(後輩かあ・・・なんか実感湧かないなあ・・・)
今だに自分自身が後輩な気分が続いている。
・・・いや、事実後輩なんだけど。
『約束どおり来たよ明日香姉様!』
正直
あたし以上に無鉄砲、明日香の事になると周囲が見えなくなって。訓練から逃げ出してきたときも、真っ先に飛んできたのはあたしのところだったな。
「・・・みどりさん?どうなさいまして?」
お嬢?珍しく声をかけられた。
「それはこっちの台詞だよ。お嬢があたしに声かけるとかさ」
「なっ!?失礼なっ!それではわたくしが誰とも話さないみたいじゃありませんの!」
「痛いっ!なんでつねるんだよっ!」
お嬢に頬をつねられる理由がわからないが、なぜかやられている。
「もしかして・・・
「あだっ!」
今度は足を蹴られた。この前『デリカシーがなさすぎ』とか言って頭からゲンコツを食らったが、完全に八つ当たりじゃん・・・。
「だからあたしが何したってんだよ!ほんっと、明日香がよく嘆いてのがよくわかるわ・・・素直になれないからリリィやモノに八つ当たりする・・・いってええええええええ!」
今度は足ごと掬われて床に落ちて尻もち。
「あああああもうあったまきた!あたしを怒らせるとはいい度胸してるじゃんか!お嬢もCHARM出せっ!」
フォン・・・
右手をかざしCHARM───ティルフィングを起動させる。
「み、みどりさん!?何を本気に・・・」
「させたのはお嬢だろっ!ふざけんじゃねえっ!人が大人しく黙って聞いてりゃ・・・勝手なことばっかしやがって!」
久しぶりにキレている気もするが・・・。去年の
たまたま通りかかった中庭でみどりがCHARMを抜きかけてる!?
相手はベスだ。
「ちょっとみどり!あんた何やってんのよ!」
「止めんな明日香!このわがままお嬢に喝入れてやる!」
はあ?ワガママ?
ただ、しばらく頭に来てなかったみどりが怒っている、ということはよほど何かあった、ということでもあるが・・・。
「ベス・・・あんたみどりに何言ったのよ・・・」
「それは・・・その・・・おほほほほほ」
笑ってごまかした?
ゴンッ!
「いたっ!ちょ!?明日香さん!?」
みどり・・・ではなく、ベスにゲンコツ。
「櫻子さーん・・・ちょっといいかしら?みどりもCHARM仕舞いなさいよ?」
あえての名前呼び。耳をひっぱりながらそのまま連れ出し足湯のほうへ。
ゴンッ!
「いったーい!」
事の次第を聞いたはいいが・・・。
ベス・・・いや、櫻子にゲンコツ2回目。
「そりゃみどりも怒るわよ・・・CHARMは・・・さすがにどうかと思うけど、みどりじゃなくても私だって同じことしたわね。それと───」
櫻子の両頬をつねった後口を大きく広げる。
「ひゃへれませんはっ!?(喋れませんわっ!?)」
「いつになったらそのわけわかんない行動やめるの?いい加減ハッキリしなさいよ?」
「ううう・・・」
うなだれる櫻子。
「守護天使になって少しはマシになったかと思ったのに・・・余計状況が悪化してるって意味わかんない!」
「だからって!私を殴ること・・・ないじゃない・・・」
むくれる櫻子。
「ベス・・・いや、櫻子。今後1週間LG内で
「はあ!?なによそれ!?そんなの聞いたことないっ!大体、それってただの八つ当たり・・・」
「そうよ。八つ当たり。けどあんたがみどりにしたことも八つ当たり。なりふり構わずしていいってもんじゃないでしょ?」
守護天使活動禁止とか前代未聞だが、こうでもしないとこのわがままお嬢様の性格は変わらないと思う。
まったく・・・はじめてお嬢に会ったときはあんなじゃなかったんだけどな。
「みどりさん・・・先程は失礼しましたわ・・・」
かなり落ち込んでいる。明日香になんか言われたな?
