私たちリリィはマギを起動元とし、レアスキルと呼ばれる特殊能力やCHARM(Counter Huge ARM)を介して力を発揮する。ヒュージも同様にマギを使う。通常兵器などではヒュージに対抗できないのだ。
謎の生命体ヒュージの侵攻が始まってから半世紀が経つが、いまだ謎が多いため根本的な殲滅にはいたっていない。
さて、入学式の会場に移動してきた。どうやらここは普段修練場として使われているようで、扉や手摺に術式が書かれているのが見える。
さすがは名門と呼ばれるだけあっていろいろなリリィがいる。どうやら私たちが最後のようで、席に座るまでジロジロと見られてしまった。
「なんか、目立っちゃったね」
「あはは・・・」
思わず乾き笑い。
席に座った後周辺を見る。その中でも一際目を引くリリィがいた。
(留学生かな・・・キレイな人)
ブロンド髪にウェーブがかかったさらさらロングヘア。そして緑の目。ここ百合ヶ丘は世界的にも有名なので留学生はいてもおかしくはない。
式は大幅にずれ込み夕方近くになってようやく開催となった。その帰りでのこと。
「明日香ちゃん」
同じ部屋同士になった
「どうしたの?」
「えっと・・・」
またしても円ちゃんは言いよどんでる。
「実は相談があるんだけど・・・」
「ここじゃなんだし、どこか静かなところで・・・」
しばらく学園内を動き回り、偶然見つけたのが───
「へえ・・・こんなところがあるんだ・・・すごーい」
着いたのは講師棟と居室棟(寮)の間にある足湯だ。高台に面していて、相模湾が一望できる。
正直私もビックリしたが、学園の方針だそう。『学院はヒュージ迎撃の最前線であるのと引き換えに、リリィにとっての
「で、相談って?」
温泉なのだろうか。湯あたりが気持ちいい。
「ええっとね・・・私にCHARMの使い方を教えてほしいの」
「え?改まって言うことでもないんじゃ・・・」
最初は誰もがそうだと思う。あさってから講義も始まるし、そう急ぐこともないと思うのだけど。
「あ。使い方って言っても起動できないとかそういうことじゃないから」
つまりは起動はできてもマギを込める方法とか太刀振る舞いがわからない、ということなのだろうか。
「事前に使えるようにって
百合ヶ丘は他学園と違い、自主性が重んじられているそうだ。対ヒュージへの姿勢はどこも変わらない。
「それぐらいのことは教えるよ。お互い頑張ろうね」
「ありがとう!明日香ちゃん」
と私にハグしてきた。
「ちょっと!危ないってば!」
私もこんな何も知らない無知な頃に戻れたら・・・。
「それと───」
「?」
「明日のクラス発表、同じだったらいいね!」
「そうだね」
翌日。
寮のラウンジで食事を済ませ、講義棟に移動してきた。クラス分けが張り出されているはず。そこに向かうまでの間。
数多くいるリリィのなかで昨日のブロンド髪のリリィの子がいた。
昨日は座っていたので分からなかったが私より背が高い。そして、どことは言わないけど結構でかい。けど、その佇んでいる表情は寂しそうに見えた。
(やっぱりこの人キレイ・・)
その時だ。
「・・・」
「・・・」
(あ。やば・・・目が合っちゃった)
偶然にもお互い目が合ってしまった。
気まずくなりすぐに目を逸らす。
「・・・明日香ちゃん、どうしたの?」
それに円ちゃんは気づいたようだ。
「な、なんでもない。知らない子と目があっちゃって・・・」
これが後に百合ヶ丘で共にする仲間との出会いになるとは。
「そういえばさ・・・昨日の一柳さん・・・だっけ?あの子すごいなあ・・・私と同じ素人なのにヒュージ倒しちゃうなんて・・・」
そう。昨日入学式が遅れた原因(言葉は悪いが)は上級生に混じり新入生が参加していたということだった。後から聞いた話ではそのときまだCHARMと契約すらしていなかったそうだ。
「さすがにあれは私もビックリしたわ。下手したら命すら落としかねないのに」
何か思うところあっての行動だとは思うが、無鉄砲というか無謀というか。
「ほら、ウワサをすれば・・・」
見れば居室棟から歩いてくるピンク髪の、四つ葉のクローバーのアクセサリーを付けているリリィが。
「梨璃さーん!」
そしてもう1人梨璃と言って歩いてくるリリィが大きく手を振っている。
「あ、ニ水ちゃん!」
ニ水と呼ばれたリリィはお互いに近づき、
「ご・・・」
「ご・・・」
「「ごきげんよう」」
「私、今百合ヶ丘に来たーって実感してますぅ!」
「私もだよ!」
と喜びながらお互い手を取り合う。
「それに梨璃さんと私、同じクラスになったんですよー!」
「ホントー?よかったあ・・・うれしい」
楽しそうだなあ・・・。ちょっと気になるのでしばらく歩きながら見ることにする。
「そんなに喜んでいただけると、わたくしもうれしいですわ」
え?この人まさか・・・。
一柳さんとニ水さんの間に割って入り、その上から両手を握ってそう答えている。
「楓・
思わず口に出してしまった。
世界トップクラスのCHARMメーカーグランギニョルの社長令嬢・・・。彼女も実力は相当と聞く。やっぱり百合ヶ丘ってすごい・・・。
「誰?それ?」
「あ。そっか・・・ごめん一人で。リリィの中では有名な人だよ」
「へえ・・・そうなんだ・・・」
「さて、私たちは・・・と」
着いたたので掲示板のほうを見る。
椿組、李組、櫻組、杉組・・・と並んでいる。
「どこかな・・・えっと・・・」
あいうえお順のはずで順に追っていく。
「あ、あった!」
先に円ちゃんが見つけたようだ。
「私たち櫻組みたい!」
櫻組・・・あった。確かに見つけた。『尾上明日香』の文字。
・・・私たち?
