さて問題は最後の1人か・・・。
今は灯音様に入ってもらっているが、新入生で鷹の目持ちを探すのは容易ではない。覚醒者で多いのはテスタメント、レジスタだ。
ちなみに現在の仮編成は───私とベス、咲良ちゃんがTZ、
「・・・困ったなあ」
「何がですの?」
「何が・・・じゃないわよ。もうすぐLGのランク査定があるでしょ?どうすんの?このままじゃランク下がるわよ?」
現在エリューズニルはかろうじてAランクにはいるものの、それは京夏お姉様たちがいたからだ。
「そうでしたわ・・・忘れてましたわ。明日香さんどうしますの?」
「どっかのLGから引き抜きする?」
「誰をです?わたくしは反対ですわ」
「そう言うと思った。だよねえ・・・」
「あの・・・すみません」
ん?1年生リリィが私の元にやってきた。
「はあ?ケンカ!?」
またか・・・。LG内でもケンカして、学園内でもケンカして・・・。よく生徒会から注意されないものだと思う。
「このままだと2人してCHARM持ち出して暴れそうな勢いで・・・」
それだけはなんとしても避けたい。レアスキルなんか使おうものならなおのことだ。ちなみにだが、私も以前生徒会にはさんざんお世話になっているので悪い意味で伝統にはしたくない。
で、校庭にいるというのでかけてつけてきたが・・・ケンカをしている様子はない。
「ちょっと!今度は何の争い?」
「あ・・・明日香姉様。実はその・・・」
「じゃあケンカしてたんじゃなくてメンバー探ししてたってこと?まったく紛らわしい・・・」
「ごめんなさい・・・」
如來が言うには蘆乃とケンカしてるフリをして注目を集めようとしていたらしい。
「でもそれで仲良くなった子もいるから問題はない・・・はずだよ」
と、1人リリィを連れてきた。
「あの・・・ご、ご・・・」
「ごきげんよう。あなた名前は?」
「えと・・・あの・・・」
「私から言うね。この子人と会話するの苦手だから・・・
コミュ障か。うちに元がつくのが約1名いるけど。
「LGに入りたいけど言い出せなかったんだって」
それはそうだろう。ここまで極度だと今まで友達とかどうしてたの?と逆に心配になる。
「大丈夫。うちのLGにも下手な子いるから」
「はじめまして!よ、よろしくおねがいしますっ!」
ようやく喋ってくれた。
「さて、どこから話せばいいかな・・・」
話そうとしたときだった。
ゴーン・・・ゴーン・・・
うわ・・・マジか・・・出撃命令・・・。しかも今日はうちのLGが当番だ。
「このタイミングで・・・話をする前だけど、臨時メンバーとして入ってもらえる?今日スーパーサブが誰もいないのよ」
「は、はいっ!」
「今回の内容だけど・・・スモール級ゼロ、ミドル級7体ね。討伐としては大したことはないはず。ただ1年生はこれが初めてだから慎重にね」
「はい」
まさかこれが藍ちゃんの実力がとんでもないと知ることになろうとは思っていなかった。
「
「そ。私たちは
「
「あー・・・前に外征行った時に同じ字を書いて違う読みのリリィがいてね・・・間違えて呼ばないようにって・・・」
作戦内容は今回特にない。1年生のサポートに回るつもりでいるからだ。と、思っていたが・・・。
「あーっははははは!」
急に
「
しかも異常なまでの強さ・・・。今まで誰が彼女を止めてたんだろう?
終わった時には素の藍ちゃんに戻っている。この子S級・・・?
いや、そうとも限らないか。酔狂の月発動時に性格が変わるリリィは山ほどいる。
結局7体のうち4体を駆逐していた。しかもマギ切れなし。この子一体・・・。
「あの・・・ごめんなさい!」
突然藍ちゃんが謝りだした。
「どうして謝るの?謝る必要ないわ」
「えっと・・・私・・・レアスキルを使うと記憶が時々飛んじゃうんです・・・だから・・・変なことしちゃってるんじゃないかって・・・」
記憶が曖昧になるリリィは数多くいる。特段気にすることもないのだが・・・。
「ねえ藍ちゃん。記憶が曖昧になることは別に気にしてないわ。酔狂の月持ちの子は大抵そうだからね」
「それだけじゃない・・・んです・・・」
藍ちゃん?
