「敷井さんって断れないタイプだよねー」
「なんなら、無理難題でも言うこと聞いちゃうんじゃない?」
ひそひそと話す声が聞こえる。
そんな風に私を仕立てたのはどこの誰だ!と声を大にして言えない自分がいる・・・。
「ねえ敷井さん?」
「な、なに?」
そのうちの1人が私に声をかけてきた。
「受験、まだどこ受けるか決めてないんでしょ?だったらここ受けてみる、とかアリじゃないかな?」
と、とあるパンフレットを受け取る。
百合ヶ丘・・・女学院?
私には聞いたことがなかった。後で調べてわかったことだが、リリィと呼ばれる正体不明の生命体(ヒュージ)と戦う養成機関を兼ねた
「ありがとう・・・」
受け取って思わず愛想笑い。
この当時の私はそんな感じだった。
友達は多かったものの、本音が言えずにみんなと話を合わせるだけ。所謂流されやすい性格だ。遊ぶときも、私からなにかしよう!とか言えなかった。え?今の私からは想像できない?
ひどーい!まあ事実そうだと思うけど。
後日進路相談で先生にそのことを話す。
当然だけど驚いていた。そのときに言われたのが、
『病院に行って身体検査を受けて』とのことだった。
これもその当時の私には「???」だった。今にして思えばスキラー値が分からなければリリィにすらなれないのに。ちなみにこのときのスキラー値は59だった。梨璃ちゃんが50ちょうどだったらしいからそれよりは・・・だったのかな。
それからワールドリリィグラフィックや官報、友達の持ってるリリィ本、公開されてる戦術記録など、とにかくリリィに関するものを片っ端から調べて頭の中に叩き込んだ。
私がリリィになって3ヶ月経ったとき。
元同級生が一緒に食事しないか、と誘ってきた。このとき、『書類出して受理されないと外出も休みも許可取れないから』と断ったのだが、押し切られてしまった。仕方なく書類を作成。そんな簡単に許可下りるの?
翌日───生徒会からメール。あっけなく受理されてしまった。ただし条件付き。CHARMは携帯しろとのこと。うーん・・・休息日と変わらないなあ。まあ制服だからって何か言われるとかじゃないだろうし。
ということで、ちょっとした里帰り。両親にリリィになった姿を見せたいのもあるけど。一番は友達をギャフンと言わせたい。
指定された場所へ。ちなみに地元はルドビコの八王子工廠科キャンパスの管轄になっているので百合ヶ丘の制服はやたら目立つ。
「おっ、
声をかけてきたは───
青髪ロングで緑の眼。背は私と同じぐらい。人当たりはかなりいい。一番仲が良い(と思ってる)友人だ。園部伊織ちゃん。
「伊織ちゃーん!元気してたー・・・ってほどでもないか。まだ3ヶ月だもんね」
「円ホントにリリィになったんだね・・・あれ?制服?」
「うん。許可下りたんだけど・・・制服着てCHARM携帯するならって・・・」
「へえ・・・」
どうやらなれるか疑ってかかっていたらしい。
「まあいいや。いこっか」
「うんっ」
そして着いたのが───
(あれ?ここって・・・)
かつて遊園地と野球場があったらしい小高い森の手前だ。
「ご飯・・・食べるんだよね?こんなところにお店なんてないよ?」
すると、
ガンッ!
「ううっ・・・」
お腹を思いっきり蹴られた。え?なんで?
「ホント相変わらずよね・・・流されやすい性格だなーとは思ってたけど」
「伊織ちゃん?」
ガンッ!
「な・・・にするの・・・」
今度は背中を蹴られる。
「私はね・・・あんたを友達だ、なんて一言も言ってないわよ?」
「・・・」
なにそれ・・・。
「あれ、気がついてなかったんだ?みんなからオモチャにされてたこと」
実は知ってた、とは言わずあえてのだんまり。
そしてどこかに隠れてたのか、
「よう。ひさしぶりだな・・・」
あんたは・・・!
私を百合ヶ丘に入れようとした張本人、榎本優だ。
「ホントにリリィになったんだな。けどまあ、なったって言っても下っ端なんだろ?」
「そんなことないよ?普通に戦えるし・・・それに・・・みんな分かってなかったかもしれないけど・・・」
GYAAAAAAAAAAA!!
え?ミドル級!?
後で調べて分かったけどこの辺りは出没多発地域みたい。確か人造湖があったはずだけど・・・小規模ネストがあるのかも。
「ひいいいいいいいいいいいいいいっ!?」
そりゃあ・・・そういう反応するよね。すっかりヒュージに慣れてしまった私からしたら「だから?」みたいな。
一目散に逃げ出す・・・のかと思ったら私の背後にぴったりくっついて離れてくれない。
「ちょっと!離れてよ!」
困ったな・・・今のままだと攻撃できないし、下手したら自分もやられかねない。
多分だけど・・・優ちゃんも伊織ちゃんも私のことをボコボコにしたかったのだろう。ヒュージが出る、まで予想できなかったんじゃないかな。
フォン・・・
仕方ない。CHARM───アステリオン・ブリッジ───を起動。
パンッ!
