現場に到着してみた。これは・・・。
GYAAAAAAAAAA!!
確かにスモール級の数が尋常じゃない。
「うわ・・・なんだこれ・・・あの時の悪夢が蘇るんだけど・・・」
とはみどりだ。
「悪夢って?」
「去年の同じような時期に、スモール級が大量に出たことがあるのよ・・・100以上は確実にいたわ」
「え・・・」
「100って・・・」
今回はそれをはるかに上回る数だ。しかもミドル級もいる。
「明日香隊長。ありがとうございます」
煌糜が礼をする。
「おおよその数って分かる?後ケイブの有無」
パルパスには鷹の目使いのリリィがいるはずなのでほぼ正確に把握できるはずだ。
「えと・・・おそらくスモール級で250近く・・・ミドル級は大したことないみたいです。ケイブも複数確認済なんですが・・・うちには天の秤目使いがいないので・・・」
「了解。円!早速よろしく」
「えっと・・・誰がそうなのかな?」
とりあえずケイブを破壊しないことには始まらないので鷹の目使いの子を探す。
「私・・・です」
と黒髪に三編みのリリィが手を上げる。
「どの辺り?」
「ここから4キロ近く離れてます。ただ、海岸線沿いなので風さえなければ大丈夫かと・・・」
「分かった!」
フォン・・・
右手をかざしてCHARMを起動させる。
ガチャン!
シューティングモードに切り替えて構える。
そしてレアスキルを発動。
(うわあ・・・風が・・・)
ケイブ付近は強風。この横風だとかなり弾は流されるはず。追い風なら有利に働くんだけど・・・。
とはいえ文句を言っても始まらない。
(どうする?流される分計算して少しずらす?)
ケイブ自体の規模はそれほど大きくない。数発で消滅するだろう。
パンッ!
試しに空撃ち。どの程度流れるか。
(うわ・・・結構流されるなあ・・・)
それを計算した上で少しずらす。
(これで行けるはず・・・)
トリガーを引く。
パンッパンッ!
(よしっ!)
ケイブの消滅完了。
「ケイブの消滅確認。見事です!円様」
「他のメンバーってどうしてるの?」
「私と映美以外総掛かりでスモール級に対応してます・・・」
映美さん───鷹の目の子か。
「じゃあ藍ちゃん」
「はい」
「今回大暴れしてもらうわ。発動させた後って後遺症どうなの?」
「えっと・・・私は大丈夫です。発動中の記憶のほうが気になりますけど・・・」
「とにかく数が多いわ。如來と円はなるべく遠くのやつを狙って。私もなるべく遠くに集中するわ。因悦とみどり、咲良ちゃんはパルパスの他メンバーのサポート、ベスと蘆乃は藍ちゃんと一緒にガンガンやっちゃって」
「はい!」
「後円はオーバーヒートさせないようにね」
「明日香ちゃんひっどーい!」
「え・・・オーバーヒートって・・・CHARMのですか?」
因悦だ。
「そうよ。オーバーヒートは2つパターンが考えられるわ。1つはマギの受給量は多くないんだけど、累積で溜まって起きるパターン。もう1つは去年のみどりみたいに一度に大量のマギを受け取ってCHARMが耐えきれなくなる場合ね」
「なるほど・・・」
「そんなわけでみんな行くわよ」
「はははははは!あっははははははは!」
今まで何人か酔狂の月のトランス状態は見てきたが、その中でも藍ちゃんは異質なほうだと思う。
次々と駆逐していく。
さて、私たちは確実に仕留めていこう。
「如來は右側エリア、円は一番奥を狙って。私は左を狙うわ。数が多いからなるべくマギは節約して」
「わかった」
「オッケー」
パンッ!パンッ!パンッ!
「ホント・・・みどりじゃないけど、確かに去年の悪夢よね・・・・」
撃ちながらの会話。
確実に仕留めてはいる。
「ねえ・・・前から気になってたんだけど、明日ねえと円様ってどうしてそんなに仲がいいの?」
如來からの質問。このタイミングで聞くことではないと思うけど・・・。
「どうって・・・うーん・・・なんでだろう?」
「えっ?明日ねえも分かってないの?」
「どっちかっていうと私かな・・・」
「円様?」
「多分だけど・・・私が不安で押しつぶされそうだったから・・・紛らわすのに明日香ちゃんに話かけてたんだと思う」
「結局してもしなくても同じ部屋で同じクラスだったんだけどね。おっ!と・・・」
パンッ!パンッ!