「書類書き終わったら私のところに来てくれる?」
「はい?」
「すみません琴乃様・・・わざわざ付き合わせちゃって・・・」
「いいのよ。私結夢さんと仲がいいってわけでもないから」
意外・・・琴乃様コミュ力オバケなのかと思ってた。
何の話かわからないと思うが、同じレアスキル持ち同士ならお互いの苦労点を相談し合えるのでは?ということでお呼びだてしたわけだ。
「あ・・・」
藍ちゃんが来た。
「はじめまして藍ちゃん。鬼龍院琴乃です。よろしくね」
「えと・・・その・・・ご、ご・・・」
今の藍ちゃんには挨拶はむずかしいかな・・・。
「すみません・・・この子人見知りが激しいので・・・」
「え、そうなの?」
「えと・・・明日香隊長!」
わあっ!急に大声出さないでほしい・・・。
「私が・・・その・・・こういう喋りになったのって・・・レアスキルに覚醒してからなんです・・・」
レアスキル覚醒後の後遺症ともいえる反応か───私の場合は覚醒する前に比べて感情起伏(特に怒り)が激しくなったことだ。
「藍ちゃん・・・私もね、百合ヶ丘に来た時は大変だったのよ?」
琴乃様が口を開く。
「そう・・・なんですか?」
「ええ。うまく制御できなくて傷つけそうになったりね・・・」
「レアスキルの弊害って人それぞれなの。私の場合は気が短くなったわ・・・今は大分良くなったけどね。リリィを傷つけちゃったこともある」
「明日香隊長・・・」
「だから自分だけ!とか思う必要はない。みんな通ってきてる道だからね」
「・・・はい。ありがとう・・・ございます」
喋ってて気になったのだが、藍ちゃんにあるその首の傷・・・。触ろうとしたときだ。
バッ!
「・・・触らないでっ!」
手で弾かれてしまった
「ご、ごめん・・・気になったから・・・」
藍ちゃんはしまった、と言った感じの表情をして、
「す、すみません!明日香隊長!つい・・・」
「明日香隊長・・・気づた・・・かな・・・気づいた・・・よね・・・」
少しあからさますぎたかもしれない。まだG.E.H.E.N.A.の呪縛から開放されていないのだ。いや、開放されていないと思いこんでるのかもしれない。
私はブーステッドリリィだ。もちろん百合ヶ丘には同じくG.E.H.E.N.A.からかくまわれているリリィはたくさんいる。
「私だって・・・なりたくて・・・なったわけじゃ・・・ない・・・ううっ・・・」
その日は一晩中泣いていた。
翌日。
ルームメイトは先に出てしまったので準備をして学園に向かおうとしたときだ。
ガチャ・・・
「藍ちゃん。ごきげんよう」
「おはよう、藍ちゃん」
LGのみんなが部屋の前で待ってくれていた。
「え・・・なんで?」
「なんで、じゃないよ?明日香姉様の言ってたこと忘れた?」
如來ちゃん・・・。
「私たちはさ、チームワークが大事だと思ってるから。ほら行こう」
学園に向かう途中、
「ねえ藍ちゃん・・・その首の傷って・・・」
あ・・・隠すのを忘れてた。
「・・・なんでも・・・ないよ?昨日明日香隊長にも同じこと聞かれたけど。去年戦技競技会でケガしちゃって・・・そのときにね」
咄嗟に嘘をついてしまった。事実去年の中等部の戦技競技会の的棒倒しで足を挫いたので、内容は違っても嘘は言っていない。
「そっか・・・」
如來ちゃんはそれ以上追求はしてこなかった・・・そのときは。
講義が終わり、LGの訓練に行こう、となったタイミングでのことだ。
「ねえ藍ちゃん」
如來ちゃん?
「訓練前に・・・ちょっと、いい?」
呼び出されたのはLG控え室のある棟の裏だ。
「・・・朝、どうしてあんな嘘ついたの?」
「・・・どうしたの如來ちゃん?」
目が真剣だ。
「・・・ねえ、それって、キズじゃなくて強化リリィの魔術刻印・・・だよね?」
如來ちゃんは私のことを知っている?
