そしてその日がやってきた。その移動中の会話。
「・・・琴乃様。別口でメールって来ました?」
小声で耳打ちする。
「明日香ちゃんのところにも来たの?」
「ええ。私もエレンスゲには中等部時代にお世話になった先輩がいますので」
「そうなの?」
「はい。その先輩がまさかヘルヴォルに抜擢されてるとは思いませんでしたけどね」
と、返した時点で疑問が湧いてきた。
(あれ・・・でも
そう・・・今回のヘルヴォルに少し違和感を感じていた。
新宿に到着した。が───
「なに・・・これ・・・」
私が知っている新宿とは違う光景が広がっていた。
街並みは一見普通に見える。けど、ところどころ破壊されていたり、あるはずのところが存在していなかったり・・・。見るに堪えない景色・・・。
「私も・・・昔一度だけ新宿は来たことがあるけど・・・こんな風景じゃなかったわ・・・」
とは京夏お姉様だ。
(ここが・・最前線・・・か)
GYAAAAAAA!!
・・・いきなりスモール級のお出ましか。
「はあああっ!」
ザシュッ!
CHARMを起動させて一気に斬りつける。
「こんなの・・・こんなの新宿じゃ・・・ない・・・っ!」
感極まるって走り出そうとするも、
ガッ・・・
「・・・みどり」
みどりに止められた。
「気持ちはわかるけどさ、行ったところで何も変わらないだろ?」
・・・そうだ。冷静になれ私。これじゃ今までと何も変わらないじゃないか。
「そうだね・・・私も・・・くやしいのは・・・同じ・・・その想いは・・・ヒュージにぶつけよう?」
「・・・はい」
「目的地まで移動するわよ」
目的地は現在位置から徒歩で1時間ほど行ったところだ。
そして背中に見たことのあるリリィを見つける。丁度振り返るタイミングで目が遭う。
「・・・明日香?」
「恋花様、瑤様。ご無沙汰してます!」
近づき、深々と頭を下げる。
「明日香ーひっさしぶりー!」
軽いノリで挨拶するのは飯島恋花様だ。かつて日の出町で一緒になったことがある。そして私の服装を見るなり、
「へえ・・・お台場から百合ヶ丘に行ったんだー。お台場で誰かと揉めた?」
「あはは・・・あれからいろいろと・・・揉めたというか・・・」
「そうだ、今度休みのときにでも実家のお店連れてってよ?楽しみだなー」
「恋花様、再会談義もいいですが、我々の本来の目的を忘れては・・・」
「相変わらず
「えっと百合ヶ丘からの外征の皆さんですね。ありがとうございます」
藍色のショートヘア───一葉と呼ばれたリリィは私たちに一礼。
「ほら一葉ー、そう硬くっちゃダメだって。あっちの人たち固まってるよ?」
恋花様がフランクすぎるのでは・・・というツッコミは置いといて、一葉と呼ばれたリリィは困った顔をしていた。
「そうですか?」
ヘルヴォル───エレンスゲ女学園のLGのうちのひとつだ。エレンスゲ女学園は序列制度というもので格付けされており、順位が上であるほど優秀なリリィとされている。軍隊の序列に似ているところがあるのかもしれない。
「大丈夫ですよ。私たちは普段こういったやり取りをしないので気にしないでください」
とは京夏お姉様だ。
「ヘルヴォル・・・と聞いてどんな方々なのかと思ってましたが、琴乃から聞いてたとおりだったので安心しました。あ、私はLGエリューズニルの隊長、夏目京夏です。よろしく」
お姉様たちの会話をよそにすでに琴乃様ともうひとりのリリィ・・・おそらくそうであろう人と趣味の話で盛り上がっていた。
「わたくしもビックリしましたわ。ヘルヴォルのイメージというとこう・・・おっかないといいますか・・・作戦優先の考えをお持ちとウワサで・・・」
「ちょっと・・・」
ベスを小突く。
「大丈夫ですよ。私はエレンスゲの今のやり方には納得していません。なので私たちがヘルヴォルが変えて行こうと思っています。申し遅れました。ヘルヴォルの隊長相澤一葉です」
ということは序列1位・・・。
「ところで相澤さんってもしかして・・・」
「一葉でいいですよ。1年生です」
え?1年生!?