空に向かってマギ弾空撃ち。
それに驚いた2人。私から離れてくれた。
GYAAAAAAAAAAA!!
私の行動を見て完全に威嚇してる、と思ったんだろう。一目散に向かってくる。
実はこれが初めての対デュエルだったりするんだけど。
「はっ!」
キンッ!キンッ!
触手が伸びる。目視する限りこの野良1体だけみたいだ。
「ううっ!」
重い!当然だけどヒュージが一律同じ強さなはずはなくて。
(どうしよう!?明日香ちゃんや京夏様みたいに上手く倒せるかな・・・)
もちろん失敗したら命の保証はない。
レアスキルこそ覚醒しているものの、梨璃ちゃんや二水ちゃんみたいに経験がない、言ってしまえばほぼド素人だ。
(そうだよ!こんなことろでやられるわけにはいかない!)
イチかバチかだけど・・・。
ガチャン!
シューティングモードに切り替える。
(おおっと・・・)
やっぱり
パパパン!
正面に向かって撃つ!直後、
GYAAAAAAAAAAA!!
よし、狙い通り!
ガチャン!
ブレードモードに戻し、
ザンッ・・・
腕を切り落とし、眼(?)に向かって突き!
GYAAAAAAAAAAA・・・
「ふう・・・」
あ、あれ?
たかだかミドル級1体のはずなんだけど・・・膝を付いてその場から動けない・・・。
「2人とも大丈夫?」
声をかけるも、
「・・・」
「・・・」
2人して反応がない。
「あれ?どうしたの?」
「「ごめんなさい!」」
突然土下座。
「ええええええええ!」
「───と思ってた。だから・・・ホントは馬鹿にするつもりでここに・・・」
確かに百合ヶ丘は補欠合格で入学はした。2人によれば補欠だからマトモに戦えなくて逃げ出すんじゃ・・・と思っていたらしい。私が普通科じゃなくて工廠科を受けていたらそういう反応をしていたかもしれない。けどそれは明日香ちゃんや京夏様、みんなに会えたおかげでなんとか1人のリリィとしてやっていけてるんだ、と思った。実感が湧いたからこそ集中力が切れたあの時点で力が抜けて腰が抜けちゃったんだと思う。
「・・・もういいよ。最初はね・・・私も半信半疑だったんだ・・・知識も何もない私が、リリィとしてやっていけるのかな・・・って」
「けどビックリだなあ・・・もうちゃんとリリィじゃん!」
「そんなことないって。私はまだまだだよ?先輩に助けられること多いし・・・それに・・・さっきは使わなかったけど、レアスキルも最前線で戦えるようなのじゃないから・・・」
「レアスキル?」
「うん。リリィってみんな何かしらの特殊能力があって・・・私の場合は天の秤目」
ガチャン!
何もいないであろう方向に向かいシューティングモードへ。あれ?
「ゴメン。ちょっと待って」
パアアアアアア・・・
レアスキル発動!
実は私のアステリオン、バランスウエイトの他に乃莉子ちゃんにお願いして通常範囲の狭いヒュージ索敵能力をサーチャー並にするブースターを付けてもらったのだ。普段はこの機能は切っている。
(えーっと・・・小型のケイブと・・・幼体だけど結構いるなあ・・・)
「みんなには見えないけど、この先にヒュージがいる。それもかなりの数・・・」
「ええっ!?」
「けど心配しなくても大丈夫だよ。これが・・・私の能力だからっ!」
睨みながら、
パンッ!パンッ!パンッ!
正確に。確実に1発ずつ仕留めていく。
5分後───
(索敵機能に反応は・・・消えたかな?もしかしたらどこかに親玉がいるかもしれないけど・・・)
「大丈夫みたい。で、さっきの話の続きだけど・・・普通遠くのものって眼に見えないでしょ?天の秤目の場合は見えるようになるの。しかもミリ単位でね」
「え・・・」
「すっご・・・」
「だから私は最前線じゃなくて後方から援護するような戦い方が向いてるんだ」
だからといって今のままでいいか?と聞かれたらそうではない。基本の戦い方は明日香ちゃんの姉───
「───ってことがあってね」
百合ヶ丘に戻ってからの明日香ちゃんとの会話。
「それは災難だったわね・・・で、結局食事ってどうなったの?」
『私はいいよ・・・って言ったんだけど、どうしてもって言われて・・・結局優ちゃんと伊織ちゃんにおごってもらっちゃった」
結局───
地元の繁華街に降りてきて普段だったら行かないようなお店(値段見てビックリしちゃったけど)で食事会の後別れた。
ご無沙汰しております。
かなり間が空いてしまいましたがリハビリも兼ねて第一章の番外編という形で新作という形になります。
今月中に本編のほうも続きを出せるよう鋭意執筆中ですので気長にお待ち下さい。