「え・・・なんのこと?」
シラを切ろうとした。
「とぼけないで!」
また・・・この雰囲気・・・だからLGに入るのは嫌だったんだ・・・。
その場から走り去ろうとするも、
スッ・・・
「・・・」
ステルス───ゼノンパラドキサのサブスキル・・・如來ちゃんが私の進路を塞ごうとする。
「・・・どうして逃げるの?自分が強化リリィだから?」
しばしの沈黙。
「私が強化リリィだって言うとみんな優しくしてくれる。けど、それだけ・・・。誰も・・・私となんて仲良くしようなんてしてくれない・・・。ごめん如來珠ちゃん。私・・・」
「・・・それが、何だっていうの?」
え?まるで私の心を読まれてるかのようだ。
「・・・」
違う。そうじゃない!私は泣きそうになっている。
「なんで私たちのことそんな風に思うの?ねえ、どうして!?」
「だって・・・」
「じゃあ、逆に聞くけど、どうして明日香姉様は藍ちゃんのことをLGに入れてくれたと思う?」
考えたことがなかった。
「ゴメンね藍ちゃん。いきなり勝手なことして・・・私さ、
|ニ川二水様───百合ヶ丘屈指の情報網を持つ戦略やリリィの知識が豊富な先輩だ。中等部にいた頃からそのウワサは耳にしていた。
「そしたら強化リリィだっていうから・・・もしかしたら隠してるんじゃないのかなって・・・。けど、隠したからってどうもなるわけじゃないよ」
如來ちゃんは私のことを変えようとしてくれてる・・・?
「他のLGの子はどう思ってるか知らない。けど強化リリィとかそんなの関係ないでしょ?だって仲間だもん」
如來ちゃん・・・。
「でも・・・なんで分かったの?」
「私の周りさ、強化リリィばっかりだったんだ・・・。御台場女学校ってG.E.H.E.N.A.の実験場・・・とか言われてるでしょ?実験体ヒュージにやられてブーステッド施術を受ける子も多いの。だからそういう情報も自然と入ってきちゃうんだよね。あはは」
如來ちゃんは今まで接してきた他のリリィの子とは違った。なんで同じだ、なんて思いこんじゃったんだろう・・・。
「ありがとう・・・如來ちゃん。私・・・正直に話すね」
「そう。ありがとう正直に話してくれて」
LG控え室にて。明日香隊長は私のことは特に言及もしなかった。
「ようやくこれで落ち着いてたくさんケーキが食べられますわ」
「・・・櫻子姉様。あんまり食べると太りますよ」
蘆乃は妹らしく櫻子様のスタイルを気にしているようだ。
「大丈夫よ蘆乃。このケーキ砂糖ほとんど使ってないから」
「え?」
使ってない・・・?
「あ、そっか。みんなに言ってなかったわね。みんなのケーキとかクッキーは全部私が作ってるから」
「え・・・明日香隊長が・・・ですか?」
「琴乃様から教わってね。他のLGでは報酬で買ってるって話も聞くけど・・・やっぱり報酬ってみんな自分で自由に使いたいでしょ?まあ私が作ってる理由はそれだけじゃないんだけどね」
そうだったんだ・・・。明日香隊長いつ休んでいるんだろう?
「初耳・・・明日香姉様って確か料理苦手・・・」
「そ・れ・は。ここに来る前の話ね」
「い、痛い・・・痛いって明日香姉様!」
・・・如來ちゃん余計なこと言って怒られてるよ。明日香隊長に脇腹を抓られている。
「琴乃様に比べたら味はまだまだだけどな」
「みーどーりー・・・!ちょっといいかしら?如來」
「はーい!」
明日香隊長はみどり様を拘束するも、
「みどり、今年の戦技競技会のコスプレ部門出てもらうから、覚悟しといてね」
「えええええ!やだよー!」
「じゃあ、当分の間みどりのケーキとお茶はなしで」
「もっとやだー!」
予備隊のときはこんな感じじゃなかった。百合ヶ丘は個性的なLGが多いとは聞いてはいたけど・・・和気あいあいとして雰囲気は悪くないと思った。
「ところで・・・隊長たちって元々どういう関係だったんですか?」
この子たちにはまだその話はしていなかった。いい機会なので話をしておく。
「そうね・・・私たちはこのLGを立ち上げるときに知り合ったわ。昔からの付き合いなわけじゃないの。私は・・・如來だけね。御台場からほぼずーっと一緒だったし」
「私と明日香ちゃんは元々新館にいたときに同じ部屋だったんだ。入学式のときに校門の前でばったり会って、クラスも同じで」
「へえ・・・」
「で、入学して2日目に初対面なのにベスが私にケンカ売ってきて・・・そのとき京夏お姉様にはじめて会って」
「そ、そうでしたわね・・・」
ベスの顔色が悪い。
「いつだったか私の前で大泣きしたこともあったわね・・・」
ベスと私以外全員呆気にとられている。当人はというと・・・顔を引きつらせて今にも私に飛びかかってきそうな感じである。
(やば・・・怒らせたかな・・・)
「え?それ初耳・・・」
「あたしも・・・」
「そうね。誰にも言ったことがないし」
その後顔を真っ青にしたかと思えば、
「・・・」
バタッ・・・
白目を剥いて倒れてしまった。え・・・そんなに言ってほしくなかった?
