「・・・」
「・・・」
朝から
「ちょっと・・・ベス?」
「なんですの?」
「あの2人ケンカでもした?」
「さあ・・・?わたくし存じませんわ。プライベートはノータッチですから」
これは隊長として何か言わなければいけないのだが・・・。
「ちょっと2人とも。ケンカはいいけど・・・訓練中に私情を挟むのはいただけないわね」
「だって・・・蘆乃が・・・」
「私は・・・悪くない・・・如來が姉様の悪口言うから・・・」
・・・なんとなく読めてきた。2人して子供か!といった感じ。お灸を据えてやるか。
もう少し訓練をしてから・・・と思っていたが、
「咲良ちゃん。乃莉子さんに連絡取って。予定を切り上げて今からやるって」
「わかった」
「え・・・明日香ちゃん・・・もしかしてアレやるの?」
円がビックリしている。
「もちろん。去年私とベスもアレで苦労させられたからね。後で思いっきり京夏お姉様に怒られたけど」
「そういえばそうでしたわね。あのときは2人して揉めたのを思い出しましたわ」
「じゃ、午前中の訓練はここまで。午後から如來と蘆乃さんは修練場ね」
食堂にて。
「まったく如來と蘆乃とで何ケンカしてるのかと思ったら・・・」
改めて如來に話を聞いたところ、昨日天上の間で私とベスのいいところの話となり、そこからヒートアップしたらしい。最終的に個人間の罵り合いとなり、現在に至る、と。
「わたくしたちのときはそんなことになりませんでしたのに・・・ホントお子様ですわ」
「ねえ?それだけ・・・私たちが成長してるってことなのかな?」
「だといいのですけれど・・・」
乃莉子さんからの連絡が来た。
『いつでも準備は出来てるわ。ただ2体あるけど、どうする?』
「え?2体・・・!?」
マジか・・・百由様気合入れすぎ。去年の戦術競技会の結梨ちゃんのメカルンベルシュベルツシェンくん破壊がよほど悔しかったのか、さらにパワーアップした上での2体・・・。
うーん・・・これは私たちもやるべきなのかな・・・?
いやいや、これはあくまでも訓練だ。戦技競技会ではない。百由様のことなので暴走もパワーアップしているに違いない。これは1体で十分だろう。
「どうしまし・・・2体!?」
メッセージを見て、さすがのベスも声を上げている。
「今の如來たちにはムリ・・・よね。どの程度のヒュージ設定になってるかわからないけど」
「ですわね・・・」
さて、昼食を済ませ、私とベスは修練場へ。そこには───
「ごっきげんよう明日香さんエリザベスさん」
うちの(ほぼ)お抱えアーセナル兼リリィの彼女がすでに待機していた。
「ごきげんよう乃莉子さん。今更だけどうちのLGに入る?」
「え?どうして?」
「お姉様たち今はスーパーサブで主要メンバーからは外れてるのよ。いろいろ実験とか付き合ってあげるからどう?」
今更知らない仲ではないので聞いてみる。
「んー・・・私はいいかな。リリィとして戦えはするけど大して実力ないし・・・」
「そうかなあ?私は全然ありだと思うけど・・・ヘリオスフィア使いがいてくれるだけでLGとしてはすっごいありがたいんだけど」
「でもごめんなさいね。ホント戦えるってだけだから・・・っていうか、去年も同じような質問された気がするんだけど?」
「あれ?そうだった?覚えてないわ・・・」
うーん残念。元々純粋なアーセナルを希望していた彼女に聞くだけ無駄だったかな・・・。
「ああそうそう。2人とも
え?このタイミングで?