「どこぞの誰かさんとはえらい違いね・・・」
とチラッとみどりのほうを見る。
「どういう意味だよ!」
「さあ?少しは一葉さんを見習って頑張ったら?そうすれば京夏お姉様の評価も変わるかもよ?」
「お姉様?」
ここでようやくしばらく黙っていた瑤様が口を開いた。
「へえ・・・お姉様ねえ・・・明日香やるじゃん!百合ヶ丘に来て守護天使まで・・・」
恋花様に肘で小突かれる。
「からかわないでくださいよー!私だってこうなるなんて思ってなかったんですから・・・」
顔を赤くして反論する。
「それじゃ軽く自己紹介してもらおうかしら。明日香は知ってる人多いみたいだから円からね」
「えっと・・・1年の敷井円です。よろしくおねがいします」
「ごきげんよう。1年の櫻子・S・エリザベスですわ。わたくしのことはエリザベスと呼んでいただければ」
「同じく1年の周防みどり・・・よろしく」
「ちかるー、おなかすいたー」
あれ、この子どこかで・・・。頭の中の記憶を辿るがどうにも思い出せない。
「
「えー」
藍と呼ばれたリリィは不満そうな顔をしている。
「この子がウワサの藍ちゃんね。後でおいしいものたくさん作ってあげるからね」
と普段と変わらずニコニコしている琴乃様。
「そういえば千香瑠様とはお料理友達なんでしたっけ?」
芹沢千香瑠───お台場迎撃戦では菱田
「そうよ。あのときはアドバイスありがとう。明日香ちゃんのヒントがなかったらあのままだったかも・・・」
「いえいえ。それよりも・・・藍ちゃん・・でしたっけ?私たちより多分年下ですよね?」
「そうね。千香瑠ちゃんから詳しい話は聞いてないけど、いろいろ深い事情がありそうよ」
「ごきげんよう。櫻子・S・エリザベスですわ」
「敷井、
「
「・・・周防みどり」
なぜかぶっきらぼうに答えるみどり。よく分からないことするなぁ・・・。
「あ。上級生のみなさんは千香瑠様からお話は伺っていますので」
ふと思ったが、瑤様と灯音様・・・雰囲気が似てる気がする。本人から言わせれば『・・・違う』とか言われそうだが。
「それで・・・今回私たちは何をすればいいのかしら?」
ようやく初花様が口を開く。
「今は小康状態ですが、ギガント級1体と交戦中です。我々だけでは手に負えなくて今回応援をお願いしました」
ギガント級・・・。今までラージ級まではなんとか頑張ってきた。正直想像がつかない。
エリアディフェンスの一部が機能しなくなっている影響か・・・。
「それで・・・私たちはどう展開すれば・・・」
「ギガント級、かあ・・・」
初めて対峙する。正直言うと不安要素のほうが多い。
「大丈夫よ明日香ちゃん。いつもどおりやれば・・・って言ってもムリよね。私も不安・・・」
珍しく琴乃様も愚痴をこぼしている。
「これが最後に戦いにならなきゃいいけど・・・」
「ちょっと円さん!縁起でもないことおっしゃらないでくださる?こちらまで不安になってしまいますわ・・・」
作戦はこうだ。まず突然発生するケイブから発生する不特定多数のヒュージの殲滅とケイブの破壊、動きがあればギガント級の殲滅、が主な内容になるのだが、
「・・・出た!ただ・・・離れてるね・・・」
灯音様の声。
ついに私たちにとって初めての最大の戦いが始まる。
「場所は?」
「ここから南東・・・500mの地点。数は・・・ちょっとまって!?え・・・」
灯音様がビックリしている。
「スモール級多数・・・2人で・・・大丈夫なのかな・・・ミドル級が30体・・・ラージ級が2体・・・」
という声を聞いた途端、
「ねえ?もう行っちゃっていい?」
藍ちゃんの声。見るからに待ちきれないといった感じだ。
「私のほうはいつでも大丈・・・あ、藍ちゃんダメ!」
