはないのだが。
「約束して。私がいるときは決してムチャをしないこと。それと───」
「明日香。あなたは精神面でもう少し大人になりなさい。でなければ私は超えられないわよ」
と、私に近づきおでこにキス。
「えと・・・あの・・・え? ええええええ!」
私はわけがわからないまま。一瞬思考が止まった後、大声で叫んでしまった。おそらく私の顔は真っ赤だろう。
「・・・ここには冷房はありませんの?暑いですわー」
「・・・うん、そうだね」
見るとみんなが戻ってきていた。
「・・・ベス。もしかして、今の・・・見てた?」
「そりゃあもう。見せつけられるかのように、ですわ」
混乱してるのは私のほうなんだけどな・・・とはこの雰囲気では言いづらい。
「明日香ちゃんそういうの好きだったんだ・・・」
「おー暑い暑い・・・」
みどり・・・なんであんただけ棒読みなのよ・・・。
「・・・」
唯一咲良ちゃんだけが無言のまま固まっていた。そして、顔が真っ赤になったかと思うと、
バタッ・・・
その場に倒れ込んでしまった。え・・・ちょっと!?
「咲良ちゃん!」
慌てて駆け寄り、たまたま見つけた長椅子に寝かせる。
「あれ・・・もしかして咲良ちゃんって・・・」
京夏お姉様も頭を掻きながら困惑しているようだった。
「・・・京夏、ちょっとやりすぎ。そういう耐性ない子もいるんだから気をつけなってあれほど」
とは初花様だ。
京夏お姉様はというと、『あー・・・』とバツの悪い顔をしたあと、顔を真っ赤にして、
「だ、誰もいないと思ったのよ!そしたら丁度いいタイミングでみんなが戻ってきたから・・・その・・・」
「あら、京夏ちゃん何の話?」
遅れて琴乃様がやってきた。京夏お姉様は助かった・・・といった感じの表情の後、
「・・・なんでもないわ。それよりも明日香。言うことがあるでしょ?」
そ、そうだった・・・。失神している咲良ちゃん以外謝らなきゃ・・・。
「あの・・・私・・・」
ベス?
私に近づくなり、
パンッ!
平手打ち・・・。
え?え?私にはわけがわからなかった。
「ベスちゃん!?」
「・・・今回はこれで許して差し上げますわ。次はありませんわよ?」
とやや膨れ面で言ったが、その後ボソボソと呟いていた。今回は聞き取れなかったが、あのときと同じだ・・・。
「明日香ちゃん。ムチャはほどほどにね。ホント、ここまでそっくりだなんて」
「ははは・・・」
「それにしても・・・よく気がついたわねこれ」
と、サイレンサーを出した初花様。
「・・・たまたま逃げ込んだビルが、私の知ってる建物だったんです。それはそれで、ちょっと寂しいし、悔しいですけどね。そうだ」
ふと思いつく。
「今度みんなでやってみます?射撃の訓練にもなるし、それに・・・基本は1人の競技だけど、みんなでやると楽しいですから」
「はあ・・・」
大きくため息。勢いで叩いてしまったが、実は後悔している。
任務が終わり、自室に戻ってからのことだ。素直になれていないのは実は私なのかもしれない。そして、いつか真実を伝えなければ。
トントン・・・
来客?誰だろう?
「開いてますわ」
ガチャ・・・
予想通りの人物。茶髪のショートボブ───
「・・・明日香さん」
「ウワサには聞いてたけど、ホントすごい部屋よね・・・羨ましい」
「わたくしの趣味ではありませんわ。お父様が勝手に・・・」
私の部屋は通常の寮の部屋2つ分。入る前『広い部屋なんていらない』と言ったにもかかわらず、あてがわれた。私を溺愛するお父様が勝手にやったことだ。
「ごめん・・・ベス・・・私のわがままのせいでこんな・・・」
「・・・ワガママなのは私のほう」
しまった!つい口が・・・。
「え?」
「いえ、なんでもありませんわ。ほほほ・・・」
ちょっと待って?今ベスが普通・・・だった、よね?あれ?