「元々私も・・・話すの大好きだったし、早く友達作りたい!って思ってたから・・・」
確かに円は私よりも友達は多い。コミュ力オバケ・・・とまでは言わないけど、それに近いと思っている。
10分後、
「ああああああ!あきたあああああああああああああ!」
如來が文句を言いだした。
「あのねえ・・・これは遊びじゃないのよ?」
諭すも、
「だって同じことの繰り返しだよ?やってて面白くないもん!」
もう何体撃っただろうか。一向に終わりが見えない。
一方のベスと蘆乃のほうだが───
「くっ・・・!」
「おっ、終わりが見えませんわっ・・・!」
やはり数で苦戦していた。
そして・・・。
「誰も気づかない・・・?まさかね・・・」
今はいつものタングズニルではなく、京夏お姉様が使っていたダインスレイフ・カービンを使っているのだが・・・私に気を使って何も言わない?
「ねえ?みんな・・・私に気を使わなくていいわよ?」
パンッ!パンッ!
「分かってたんだ?だよねえ・・・コア付け替えたの?」
「違うわ。書き換えたの。だからって2つ同時に扱えるわけじゃないけど」
「書き換え?」
「そ。契約のときと同じ要領でやれば更新されるわ」
普通はまずやらないんだけどね。
藍ちゃんのほうに目をやる。
「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・数・・・多すぎっ!」
もう何体倒してるのだろう・・・息が荒い。それでも半分近くは行ってると思うが。それでもマギ切れは起こしていないらしい。強化リリィ故の強みか。
すると、
「えっ!?」
「な、なに!?」
パアアアアア・・・
ミドル級の1体が突然光りだした。
GYAAAAAAA!!
大きい叫びとともに残りのヒュージが光に吸い寄せられていく。まさか・・・!?
「煌糜、ノインヴェルトを覚悟したほうがいいかもしれないわ!」
「はい・・・」
GYAAAAAAA!!
ヒュンヒュン・・・
大量のマギスフィアが飛んできた!
「うわあっ!」
「みんな大丈夫!?」
必死にみんな避けている。
「藍ちゃん気をつけて!負のマギに侵されたら大変よ!」
が、当の藍ちゃんの様子がおかしい。
「う・・・ううっ・・・」
負のマギの影響の前兆か?
「因悦!藍ちゃんをどこか安全なところへ!」
「はい!」
ヒュージからなるべく見えないところへ避難してきた。
パアアアアアア・・・
指輪同士の手を繋いでマギ交感。
「大丈夫?」
「う、うん・・・」
私のレアスキルとの相乗効果で藍ちゃんが楽になってくれればいいんだけど・・・。
「マギ交感って普段からしてる?」
「・・・強化リリィになってからは一度も」
「そう・・・」
「負のマギの影響を受けにくいっていうのも知ってたから・・・接術は甘んじて受けたけど・・・危なかった・・・ありがとう因悦ちゃん・・・」
酔狂の月使いは負のマギの影響を受けやすいのは知っている。けど、藍ちゃんみたいな受けにくい子でもこうなるってことは相当ってことだ。
「な、なに・・・これ・・・」
目の前で起きていることが信じられない・・・。
「ヒュージ同士の共食い・・・」
正直見てられるものではなかった。まだ無機質化する前の段階なので「あの」強烈な臭いはないのだが、それでも見ていていい気分はしない。
「う・・・」
パルパスメンバーの大半が目をそらしている。
「・・・ヒュージの共食い、いつ見てもいい気分はしませんわね。まだ臭いがないだけマシですが」
まああれだけいれば起こらないはずはない。
「何かのキッカケでケンカになったんだろうな。あたしも共食いは初めて見た」
とはみどりだ。
「とはいえ見てても何も始まらないわ!早く片付けましょう!」
結局───
18人総掛かりで駆逐するのに半日近くかかってしまった。
「飯、食いそびれちまったな・・・けどこれうめえ。明日香、あたしんとこにもいくつかくれよ」
「今回は仕方ありませんわ・・・あれだけの数のヒュージですもの」
「明日香ちゃんの夜食がこんな形で役に立つなんてね」
「すみません・・・ホント助かりました」
「別にいいって。困ったときはお互い様、でしょ?」
寮に戻ったのは20時過ぎになってしまった。如來たちは天上の間の入浴時間に被ってるので運良く入れていると思うが私たちは・・・。
オマケに食堂の時間も過ぎてしまったため、実家から送ってもらったラーメンを5人がラウンジで食べている、という次第だ。
「みどりは連絡先教えるから自分でなんとかしなさい。人からたかろうとかダメな人の典型よ」
「えーケチー。LGメンバーのよしみでなんとかなんないの?ていうかお嬢はただでもらってんじゃん」
「ベスはいいの!」
「なんだよそれ。ただのえこひいきじゃん」
「ごきげんよう。こんな時間にどうしたの?」
梨瑠さんだ。
「梨璃さんごきげんようですわ。さきほどまで他所のLGの応援をしてまして・・・」
「応援って・・・パルパスの?」
「ええ。さっき戻ってきたから食事も食べそこねて・・・自分の夜食をみんなで食べてる」
「な、なるほど・・・」
「でも明日香さんすごいなあ・・・私なんてお姉様に頼りっきりだから」
「そうかなあ?私にはそうは見えないけど・・・」
梨瑠さん・・・謙虚さは去年と変わってない気がする。私よりよっぽどしっかりしてるわよ・・・とは言えなかった。
「ごちそうさまでした」
梨璃さんもいなくなり、食器類を片付けているときだ。
「明日香さん」
咲良ちゃんから声をかけられた。
「LGから抜けさせてください」
・・・え?
