アサルトリリィ~もうひとつの物語   作:武士道の犬

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ギガント級

 さて夕方だ。

 昨日は全てのヒュージを駆逐後にギガント級が動き出した・・・のだが、今日は・・・。

 

 ゴゴゴゴゴ・・・・

 

 地響きのような音がした後、

 

 ガタガタガタ・・・

 

 地面が揺れている。

 

「何?地震?」

 

「違いますわ!ギガント級が・・・!」

 

 それまで一切動きを見せなかったギガント級が動き出したのだ。進行速度はかなり遅いのだが、威圧感がとてつもない。

 

(これが・・ギガント級・・・)

 

 触手の数がとてつもない。見て確認出来るだけで100以上はあるだろうか。さらにリフレクターを展開するためであろう飛行体も多数。

 

「う・・・ううっ・・・うううっ・・・」

 

 琴乃様の様子がおかしい。リフレクターじゃない。負のマギか・・・。

 

「瑤さん。琴乃を!」

 

「わかった」

 

 琴乃様を(よう)様が建物の中へ。

 レアスキルが発動する前になんとか止められたはず。

 

「琴乃・・・よかった、止められて・・・。けど、私たちも時間がないわね・・・いつ負のマギに浸食されるか・・・」

 

 パンッ!パンッ!パンッ!

 

 恋花様たちが飛行体を落とそうも、

 

「うわあ・・・こいつら厄介だなー・・・キリがない・・・撃っても撃っても出てくる・・・」

 

 落とした分だけ湧いて出てくる。触手はいまのところ私たちに攻撃してくる気配はない。

 

「発生源が特定できれば・・・」

 

 発生源───か。CHARMを構えようとしたときだ。京夏お姉様が私の手を掴む。

 

「明日香、やめなさい。あなたの考えてることは丸わかりよ」

 

 う・・・。

 

「でも・・・今までそれで全部成功してるじゃないですか。今回だって・・・」

 

「ダメよ。今回は私たちが主導ではないわ。勝手な行動は許しません。わかった?」

 

 作戦考えたの私なんだけど・・・と言いたかったが、黙っておく。

 

「一葉さん・・・どうします?」

 

 黙って見てろ、と言われてじっとしていられるわけがない。

 こっそり攻撃を仕掛けるタイミングを見計らうつもりでいた。

 

「京夏!うしろ!」

 

 初花様の声。

 

「えっ?」

 

 レアスキル発動!寸前のところで間に割って入る。ギガント級がマギスフィアを投げてきた!?

 

「くっ・・・!」

 

 カンッ!

 

 なんとか弾き返す。が、

 

「うそ・・・信じられない・・・」

 

 飛行体が巨大化したかと思うと、まるでお手玉で遊ぶかのように飛行体同士で(負の)マギスフィアをパス回ししてるではないか。ただ、見た目上は威力はなさそうに見える。

 

「どうなってるのこれ・・・」

 

 油断してるといつあのマギスフィアが来るかわからない。

 

 ヒュン!

 

「来た!」

 

「みんな避けて!」

 

 が、唯一藍ちゃんだけがそのマギスフィアに向かっていく。

 

「あ・・・こら藍!」

 

 一葉さんの静止も聞かずそのままギガント級へ。

 

「あはっ!」

 

 モンドラゴン((らん)ちゃんのCHARM)で受け止めるも、

 

「わーい!」

 

 負のマギの影響を受けて・・・ない? そのままギガント級に投げ返す。

 

 GYAAAAAAAAAAAAAAA!!

 

 ギガント級が反応した。

 

「藍・・・あの子・・・ヒュージを呼び寄せる体質なんです」

 

 呼び寄せる?

 

「ええ・・・けど、一度も傷ついたことがない・・・どういうことかわかりますか?」

 

 概ね察しはついている。

 

「ヒュージ細胞・・・ですよね」

 

「ヒュージ細胞!?」

 

「ヒュージ細胞を埋め込んで強化しようって試みよ。リリィもヒュージも同じマギを使うからね」

 

「藍の身体は・・・ヒュージ細胞が埋め込まれていて、同族とみなしてヒュージが近寄ってくるんだそうです・・・」

 

 やはりG.E.H.E.N.A.は人道無視の卑劣な団体だ。

 

「実は私もヒュージと戦って負傷してブーステッド施術を勧められました。怪我をしてそれを補うための施術だから理にはかなってる。けど、私は断わりました。お台場は昔からG.E.H.A.N.A.の実験場にされているんじゃないか、ってウワサもあって信用ならなかったんです。いくらヒュージのためとはいえ、私の身体をいじられたくなかった。リリィ、いえ人として当然ですよね・・・」

 

「明日香ちゃん・・・」

 

 有名な強化リリィではルドビコ女学院の岸本ルチア来夢さんだが、彼女の場合は事情が少々違う。

 一方の藍ちゃん───例のマギスフィアのやり取りを続けている。が、藍ちゃんに攻撃しようとはしていない。同族と見ている?