さっさと行ってしまった。
「ヒュージ・・・ヒュージ・・・」
まるで子供だ。あ、子供なのか・・・。精神年齢は低いようだ。
「・・・いつもあんな感じなんですか?」
「ええ、まあ・・・」
「藍は・・・G.E.H.E.N.A.の研究対象なんです」
「強化・・・リリィ・・・」
つい口にしてしまった。やはりか・・・強化リリィ・・・。
みんなにはナイショにしているが、あの大怪我を負った際にブーステッド施術を・・・という話があったが、私は断っている。むしろ断って正解だったのかもしれない。断ってなくても同じ結果になっていたかもだが。
ブーステッド施術とは、リリィの持っている能力を人工的に強化しようと試みられた行為だ。当然ながら身体にかなりの負担がかかるため、たとえ成功したとしてもなんらかの後遺症が残ったり、最悪の場合そのまま帰らぬリリィとなることもある。
「強化リリィって・・・?」
「リリィ本来が持っている能力を人工的に強化しようとする試みよ。百合ヶ丘でも何人かかくまっていると聞いたわ」
「そんな・・・」
「G.E.H.E.N.A.は常識じゃありえないことを平気でやってのけるからね・・・だから私はあのとき断ったわ。あ、深堀りは終わった後に・・・」
「今は・・・ヘルヴォルみんなと仲良くしてるけど、それまではひとりだった。だからある程度は勘弁してあげてほしい・・・」
とは瑤様だ。
「ホント、うちの妹はいろいろありすぎ。とにかく出ましょう」
藍ちゃんと琴乃様にスモール級を任せきりにしてしまうのはなんか申し訳ない気がするのだが・・・当の藍ちゃんはすごく楽しそうに狂酔の月を使い次々とスモール級を倒していく。
「はああっ!」
京夏お姉様と2人がかりでミドル級の駆逐。そういえば2人で・・・というのは初めてかもしれない。
『数が多いわ。とにかく手短に。マギは最小限で。ギガント級のために温存すること』
琴乃様から薙刀を教わるようになってから少し太刀回りが変わった気がする。というか楽に感じるようになった。
「すごい・・・やっぱりあの2人・・・守護天使と妹だ・・・」
絶妙なタイミングでの時間差攻撃。
「関心するのは後よ!今は目の前のヒュージに集中して!」
「あの2人やるじゃん!あたしもっと」
恋花様あまりムチャは・・・とは言えなかった。
一葉さんが挟まれそうになっている。どうする?無理やりでもここから撃つか?
パンッ!
その心配はいらなかった。背後から円がカヴァーに回った。
GYAAAAAA・・・
「助かりました敷井さん!」
「明日香ちゃんに鍛えられましたから。後私のことは円でいいですよ」
と円。
「じゃ・・・助かりました円さん」
一方のみどりは───
「やーい、やーい!こっちだよー!」
GYAAAAAAA!!
ミドル級を煽っていた。
まったく・・・何やってんだか。遊びじゃないっての。
「おりゃ!」
パンッ!
だが、確実に仕留めている。
まあ本人が楽しそうにやってるからいっか。この状況で文句を言っても仕方ない。
「やああっ!」
咲良ちゃんも確実に仕留めに行っている。
GYAAAAAAAA!!
なんて見ているうちに固まってやってきた。どうする?
京夏お姉様は別な集団と交戦中だ。
正直苦手なのだが・・・やらなきゃ片付かない。マギを・・・集中!
バババババババッ!
所謂マシンガンの要領で連続流し撃ちだ。
GYAAAAAAAA!!
よし!
心の中でガッツポーズ。
単発撃ちは得意なのだが、ビームライフルをやっていた影響で流し撃ちはほとんどやったことがない。
ヒュージの残りは?
「あと・・・半分!」
灯音様が教えてくれた。
GYAAAAAAAA!!
