トントン・・・
「来たわね」
ガチャ・・・
時間より少し早く
「いらっしゃい。円は咲良ちゃんの部屋にいるわ」
「・・・咲良様?」
「女子会だって。元々そういう話があったみたい」
「へえ・・・」
「・・・如來。こっちおいで」
ベッドの上に来るよう布団上を叩く。
「明日ねえ・・・ううっ・・・うあああああああああああああああああああああああああん!!」
そのまま私の膝の上に顔をうずめて泣き出してしまった。
かつての結夢様のように。如來には自分の気持ちを閉じ込めずにいてほしい───そうなってほしくない。だから部屋に呼んだのだ。
「私・・・どうしていいかわかんないよおおおおおおおおおおおおおお!」
「・・・ホントはね。今日、2人きりで過ごすつもりだったのよ。昔の思い出とか話しながら今後についてとか・・・さ。そしたらベスが食いついてきてさー。『わたくしも連れて行ってくださいまし!』だってさ」
「・・・なんで」
泣きそうになりながら如來が口を開く。
「琴乃様のところも最初から行くつもりだったけど、綾子さんにいきなりケンカ売られるなんてね・・・」
「なんで明日ねえはそんな落ち着いてられるの!なんで・・・」
如來を抱き寄せる。
「バカ!・・・そんなわけないでしょ。泣きたいのは私だって同じ・・・何年一緒だったと思ってるのよ」
「え・・・」
「けどね如來・・・前に京夏お姉様に言われたことがあるの・・・。『もう少し大人になりなさい』って」
「うそ!」
「うそじゃないわよ・・・如來にも前に話したでしょ?リリィを殺めそうになったこともあるって・・・」
「・・・」
「如來も、もう少し大人になりなさい。今の如來は情に入りすぎる。今のままじゃ如來も・・・私みたいに同じ過ちを繰り返してほしくないの」
「私・・・今でも明日ねえがあんなことしたって信じられない・・・」
「それでも・・・信じられないのなら生徒会の誰かに聞いてみたら?祀様なら教えてくれると思う」
生徒会の名前を出した途端黙ってしまった。
「それともうひとつ───」
如來のおでこにキス。
「えええええっ!?」
顔を真っ赤にする如來。
「誕生日おめでとう。こんなドタバタになるなんて思いもよらなかったわ・・・」
再び如來を抱き寄せる。
「あ・・・あ・・・」
口をパクパクさせている。あのときの私と同じだ。
明日香さんと話した後。私は部屋の中で1人悶々としていた。
確かに明日香さんのことをライバル視はしている。と同時に良き友人でもある。
部屋はお父様を説得して普通の部屋にしてもらうことにした。それでも相部屋ではないのだが。
トントン・・・
「ベスちゃーん」
・・・
「開いてますわ」
ガチャ・・・
「ごめんね。急に押しかけて」
「・・・よっ、お嬢」
円さん・・・と、みどりさん?