 

「で、どうされますの一葉さん?まさかこのまま待機ということはありませんわよね?」

 

「恋花様には犠牲になってもらいましょう」

 

 犠牲って・・・言い方・・・。

 

「ちょっと一葉!犠牲って・・・」

 

「みどり。藍ちゃんと場所交代ね」

 

「あたし!?」

 

「はい文句言わない。いつものやつお願いね」

 

「なんであたしばっかり・・・」

 

 しょうがない・・・といった感じで藍ちゃんに近づいていく。

 

「おいー藍ー!あたしと交代な」

 

「えー?なんでー?」

 

「いいから。一葉が呼んでるぞ?」

 

「藍ちゃーん、終わったらたいやきいっぱい作ってあげるから」

 

 モノで釣ろうとする千香瑠様。

 

「そういえば・・・琴乃様を選ばなかった理由って・・・」

 

「ええ・・・琴乃は結夢さんと同じで精神的に不安定になるのよ。発動したときはいいけど、その後のケアが・・・ね」

 

 初花様が説明してくれた。リリィの精神安定にはカリスマやブレイブと相性がいいとされている。

 

「オマケにうちのLG(レギオン)にはカリスマやブレイブ持ちがいない。だから滅多なことでは使わせないようにしてるの」

 

「そういうことだったんですか・・・」

 

「日頃からマギ交感はしてますけどね。他のLGからどう映ってるか知らないですけど・・・」

 

「かずはー、らんのことよんだ?」

 

「らん。思いっきりやっちゃえー!あたしが許可する」

 

「ちょっと恋花様!勝手なことを・・・」

 

「やったあ!」

 

 藍ちゃんが大喜び。そのまま飛び出そうとするのを京夏お姉様が止めた。

 

「ごめんね藍ちゃん。その前に・・・」

 

「・・・?」

 

 それはそうだろう。恋花様以外のヘルヴォルメンバー全員手を繋いでいるのだから。

 

「ベス!お願い!」

 

「行きますわ!テスタメント!」

 

 パアッ・・・

 

 レアスキル発動!

 

「ねえまだー?」

 

 藍ちゃんも待ち切れず酔狂の月を発動。今にも飛び出そうとする勢いだ。

 

「今です!恋花様!」

 

「オッケー!」

 

 ガンッ!

 

 恋花様のCHARMが振り下ろされて、マギが入っていく。

 

「みんないっけえ!」

 

「みなさん。時間は限られます。動きだけは気をつけて!」

 

「了解です!」

 

「わかった!」

 

「わかったわ」

 

 フラフラの恋花様。

 

「おっと・・・」

 

 慌てて私が支える。

 

「サンキュー明日香」

 

「それにしてもうちのメンバー全員狂酔の月(ルナティックトランサー)って見ててちょっと異様・・・」

 

「確かに・・・」

 

 キンッ!キンッ!キンッ!シュバッ!

 

 普段の戦闘ではお目にかかれないような光景が広がっている。

 狂酔の月使い(にわか)が3人も同時に暴れているわけだ。

 個人的にだが、狂酔の月は体験してみたさはある。もちろん訓練もなにもない時に、だけど。

 私の読みが間違っていなければ、理論上個々のマギは消費されないはずなので、狂酔の月が切れた時点でもノインヴェルトでマギを入れられるはず。

 さて問題は琴乃様だが・・・。建物から出てきた。

 

「みんな・・・ごめんね・・・」

 

「負のマギのほうは大丈夫ですか?」

 

「ええ・・・なんとか・・・で、この状況は・・・どういうことかしら?」

 

「例の作戦よ。琴乃じゃなくて藍ちゃんね」

 

 ギガント級だが、触手の半分近くが切り落とされ、飛行体のほうは消え去ったように見受けられる。

 

 ヘルヴォルの、恋花様以外全員が暴れているのを見て不自然に思うのは当然だ。

 

「みんなやるわよ!準備して!」

 

「はい!」

 

 足にマギを入れジャンプ。一斉に散らばっていく。

 

「行くわよ!」

 

 バンッ!