ミドル級がこっちに向かってくる。まだ京夏お姉様は交戦中だ。仕方ない・・・デュエルで・・・!
「はあああああああっ!」
両足にマギを入れ、右足を合図にジャンプ!
ミドル級はよくいるルンベルなので大したことはない。
ガンッ!
が、何こいつ!力が半端なく強い!?
「うっ・・・!」
タングズニルが押される!踏ん張れるか?
仕方ない・・・マギは温存しておきたかったが・・・。さっさと決着を付ける!
「こんのおおおおお!」
レアスキル発動!本体の目(?)に向けて右から左へブレードを刺す!
ザッ・・・
GYAAAAAAAA・・・
「はあっ・・・はあっ・・・」
息が上がる。本来こんなことで上がっててはダメなのだが。
「明日香ちゃん!うしろ!」
円?声をかけられ、後ろを向く。
GYAAAAAAAA!!
ラージ級の触手!?どうする?マギを温存すべきか?
ヘルヴォルの人たちはもう1体のラージ級とすでに交戦しているらしい。余力があれば加勢したいところだ。
「はっ!」
パンッ!
触手の上を這うように移動、ラージ級の本体の目(?)へ牽制弾。
「みんな大丈夫!?」
京夏お姉様だ。
「これからノインヴェルト戦術を始めるけど、マギの量は少し抑えめでね!」
え?それって・・・。
「まさか2回やる気ですか!?ムチャですよ!」
いくらなんでも私たちが持たない。お姉様は何を考えてるの!?
「円!」
シュバッ!
円にマギスフィアが渡る。
「は、はいっ!」
グンッ!
「うっ・・・」
受け取るも、
「えっと・・・えっと・・・」
有効範囲内に誰もいなくて困っている。
たまたま近くにいた藍ちゃんを見つけ、
「ごめんっ!藍ちゃんお願い!」
シュバッ!
ノインヴェルト戦術の基本はLG間で完結させるのだが、今回の場合はたまたま近くにいた藍ちゃんに渡すことに。
グンッ!
「もらったー!つぎだれになげればいいのー?」
「一番近い人でいいわ!1度もらった人には投げちゃダメだから!」
京夏お姉様教え方が優しいなあ・・・。
「じゃ、ことのにパース!」
シュバッ!
マギスフィアは扱い慣れてるのか、ルートも悪くない。的確な位置で渡る。
グンッ!
「ありがとう藍ちゃん!」
ニコニコ笑顔で返す琴乃様。
瞬間真剣な顔へ。
「みんな随分離れちゃってるわね・・・京夏ちゃんどうする?」
ベスはミドル級とデュエル中。みどりは・・・どこ行った!?見える限りのところにいない。灯音様も見当たらない。初花様、咲良ちゃんも見えず・・・。
「くっ!」
キンッ!
なんてやってる間にラージ級から攻撃!
「このっ!」
カンッ!カンッ!
今は避けるだけで精一杯だ。
琴乃様が何かに気づいたようだ。
「千香瑠ちゃん!」
グンッ!
「うっ・・・」
ヘルヴォルのみなさん全員ノインヴェルト、もしくはフンヴェルトの訓練をされている?受け取り方も渡すルートも的確だ。
さて、千香瑠様は誰に渡すか?
ザシュッ!
よし!ラージ級の腕1つ落とせた!
パンパンッ!
一時的に離れるために牽制でマギ弾を撃つ。
「明日香さん!」
シュバッ!
しかないよね。咲良ちゃんいた!ルートも問題なさそうだ。
グンッ!
「咲良ちゃん!」
シュバッ!
「えっ!?待っ・・・ひゃああ!」
自分のリスク回避のためマギを込めずにそのままパス回し。常套手段がどう出るか。
「咲良ちゃん!この状態でフィニッシュショット撃って!これ以上はだれもマギは回せないわ!」
「ええっ!?私フィニッシュショットなんてやったことないですよ!?」
「いいから早く!直接投げて!」
「はい!」
ナグルファールの場合はモードが切り替わらないので直接投げることになる。
「えええええええい!」
ドドーン!!