「あ、ありがとう」
ほどなくして2人がやってきた。無言で。
「来たわね2人とも」
2人同時に頷く。
「中等部上がりの蘆乃なら知ってると思うけど、これからメカヒュージと模擬戦をやってもらいます」
「え・・・」
「模擬戦・・・」
「それも1人ずつじゃないわ。2人1組でね」
「イヤです」
真っ先に如來が言う。
「私も・・・」
遅れて蘆乃もだ。
「さっきも言ったでしょ。訓練中は私情を挟むな、って。これは隊長命令です。いいわね?」
2人の今現在の対ヒュージ討伐能力を見たいというのもあるが、私としてはこれで仲直りをしてもらいたい気持ちのほうが大きい。
「で、乃莉子さん。設定ってどうなってる?」
小声で聞いてみる。
「あー・・・今回はゴリゴリになってます・・・ラージ級相当・・・」
はあ?ちょっと待って!?ラージ級って・・・。
「って言ってもミドル級よりちょっと大きい想定みたいです」
・・・なんだ。それならよかった。ラージ級相当だとあの2人では到底手に負えなくなる。ノインヴェルトまで必要なくても、LGメンバー総がかりになるかもしれない。
2人のレアスキルはゼノンパラドキサとユーバーザインだ。修練場で発動させても問題ないだろう、という判断だ。だが、
「一応これだけは言っておくわ。これは去年私も言われたけど、壊しちゃってもいいけど、「あくまでも」壊さないようにね」
姉様は何を考えているかわからない。
訓練ならなおさらだ。たかが誰かが作ったメカヒュージ。私1人で十分なのに。
「レアスキルは使ってもいいけど、シューティングモードは禁止ね」
という声が聞こえる。
「関係ない・・・」
つい口に出たらしい。
「・・・ちょっと、バカじゃないの?訓練弾でも撃ったら建物壊れるわよ」
冷静に考えればその通りなのだが、そのときの私はそれすら耳に入らなかった。
「・・・チームワークゼロですわね。明日香さんどうなさいますの?」
正直見ていられなかった。それでも私はあえてやらせていた。
とにかく動きがバラバラ、連携が取れていない。それと───
あの2人には百由様の暴走仕様のことを一切伝えていない。
「まだやらせるわ。暴走したときにどうするか・・・それと気になってたんだけど・・・」
私もこれは気になっていたので聞くだけ聞いてみる。
「蘆乃とベスって元々知り合いだったの?」
「違いますわ」
あっさり否定された。
「じゃあ・・・なんで同じCHARM使ってるの?」
「同じじゃありませんわ。明日香さんよくご覧になって?」
同じじゃない?私にはブラダマンテにしか見えないのだが・・・ん?
「あ・・・」
よく見るとブレードの形状が一部違う?のと、少しブレードが厚くなっている気がする。それと持ち手の部分が細くなっていた。
「わたくしのはブラダマンテ。蘆乃のはブラダマンテ・アイですわ」
「改良型?改造機?」
「グランギニョルの機密事項なのでノーコメントですわ」
後で乃莉子さんから聞いたが改良型のプロトタイプらしい。グランギニョルの関係者には変わりなさそうだ。
今私は明日香隊長の言う通り私情は一切挟まず行動しているつもりである。問題はその明日香隊長の妹の如來だ。
メカヒュージを誘導してブレードを刺そうとするのだが、如來がそれに反した動きをするのだ。
「ちょっと如來!いい加減にしなさいよ!」
声をかけるも無視。レアスキルを使おうにも使えない。
GYAAAAAAAAAAAAAA!!
まったくこのメカヒュージ・・・鳴き声まで完全再現とは・・・百由様どこまでお熱なんだか。
が、今までと動きが違う?
腕の動きが変わった!?
「このっ!」
カンッ!
腕に当たるもマギが足りなかったのかかすりともしない。
「うっ・・・!」
私に向かって突進してくる。え・・・なに?
レアスキル発動!如來の背後に回る。
GYAAAAAAAAAAA!!
私の残像を見て腹を立てた(?)のか、
ドンッ!