「櫻子姉様!」
蘆乃はベスの元へ。言いすぎたつもりはないのだが・・・困ったな。
「い、意地悪するつもりで言ったわけじゃないんだけど・・・ははは・・・」
10分後には気がついたが、この後ベスは1時間近く口を聞いてくれなかった。
「ほんっとゴメン!話の流れでどうしても・・・ね」
「謝って済むのなら防衛軍もいらないですわっ!しかもみなさんの前で・・・!」
手を合わして謝るも許してくれる気配はなさそうだ。
「釘を刺すようで悪いけどさ、ホントの自分を曝け出したほうがいいんじゃないの?」
「・・・残念だけど、もうその話なら蘆乃にしたわよ。今度駅前で売ってるあのいっちばん高いスイーツおごってもらうから」
久しぶりに聞いた
「だからゴメンってば・・・けど、
「え・・・?」
少し驚いている。
「私さ・・・御台場に居たとき・・・如來に『百合ヶ丘に行く!』って言う前からずーっと隠してるんだよね。いつか言わなきゃ・・・とは思ってる」
「明日香さん・・・」
「・・・怖いのよ・・・今の関係が崩れちゃうんじゃないかって。もう過ぎたことではあるんだけど・・・それでも・・・ね」
如來に対してはなんでもできる姉を演じているところはある。だからなおのことだ。
「私は・・・如來ちゃんはそんなに気にしないと思う。確信はないけど・・・」
「櫻子・・・」
久しぶりのこの呼び方。
「あ、いたいた。おーい明日香ー!お嬢ー!」
みどりだ。
「一葉さん来てるぞー」
え?
「明日香さんご無沙汰しております」
「堅苦しい挨拶はいいですよ。で、どうして百合ヶ丘に?」
「はい。梨璃さんに会い来たんですが、明日香さんがエリューズニルの隊長になったと伺ったのでごあいさつに・・・」
あのときは私ではなく京夏お姉様が隊長だった。副隊長が隊長になるのはまあ順当だと思う。
「はい。相変わらずメンバーは騒がしいですけどね」
「一葉さんごぶさたしてますわ」
「エリザベスさんもお久しぶりです。梨璃さんから聞きましたよ。お二人とも
一柳さんお喋りだなあ・・・。
「あ、ありがとうございます。ははは・・・」
「そういえば・・・他の方々は?」
「円は多分そうさく倶楽部に・・・咲良ちゃんは書籍棟にいます」
「あら・・・一葉さん。おひさしぶりです」
みどりが連絡したかな?お姉様まで来た。
「京夏様。おひさしぶりです」
「あ。ここだ・・・へえ・・・こんなところあったんだ・・・」
如來まで・・・。
「百合ヶ丘でも穴場なのよ。なぜか利用者が少ないみたい」
「明日香さん。この方は?」
「あーすみません。妹の如來です」
と紹介。
「一葉様ごきげんよう。瀬能如來です。よろしくおねがいしますっ!」
「こちらこそよろしくおねがいしますね」
「・・・みどり様に呼ばれて来ましたけど・・・あの・・・これって」
蘆乃まで来た。・・・みどり、あんた何したいの。奥のほうでニヤニヤしている。
「わたくしの妹の蘆乃ですわ」
「ごきげんよう。
「如來と蘆乃もLGにいるんですけど、訓練中しょっちゅうケンカして困ってますけどね」
「明日香姉様ー!それ言わないでー!」
「はいはい・・・うるさいわね」
「京夏様。他の方々は・・・」
「初花は今丁度誰かに教えてるわね。修練場のどこかにいるんじゃないかしら。灯音と琴乃は休暇日申請して実家に戻ってるわ」
どうりで・・・お見かけしないと思ったら。
「私たちも・・・リリィとして戦えなくなる日が来る・・・心の準備はしてるつもりなんですけどね」
一般的に私たちリリィは年齢とともにレアスキルとその使用できるマギ量は少しずつ減っていく。ピークは私たちの今いる2年生の17歳頃とされ、学園を卒業する頃には多くのリリィがその役目を終える、と言われている。
船田姉妹のいなくなった今、世界レベルのトップに立つのは天葉様だ。今年こそは戦技競技会で対決したい。
「おっと、時間だ。では私はそろそろ
「ごきげんよう」
一葉さんを送った後。
さて。私も腹をくくるか。京夏お姉様が私に過去を語ったように。