「珍しい組み合わせですわね・・・」
「珍しいって・・・あたしは腫れ物扱いかよ・・・」
「そういうわけでは・・・で、何か用ですの?」
「あさって
「それがどうかしまして?」
「実はね・・・」
と私に耳打ちしてきた。
「なるほど・・・」
実はすでにプレゼントは確保していて、後は渡すだけ・・・のつもりでいたのだが・・・。
「ベスちゃん周りから見てバレバレだよ?」
「何が・・・ですの?」
「ほんっと自覚ないんだな・・・」
「だから!何が・・・と聞いてるんです!」
「そういう素直じゃないところだよ。お嬢だって自覚してるんだろ?」
「う・・・」
私自身は隠せてるつもりでいたのだが・・・やはり私は人と接するのが下手ということだ。
「・・・私だって」
さすがにもう限界だろうか。
「私だって好きでこんなになったわけじゃないわよ!」
「べ、ベスちゃん!?」
「お嬢!?」
普段明日香さんにしか見せない素顔。
「ごめんなさい・・・驚かせて。普段お嬢様ぶってはいるけど・・・これが素の私」
「そ、そう・・・なんだ・・・」
「普段とのギャップが・・・」
みどりさんをキッと睨みつける。
「いや、だからって馬鹿にしたりしねえよ・・・ただ、意外・・・だったからさ・・・お嬢ってもっとこう・・・人付き合い慣れしてるのかと思った」
「人付き合い慣れなんか・・・してない・・・今はもう平気だけど・・・メルクリウスにいた頃は最初の頃の藍さんみたいな感じだった」
「え・・・」
「百合ヶ丘に来て・・・初めてできた友達が明日香さんと円さん。だからすごい嬉しかった。
まさか円さんたちに守護天使になった経緯を話すことになるとは。
「だからあんな・・・1週間も李組の教室でストーカーまがいなことしてたんだ・・・」
「え・・・そんなんしてたのかよ・・・さすがに引くぞ・・・」
「正直あれはやりすぎた、と思ってる。けどおかげでグランギニョル社内で問題になっていたことも分かったから・・・」
「問題?なんの?」
「円さんたちには関係ないわ。楓さんにも黙ってもらってるから」
さすがにあのCHARMの話を
「・・・話が反れましたわね。そんなわけで、わたくしの性格はそんなですから、今更変えるだなんて・・・」
「そんなこと一言も言ってないぞ?」
「別に悪いともなんとも言ってないよ?」
「ほんと、勝手な思い込みするところもお嬢の悪いとこだよなー」
「だからそれはっ!」
明日香さんにも散々注意されているが、そこを直せ、ともなんとも言われないのでそのままにしていた。
「なんだ・・・結局
「ベスちゃんは蘆乃ちゃんとどうしたいの?」
「私は・・・」
私は・・・蘆乃とどうしたいんだろう?
「で、明日香隊長のところにお泊りした、と」
「別にいいじゃんかー」
翌日の会話。
「そうか・・・明日香隊長とそういう関係なのか・・・」
「だから何もないって言ってるでしょ!」
朝から
「ホントかなー?私たちに黙ってるだけでホントは激しい夜を・・・」
「因悦・・・しつこいよ?」
「ダメだよ如來ちゃん!CHARM出しちゃ!」
いくら悪ふざけとはいえCHARMはやりすぎた。昨日も明日ねえに注意されたばかりじゃん・・・。
「・・・おはよう」
蘆乃は相変わらずそっけない挨拶だ。同じLGなんだからもう少し馴れ合いをしてもいいと思うんだけど・・・。
「おはよう蘆乃。なんか冷たいー」
「別にそういうつもりはないわ。ただ、ベタベタするのは違うって思ってるだけ。ていうか、だいたい、如來が明日香隊長とベタベタしすぎなのよ」
「どうだか。実はこっそり櫻子様とベタベタしてたりして?」
「・・・」
冷たく刺さるような視線。蘆乃が本気で怒っている時の目だ。
(やっば・・・言い過ぎた)
「冗談・・・冗談だって・・・」
「ふんっ・・・」
とプイとそっぽを向く蘆乃。
これは後で何かお詫びをしないと。
昼食の時間になり、藍ちゃんと合流。
「蘆乃ちゃんに謝らないの?」
「謝らないもなにも・・・どこにいるかわかんないもん・・・」
「教室隣だよ?それに演習時間もかぶってないし」
とは言うが、結局訓練前まで蘆乃を見なかった。
「・・・私も、自分を出せればいいのに」
2年生のラウンジにいた。
櫻子姉様と
形式的に仲がいいように見せているだけなのかもしれない。
「・・・蘆乃。どうしてここに?」
櫻子姉様に会いに来た、なんて素直に言えない自分が悔しい。
「一緒にお昼食べようと思ったので」
「・・・ほんと、誰かさんそっくり」
櫻子姉様!?