私たちの撃ったほうは一応成功したようだ。
一方の一葉さんは・・・。
「一か八かですが・・・ノインヴェルト戦術いきます!」
悪い予感が的中してしまった。
ズガンッ!
「うわあっ!?」
え?私のところ!?
グンッ!
「ちょ・・・待ってください!」
しかも重い・・・!
一葉さんのマギは真っ青だ。見ると丁度ベスがミドル級を撃って離れるところだった。ここはノインヴェルトを撃ってない人に渡して逃げる方が得策だろう。
「ベス!みどりがあんたのことを乳おばけって言ってたわよ!」
シュバッ!
「はあっ!?」
ちなみにだが、私のマギの色は灰色と桃色が混じったような見た目分かりづらい色だ。
「いいから受け取る!」
「・・・仕方ありませんわ」
グンッ!
「ううっ・・・で、どなたに渡せば・・・」
「今回特殊だからルートがよくて受け取れれば誰でもいいわよ!」
この際贅沢は言ってられない、か。
私なら・・・とたまたま目を合わせたのが恋花様だった。
「恋花様!いきますわ!」
・・・同じことを思ったようだ。
シュバッ!
ルートも申し分ない。
グンッ!
「うわっ!おもっ!?」
すると、
「おーい!恋花様ーこっちこっち」
丁度みどりが来た。ナイス!
「んじゃあの元気っ子に投げればいい?」
みどりのことを元気っ子とか、恋花様らしい言い方だ。
「お願いします!」
「あいよー!いっけえ!」
シュバッ!
さて、みどりだ。
グンッ!
「よっ、と・・・」
相変わらず機動力はいい。
「要はまだ回してないやつに回せばいいんだよな?じゃ瑤様任せた!」
シュバッ!
みどり・・・かなり際どいルートから投げたな・・・。
GYAAAAAAA!!
残っている腕が襲う!が、
ガンッ!
「こんにゃろー!変な動きしやがって!」
何を思ったのか、
カンッ!
ラージ級の腕に向かって蹴りをくれる。
直後にレアスキル発動!
ザシュッ・・・
瞬間移動して根本から腕を切り落とした!
ナイスアシスト!
グンッ!
「受け取ったよ」
残りは交戦中のラージ級1体のみ。今のところギガント級の動きはない。
「そのままうちの灯音に投げて!」
京夏お姉様の声。
「わかった!」
頷くなりそのまま投げようとする。
「え?」
初花様!?
京夏お姉様は気づいたのか、ニヤニヤしている。
レアスキル?なんの意図が?
GYAAAAAAAA!!
ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・
飛翔体が初花様のシャドウめがけて飛んでくる。
そうか!
「瑤様!無視して灯音様に投げてください!」
私の掛け声に一瞬戸惑ったみたいだが、
「わ、わかった!」
シュバッ!
マギスフィアはそのまま灯音様へ。
グンッ!
「・・・フィニッシュショットが、初花なんて・・・予備隊のとき以来だね!」
初代エリューズニルの他に仮で予備隊でも組んでたのかな?そんな話は一切聞いてないのだが。
シュバッ!
「かしらね。フィニッシュショット!」
初花様が宣言し、照準を睨んでラージ級の腹へめがけて撃つ!
ズガンッ!
初花様のフィニッシュショットなんて滅多に見る機会がないので新鮮に感じる。
「みんな離れて!」
お姉様の掛け声と共に足にマギを入れ一斉に離れる。
私はビルの影へ。
ドドーン!!
衝撃がすごい。爆風がビル越しでもかなりある。
「うっ・・・」
思わず手で覆いそうになる。
「一段落した・・・のかな・・・」
「いえ、まだよ!」
GYAAAAAAAAAAAAA!!