「ど、どうしたの急に!?何か不満でも・・・」
突然の告白。戦力ダウンになるのは間違いない。
「今のLGに不満はないんです・・・」
「じゃあどうして・・・」
「明日香さんのやり方に対して、です」
・・・やはりか。
「それは・・・ずっと言おうと思ってて」
「・・・ちょっと遅かったです」
とだけ言い残し、部屋に戻っていった。
「待って咲良ちゃん!」
声をかけるも返事はない。
慌ててメッセージを送る。
『私が納得できない。納得できる理由を聞かせてほしい。書類を提出して受理されるまでは籍は抜かないわ。訓練も参加するように』
しかし、返事は来なかった。
「明日香ちゃん・・・」
部屋に戻ってから。円とほとんど会話をせず。
咲良ちゃん突然の脱退宣言。おそらく決め手は「あの」件だろう。けど事故は事故だ。私に非はない。脱退には私の署名とルーンがなければ受理されない。
「・・・やっぱり私にはLG隊長はムリだったんだ」
ダインスレイフ・カービンを起動させ自分の胸元へ。
バッ!
円がCHARMから遠ざけようとする。
「ダメだよ!明日香ちゃん!そんなことしたって如來ちゃんが悲しむだけだよ?」
ガシャン・・・
床にCHARMが落ち、後ろから抱きとめられた。
「・・・ごめん円」
お姉様が亡くなってから私のメンタルが不安定だ。私自身は吹っ切ったつもりなんだけど・・・。
「咲良ちゃんと話しよ?私も納得行ってない」
無言で頷く。
「・・・私が出ても取り繕ってくれないと思う。円、お願い」
咲良ちゃんの呼び出しは円にお願いし、私は再びラウンジへ。私の姿を見れば確実に戻る。なので物陰から見ることに。
「・・・なんで私まで」
ベス・・・いや、櫻子も呼び戻す。
「私まで・・・じゃない!1人でも欠けたらエリューズニルじゃなくなると思ってる・・・」
2年生組は5人揃わなければ意味がないと思っている。
「明日ねえ・・・咲良様が抜けるってホント?」
如來にも来てもらった。
「まだよ。LG脱退は私の署名とルーンの捺印が必要だから、許さない限りは籍は置いたままね」
咲良ちゃんが来た。
「じゃ、私と如來は隠れてるから後よろしくね」
「話ってなんです?」
「ねえ咲良ちゃん。なんでLG抜ける、なんて言ったの?」
早速切り出した円。
「・・・」
しかし答えない。
「そんなに明日香ちゃんのやり方が気に入らない?」
「・・・ノインヴェルト戦術です」
・・・やはりか。
「わたくしもそれは思っていましたわ」
「ベスちゃん・・・」
あえて偶然を装うようにしてもらう。
「京夏様は割と早いうちに訓練しましたが、明日香さんは一切やっていませんものね」
「いくら待ってもやる気配もない。そんな中あの事件が・・・」
もちろんそんなのは分かっている。
「そんなの・・・分かってるわよ!」
私の姿を見た途端、席を立つ咲良ちゃん。
スッ・・・
「・・・ごめん咲良様」
如來にレアスキルを使ってもらい、背後から両腕を掴んで逃げられないように。
「どうして逃げようとするの?それじゃ・・・昔の・・・あの時の私と一緒でしょ!」
パンッ!