 

 まず最初に渡ったのは、

 

「くっ・・・!」

 

 咲良ちゃんだ。

 

「初花様!」

 

 シュバッ!

 

 外周ぐるっと回していく感じだろうか?けどそれだと陽動にならない。

 

 グンッ!

 

「エリザベスさん!」

 

 シュバッ!

 

 相変わらずルートが的確だ。

 

 グンッ!

 

「お、重いですわっ・・・」

 

 さて、ベスはどこに回す?

 

「琴乃様!」

 

 シュバッ!

 

 最初の頃に比べるとかなりパス回しは上手くなったと思う。しかも速い。

 

 グンッ!

 

「上手くなったわね・・・灯音ちゃん!」

 

 シュバッ!

 

「受け取ったよ・・・円!」

 

 ヒュージは今のところヘルヴォルの皆さんに意識が向いている。

 

 グンッ!

 

「ううっ・・・!」

 

 円がマギスフィアをギリギリ受け取る。

 

「あ、危なかった・・・」

 

「待って!」

 

 初花様が声を上げる。

 

「レアスキルが切れた・・・」

 

 予想より早く終わった!?

 

「みなさん早くそこから離れて!」

 

 ヘルヴォルの皆さんに向かい京夏お姉様が叫ぶ。その後どう判断するか。

 

「円!一葉さんに投げて!」

 

 え?確かにいち早くヒュージからは離れたが・・・どう考えてるのだろう?

 

「はいっ!」

 

 シュバッ!

 

 が、ヒュージの触手がマギスフィアにかかりそうになる。

 

 グンッ!

 

「よっと・・・」

 

 やはりこういうとき頼りになるのがみどりだ。

 

「よかった・・・」

 

 一葉さんもひと安心しているようだ。

 

「京夏様一旦下げるぞ?えっと・・・瑤様!」

 

 シュバッ!

 

 ヒュージの触手を上手く避けるように瑤様へ。

 

 グンッ!

 

「お・・・重い・・・」

 

 普段ならフィニッシュショットを撃ってもいいぐらいにまでマギスフィアは溜まっている。

 

「千香瑠!」

 

 シュバッ!

 

 そして千香瑠様へ。

 

 グンッ!

 

「確かに・・・重いですね・・・あっ・・・」

 

 ミシミシ・・・

 

 ブレードにヒビが入る音。

 

「CHARMが限界・・・」

 

「千香瑠様!」

 

 そこへ───

 

「一葉ちゃん!?」

 

 一葉さんが来て共押さえでマギスフィアを支えている!?

 

「う・・・重い・・・」

 

 そこへ違う触手が襲いそうになる。

 

 シュバッ!

 

「誰でもいいので受け取ってください!」

 

 グンッ!

 

 みどり!?再びマギスフィアを受け取った!?

 

「うっ・・・お・・・も・・・いっ・・・!うぬぬぬぬぬ・・・これ・・・どうしたら・・・」

 

 ミシミシとグングニルにヒビの入る音。

 

「これ以上は無理よ!明日香!お願い!」

 

 京夏お姉様の声。

 

「こんのおおおおおおおおお!」

 

 シュバッ!

 

 叫びとともにCHARMのコア部分が赤く光る。そして、

 

 ガッシャーン!

 

 派手にブレードが砕ける音とともに白い煙が。それは持ち手にまで行っていた。

 

「オーバーヒート・・・」

 

 一葉さんがぽつりとつぶやく。

 

「明日香!受け取れええええええええ!」

 

 これ以上回すのは危険だ。

 ルートも問題ない。

 

 グンッ!

 

「ううっ・・・」

 

 今まで感じたことがないマギスフィアの重み・・・。手首が痛い。ブレードは?

 ・・・とりあえず大丈夫らしい。

 

 ガチャン!

 

 目標は・・・ギガント級の腹下!

 

「これで!最後よ!」

 

 ズガンッ!

 

 撃ったときの衝撃がすさまじい。

 

「きゃああああああああああっ!」

 

 瞬間、身体が吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。

 

「みんなここから離れてっ!早く!」

 

 CHARMで円を描きその中へ。とにかくできるだけ遠くへ逃げる。そして、

 

 ドドーン!!