「素直になれないところはそっくりだと言ったんです。会いに来たなら来たとはっきりおっしゃればいいのに」
今日の櫻子姉様は違う気がした。
みるみるうちに顔が真っ赤になる。
「で、どうしまして?」
「えと・・・あの・・・ここじゃ話にくいので・・・後で足湯へ」
食事を済ませ、櫻子姉様と足湯へ。
「すみませんわざわざ」
「いいんですのよ。気にすることはありませんわ」
そして、姉様の後ろから抱きつく。
「蘆乃!?」
「・・・ごめんなさい姉様。今朝、如來の話を聞いてたらその・・・羨ましくて、つい」
「如來さん?」
「私・・・如來みたいに感情を表に出すのは苦手なので・・・だからこんな形でしか・・・・」
「それは・・・私も同じよ・・・」
「姉・・・様!?」
今なんて・・・!?
「ごめんさない・・・驚かせたわね・・・これが本当の私。蘆乃には知っておいてもらいたいから」
「・・・はい」
櫻子姉様の素顔をやっと初めて知った気がする。
午後の講義が始まるまで一緒に過ごしていた。
「まったく・・・如來と蘆乃はどこ行ったの?」
訓練の時間・・・なのだが、いつも一番乗りで控え室にいる如來と蘆乃の姿がない。
「さあ・・・そのうち来るんじゃありません?」
その様子だとベスも知らないようだ。困ったな・・・。
携帯端末の位置情報から探すか・・・と思ったが2人とも位置情報を切っている。
「みどり、悪いけど探しに行ってもらえる?」
「えー、ヤだよめんどくさい」
「みどり・・・今日は特に蘆乃いないと困るのよ。どういう意味か分かるわよね?」
とベスのほうをちら見する。
「え・・・お嬢関係あんの?ならしゃあないか・・・ちょっと行ってくる」
レアスキルを使いそのまま探しに行くようだ。
「・・・明日香さん、みどりさん騙すの上手くなりましたわね」
「騙すって・・・」
「いいのいいの。あれぐらいやらないとみどり乗ってくれないから。1年のときはあれよりもっとひどかったのよ?」
「そうなんですか?」
「とにかく訓練はサボる、訓練中は非協力的、で、運動神経いいから余計たちが悪かったのよね」
「なるほど・・・」
自分で作ったクッキーを食べながら喋る。琴乃様みたいにもっと美味しくできないかなあ・・・。
とりあえずはみどり待ちだ。
「まったく世話が焼けるなあ・・・」
あたしが1年のときは自分が探される側だったが、2年に上がり逆の立場になるとは。
ラッキー。灯音様発見。
「ごきげんよー灯音様」
「みどり・・・?どうしたの?」
「ちょっとお願いが・・・」
事情を説明する。
「なるほど・・・」
「ただ縮地使って闇雲に探しても見つからないと思うんで探す手伝いを・・・」
「わかった」
といい、目を赤くしレアスキルを発動してもらう。
「いたよ・・・山
旧館の裏?あんなところに用なんてないだろうに。
「ありがとう灯音様」
礼を言い急行する。
現場に着いた。やっぱりケンカしている。CHARMを抜かない言い争いならまあいいか、と思っていた。
「知らないわよ!」
が、いつものケンカと様子が違う。
「私だって・・・あの出来事がなかったらこんな風にはならなかった!あんただってそうだったでしょ?」
「・・・わかんない」
「わかんないってなによ!」
「・・・言葉の通りだよ。私さ、小学校上がる前に両親亡くしてるんだ。それでおばあちゃん家に引き取られて・・・近所に住んでた明日ねえと初めて会った」
そっか・・・如來が明日香にベッタリなのはそういうことなのか・・・。明日香が如來に熱を上げ気味な理由も。
「だから明日ねえはホントのお姉ちゃんみたいな存在。憧れもだし、私の理想」
「だから何!自分だけ悲劇のヒロイン気取り?冗談じゃないわ!」
「なら蘆乃にとって櫻子様はどういう存在?自分の母親から逃れるための緩衝材?なら聞いて呆れるわ・・・守護天使も偽りってことよね?」
どうする?これ以上は最悪の事態になりかねない。
「偽り?意味わかんない!話が跳躍してるし。大体私の守護天使とあんたと関係ないじゃない!」
仕方ない、少々強引だけどやるか。レアスキル発動!
