アサルトリリィ~もうひとつの物語   作:武士道の犬

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勧誘・その2

 パンッ!

 

 ようやく円ちゃんのレアスキルが治まり、改めて仕切り直し。撃つところまできた。

 

「どう・・・かな?」

 

「まあいいんじゃない?後は早さと正確さかな・・・」

 

「そうだね・・・」

 

 私から見ても円ちゃんの撃ち筋は悪くないと思った。ただ、気になるのが・・・

 グングニルは近中距離射撃向きではあるものの、遠方射撃であれば対ヒュージ戦で手を添えて撃ってもこの機構ではブレが生じてしまう。シューティングモードでの命中率は低いと思う。それを差し引いても初心者でも扱いやすいCHARMということで百合ヶ丘では普及しているわけだ。

 私のCHARM───タングズニル───はそのグングニルの欠点を補うためにあえて格納部分を伸ばした。なので、シューティングモードでの安定感はヒヒイロカネ製のアステリオン並に高い。

 

「あの・・・京夏樣。円ちゃん、間違いなくBZ(バックゾーン)だと思うんですけど、どう思います?」

 

 京夏樣に小声で耳打ち。ちなみにBZとは対ヒュージ戦においてフォーメーションを取る際の位置付けのことだ。

 

「そうね・・・私もそう思うわ。今のところAZ(アタッキングゾーン)が琴乃しかいなくて心許ないから・・・できれば明日香ちゃんかエリザベスさんにお願いしたいところね」

 

「えっ?私がですか!?」

 

 ちょっと待って・・・そこは隊長である京夏樣が出るところでは・・・。

 

「何驚いてるの。私は明日香ちゃんの可能性にかけてるのよ。ホントは私が出なきゃいけないところなんだろうけど、私が前に出ちゃったら指示とか誰が出すの?」

 

「あのっ!・・・京夏樣・・・お願いがあります・・・!」

 

 咲良ちゃんが突然大声で京夏樣に声をかける。

 

「私と・・・守護天使(シュッツエンゲル)の契りを結んでもらえないでしょうか?私・・・中等部で京夏樣の活躍を聞いて、高等部に上がったら絶対京夏樣と守護天使になるんだって心に決めてました。もちろんムリならムリで構いません。そのときは諦めます・・・お願いします京夏様」

 

 言って咲良ちゃんは頭を下げる。

 

 守護天使───シュッツエンゲル───上級生が守護天使となり、下級生((シルト)) を導く、疑似的な姉妹のことだ。ここ百合ヶ丘のリリィになったのであれば誰もが憧れる存在である。

 

(咲良ちゃん大胆だなぁ・・・守護天使かあ・・・あれ、でも・・・)

 

 守護天使は上級生から下級生に対して示すものじゃ・・・。

 

「ありがとう咲良ちゃん。でもごめんね・・・もう決めてる子がいるの・・・」

 

 そう言って私のほうに目をやる京夏様。

 

「ちょっと待って下さい!お気持ちは嬉しいです。けど京夏様とは会ったばかりで私まだ何も・・・」

 

「明日香ちゃん」

 

 私に向き直し、

 

「直感・・・じゃ、ダメ、かな?」

 

「・・・」

 

 直感?

 

「ほら、明日香ちゃんのこと友達から聞いたって言ったでしょ?御台場女学校って百合ヶ丘と違って自主性よりは徹底教育ってイメージがあるから、いくらそこから外れてきても実力はあるんじゃないかって・・・」

 

「やめてください!京夏様が思うほど私は・・・」

 

 すると京夏様は突然私の背後に来て背中を覆うように抱きしめる。

 

「えっ!?あの・・・京夏・・・様?」

 

 困惑する私をよそに、

 

「明日香ちゃん・・・守護天使・・・いいなあ・・・」

 

 撃ち終わった円ちゃんが羨ましそうにこちらを見ている。

 

「待って、まだなるって決まったわけじゃ・・・」

 

「ごきげんよう。やってるやってる」

 

 見ると背は京夏様と同じぐらい、紺色の髪をポニーテールにまとめたリリィがやってきた。

 

「琴乃も見に来たの?あ、咲良ちゃん。守護天使にはなってあげられないけど、一緒に戦うことはできるよ。それじゃダメかな?」

 

「ごきげんよう琴乃様」

 

「はじめまして。鬼龍院琴乃って言います。京夏ちゃんと同じクラスで同じLGよ。よろしくね」

 

 とニコニコ笑顔で答えてくれた。

 

「で、京夏ちゃん。ホントに明日香ちゃんを守護天使にするつもり?」

 

「見ての通り。本人は困ってるみたいだけどね」

 

「・・・あの、京夏様・・・いつまでこうしてるつもりです?すごい恥ずかしいんですけど・・・」

 

「守護天使だって・・いいなあ」

 

「私も(シルト)ほしい・・・」

 

 見ればその場にいたリリィたちの注目の的になっていた。

 

「うらやましい・・・明日香さん?京夏様とはどういう関係なんですの?」

 