「ああああああああああああああ!」
如來を払いのけ、修練場の壁へ。
「うっ・・・!」
それでも明日香隊長はまだ黙って見ている。助けはなし、ということだ。
「やってるわね。けど・・・あの2人ケンカ?」
ウワサを聞きつけたのか、琴乃様が見に来た。
「ごきげんよう琴乃様。訓練は訓練なんですけど・・・見ての通り」
「チームワークの取れなさはあなた達以上ね・・・蘆乃ちゃんのほうは気がついてるみたいだけど」
「それ言われると痛いなあ・・・確かに如來は子供っぽいところがありますけど・・・そろそろ連携が大事って気づいてくれれば・・・」
「まだまだあああああああ!」
如來はまだ1人で向かおうとしている。もう一度レアスキル発動!
キンッ!
「えっ・・・」
目の前に私が出て驚くも、
「ちょっと!どいてよ!」
私を言葉を無視してなおも前に出ようとする。
「如來、あんた・・・まだわかんない?なぜ明日香隊長が私たちを止めないか。それもわからないバカだとは思わなかったわ」
火に油をそそいでどうする。
「はあ?誰がバカよ!あんたのほうこそバカなんじゃないの?」
「バカはどっちよ!ここまで言われて気づけないなんて・・・頭のネジでも飛んでるんじゃないの?」
「頭のネジが飛んでるのは蘆乃じゃん。いい加減私の邪魔しないでくれる?」
まったくあの子たちは・・・。訓練だというのを忘れて本格的にケンカを始めてしまった。
「ごめん咲良ちゃんレアスキルお願い。ベスにもね」
「は、はい!レジスタ!」
パアアア・・・
修練場を破壊する前に処理をしなければ。隊長の立場というのもある。
「私があの子たちを止めに入るから、あっちをお願い」
「まったく・・・世話が焼けますわ・・・」
「だいたい、蘆乃がお姉様の悪口言ったのがわるいんだから!」
「なによ!如來・・・あんただって櫻子姉様のことあんな風にいうなんて!」
レアスキル発動!2人の腕を掴みその場から離れる。代わりにベスにはメカヒュージの相手をしてもらっているが。
「はっ!」
カンッ!
「えっ・・・」
「あ・・・」
突然離され驚いている2人。
「・・・私情は挟むなって聞いてなかったの?」
「すみません明日香隊長。如來に指示を出そうとしてたんですけど・・・ついカッとなってしまって・・・」
蘆乃は真っ先に頭を下げてきた。この訓練のことを理解しているようなので何もしないでおく。
「蘆乃。あなたはベスと合流して訓練をそのまま続けて」
言うなり素直にベスのほうに向かっていく。
改めて如來の前に立ち、
パンッ!
思いっきり平手打ち。如來は頬を押さえ、なんで?といった感じの顔。
「如來!いい加減にしなさい!今は訓練中よ。何度言えばわかるの?」
LG隊長尾上明日香としての一言。
「だって・・・」
「だって・・・じゃないでしょ。私は私情を挟むなって言ったわ。私情を挟んでもいいときもあるけど、今はそうじゃないでしょ?」
「なんで・・・なんで蘆乃だけ贔屓に・・・」
「してないわ」
「じゃあ・・・なんで・・・」
「それがわからないようなら如來はしばらく訓練に来なくていい。今日はもう戻っていいわ」
「・・・っ!」
無言のまま如來は走り去ってしまった。
「ここにも明日香ちゃんそっくりな子が・・・」
「何言ってるんですか!やだなあもう・・・如來と私を一緒にしないでくださいよー」
琴乃様にからかわれるのが納得行かないが、これで如來が少しでも頭を冷やしてくれればいいのだが・・・。
「けどあの子・・・ホント私にべったりで・・・甘やかしてるつもりはないんですけどね」
「そうね・・・京夏ちゃんと明日香ちゃんは割と淡白っていうか・・・割り切ってる?」
「そうですか?」
なんで?どうして私だけ?