ピピピ・・・
携帯端末が鳴る。明日香からだ。
『明日、みどりとベスの手合わせを行います。修練目的とはなってるけど手抜きはしないように』
「はあ!?」
明日香のやつ、何考えてんだ!?お譲と手合わせって・・・。
確かに京夏様が隊長のときは一切やったことがなかった。あたしは初花様や灯音様、琴乃様とやる機会のほうが圧倒的に多かった気がする。
「だとよ。ほれ」
と端末を見せる。
「わざわざ見せなくても存じてますわ。わたくし明日香さんから直接聞きましたし・・・」
「まあいいや。お嬢、明日手抜きなんかするんじゃねえぞ。あたしが許さないからな!」
翌日。
「あれ、円は?」
「ごきげんよう。円は・・・実家だってさ」
灯音様が
「・・・」
「・・・」
お嬢と蘆乃が一切会話ないのはなんか変な感じだが、なんでも守護天使としての会話が一週間一切禁止なんだとか。
「何ボーッとしてんの。ほら構える!」
明日香にポンッと肩を叩かれるお嬢。
「え、ええ・・・」
明らかに乗り気じゃないよなあの表情。
「ならその気にさせてやるよ乳オバケめ」
「はあっ!?みどりさん!?今なんて・・・」
「乳オバケだっつったんだよ!悔しかったら蘆乃にいいとこ見せてみろよ!」
「・・・っ!」
あたしをキッと睨みつけるも蘆乃のことは一切触れず。
(そこまで明日香の言うこと聞くことねえじゃん・・・)
こうも徹底されるとあたしもからかいがいがなくなってしまう。
判定人は灯音様だ。
「時間無制限・・・レアスキルの使用は・・・なし・・・危険だと・・・判断したときは・・・止めに入るから・・・それと・・・うちのルール?で・・・薙刀術の使用は禁止」
ああそうか。灯音様は今のLGルール知らないのか。
「今うちのLGは全員琴乃様からの履修が必須なんですよ」
「そう・・・なんだ」
「では・・・構えて」
お互いCHARMを構える。
お嬢のブラダマンテは見てて腹立つんだよな・・・あたしのティルフィングより扱いやすそうだし。まあここで文句を言ってもしょうがない。あたしが自分で選んだCHARMなんだから。
「はじめ!」
「でりゃあああああっ!」
真っ先に向かったのはあたしだ。
ブンッ!
「わざと」空振りさせて一旦しゃがむ。
そこから上に向けて斜めに入れるっ!
キンッ!
ガチャン!
そこから「わざと」シューティングモードへ。
「はあっ!?なっ・・・何を考えて・・・」
驚いてる驚いてる。以前明日香にあるイタズラをされたときにもらったアイデアをそのまま使わせてもらっているのだが・・・。
ポンッ!
みどりのやつ、考えたな・・・。
まさか私のイタズラを手合わせに流用するとは思いもよらなかったが。内容は・・・ここでは話せないようなものなので割愛するけど。
空砲に驚いたベスはそのまま尻もち。
そして───みどりがティルフィング・ヒュミルのブレードをベスの喉元に突きつけ、
「そこまで!」
あっけなく終了した。
「納得行きませんわ!まあでもアレは反則でもありませんし・・・わたくしが油断した・・・というか・・・」
みどりの面白いところは私が思いつかないような突拍子もない動きを戦闘に組み込んだりするところだ。
「素直に負けを認めたら?今回ばかりは私もビックリしたわ。みどりがあんな作戦思いつくなんてねえ」
と肘でつついてやる。
「な、なんだよ!突っついたからって何もでないぞ?」
照れてる照れてる。その辺りは相変わらずか。
「あの・・・みどり様」
蘆乃?あっちから声をかけてくるとか珍しい。
「おう蘆乃か。どした?」
「私・・・何か姉様にしましたか?」
泣きそうになってる?
「ちょ、ちょっと待て!なんで泣きそうになってんだよ・・・」
「実は───」
まったくどこまで人付き合い下手なんだあいつは。いくら明日香から守護天使禁止だからって日常でも会話しないとかないだろうに。
「だから・・・嫌われたんじゃないかって・・・うううっ・・・」
最終的にあたしの前で泣き出してしまった。
「ほんっと・・・お嬢は説明まで下手くそなんだよな・・・ちげーよ蘆乃。お嬢はさ、今明日香にLG内で守護天使の活動すんなって止められてるんだよ」
「え?」
マジか・・・お嬢何も言ってないのかよ・・・。
「蘆乃・・・今、初めて知ったって顔してるか?」
「・・・はい」
ったくあのワガママお嬢はっ!?
あたしはレアスキルを使いお嬢の元へ。
いた。ラウンジで呑気に紅茶飲んでやがる。
パンッ!