2人に近づき、
バッ!
「「みどり様!?」」
お互いの両手を掴み、無言のままLG控え室へ。
「ほい。連れてきてやったぞ。なんかまたケンカしてたけどな。お前らよくするよなあ・・・」
またケンカしてたの・・・。怒りを通り越して呆れてしまう。
「ベス。悪いけど今日は隊長代理お願い。2人と話するわ」
「え・・・わたくしは一緒じゃないんですの?」
「あんたがいると事がややこしくなりそうだからダメ。ホントは今日ノインヴェルトの訓練するつもりだったんだけど・・・別メニューにするわ」
と、メモを取り出し簡単に箇条書きして手渡す。
「わかりましたわ。全くいつもいつも面倒事ばかり・・・」
ぶつぶつ言いながらも素直に従うのはベスらしいというか。
「他のみんなも準備して?」
2人ともしょんぼりしている。
他のLGメンバーを見送り、3人だけになった控え室。
「で?」
「・・・」
2人とも黙っている。
「蘆乃、お母さんのことでも言われて頭に血が上った?」
「・・・なんで知ってるんですか」
「私はLG隊長よ。LGメンバーのことを知る権利があるわ」
ホントはニ水さんからおおまかなことを聞いたのだが。
「如來、あんたもあんたよ。言っていいことと悪いことがあるわ」
「私は何も言ってない!ただ蘆乃が素直にならないからその・・・」
私がため息するなり、
「・・・如來は如來、か。たかだか1年ぐらいで変わるとは思ってなかったけど」
「なんの話ですか?」
「これから1週間2人には私のやってることに付き合ってもらうわ」
「え・・・」
2人とも声を上げる。
「如來は早朝ランニング、は蘆乃は私の秘密の特訓にね」
「・・・ヤだ」
最初に文句を言ったのは如來だ。
「私も秘密の特訓がいい・・・」
そっちの文句か。ダメダメ!ここで折れたら如來を甘やかすことになってしまう。怒ろうとしたときだ。
「うっ・・・」
少しクラクラした。立ち眩み?ベスの言うとおり少しムチャしすぎてるのかな私。
「明日香姉様大丈夫?」
如來に心配だけはかけさせたくない。
「大丈夫・・・ただの貧血よ」
気を取り直し、
「如來。それじゃあんたへの罰にならないから意味ないわ。蘆乃もそれでいい?」
「はい・・・問題ありません」
「むう・・・」
如來は納得行ってない。
「とにかくこれは隊長命令よ。分かった?」
「はい・・・」
如來はともかく、蘆乃からいろいろと聞きたいことがある。
翌日。
新館の如來の部屋の前。ちなみにだが、私が使っていたB棟の45室だ。
ガチャ・・・
いかにも眠そうに目をこすりながら如來がでてきた。
「おはよう・・・眠い」
「眠いのは私だって同じ。さ、行くわよ」
これは前々から思っていたのだが、如來は基礎テクニックはあるものの、持久力がからっきしダメということ。京夏お姉様が隊長のときは訓練の半分を体力作りに時間を割いていた。これは私の至らないところだとは思っている。
1周走り終わってから。
「あの・・・一ついい?」
「なあに?」
「これ毎日やってるの?」
「そうよ。それがなにか?」
「う・・・」
言葉に詰まる如來。
「如來の欠点。短時間でなんとかしようとしてるところ。30分・・・とは言わないけど、せめて連続で15分は戦えないとね」
「さ、30分って・・・」
「去年対外手合わせで
「す、すごすぎる・・・」
「で、今の私に足りないものは・・・って考えたときに持久力だ!ってことに気づいて、それから毎朝走ってる」
「・・・やっぱりかなわないや。なんでもこなして、みんなのことをちゃんと見てて」
「私は・・・天葉様みたいな才能もないからね。さ、走るわよ」
「はーい・・・」
百合ヶ丘の学園の敷地は一周すると3キロ近くある。2周もすれば大体30分ぐらいだろう。
走って戻ってきた時だ。
「あ、足が動かない・・・」
「ホントだらしないわね・・・ヒュージと長期戦になったときどうするの。こんなもんじゃ済まないわよ?」
「それはそうなんだけどさ・・・やっぱりスパルタだあ・・・」
言いながらそのまま倒れ込む如來。
今日の訓練は実は軽めにしてある。少し緩めかなーとも思っているがまあいい。
訓練後、蘆乃と一緒にとある場所へ。
「あの、ここって・・・」
以前ノインヴェルト戦術の初練習をしたときに訪れた切り通しだ。ただし、狭いところではなく、穴がある広いところがあるのだが、そっちだ。
「切り通しね。大昔の通路だったところよ。はいこれ。普通の訓練弾じゃなくてこっち使ってね」
「・・・?」
蘆乃は不思議がっているが、とある特殊弾を渡す。
「普段はいつも1人でやってるけど、蘆乃なら平気かな」
「・・・意味がわかりません」
「まあいいわ。私が手本見せるから。何をどうやってるか見ればわかるわよ」
ガチャン!