咲良ちゃんが私に近づき平手打ち・・・。
「だったら・・・なんであの時ちゃんと止めなかったんですか!妹でしょ!あの事件で私は失望した!それだけ・・・」
まさか今になってこの話になるとは・・・。
「あれは事故よ!・・・止めようが止めまいが結局同じ運命だったのよ・・・ノインヴェルト戦術は私のせい・・・とにかく訓練を詰め込みすぎないように!って考えて悩んで・・・」
「だからって!やらなくていいって理由になんかならない!」
如來の手を振り払おうとする咲良ちゃん。そこへ、
「・・・違うよ咲良ちゃん。やらないんじゃない・・・やれなかったんだよ?」
円・・・。
「咲良ちゃんこれ見て?」
これは・・・円があのノートをラウンジのテーブルの上に置く。。
「これは・・・?」
「明日香ちゃんが隊長になって・・・今まで何の訓練をしてきたか、これからどういう訓練をするか、戦略のアイデアとかをまとめたノートだよ」
「・・・」
ノートを手に取り、内容を見ていくうちにそれまで立っていた咲良ちゃんが座る。
そこには如來と蘆乃が事あるごとにケンカして訓練内容が総崩れしたことを愚痴っていたり、ノインヴェルトの訓練を出来てないことを後悔し、自責の念を込めて書きなぐった形跡もそのまま残っている。
「訓練でやろうとしてることがあまりにも多すぎて、組み込みミスをしてたのは謝るわ。他にまだ至らないことがあれば改善もする・・・だからお願い!LGにはまだいてほしいの・・・。私たち2年生は、1人でもかけたらエリューズニルじゃなくなる気がして・・・洲盧美様の二の舞にしたくないの・・・」
膝をついて土下座。
「え・・・明日香ちゃん!?ちょっと!?」
「顔上げてくださいな!いくら明日香さんとはいえこれでは・・・」
「・・・」
私は黙ったまま。しばらくしてようやく、
「・・・明日香さん顔を上げてください」
咲良ちゃんが口を開いた。
「?」
ビリッ・・・
これって・・・。
LG脱退の書類を破く音だった。
「・・・ごめんなさい。私が誤解してたみたいです。本当に偶然だったんですね」
・・・よかった。誤解が解けたようだ。
「約束してください。絶対ノインヴェルトの訓練をするって」
「咲良ちゃん、それなんだけどね───」
咲良ちゃんたちが戻った後。私はまだラウンジにいた。
「明日ねえ・・・さっきのノート見せて?」
如來・・・あんた戻ったんじゃなかったの?
「もうすぐ消灯時間でしょ?大丈夫なの?」
「た、多分・・・」
まあ制服着てるから大丈夫か。読み始める如來。
「うー・・・」
読んでいくうちに段々顔が渋くなっていく。
「ごめんなさいごめんなさい・・・」
呪文のようにぶつぶつと言い始めた。私の愚痴が効いてるんだな・・・。
「けどスゴイ・・・どうしたらこんな戦略のアイデアとか出てくるの?」
「半分はお姉様の受け売り。半分は思いつきね。後は・・・書籍棟で見た戦略の本、とかね」
「えっと・・・書籍棟って、咲良様がいる?」
あ、そっか。行ったことがないのか。
「そ。3年の講義棟の奥の別建物。建物の雰囲気が山梔館に似てるかな。蔵書数がすごいのよ。古い漫画や小説もあるらしいわ。私じゃ読まないけどね」
咲良ちゃん文芸好きだからその数と内容に魅了されてそのまま司書へ・・・って感じなのかな?
「・・・漫画ですって!?」
・・・如來じゃなくてベスが食いついてきた。
目が輝いてる・・・。ラーメン好きで漫画好き・・・お嬢様のイメージがどんどん崩れていく。まあ今更か。結局はベス・・・櫻子も私達と同じってことだ。
「あ・・・ああああ」
気がついたとおもったら顔が真っ赤になっていくベス。如來がいることを忘れてたのか・・・。
「なんであんたが食いついてるのよ・・・」
はあ・・・ため息の後、
「落ちつきなさいよ・・・後で詳細送るから」
ちょっと修正が追いつかずに遅れる形となってしまいました。
次回以降はないと思われます(予定は未定。