思いっきりグーパン。
「み・・・どりさん!?」
「ちょっとこっち来い!」
有無を言わさず元いた場所へ。
「え・・・あの・・・」
わけがわからずキョトンとしているお嬢。
「え・・・じゃねえだろ!お前姉だろ?蘆乃が寂しがってたぞ?」
蘆乃の顔を見た途端に目を逸らす。
あたしはお嬢の顎を掴み、あたしを見るように向かせる。
「おいお嬢。何勘違いしてるか知らねえけど、禁止されてんのは訓練中と戦闘中だけだぞ?」
「・・・なんで知って」
「おいおい・・・バレバレだろうよ・・・蘆乃は・・・寂しくなってあたしんとこに泣きついてきたんだからな?後でちゃんと謝れよ」
「う・・・うううっ・・・」
今度はお嬢が泣きやがった・・・。これじゃああたしが悪者じゃんか・・・。
「おいおい・・・なんでお嬢が泣くんだよ・・・」
お嬢を抱き寄せる。
「だってえええええええええっ!」
参ったな・・・。
「ベス!?」
明日香!?
なんだこの状況!?
あたしに手をあげようとするも、
パッ・・・
「蘆乃?」
蘆乃が止めに入った。
「あの・・・違うんです!」
ベスが大泣きしていて、みどりが何かしたと思って叩こうとしたら蘆乃に止められて・・・私の頭の中は「???」しかない。
「ごめんなさいね明日香さん・・・わたくしがもっと・・・ちゃんとしていればこんなことには・・・ううっ・・・」
まあ元はと言えばベス・・・いや、櫻子がみどりに八つ当たりで暴行(?)したのを注意するために私が課した罰なのだが・・・。
これではまるで私が悪人ではないか。
「で、一体なにがどうなってるの?」
「そりゃあ・・・あたしが聞きたいぐらいだよ・・・いきなり蘆乃がやってきて・・・あたしの前でわんわん泣き出して・・・オマケにお嬢まで・・・」
まったく・・・どこまで自分表現が下手なんだこの2人は。
はあ・・・。軽くため息。
「悪かったわよ。まさかここまでとはね・・・。もういいわ」
ゴーン!ゴーン!
なんちゅうタイミングだ。
しかも私たちが当番になっている。
生徒会から連絡は?
端末に目をやるもまだ何も連絡はない。
「はあ・・・まだ連絡はないけど控え室行くわよ」
LG控え室についた頃。
ピピピ・・・
ようやく生徒会からメール。
『今回はラーズグリーズと合同でお願いします』
はあ!?
ちょっとまって!?ラーズグリーズ(一柳隊)とエリューズニルとでは実力差がありすぎる。
格付け上では私たちのほうが上だが、実力的には間違いなくラーズグリーズのほうが上だと思っている。
百歩譲ってそれはまあいい。けど合同?
メールの続きを読む。
『ラージ級が2体出現。ただし、ノインヴェルト戦術は被害を拡大する危険があるため原則使用禁止とします』
使用禁止!?
頭の中で思い浮かべていた討伐プランが一気に崩れる。
(落ち着け・・・落ち着け明日香・・・こんなとき京夏お姉様だったらどう判断してた?)
単純に考えられるのは、よくお姉様がやっていた、みどりを陽動役にして全体でまんべんなく攻めてラージ級の力を弱めていく方法だ。
ラーズグリーズも結夢様に
ただ、隊長の一柳さん主体ではなく、結夢様や楓さん、神琳さんが戦略担当なので、事実上の司令塔は複数人いることになると思うが。
うちの場合は・・・藍ちゃんが暴走したところで状況が有利に働くだけ、か?
「明日ねえ・・・?なんか顔怖い・・・」
如來だ。
「そう?そんなすごい顔してた?」
「明日香・・・どう・・・するつもり?」
灯音様もやってきた。
「えっとですね・・・今回ノインヴェルト戦術の原則使用禁止命令が出てるんです・・・」
「えっ・・・!?」
「どうすんの!?私たち勝ち目ないじゃん・・・」
「相手・・・ラージ級・・・だよね?じゃあ・・・どうやって・・・」
「だから・・・今悩んでたんです・・・どうしたらいいだろう?って・・・」
「明日ねえ・・・」
「ラーズグリーズ・・・一柳さんと一切打ち合わせしてないから・・・どうなるかわかんないけど・・・」
少し遅れて位置情報が来た。
場所は・・・アルトラ級ネストがあった少し先か。
「場所が判明したわ。移動するわよ」
「はい」
他のメンバーにはメッセージで場所を送る。
ノインヴェルトのバレットは一応持っているが・・・。
「あ。明日香さん!」
一柳さんだ。
「えっと・・・ラージ級は?」
指を指す一柳さん。
GYAAAAAAAA!!