今まで動きのなかったギガント級が動いたのだ。
大量のマギ弾。
「一旦退避!」
避けるので精一杯だ。
「どうしよう・・・マギが・・・」
さっきのラージ級駆逐で私のマギはほぼないに等しい。この状態での攻撃は非常に危険だ。
だが、ギガント級の反応があったのはそれだけで以降小康状態に戻る。
「この繰り返しなんです。なので手の打ちようが・・・」
半ば諦めたように一葉さんが言う。
「あります。もしかしたらこの方法なら・・・ちょっと強引ですけど」
京夏お姉様のところへ。
「京夏お姉様。ちょっと・・・」
とある作戦を耳打ちする。
「危険よ!私は認めないわ」
「けど・・・待ってたら同じことの繰り返しになります。それこそ私たちのほうがマギ切れでやられてしまう・・・ヒュージが・・・そんな知能を持ってるとは思いたくないですけど、けどそれしか考えられない・・・」
「というと?」
「一葉さん。ヒュージの出現パターンって、昼間ケイブから大量発生して夕方にギガント級が動き出すんですよね?」
「ええ、そうですね・・・」
「だったら、そのパターンを逆転させちゃえば。ただ、その分リスクは高まります」
ギガント級一点集中は可能なはず。ただ、その間ネストが出現したらアウトだ。
「それともう1つ。以前一柳隊・・・いえ、ラーズグリーズのみなさんが面白いことをやっていたので、それを応用出来るんじゃないかなって・・・恋花様もいますし」
「・・・あたし?」
不意に名前を出されビックリする恋花様。
「レアスキルの・・・多重・・・合成・・・」
「そうか・・・その手が」
私の謹慎が解けた後に円から聞いたのだが、一柳さんが身につけている四つ葉のクローバーの髪飾りを探すのに、二川さんの鷹の目を神琳さんのテスタメントで範囲を広げ、ミリアムさんのフェイズトランセンデンスでマギを供給してレアスキルの多重合成で探した、というのを聞いた。
最終的に百合ヶ丘の生徒全員と接触して探したようなのだが。
問題は誰のレアスキルをそうするか、なのだが・・・。
狂酔の月(1人はS級相当)が2人、ゼノンパラドキサが(私含め)2人、レジスタが2人、縮地が1人、ブレイブが1人、テスタメントが1人、ヘリオスフィアが1人・・・。
「けど、ノインヴェルト戦術よりも危険度は高いよね?」
と瑤様。
「だから併用するんです。カヴァー出来るだけの人数もいる。ヘルヴォルのみなさんでレアスキルを。私たちでノインヴェルト。どちらも失敗したらアウト・・・リスクはかなり高い。どうします?」
「私は・・・賛成です。確かにリスクは高い。けど有効な方法だと思います」
一葉さんは賛成してくれた。
「ただ・・・問題は・・・昼間のケイブを・・・どうするか・・・だね・・・」
出ないことを祈るしかない、か。
翌日。
灯音様を監視役にケイブが発生するか否か待機することにした。
「・・・動き、ないね」
ないに越したことはないが、今まで動きがあっただけに不自然に思えてしまう。
「ねえーつまんないー。らんとあそぼうー?」
待機時間が退屈なんだろう。
「藍?遊びに来てるんじゃないんだよ?」
一葉さんが藍ちゃんを諭す。
「・・・待って。動きがあった・・・けど・・・」
灯音様が困惑している。
「どうしました?」
「小型のケイブと・・・スモール級1体・・・だけ?」
昨日までの動きからすると確かにおかしいといえばおかしい。
「明らかにおかしいですね・・・」
「一葉。どうする?」
とは恋花様。
「みどり。お願いね」
「えー」
「えーじゃない。さっさと行く!いつものやつからしたら楽でしょ?」
「いつものって・・・」
「様子見・・・というか、偵察はいつもみどりにやってもらってるんです」
数分後、みどりが戻ってきた。
「ケイブとスモール級やってきたぞ・・・これでいいだろ?」
ややふてくされ気味に言う。
「すいません・・・みどり、こういう子なので・・・」
みどりの頭を持って下げさせようとする。
「灯音様何か動きありました?」
「いや・・・特には・・・」
みどりはともかくとして、何か嫌な予感がする。
就活と重なってしまったため更新が遅れてしまいました。
1章は残りわずかです。最後までよろしくお願いします。