タングズニルをシューティングモードにして。切り通しの壁に向かって、
ダンッ!
1発撃つ。通常壁に激突すればそのまま爆発するのだが、瞬間マギスフィアを帯び、跳ね返ってきた。
私のほうに飛んでくる。
「ふっ!」
上手くかわす。そして別の壁に激突し、跳ね返って再び私の元へ。
グンッ!
今度は避けずにそのまま受け止め、切り通しの通路へ投げる。
マギスフィアはそのまま消滅していく。
「これって・・・」
「反射神経を養う訓練ね。いずれ組み込むつもり・・・なんだけど、この特殊弾・・・数があまりないのよ・・・。蘆乃の欠点は攻撃のテクニックは申し分ないけど、攻撃の判断で躊躇して防御まで回らないことがあるわ」
蘆乃はテクニックは抜群なのだが、反撃のとき一瞬迷うところがある。
「・・・よく私のこと見てますね。櫻子姉様がライバル視するだけはあります」
ここでベスが出てくるとは思わなかった。
「と、とにかくこんな感じ。やってみて」
「はい」
ダンッ!
蘆乃が特殊弾を撃つ。
壁に激突しマギスフィアに変化。ちなみに失敗して当たっても怪我をすることはない。
「ひゃあ!」
バンッ!
「いった!」
そのまま腹部に直撃した。
ああそうか。サブスキル恩恵もあるのか。レアスキルでも鍛え方次第ではサブスキルが覚醒することもある。
「そのうち慣れるわ。もしかしたらサブスキルが覚醒するかもね」
持ってきた特殊弾を使い終わり、その帰りでのことだ。
「あの・・・明日香隊長」
「何?蘆乃」
「私にこんな訓練させる・・・以外の目的もあったんですよね?」
・・・この子には嘘は通用しないらしい。
「そうね。ベスから聞いたわ。お母さんと仲が悪い、って。如來と揉めたのもそのことでしょ?」
「それは・・・ちょっと違います」
蘆乃が口を開く。
「確かにあの人とは仲が悪いです。けど、如來とケンカしたのは・・・如來の誕生日に隊長の実家に押しかけたじゃないですか。それで・・・私と櫻子姉様が偽りの守護天使なんじゃないかって・・・突然言い始めて・・・それで・・・」
」
偽りねえ・・・。
「あの子時々突拍子もないこと言いだすからね。気にしないで」
「いいえ。そこは気にしないので」
「で、明日だけど・・・訓練同様なしでいいわ」
「え・・・いいんですか?」
「ええ。元々そのつもりだったしね。せっかくの誕生日なのに台無しでしょ?」
「そんな・・・命令は命令なので・・・」
「私もね・・・少しやりすぎてるな・・・って思ってるところがあって・・・あ、訓練じゃなくてね。ちょっと見直したいのよ」
「はあ・・・」
「だから遠慮しなくて大丈夫よ」
「・・・はい。ありがとうございます」
「何かいいことあるといいわね」
今日は私の誕生日だ。
「おはよう蘆乃ちゃん」
藍?珍しい子が私の部屋の前にいる。
「お、おはよう・・・」
「如來ちゃんは明日香隊長と一緒にランニングした後でクタクタだから遅れるって」
「そ、そう・・・」
明日香隊長そこは甘やかさないんだ・・・。もしかすると怒らせると怖いタイプなのかもしれない。
「ねえ、今日訓練以外で何かある・・・とか聞いてない?」
「どうしたの急に?」
ダメだ。完全に不思議がられてる。藍は今日私が誕生日だってこと知らないんだった。
「ごめん、なんでもない・・・」
「変なの」
今日は講義より演習が中心だ。けど、
「あいたっ!」
「
指導官に注意されてしまった。櫻子姉様から何もなくて集中出来ない、とは言えない。
「蘆乃ちゃん」
・・・円様?