うわあ・・・いつにもましていびつだなあ・・・。いまのところ実害は出ていないようだ。
キンッ!キンッ!
すでに梅様や神琳さん、雨嘉さんたちは交戦している。ラーズグリーズはノインヴェルトを使わない方向のようだ。
「ノインヴェルト使用禁止ってどういうことですの!?」
ベスだ。
「言葉のとおりよ。私も理由はわからないわ」
「えっと・・・フィニッシュショットがダメ・・・みたいです」
「ちょっとまって!?マギ溜めたらダメってこと?」
「はい・・・正のマギの力を負のマギに変換してヒュージの力に取り込むって・・・」
え・・・マジか・・・八方塞がり・・・。
人海戦術でラージ級を倒すしかないってことか。
ていうか、みどりは何やってんのよ!
いつもなら一番乗りで現場来るのに・・・。
さあどうする私?陽動役やるにしてもレアスキルはあまり使いたくない。
「わりい・・・なぜか乃莉子に呼ばれてさあ・・・って明日香!?」
ボフッ!
気がついたらみどりにグーパンをしていた。
「ぶげっ!」
バタン・・・
そのまま地面に倒れるみどり。
「あたしなんか・・・した?」
あああああっ・・・何やってんだ私!?
「ご、ごめん!?大丈夫!?」
「いってえ・・・それよりノインヴェルト使うなってマジか!?」
「そのことで相談があるんだけど・・・」
「えー・・・まあ別にいいけど・・・」
結局方法は思い浮かばず。京夏お姉様が今まで取っていた方法をそのままやることに。
「明日香がなあ・・・なんか考えがあるって思ってたけど・・・」
「とにかくお願い!私とか如來がやってもマギが持たないはずだから・・・」
「あいよ!」
もう1体のラージ級に向かっていく。
今日の私たちは円がいない。後方射撃をどうするか。私か?
「えっと・・・どう動けば・・・」
因悦たちも来た。
「とにかく総当りでラージ級への攻撃。ただし、一網打尽に・・・とかは考えないこと。それといつも言ってることだけど・・・極力無駄なマギは消費しないこと」
さて、散るか。
(今回もよろしくね)
今日はタングズニル・・・ではなくダインスレイフ・カービンだ。
CHARMで円を描き、中に入ってジャンプする。
「なんで私についてくるの・・・早く散りなさい!」
つい怒鳴ってしまったが、まるで金魚のフンのようについてくる如來。
「だって・・・」
仕方ない。権限使うか。
「隊長命令です。早く離れる!」
「・・・わかった」
これが吉と出るか凶と出るか。
明日ねえのバカッ!
確かに・・・私が金魚のフンみたいにくっついていたのは悪いんだけどさ・・・だからってあんな怒ることないじゃん・・・。
えっ!?
ヒュンッ!
ラージ級の触手だ。
「こんのっ!」
ガンッ!
触手の上を這わせる形でスライドする。
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!
それを狙ったかのように本体から飛翔体が。
(避けきれない!?)
タングズニルのブレードに飛翔体がいくつかくっついた。その瞬間、
バンッ!
「うううっ!」
そのまま弾き飛ばされる私。
(どこか・・・ラージ級にダメージが与えられれば・・・)
いつにもましていびつなラージ級。どこか違和感・・・いや、違和感だらけなんだけど・・・。
ん?違和感?
GYAAAAAAAAAAA!!
改めてラージ級を見る。確かに「見た目」はラージ級だ。ん?なんだこれ!?
ガチャン!
シューティングモードへ。
スガンッ!
ラージ級の「ある」一点に向けて少しマギ多めに撃ってやる。
(オーバーヒートしないかな・・・大丈夫かな・・・)
GYAAAAAAAA!!
うそっ!?
私めがけてラージ級が突っ込んできた!?
(間に合うか!?)
レアスキル発動!
必死にその場から離れようとする。
「如來!お前なにやってんだ!」
みどり様!?
両腕を捕まれその場から離される。
ラージ級の動きが明らかに変わった!?
「あの・・・私・・・普通にラージ級に攻撃しただけですけど・・・」
如來がみどりに怒られている?
「くっそ・・・ノインヴェルト戦術が使えればこんな苦労しねえのに・・・」
再び散るみどりと如來。
まさかとは思うが・・・ダメ元でやってみるか。もしダメなら別な方法を考える!