「ねえ、如來。京夏お姉様もいいですか?」
「姉様?」
「いいけど・・・どうしたの急に?」
「実はね・・・今まで如來に黙ってたことがあるの・・・」
急に如來が真剣な表情になった。
「それと如來にも知っておいてほしい───私がどうして京夏お姉様と守護天使の契りを結んだのかも」
「ここに来るのも久しぶりね」
「そうですね・・・」
「あの・・・ここは・・・」
「リリィの墓地よ」
「リリィの・・・」
約半年ぶりに訪れたここは相変わらずの佇まいだった。唯一違うのはいつの間にか設置された「CHARM使用禁止」の看板が増えたことぐらいだろう。よくここで野良ヒュージを何体この距離から撃てるか、とか遊んでいたのが生徒会に伝わったのだろう。
「こんなところに連れてきて何をするんです?まさか私を・・・」
「あのねえ・・・私が如來に手をかけてどうするの・・・」
「違うわよ如來ちゃん。ここは私の守護天使だったお姉様のお墓があるの」
「・・・」
急に黙り込んでしまった。
「いいのよ。もう4年前のことだから」
「4年・・・前?」
「
「話・・・だけは・・・明日香姉様も行ってましたよね?」
「そう。そこで先代メンバーだった先輩方は外征に参加した。けど・・・生きて帰ってこなかった」
「先輩方?」
「前も言ったでしょ。このLGエリューズニルは二代目なのよ。一度解散してるわ」
「そうだったんですね・・・」
京夏お姉様は続ける。
「それだけならよくある話ね。けど、その先輩方は全員お姉様の幼馴染だった・・・」
「あの・・それが・・・私になんの関係が」
「話は最後まで聞いてね。普通なら、隊長が残った私たちと今後どうするか、話し合うはずよね?」
「そう・・・ですね」
「それをすることなく私の前からいなくなったわ。自らね」
「え・・・自殺・・・」
「もちろんショックだったわ。それが元で私が大暴れして琴乃や灯音たちにも迷惑もかけた・・・それを心配してか、御台場で唯一仲が良かった
え?椛様?初耳だ。
「あの・・・京夏お姉様?それ・・・初めて聞きましたけど・・・」
「ごめん明日香。初めて語るわね・・・あのときはとにかくLGを元に戻したいって思いが強かったからね。で、私が高等部上がったときに椛ちゃんから『前に言った面倒見てた子が今度百合ヶ丘行くから』って連絡が来て、あ・・・って」
なるほど。でももっと早く教えて欲しかった。
「私たち・・・なんだかんだ繋がってたんですね」
「そうね。で、明日香はそんな私の過去を如來ちゃんに聞かせたかったわけじゃないんでしょ?」
もちろんそれもある。けど私にとっての「本題」はここからだ。
「・・・如來。今から私が話すことを聞いても怒らない?」
「・・・言ってる意味がわかんない」
真顔で言う。
「そうよね・・・。でも如來も薄々気づいてたんじゃない?」
「・・・」
「私が予備隊に入ってからのこと、よ」
「え?なんのこと?」
本当に如來は知らないようだった。
「天音・・・いたでしょ?」
「明日香姉様にやたら絡んでた・・・あの人・・・だよね?」
「ええ。その子に私は御台場から追い出されたようなものよ。天音自身がロネスネスに入りたいがために、ね」」
「え・・・」
「天音が・・・私に嘘の情報を教えてヒュージ討伐に来られないように仕向けたり、予備隊のメンバーと一切口を聞かないようにしたり、ね。予備隊の中でどんどん居場所がなくなって・・・だから・・・私は百合ヶ丘に来たの」
「うそ・・・私・・・そんなこと一言も・・・聞いてない」
「そんなの・・・言えるわけ・・・ないじゃない・・・!だって・・私は・・・如來にとって姉みたいな存在なのに・・・弱音なんて・・・」
いつか京夏お姉様が私に過去を話してくれたときのように最後のほうは泣きそうになりながら必死に声を出していた。
「私じゃ・・・ダメ・・・だったんだ・・・」
ぽつりと呟く。
「如來?」
そうじゃない、と言おうとした。その時だ。
ダッ・・・
その場から走り去ろうとした。が、その方向は・・・!