謝りに来たのになんか・・・混乱してきた・・・。気を取り直して、
「今回は・・・さ。私が自分勝手に思い込んで勝手に行動して・・・結果ああなっちゃったから、悪いのは私。だから、ゴメン」
頭を下げる。
「いいんですのよ、わかっていただければ。わたくしも・・・その・・・」
顔を真っ赤にしてうつむいている。あー・・・。
「もしかして・・・さっき私をぶったのって・・・嫉妬?」
「う、うるさいですわ!とにかく!これでおあいこですわ。それでよろしくて?」
「ところでさ」
「なんですの?」
「さっきのって・・・」
聞こうと話を切り出すも、
「ところで咲良さんのところには行きまして?まだ謝ってらっしゃらないのでしょ?でしたら・・・」
「これから行くところ。じゃ、また明日。ごきげんよう」
「危なかったあ・・・」
ベッドの上に突っ伏す。明日香さんが部屋を出た後。
口調が違うがこれが普段の私の姿だ。別に二重人格、というわけではない。メルクリウス時代、とにかく私は人との対話が苦手だった。よくこれでここまで来れたものだ、と逆に関心できるぐらいに。
百合ヶ丘なら・・・ここならやり直しが出来るだろう、と喜んで来たものの、入学式翌日の、私の目に映った明日香さんたちが羨ましくてあんな態度を・・・。
今にして思えばこんな恥ずかしいことはない。けどこうして、LGに入れて、友達もできて、今私は幸せだと思う。
「ありがとう。明日香さん・・・」
いつか、面と向かってお礼を言える日が来るのだろうか?
ベスの部屋を出た後。
「あら、明日香さんごきげんよう」
見ると一柳隊、ことラーズグリーズの楓さんだ。丁度いいタイミングだし、聞いてみることにする。
「ごきげんよう楓さん。ちょっといいですか?」
寮のラウンジ。夕食も終わり、今は誰も使っていないようだ。
「どうなさいました?わたくしと梨璃さんの素敵な時間を・・・」
「うちのベスについて聞きたいんです」
「・・・ってちょっと!」
「メルクリウスにいた、っていうのは話してくれるんですけど、それ以上のことは何も教えてくれなくて・・・何か知ってることがあれば教えてほしいです」
楓さんは一瞬考えて、
「エリザベスさんとわたくしは違う方舟でしたので直接の面識はありませんが、ウワサでは無愛想な方と伺ってますわ。なんでも必要最低限のことしか喋らないとか」
無愛想?必要最低限?あんなお喋り好きそうなベスが?ちょっと信じがたい。
「ありがとう。それだけ気になってたから。それじゃごきげんよう」
「だってさ・・・ちょっと信じがたいんだけど」
咲良ちゃんにも謝り、部屋に戻ってから。
「けどベスちゃん会ったときからちょっと変わった子だなー、って思ってたけどね」
「まあね」
それはそうだろう、初対面でケンカ売ってくるわ、わけのわからないことを言うわ・・・。
「不器用そうなのはわかるよ。私も・・・そうだったことがあるから」
「え?明日香ちゃんが?」
「・・・なんで円が驚くの」
「はは・・・ゴメン。全然そうは見えないから・・・」
「けど、リリィってさ・・・みんな何か悩みを抱えてるんだよ。そしてヒュージと戦ってる・・・」
部屋の窓を眺めながら呟いた。
「はあっ!」
夜中、1人訓練棟に足を運び黙々とCHARMを振り続ける私。指導官に見つかれば確実に懲罰ものだろうが、寝付けずただ無心にCHARMを振っていた。
「・・・エリザベスさん?」
「ひゃあっ!」
う、初花様!?思わず変な声が出てしまった。
「ここで何をしているの?使用許可は取ってあるのかしら?」
「ご、ごきげんよう初花様。初花様もこんな時間になにを・・・」
「それはお互い様でしょ?・・・大丈夫よ、誰にも言わないわ」
「それは・・・そうですわね・・・ほほほ・・・」
愛想笑い。
「まあ・・・大方寝付けなくてなにかしていないと落ち着かない、といったところかしら」
「うっ・・・」
何も返せなかった。
「・・・図星ね」
「わ、わたくしにだって悩むことぐらいありますわっ!」
「・・・何を怒っているの?まあいいわ。どうしてうちの子たちはこう・・・不器用なのかしらね・・・」
「え・・・?」
初花様・・・。
「・・・わたくし、明日香さんやみなさんにお話できてないことがありますの」
「それで?」
「どうしたら・・・それを話せるようになるか・・・考えてましたの」
「で、寢れなくなった、と」
「ええ・・・」
「・・・ところで初花様はなぜこの時間ここへ?」
「秘密」
「ずるいですわ。ひとりだけ秘密だなんて・・・」
「・・・なんて。私はとある日課の帰りよ」
日課?
「ええ。そっちは何をしてるか言えないわ」
京夏様と幼なじみ、ということ以外謎が多い初花様。ますますよくわからなくなってしまった。
環境が変わり、投稿時間等が限られてくるため、時間は不定期になります。ご了承ください。
(2022/04/19・追記)
投稿時、メモ化した文を追加し忘れたため、追記しました。