「今からノインヴェルト戦術をします!」
「え?」
「正気ですの明日香さん!?」
「明日香!?」
バレットをセットする。
「灯音様!」
ズガンッ!
ルートは申し分ない。
「・・・受け取ったよ。藍!」
シュバッ!
「は、はいっ!」
さて問題の藍ちゃんだ。マギスフィアを受け取れるように訓練はしたが・・・。
グンッ!
「や、やった!」
とりあえず一安心。もうマギスフィアに対する恐怖心は克服出来たと思う。
「えっと・・・えっと・・・すみません櫻子様おねがいします!」
ベスか。藍ちゃんの位置的に最適解だとは思うが・・・。
シュバッ!
ラージ級の触手が迫る。どっちが先だ?
グンッ!
「くううううっ!お・・・重いですわっ!」
珍しく姿勢が安定していない。いつも「重いですわっ!」とは文句を言ってはいるが、ここまで不安定なベスを見るのは初めてだ。
さあ誰に投げる?
「蘆乃!」
シュバッ!
バカッ!そのルートは・・・。
ガンッ!
「いったっ!」
レアスキルで瞬間移動してベスを殴った?
みどりのやつそこまで余裕あるのか・・・。
グンッ!
「おい明日香!お前の代わりにあたしが殴っといてやったからな!1つ貸しな」
「はいはい・・・」
ここまで来ると呆れを通り越して笑ってしまう。
「んー・・・この後は・・・咲良、蘆乃、如來ってとこかな。てことで咲良ヨロシク!」
シュバッ!
「ひゃああっ!」
グンッ!
「お・・・お・・・も・・・いっ!」
ミシミシミシッ・・・
ナグルファールのブレードにヒビが入る音!?
最近みんなのマギスフィアを込める量が増えてきてる?でなければCHARMが悲鳴を上げるはずがないのだが。
「咲良ちゃん早く蘆乃に投げて!」
「は、はいっ!」
シュバッ!
「蘆乃!受け取ったらマギを込めずにそのまま如來に投げて!」
「は、はい!」
これ以上マギを過剰に流さないためにはそうするしかない。
グンッ!
「うっ・・・如來!フィニッシュショットお願い!」
シュバッ!
「うえっ!?なに・・・これ・・・いっ・・・!?」
過剰なマギスフィアは行ってないはず・・・なのだが・・・。
グンッ!
受け取り、シューティングモードへ。
ガチャン!
如來の姿勢が安定していない。大丈夫か?
「明日ねえ!撃っちゃうよ?多分ここが弱点だから!」
弱点?まあいい。ここは如來を信じることにする。
ズガンッ!
「ううっ!」
撃った勢いで弾き飛ばすされる如來。
一柳さんの話では、撃った場合そのまま力を吸収して負のマギに変換する・・・って言っていたはず。
GYAAAAAAA!!
まずい!
「みんなここから離れて!早く!爆風に巻き込まれるわ!」
慌てて足にマギを入れ、とにかく遠くへ逃げる。
ドドドーン!!
なんだこれ!?
過去に何体かラージ級倒した後の爆風を経験しているが、その中で一番強いかもしれない。
「ううううっ!」
かなり離れているはずなのだが・・・吹き飛ばされそうになる。
数分後。
灯音様がレアスキル───鷹の目で周囲を確認する。
「大丈夫・・・成功・・・だね」
討伐は成功した。結局生徒会の言う『ノインヴェルト戦術原則使用禁止』は一体なんだったんだろう?
「すごーい!どうして成功したんですか?」
一柳さんだ。
「私が聞きたいぐらいなんだけど・・・ノインヴェルトなしで討伐した一柳さんたちのほうが全然スゴイと思うけどな・・・」
「それは私が説明します」
如來だ。
「えっと・・・どうもあのラージ級、ラージ級に「みせかけた」だけだったみたい・・・です」
みせかけただけ?どういうことだ?