「うそ・・・ホントに?」
「だって・・・ほら」
と言われて円ちゃんに指されたところを見る。確かにあった。
「ホントだ・・・うそみたい」
こんな偶然ってあるだろうか。校門でぶつかりそうになって、同じ部屋で、同じクラス・・・。
「改まってよろしくね明日香ちゃん」
「こちらこそ」
お互い向き合いにながらニッコリ。
今日は発表のみで特にすることもない。
「んじゃ、早速だけど始めましょうか」
昨日夕方言われたとおりCHARMの使い方を教えようと早速構えるさせようとしたときだ。
「あなた、尾上明日香さん?」
突然後ろから声をかけられた。
振り返ると黒髪ストレートでややたれ目の、見た目優しそうなリリィだ。
「そう・・・ですけど」
「よかった・・・ごきげんよう。はじめまして明日香さん。私は二年生の夏目京夏って言います。御台場にいる知り合いから百合ヶ丘に編入になったって聞いて・・・」
誰だろう?確かに数人教えてもらったりしたリリィはいる。
「京夏様・・ですか・・・私になにか?」
「いきなりだけど尾上さん。私と手合わせしてくれないかしら?」
「え・・・」
手合わせって・・・。
「お断りします」
挨拶されて、いきなり手合わせ、とか・・・非常識にもほどがある。
「なら、
「え・・・槿様?」
「そうよ。あなたなら知っているでしょ?」
知っているもなにも、中等部時代お世話になったリリィの一人だ。彼女からはかなり鍛えられた。
「ご存知なんですか?」
「直接の関わりはないけどね。仲はいいわ」
「あの・・・」
円ちゃんが心配そうに私のほうを見る。
「ごめんね。変なことに巻き込んじゃって。とにかくこの件はお断りします。今日のところはお引取りください」
頭を下げる。
「なら、わたくしとなら手合わせしてもらえるのかしら?」
さらに後ろから声が聞こえてきて、私の前に現れたのは───
「あ・・・あなた・・・さっきの・・・」
クラス分けの掲示板に向かう途中で目が合ったリリィだった。
「ごきげんよう。尾上明日香さんとおっしゃったかしら?」
さきほどのリリィは目が合ったときと違い、機嫌の悪そうな、いかにもこちらの挑発するかのような態度だ。
「初対面で名を名乗らないのは失礼にあたりますから、一応名乗っておきますわ」
ブロンドの長い髪をかきあげつつ続ける。
「はじめまして。わたくし、櫻子・
なんかヤな感じの子だなあ・・・。
「櫻子さん。あなたのほうこそ失礼なんじゃない?さっきも京夏様に言ったけど、私は手合わせする気もないし、CHARMだって持ってきてないわ。だから断るわ」
「なっ!?」
私の態度が気にいらないのか、櫻子さんは突然怒り出した。
「わたくしを怒らせた罪は大きいですわ!名前呼びするだなんてなんて失礼な!」
もしかして彼女、自己中心的?
「あの・・・私の話聞いてました?とにかく・・・」
「さあ明日香さん!寮に戻ってCHARMを取りにお戻りなさい!そしてわたくしと勝負ですわ!」
百合ヶ丘に限らずリリィ同士でCHARMを交えることは禁止されている。ただし訓練はお互いの技術を切磋琢磨するという観点から認められているが、それ以外ではいかなる理由があったとしても許されない行為となっている。
ただし例外もあり、試合という形で寸止めをすること、判定人(審判)を置く、などが条件になるが、これらが私たち一般的に言う手合わせだ。
「明日香ちゃん・・・」
「ごめんね・・・なんか厄介ごとに巻き込んじゃったみたいで・・・」
入学2日目にしてこの事態って一体・・・。私そんなに有名人だったっけ?
櫻子・S・エリザベス───いまのところ自己中心的なように見えるけど実は・・・
夏目京夏───後に明日香にとってかけがえのない存在に?
(2022/04/13・追記)
活動報告通りこちらも大幅改稿を行いました。