他所のLGなら間違いなく除隊されてもおかしくない今の行動。そんなことも考えず、ただ悔しいというだけで飛び出してしまった。おまけに訓練に来なくていい、だなんて。
「あれ?如來じゃん。訓練はどした?」
偶然みどり様に会う。
「うっ・・・わああああああああん!」
「おいおい・・・」
みどり様の顔を見て安心しきってしまったのか、私は思いっきり泣いてしまった。
「・・・そっか。明日香がなあ」
事の次第を話す。
「そりゃ明日香も怒るよ。如來ほど付き合い長くないけど、それぐらいはわかるぞ」
「みどり様・・・」
「あたしもさ・・・LGに入りたての頃は訓練サボってばっかでしょっちゅう明日香に怒られてたんだよ。けど、あの日たまたま明日香が訓練外でレアスキル使うな!って言われてたのを無視して梅先輩と競争してたの見つかっちゃってさ・・・」
「・・・それって今の話と関係なくないです?」
「まあ話は最後まで聞きな。あたしも怒られる!って思ってたんだけど、怒られるどころかやっていいって言われて『えっ?』って」
「・・・」
「縮地ってさ、ここではあたしと梅先輩しかいないんだ。だから競争して鍛えられるなら・・・で許してもらったんだ」
「けど意外・・・みどり様が訓練外でレアスキル使うな!って・・・」
「う、うるさいな!そのときはそうだったんだよ!それだけ明日香はLGのことも仲間のことも考えてるってことだよ。だから京夏様が隊を引退して引き継がせるとき明日香に任せたんだ。ちゃんとみんなのことを見てる」
「・・・」
「ん?どした?」
「私・・・姉様に謝ってきます。そこまでLGのこと考えてるだなんて思ってもなかった・・・」
ホントに私バカだ。姉様のことを馬鹿にされたのが悔しくて・・・怒りに任せて蘆乃とケンカして・・・。オマケに訓練に私情を挟むな、と言われてたのにそれを無視して・・・。
「それじゃ、ごきげんよう!」
「で、妹を追いかけないんだ?随分冷たい守護天使ね」
琴乃様の言う通り私は冷たいのかもしれない。けど、これも如來のためなのだ。
「違いますよ?私は・・・将来このLGを如來に任せたい。そのためには1人前のリリィとして成長してもらいたい・・・じゃ答えになりません?」
「明日香ちゃん・・・随分変わったわね」
「私は・・・変わったつもりはないですけど・・・」
「随分変わったわ。会ったばかりのときは京夏ちゃんに追いつきたい!ばっかり言ってなかったっけ?」
「やっぱり私・・・あまやかしてると思います?」
「え?どういうこと?」
「あの子・・・如來は、中等部に上がる前に両親を亡くしてるんです・・・。実家も近いっていうのもあって・・・だから私が実の姉みたいに彼女の面倒を見てました。その感覚でつい・・・」
「だからあんなにべったりなのね・・・」
「ええ。私が百合ヶ丘に編入するって話したときもしばらく口も聞いてくれませんでしたからね・・・。でもまさかCHARMまで同じにするとは思わなかったですけど・・・」
「私も見てビックリだわ。仕様も同じなのよね?」
「ただ・・・あの子には教えてないはず・・・あ。
兵藤友葵子───お台場女学校にいるアーセナルの1人だ。バランスウエイトの基本システムを考案した人でもある。
さて、ベスと蘆乃だが・・・。
カンッ!
(私たちの攻撃パターンを読まれてる?)
いや、ヒュージがリリィの攻撃パターンを読んでくる、なんていうのは聞いたことがない。
過去色々なヒュージと戦っては来たけど、まさかね・・・。
「蘆乃、あなたはうしろから、わたくしは前から行きます!」
「はい!」
ガンッ!
両方向からの挟み撃ち。が、左右から挟み撃ちにされるように触手が来た!
ちょっとこれ百由様さすがにやりすぎ・・・。
「やあああああああっ!」
シュバッ!