「なんて言ったらいいのかな・・・えっと・・・足元の目みたいな部分?が異常に見えたから、そこ狙って撃ったら・・・ラージ級が暴れだして・・・」
足元の目?あああそこか。
つまり如來が言うには、私たちの目にはラージ級のように映っていただけで実際は違う、ということらしい。最近こういうよくわからない特型の出没率が上がっている気がする。
「まあいいわ。みんなお疲れ様。戻っていいわ・・・と言いたいところだけど、戻ったら控え室でミーティングをします」
控え室に戻った後。
「ミーティングって・・・何を話しますの?」
「もう終わったんだから話すことなんてないんじゃん?」
「まずはベス・・・あんた、最近ノインヴェルトのパス回しのルートがおかしい。ほんとどうしちゃったの?」
「うっ・・・」
私が隊長になってからのノインヴェルト戦術のパス回しミスの大半がベスのルート選びの誤選択といってもいい。
「それは・・・その・・・」
言いよどんでいるベス。
「みどりにちゃんと謝りなさいよ。それと───」
一呼吸置いてから、
「明日からポジションを一部入れ替えます」
「はあっ!?何言ってんだよ明日香!ポジション入れ替えって・・・」
「前々から思ってたのよ・・・それをやろうと思ってたら私が倒れちゃって・・・」
私の過労騒ぎのときだ。
「具体的には私とベスはBZに下がるわ。円・・・は今いないけどTZへ。咲良ちゃんも今BZだけどTZに行ってもらうわ」
さらに続ける。
「因悦・・・あなたはAZね」
「待ってください明日香隊長!」
「私じゃなくて藍じゃないんですか?」
狂酔の月持ちの藍ちゃんがAZに移動するのは妥当な流れだと思う。けどそれではダメなのだ。
「それと・・・明日香隊長と櫻子様がBZに下がる意味がわかりません!」
「でしょうね・・・普通ならね」
「・・・そっか」
ここまで黙っていた灯音様が口を開く。
「私が・・・いたときは・・・明日香とエリザベスさんは・・・
「えっ!?」
因悦が驚いている。
「そうでしたわね・・・あのときはLGメンバーにブレイブがどなたもいらっしゃらなくて、どうやってAZだった琴乃様の狂酔の月を使わせないようにするか、で悩んでましたものね」
「そうね・・・その代わりマギ交感は頻繁にやってたわね。大半は私か京夏お姉様だったけど・・・」
「ただ・・・このフォーメーションも・・・問題があって・・・明日香と琴乃の・・・負担が・・・かなり大きかったんだ・・・それをカヴァー・・・するために私たちが・・・走り回って・・・AZ3人体勢なら・・・ある程度は・・・カヴァーできる」
灯音様はあの位置の欠点を気づいていたのか・・・。ただ、あのメンバーだったから、欠点と分かっていてもフォーメーションとして機能していたのかもしれないが。
私も、それをわかっていたがらほぼ同じにしていたのだが・・・。
「ホントはね・・・常にAZ3人体勢にしたかった・・・けどそれだとノインヴェルト戦術の撹乱の法則が崩れてしまう・・・」
一時的にに藍ちゃんをAZにすることはあるが、対ミドル級までだ。
それを「あえて」崩してみようとしている。
「それも・・・全部あんたのせいだけどねっ!」
ベスの足をつねる。
「いたっ!」
「ええっ!?ポジション入れ替え!?」
円から実家から戻ってきた後の天上の間。
「けどどうして入れ替えようって思ったの?」
ベスの頬をを引っ張りながら、
「文句ならベスに言ってよね!あんたの行動のせいなんだから!」
とは円に言っているが、実際は私の戦略の読みの甘さと実力の読み誤りだ。
現状のポジションは───
・如來・蘆乃───AZ
・私・ベス・みどり・因悦───TZ
・円・藍ちゃん・咲良ちゃん───BZ
これを、
・如來・蘆乃・因悦───AZ
・咲良ちゃん・みどり・円・藍ちゃん───TZ
・私・ベス───BZ
にしようとしている。TZとBZをほぼ入れ替える形だ。
こう入れ替えることでノインヴェルト戦術でより撹乱する・・・狙いなのだが・・・不安要素もある。
円がBZ以外のポジションを経験したことがない点、もし如來たちがピンチになったときにどこまで柔軟に対処できるか。
後は・・・私とベスが後衛に下がることでLG全体の戦力低下になるかもしれない、ということ。
まあデメリットとリスクのほうが大きいかもしれない。
「明日香さん!わたくしのせいにしないでくださいます?あなただって時々間違った指示をしてるじゃありませんの!」
頬を引っ張り返されるも、
「・・・そうね」
そういうと黙ってしまった。