 

「うっ・・・!」

 

 衝撃と爆風がとてつもない・・・。もしこれでもまだ動いているようならもう打つ手はない。

 爆風はしばらく続いた。

 

 

 

 

 

 

「・・・大丈夫。残ってる・・・ヒュージもいない・・・はず」

 

 灯音様が鷹の目を使って周辺を確かめる。よかった。どうやら大成功したようだ。

 それにしても───

 

「な、なんだよ・・・」

 

「普段やる気のないみどりがねえ・・・」

 

 まさかCHARMを破壊した上にオーバーヒートさせるとか・・・。

 

「あ、あのときは必死だったんだよ!」

 

「CHARMのオーバーヒートなんて初めて見た・・・」

 

 とは瑤様だ。

 

「でも今回のは不可抗力ね。みどりに非はないわ」

 

「あれだけのマギを無理やり受け止めてさらに足して渡せば当然ですね」

 

「オーバーヒートはニ振り目ですけどね」

 

 と円のほうをチラ見する。

 

「明日香ちゃんそれ言わないでよー!」

 

「・・・待って」

 

「・・・灯音様?」

 

 何かに気づいたらしい。

 

「あ・・・まだ・・・1体残ってるね・・・見逃してた・・・」

 

 灯音様が見逃していたようだ。

 

「どこです?」

 

「丁度正面400mぐらい・・・」

 

 タングズニルを構える。

 

「明日香さん、ムチャですよ!天の秤目持ちの方ならともかく・・・」

 

 慌てだす一葉さんだが、恋花様はニヤニヤしている。

 

「まあまあ・・・見てなって一葉」

 

 照準を睨む。丁度障害物がなくてかろうじてスモール級が見える。

 タイミングを見計らいトリガーを引く。

 

 パンッ!

 

 GYAAAAAAAAA!!

 

 少し遠くで悲鳴が聞こえる。上手く駆逐できたようだ。

 

「もうこれで安心で・・・」

 

 突然フッと目の前が暗くなり、一瞬意識が飛んだ。

 

 バタッ・・・

 

「明日香!」

 

 倒れる寸前に京夏お姉様に支えてもらったおかげで気を失わずに済んだみたいだ。

 

「ははは・・・ごめんなさい・・・今ので・・・マギ切れみたい・・・です」

 

 フラフラする・・・。

 

「それにしてもすごいですね!レアスキルなしであの距離を狙えるなんて」

 

 一葉さんは興奮気味に語る。

 

「あたしも初めて見た時はびっくりしたよ・・・こんなスゴイことする子がいるんだー!って」

 

「あはは・・・あのときはホントありがとうございました」

 

 改めて一礼する。

 

「あのとき?」

 

 口にしたのは咲良ちゃんだった。

 

「詳しくは言えないけど、私たちにとってもあまりいい思い出じゃないからね・・・」

 

 と瑤様。

 

「あの時はまだ御台場に入って半年ぐらいで・・・右も左もわからなかったですし・・・」

 

 丁度レアスキル(ゼノンパラドキサ)が覚醒してすぐの頃だ。覚醒はしたものの、上手く扱えなかった。

 

「あたしらの仕事は一段落かな」

 

「そうですね。そろそろ戻りましょうか」

 

「ちかるー、帰ったらたい焼きたべたーい」

 

 藍ちゃん元気だなあ・・・。

 

「そうだ。京夏ちゃん、帰る前にエレンスゲに寄って帰るから生徒会上手く誤魔化してね」

 

「そういえば琴乃様、藍ちゃんにたい焼き作ってあげる、とか言ってましたもんね」

 

 琴乃様・・・誤魔化すって・・・。

 京夏お姉様はため息をついてから、

 

「・・・わかったわよ。私からは上手く濁らせるからなるべく早く戻ってきてね」

 

「いいなあ・・・あたしもたい焼き食いたい・・・」

 

 みどり・・・あんたね・・・。

 

「はいはい。じゃあ今度クッキーじゃなくてたい焼きにしようかな」

 

 確かに琴乃様の作ったもので洋菓子以外を食べたことがないので興味はある。

 

「やったあ!」

 

「ほんっとみどりって単純よね・・・それぐらい日頃の訓練で張り切ってくれればいいんだけど」

 

「ううっ・・・」

 

 図星だからか、何も言い返せないみどり。

 

「とにかく私たちも戻りましょ。ヘルヴォルのみなさんのお力になれて本当によかったです」

 

 京夏お姉様が一礼。

 

「また何かの機会のときにご一緒できればいいですね」

 

「はい」

 

 今回の遠征でヘルヴォルのイメージがガラリと変わった。私たちも今回の任務で相当スキルアップが出来たんじゃないかと思っている。

 いずれ私がこのLG───エリューズニルを引き継ぐことになるだろう。そのためにはもっと私が頑張らなくちゃ。




予定より1話ほど早まりましたが第1章はこれで完結となります。

次回からは明日香たちが2年生に進級してからの完全オリジナルとなります。
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