触手が切り落とされた?明日香さんが止めに・・・来たわけではないらしい。
「櫻子様!蘆乃!ゴメン!」
如來さんが戻ってきた。
「ナイスアシストですわ。それにしても・・・この暴走モード・・・ホントに厄介ですわね・・・」
「暴走!?」
カンッ!
「ええ、しかもこのメカヒュージ・・・去年より強くなってますわ・・・如來さん!」
「は、はい!」
「破壊しても構いませんわ!・・・ちょっと手に追えないぐらいにまでなってます。明日香さんもそれでよろしくて?」
「まあ・・・仕方ないか・・・ちょっとまってて」
明日香さんもそれで納得してくれている。
だが、明日香さんは何か考えているようだった。
「あのCHARM・・・」
「はああああっ!」
ガンッ!
全長六尺五寸、琴乃様のためだけに作られた「あの」フリングホルニだった。実物は初めて見た。けど、なぜ明日香隊長が使って(使えて?)るんだろう?
「蘆乃!残像って何人までいける?」
「はい!えっと・・・今のマギ残量だと・・・3人ぐらい・・・です」
「オッケー。今その場でお願い。1人欠けてるけどフンベルトを今からやるわ」
明日香隊長!?
「ダメですよ!修練場破壊しちゃいますよ!」
「いいから指示に従う!」
明日香隊長が何を考えてるかわからなくなった。
「百由様には悪いけど、建物壊す前に止めないとね。ごめん、ちょっと時間稼ぎお願い」
ポケットからノインヴェルト用の訓練弾を取り出す。ん?見た目は訓練弾なのだが色が違う。これは一体?
「了解ですわ」
「???」
私には言ってる意味がわからなかった。が、明日香隊長の動きを見て理解した。なるほど、そういうことか。
ガッチャン!
モード切り替えがとにかく遅い。
そして全員メカヒュージから全員少し離れる。
パンッ!
まず最初にパスをもらったのは私だ。
「蘆乃!ベスに渡して!」
「わかりました!櫻子姉様!」
明日香隊長の指示どおり櫻子姉様にマギスフィアを渡す。
シュバッ!
「ルートも的確ですわ。フィニッシュショットは任せます!」
シュバッ!
「おっと・・・」
如來のマギの受け方を見て少しビックリした。
「御台場式の受け方ね。私も最初直されたわ」
とは明日香隊長だ。マギスフィアを受け取るときは引いて受けると教わった。如來は逆なのだ。
そして、
ガチャン!
「フィニッシュショット、いきます!」
何も考えなくても当たる距離。
ズガン!
そして───
「・・・何も」
「起きませんわね・・・」
てっきり粉々になるものだと思っていたが、機能が停止しただけだった。
「はい。お疲れ様」
「ちょっと明日香さん?」
「なに?」
不満そうな顔のベス。
「もしかして・・・知っててこういうことやらせましたの?」
「そんなわけないでしょ・・・乃莉子さんに聞くまで知らなかったわよ」
後で百由様に聞いたところ、破壊されるのが嫌だったから強制停止装置をちゃんと作った、とのことだった。その起動源がマギスフィアだというのでフンヴェルトまがいのことをすることになったわけだ。
「・・・」
肝心の如來のほうだが・・・私のほうを見てじっとしている。
「如來。何か言うことあるでしょ?」
蘆乃にポンポンと肩を叩かれている。
「う・・・うわああああああああああああん!」
泣き出してしまった。ホント、あの頃と全然変わらないなあ。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「ごめんなさい、だけじゃ何のことかわからないわよ・・・」
そっと如來を抱き寄せる。
「それと、先に謝るのは私じゃないでしょ?」
と、蘆乃のほうを指差す。
そして、
「・・・今度明日香姉様の悪口言ったらただじゃ済まないから」
ただし、それは悪意がある口調ではない。
「如來・・・あんたもよ」
これでよかった・・・って言っていいのかな。切磋琢磨してお互い良いライバル関係なら。
「ようやく丸く収まりましたわね・・・」
「まったく・・・しょうがない子たちね・・・」
新生エリューズニル結成にはまだ遠いが、これでようやく動き出したのかな。
「ところで明日香隊長」
「何?蘆乃」
「さっきのCHARM・・・琴乃様のフリングホルニですよね?ユニーク機で扱えるのは琴乃様だけって伺ってましたけど・・・どうして明日香隊長が扱えたんです?」
やはり聞かれた。
「そうか・・・知らないんだっけ。私、琴乃様から薙刀を教わっているの」
「薙刀?」
「そう。今はそのつもりはないけど、いずれ訓練にも取り入れるつもりよ」
「なるほど。それで・・・」
琴乃様のCHARMは
「CHARMはコアを付け替えれば誰でも使うことはできるわ。けど、「使える」のと「使いこなす」のはまた別ね」
「教わってるのは明日香ちゃんだけじゃないよ。実は私も・・・」
円!?いつの間に・・・。昼からそうさく倶楽部じゃなかったの?