「私さ・・・最近すごい不安になることがあるのよ・・・LGとして・・・今のやり方で合ってるのかな・・・って」
「・・・」
「それもあって・・・今まで京夏お姉様のフォーメーションの組み方を参考にずーっとやってきたつもり・・・だったんだけど・・・ほら、私の過労騒ぎのときに藍ちゃんがあんなだったじゃない?それで一気に不安になっちゃって・・・」
「明日香ちゃん・・・」
明日香ちゃんが弱音を吐いているところを初めて見た気がする。
「それで・・・私も・・・どうしていいかわかんなくなっちゃって・・・頭ん中グチャグチャで・・・うううっ・・・」
「明日香さん・・・」
「も・・・やだあああああああああっ!うわああああああああああああああああん!」
「ちょ・・・明日香ちゃん!?みんな見てるよ!?」
明日香ちゃん!?大声を上げて泣き出してしまった。
今まで張り詰めていたものが私たちに話したことで一気に切れたみたいだ。
「え・・・どうしたの?尾上さんが泣いてる・・・」
「またケンカ?やだあ・・・」
「わ、わたくしたちは見世物ではありませんわ!」
「一旦出てラウンジで話そう?」
「ううううっ・・・」
泣きながらもうなずく明日香ちゃん。
「うううっ・・・ごめん円・・・急に泣いちゃったりして・・・」
「けどよかったね。如來ちゃんに見られなくて・・・」
「・・・っ!」
明日香ちゃん怖い・・・そんな睨まないで・・・。
と思ったら途端に下を向いてしまった。
「うううっ・・・」
両手を押さえてまた泣いちゃってるし・・・。
ええっと・・・どうやるんだっけ?確か・・・。
指輪をしている手同士を繋ぐ。
パアアアアアアアッ・・・
「うううっ・・・」
なに・・・これ・・・っ!
一瞬倒れそうに。
(マギ交感ってこんなキツいんだ・・・)
私自身やったのが初めて、というのもあるが、これで明日香ちゃんが落ち着いてくれるのなら・・・。
「はあっ・・・はあっ・・・」
もしかすると・・・私自身のマギ保有量があまり多くないのかもしれない。ちょっとフラフラする・・・。
「バカッ!・・・あんまりマギ保有量多くないんだから・・・円が死んじゃう・・・普段やりなれないことするから・・・けどまさか円にマギ交感されるなんて・・・思ってなかった・・・」
逆に明日香ちゃんに抱きしめられた。
「ごめん・・・明日香ちゃん・・・けどあんな・・・今まで見たことなかったから黙ってられなくて・・・」
「明日香さん・・・やはり京夏様のことが吹っ切れて・・・」
「違うよ。違うの・・・ちがっ・・・」
どうしよう?また泣き出しちゃった・・・。
パンッ!
「いい加減にしてよ!」
ベスちゃん!?
「自分勝手に泣き出して・・・挙句の果てに私たちに押し付けて!」
「違う・・・」
「じゃあ何?ハッキリ言いなさいよ!」
ベスちゃんと明日香ちゃんが本気のケンカ・・・初めて見た・・・。
「自信ないのよ!私・・・このままプレッシャーに押しつぶされそうで・・・っ!」
「明日香さん・・・」
「今までは京夏お姉様がいて・・・如來がいたからギリギリなんとかなってた・・・けど・・・お姉様がいなくなって・・・如來にも相談できなくて・・・自分で抱え込む事が増えて・・・」
自信喪失、か・・・。
「ゴメン・・・取り乱して・・・」
そういえば・・・このところ明日香ちゃんは情緒不安定になることが多かった。CHARMを自分自身に向けて殺めようとしたり・・・。
「明日香ちゃん・・・先に部屋に戻ってて。私も後から行くから」
明日香ちゃんを先に部屋に返す。
「・・・どうしよう?」
「相当重症ですわね・・・」
「あのね・・・ベスちゃん。明日香ちゃん・・・最近ダインスレイフカービンで殺めようとしたこともあったの・・・このままだと明日香ちゃん・・・自殺しちゃうかも・・・」
「どうしてそれを早く言ってくださいませんの!?このままでは・・・洲盧美様の二の舞になりかねませんわ!」
「洲盧美様?」
「京夏様の守護天使だったお方ですわ。わたくしたちの先代LGの隊長です」
あ・・・!
「ごめんベスちゃん!私、部屋に行く!」
私のバカッ!
なんで明日香ちゃんを1人で行かせたんだ!?
慌てて私たちの部屋へ。
端末でみどりちゃんのところにも。
「ごめんこんな時間に。私たちの部屋に来て!早く!」
『円!?なんかわかんねえけど今すぐ行くわ』
ガチャ・・・
よかったあ・・・まだ部屋に戻ってきていない。
けどもしものことがある。
「ベスちゃん!明日香ちゃん部屋にいない・・・どうしよう・・・!?」
明日香ちゃんのことだ。まだ遠くには行っていないはず・・・。
携帯端末の位置情報を見る。
(え・・・墓地?)