「なんでしょう?」
「ちょっとこっち来て」
と、円様に2年生のラウンジまで引っ張ってこられた。
「はいこれ。お誕生日おめでとう」
え?少し大きめの包み紙を手渡される。
「・・・私の誕生日知ってたんですか!?」
「ベスちゃんから教えてもらったの。去年は明日香ちゃんにカエルの置き物作ってプレゼントしたんだよ?」
「中、空けてもいいですか?」
「いいよ」
とニコニコしている円様。
包み紙を開ける。
すごい!チャーミィリリィのぬいぐるみだ。こんな大きさのぬいぐるみなんてどこにも売ってない。デフォルメされているので愛嬌もあって、しかもかわいい。ということは円様の手作り?
「ありがとうございます!あの・・・チャーミィリリィが好きって誰から・・・」
「ミリアムさん?」
・・・何日か前に櫻子姉様と一緒にミリアム様の工房には行ったが、それにしては作るの早くないですか?
そこはツッコミどころではないのでまあいい。
「でもうれしいです。大切にします!」
円様と別れ、桜子姉様を待つも来る気配がない。
その後。
「・・・どうしたの?」
明日香隊長・・・。
「あの・・・櫻子姉様は?」
「え、今日ベスと会ってないの?」
私は泣きそうになりながら無言で頷く。
「ベスならさっき1年のラウンジに行ったわよ?」
私は明日香隊長に一礼をし、ダッシュで1年のラウンジへ戻る。
1年のラウンジなんていつぶりだろう。よくここで明日香さんと円さんでお喋りしていた。
普段何もないときはここで蘆乃は勉強をしていると聞いたが・・・。
「・・・いませんわね」
「あ。ごきげんよう櫻子様」
藍さんだった。
「蘆乃を見かけませんがどちらに?」
「蘆乃ちゃんならさっき円様と2年生のラウンジへ行きましたよ」
円さんと?そういえばプレゼントを用意してたはず。
仕方ない。向こうに戻ろう。
「・・・あれ?」
大急ぎで戻ってきたが、いない・・・。
「あ。蘆乃だ。櫻子様と一緒じゃないんだ?」
如來・・・一番言われたくないセリフ。頭に血がのぼる。
気がついたらCHARMを抜いていた。
「・・・何か文句でも?」
「ちょ!待った待った!なんでCHARM抜くの!?」
「あ・・・ごめん・・・」
完全に周りが見えていない。慌ててCHARMを元に戻す。
「つまり、櫻子様とすれ違いで今日全く会えてない、と」
泣きそうになりながら無言で頷く。
「あのさ蘆乃。なんのための携帯端末?」
あ・・・今の今まで忘れていた。普段使うことがないというのもある。
「もしかして・・・使ったことがないとか?」
如來を睨みつける。
「冗談だって・・・じゃあ今まで予備隊とかの連絡ってどうしてたの?」
「どうって・・・」
予備隊のときは・・・直接集まるか、近くに因悦が居ることが多かった。それは今も変わらないのだが。エリューズニルに入ってからは端末で連絡をもらってはいるが、メッセージではなくメールで見ることが多い。
「因悦から直接聞くことが多くて・・・どうやってたかは知らない」
如來がため息をつくなり、
「しょうがないなあ・・・端末貸して?」
と私に端末を出すように促してきた。この際文句言ってもしょうがないので素直に従うことにする。
「・・・」
無言で端末を渡す。
すると如來自身の端末を見ながら勝手に操作しだした。
「ちょっと!」
「はいはい・・・いいから」
そしてぶつぶつと言い始める如來。
「うわ・・・これじゃ誰からも連絡来るわけないじゃん・・・これをこうして・・・」