「え・・・それ初耳なんだけど・・・」
「だって誰にも言ったことないし・・・琴乃様にも黙ってもらってたから」
後ろで琴乃様がニコニコしている。いつもどおりの光景なのだが、なんか怖くなってしまった。
「私は・・・別にいいんだけどね、円ちゃんが『言っちゃダメ』って言うもんだから・・・」
口止めか。
「まあいいわ。今日の訓練はここまでね。みんなお疲れ様」
LGとしてまだまだ課題は多い。そこは私がしっかり指揮を取っていかなくてはいけない。もっとがんばらないと。
「あと1人・・・あと1人・・・」
「明日香ちゃん・・・唱えたところで来るわけじゃないよ?」
その日の夜の部屋での会話。
「分かってる・・・分かってるけど・・・ううっ・・・」
ベッドに突っ伏す私。
山
「まあいいや・・・明日のこと考える・・・」
起き上がって自分の机に向かい、あるノートを取り出す。
「そういえば明日香ちゃん、最近よくそのノート書いてるけど何?」
・・・やっぱり聞かれたか。
「これ?LGのことをまとめてるの。訓練で何したーとか、訓練メニュー考えたり・・・アイデア帳みたいな感じかな」
「これすごいね・・・なんか講義のメモ見てるみたい・・・」
「みんな誤解してるみたいだけど・・・私頭いいわけじゃないよ?」
「えー・・・あんなに成績いいのに?」
円にジト目で見られる。視線が痛い・・・。
「成績と戦略はまた別だから!テストは教本と講義の内容覚えれば受かるわよ」
「それが出来たら苦労しないって・・・」
苦笑いの円。
「私は・・・京夏お姉様に比べたらまだまだよ。訓練も穴だらけだし・・・」
「そうかな?私はそうは思わないけどな」
「え・・・」
「私は・・・京夏様も明日香ちゃんもどっちもすごいなあって思ってるよ?お世辞なんかじゃなくてね。だって、訓練メニューとか訓練方法とかあんなしっかり決められないから・・・」
「それは・・・円がダメなだけなんじゃ・・・」
「ひっどーい!そうかもしれないけど・・・」
円が膨れる。
「でも・・・ベスちゃんも、みどりちゃんも、咲良ちゃんも・・・如來ちゃんたちだってみんなそう思ってるはずだよ?」
私はおもむろに立ち上がり、円のすぐ近くへ。そして───
「明日香ちゃん!?」
背後からそっと円を抱きしめる。
「ありがと円。そう言ってもらえるとうれしい・・・」
「うん・・・」
百合ヶ丘に編入してから1年。同じ部屋、同じクラス、同じLGで苦楽を共にしてきた円。円は円でベスとはまた違う安心感がある。
なんだかんだ私はまだまだメンタル弱いんだなあと思ってしまった。