「待って如來!そっちは・・・!」
レアスキル発動!間に合うか?
ギュッ・・・
・・・危ない。なんとか間に合った。もう少しで如來が崖下に転落するところだった。が、
バンッ!
その手をはねのける如來。
「来ないでっ!」
それでも私は如來を抱き寄せ、
「離して!離してよ!」
逃げようとする如來を離すまいとする。
「違うの!如來のこと・・・信じなかったわけじゃないの・・・私が・・・私が勇気を出せなくて・・・如來に話せなかった・・・だから・・・ごめん・・・」
最後の方は涙声になりながら如來をギュッと抱きしめた。
「明日ねえ・・・」
懐かしい・・・。私が御台場中等部に入る前に如來から言われていた呼び名だ。
「如來がLGに来たときから・・・いつか・・・言わなきゃって・・・思ってた。このままじゃ、如來を騙すことになるんじゃないかって・・・」
「・・・」
「昼間、藍ちゃんの件の後・・・私がベスとケンカしたじゃない?そのときに話したの。正直に話したほうがいいよね・・・って」
「・・・もっと」
「・・・」
「もっと私を頼って欲しかった・・・!いつも近くにいたのに・・・。明日ねえが百合ヶ丘に行くって言ったとき、すっごい嫌で・・・あのときは強がって『1人で頑張れるよ!』なんて言っちゃったけど・・・ホントはすっごい寂しかった」
「如來・・・」
「だから私・・・無理を言って百合ヶ丘に来たんだよ?明日ねえに会いたくて・・・コーストガードからの誘いも断った」
如來の実力だったらヅ御台場の3大LGでも十分やっていけただろう。けど私のために・・・。
「ねえ明日ねえ・・・約束して?もう如來から離れない・・・って・・・」
「ええ。約束するわ・・・」
そして───
「うわああああああああああああああああああん!」
私の腕の中でしばらく泣きじゃくっていた。
「・・・落ち着いた?」
「・・・」
無言で頷く。
「もうひとつ話しておくわね。私と京夏お姉様がどうして守護天使を結んだのか」
入学式2日目に手合わせを申し込まれたこと、LGに入り初陣で京夏様に助けられたのが決め手になったこと。明日ねえが昔負傷させられたヒュージがレストアとして再び現れて駆逐した際、マギを使い切って倒れてしまったこと。明日ねえが精神状態不安定で任務中に飛び出してしまい、またしてもマギを使い切って倒れてしまったこと、など、いろいろ聞いた。
「如來ちゃん・・・この1年寂しかったのね」
「・・・だと思います。それに気づくのにちょっと時間かかっちゃいましたけど」
如來が落ち着いて寮に戻った後。まだ私たちは墓地にいた。
「ところで明日香?」
京夏お姉様のこの目は・・・なにか悪巧みを考えてる時だ。ロクなことがない。
「はい?」
「新館のあの事はもう教えたの?」
「・・・先に釘刺しておきますけど、如來に変なこと教えちゃダメですよ?あの子純粋だし・・・私より鵜呑みするタイプだから」
「なーんだ・・・」
あからさまにガッカリしている京夏お姉様。
「なーんだ、じゃありません。あの子そういうのホントダメですから。例えるなら咲良ちゃんと同じぐらいかな」
実は1度だけ京夏お姉様とその・・・したことがあるのだが、とにかく激し・・・じゃなくて!
「確かに恋愛感情に走るリリィもいますけど・・・私と如來は・・・今の関係のままでいいかな・・・って」
私は普通の恋愛もだが、リリィ同士の・・・そういう関係もありだと思っている、所謂