しばらくしてから、
「これでよし。後は・・・」
「ちょっと。返して!」
「うるさいよ。もうちょっと・・・」
如來にあしらわれた・・・。
「返してって言ってるでしょ!」
如來に言うも、
「あのね・・・勘違いしないでよ?あんたのためにやってるの!」
「・・・私?」
「そうだよ。ていうか、なんでLG入ってるのに誰とも連絡先交換してないの?」
確かにそのとおりだ。何も言い返せなかった。
「・・・ごめん」
「・・・謝るぐらいなら最初から交換すればいいのに。はい終わったよ。他のLGメンバー全員分登録したから」
扱い乱暴だな・・・。如來のやつ、端末を投げ返してきた。予備隊時代、因悦と亡くなった麻友、当時の予備隊隊長ぐらいしか連絡先は交換しなかった。
「じゃ私は明日ねえの所行くから。後は自分で頑張れ。今日誕生日でしょ?」
とだけ言い残し、如來は行ってしまった。自分で頑張れ、か。
しばらく端末と格闘すること10数分。ようやく文章を打ち終えたときだ。
「・・・蘆乃」
櫻子姉・・・様?
「どうしてここが・・・」
「何をおっしゃいますの。自分でここだって言ったじゃありませんか」
「え・・・私何も・・・」
慌てて端末の送信履歴を見る。すると───
『如來から連絡先を聞きました。今1年のラウンジにいます』
如來の仕業だ。まったく私に黙ってこんなことまで・・・。すると、
「あの・・・姉・・・様!?周りが見てます・・・」
櫻子姉様が私を抱きしめる。
「別に恥ずかしがることはありませんわ。わたくしたちは守護天使と妹なのですから」
「・・・それでも恥ずかしいものは恥ずかしい、です」
顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かる。
「・・・嬉しいのよ。あなたがはじめて私にメッセージくれたことが」
小声で私に囁く。一昨日私に見せてくれた素顔。素直に喜んでくれているのだ。
「・・・はい」
これは如來から私へのプレゼントだ、ということにしておく。
「なんだ、蘆乃デレッデレじゃん」
今日思ったこと。藍ちゃんはキッカケがなかっただけで、普通に会話できるようになった。今では友達もできたらしい。対して蘆乃は自分から話しかけない、メンバー以外とは必要最低限の会話しかしない、と言った感じだ。
本人曰く自ら断った、とは言っているが・・・。
「・・・覗き見とか趣味悪いわね」
「うわあっ!あ、明日ねえ」
私がこっちのラウンジ行こう、と声をかけて呼んだのだが・・・まさかこんな展開になってるとは思ってもいなかったので、つい物陰に隠れて見ていたところを降りてきた明日ねえに見つかったわけだ。
「予想外の展開だった、ってところかしら?」
「う・・・」
明日ねえするどい・・・。
「連絡先までにするつもりだったの!どうせ蘆乃のことじゃすぐ入れないと思ったから、つい・・・」
「ケンカしてる割にそういうお節介好きよね」
「う、うるさい!いいじゃん別に・・・」
「はいはい・・・夫婦喧嘩はなんとやら、ね」
「ひどい・・・」
ともあれ、私と蘆乃は姉同士が親友であり、お互い妹だ。そしてLGメンバーでもある。明日ねえは私を次期隊長にしたいらしいが、それはどうなるかわからない。これからの私次第というところだろうか。
だからといって甘えていいわけじゃない。私自身リリィとして・・・人としてまだまだだと思っている。もっとがんばらなきゃ。