如來ちゃんにも連絡取ろう。
「如來ちゃんごめんねこんな時間に。明日香ちゃんがいないの!」
『ええっ!?どこ行ったか分かってるんですか?』
「場所送るね」
(なんでここに来ちゃったんだろ・・・私・・・)
気がつけば京夏お姉様の墓前にいた。
自分のCHARM───タングズニルを持参している。
手を合わせ、前に如來を落下から止めた崖の前に立つ。
手すりはあるものの、簡易的なものなので跨げばいつでも・・・って何考えてんだ私!
手すりギリギリ前に出たときだ。
(あれ?)
左足に違和感。
その直後、
ガラガラッ!
自分のいた周辺の足場が一気に崩れた!?
「きゃあああああああっ!」
レアスキル発動!
この程度ならすぐ上に移動すれば・・・あれ?
(レアスキルが発動しない!?どうして!?)
指輪は反応している。マギがないわけではなさそうだ。
ガッ!
CHARMは起動し、タングズニルのブレードが崖の壁に刺さってくれた。かろうじて下には落ちずに助かったようだ。
「ふう・・・」
ただし、私の手の力が持たなければそのまま海の下。
(お願い!誰か助けに来て!)
「おい明日香!?」
みどりだ。
「みどり・・・」
「待ってろ!今助けるからな!」
みどりのレアスキル───縮地が発動。
私とCHARMを抱えて上へ。
「明日香・・・お前少し太ったか?」
ガンッ!
思いっきり足の脛を蹴ってやった。
「いってええええええっ!」
「助けてもらったのは嬉しいけど・・・一言余計っ!」
「わ、悪かったよ・・・わざと言ったわけじゃ・・・」
「・・・っ!」
みどりに殺意の目を向ける。
ったく、女子に体重のことを聞くとか・・・デリカシーのかけらもない!
「で、なんであんなことになってたんだよ・・・」
「突然私がいた足場が崩れて・・・まずい!下に落ちるっ!?って思ってレアスキル発動させようとしたんだけど・・・なぜか発動しなくて・・・」
「え・・・なんだそりゃ・・・そんなの聞いたことないぞ」
「私だってこんなの・・・はじめてよ・・・だから余計パニックになっちゃって・・・幸いCHARMは起動したから命は助かったけど・・・」
結梨ちゃん騒ぎの後、百合ヶ丘に出たギガント級クラスのときは一柳さんと結夢様以外全員マギが使えない、とかいう事態はあったが、それに近い症状・・・な気がする。
「明日ねえ!」
如來・・・と、円・・・。
「明日香ちゃん部屋に戻ったんじゃなかったの?」
「その・・・つもりだったんだけど・・・なんか落ち着かなくて・・・ホント助かったわ・・・ありがとうみどり」
「その足どうしたの!?まさか自殺・・・」
よくみたら靴下が擦れて少し破れていた。膝もすりむいている。
「違うわ」
とさっきの場所を指差す。
「事故よ・・・足場が崩れて下に落ちそうになったのをみどりに助けてもらったのよ。危険だから近づかないようにね。いつ崩落するかわからないから」
「あれ?でも・・・崩れてもレアスキルでカヴァーは出来たはずだよね?」
「そのレアスキルが発動しなかったんだとさ。去年この辺にギガント級出てマギが使えなかったことがあったけど、なんかそれに似てる・・・」
とはみどりだ。
「指輪は反応したわ。けど何も起きなかった・・・」
この事故がキッカケだとはまだ誰もわからなかった。
部屋に戻り、部屋着に着替え明日の準備を終えて寝ようか、と横になったときだ。
「うっ・・・」
突然吐き気が私を襲う。
最初のうちは自分の体調管理が悪いだけなのかとも思ったが、このところ変な食事の取り方はしていない。
(まあいいや・・・トイレトイレ・・・)
慌てて部屋を出てトイレに走る。寮内の深夜の移動は部屋着でも問題はない。
「うええええええええっ!」
汚物を洗面台に吐き出し、部屋に戻る。
ベッドに横になったときだ。
(なに!?)
ガンッ!
「っ・・・・・・っ!」
声にならない声。何かで思いっきり殴られたような激痛が走り、数秒目の中で光った後、
パアアアアアアアアアア・・・
指輪が数回反応、私はそのまま気を失ってしまった。
数時間後。
「う・・・ううっ・・・」
目を覚ましたが、まだ痛むような感覚が残り、結局寝られなかった。