「あんたは知ってるでしょうに・・・白々しい・・・」

 

 

 

 

 

 

 尾上明日香───御台場女学校出身。元東雲予備隊メンバー。当時の予備隊格付けランクこそ上位には及ばないものの、実力は確かなものだと思っている。船田姉妹(特に(きいと))のせいで卑屈になった彼女に自信を取り戻して欲しくて願い出た・・・と思いたい。少なくとも今の私はそう思っている。決して同じレアスキル持ちだから、ではないはずだ。

 

「・・・そうね。ゴメンなさい」

 

 嫌がってはないが、さすがにかわいそうなので明日香ちゃんからは離れる。

 

「京夏様。一緒に戦うっていうのは・・・?」

 

「琴乃、今日持ってきてる?」

 

 持ってきてる、とはLG(レギオン)契約書のことである。

 

「あ。ゴメン・・・持ってない」

 

「咲良ちゃん。後で私のところに来てくれない?詳細を説明するわ」

 

「あ。はい・・・」

 

 落胆の咲良ちゃん。守護天使にはなってあげられない代わりに私の側にいてもらうことがせめてもの償いになるのではないか、と思ったのだ。

 

「京夏様。守護天使は一旦お断りします。私、京夏様のことよくわかってないですし、それに・・・」

 

 一旦言葉を切る明日香ちゃん。

 

「今の私に必要なのか?と問われたら答えは『NO』です。もしかしたら同じLGのメンバーとしてやっていくうちに変わるかもしれない・・・何かのキッカケでもない限り気持ちは変わらないと思います。すみません」

 

 頭を下げる明日香ちゃん。

 

「そっか・・・ごめんね突然言い出して。でも私の気持ちは変わらないから」

 

一旦は()()()()形となってしまったが、諦めてしまったわけではない。私のメンタルが落ち着いている間は平気かもしれないが、それがなくなったときが一番怖い。レアスキル───酔狂の月(ルナティックトランサー)───とも似ているかもしれない(琴乃には申し訳ないけど。

 

 

 

 

 

 

「そう。それは残念ね・・・」

 

 部屋に戻り、幼なじみでルームメイトの佐野重初花(さのえういか)の開口一番の台詞がこれだった。

 

「けど、諦めたわけじゃない。いきなり言ってフられるのは当たり前だもの。それに───」

 

 一旦言葉を切る。

 

「明日香ちゃん。まるで昔の私だわ」

 

「そう?」

 

「ええ・・・お姉様に出会う前の私を見てるみたい・・・お節介焼きで面倒見が良くて。そのくせ自分のことを犠牲にして・・・」

 

 口にしてそうか・・・と思った。私が明日香ちゃんに感じたもの───過去の自分そっくりだった。

 

「後1人か・・・」

 

 思ったことが口に出てしまった。

 

「やっぱり(まい)誘うの?」

 

「まさか。さっき琴乃に聞いたんだけど、明日円ちゃんが訓練するそうよ。その相手のリリィが・・・」

 

 

 

 

 

 

守護天使(シュッツエンゲル)かあ・・・」

 

 京夏様から告白(?)されてしまったわけだが、正直困惑している。

 百合ヶ丘に来て、2日目にして手合わせの申込みをされて、その上での申し入れ。京夏様がどんな方かも分かってないのもあって断ってしまった。それと───

 

 納得できなかった点がひとつ。最初に会ったときにも言っていたが、御台場の誰から私のことを聞いたのか、である。私の知っている誰かであれば、連絡を取って私が納得行くまで話を聞くのだが、今の時点では想像すらつかない。

 

「あ。明日香ちゃん」

 

 そして今一番会いたくない人───夏目京夏様が。

 

「ごきげんよう・・・ごめんなさい!」

 

「待って!」

 

 反射でその場から走り出していた。しかし、京夏様は追いかけてこない。不思議に思ったが、とにかく今は顔を合わせたくない。それだけで走り出した結果───

 

「あれ、ここどこだろう?」

 

 気がついたときには学園(ガーデン)の外に出てしまっていた。見ればその場所からは鎌倉の海岸が一望できる。

 

「きれーい・・・」

 

 と思ったのはそこまでで、その場所は少し異様な光景であった。

 

(・・・墓地?)

 

 不均等に建てられた墓標には名前が書かれている。

 よく見ると百合ヶ丘の校章が掘られていた。ここって・・・。

 

「ここにいましたのね・・・」

 

「ベス・・・よくここがわかったわね」

 

「京夏様から聞きましたの。でもここには用はないんじゃなくて?」

 

「・・・あんた、知っててワザと言ってる?」

 

「明日香さん」

 

 面と向かってベスとちゃんと喋るのは初めてかもしれない。

 

「あそこまでしてまで京夏様の好意を断る理由はなんですの?あるんでしたらちゃんと説明を・・・」

 

「・・・関係ない」

 

「明日香さん?」

 

「あんたには関係ないって言ってんの!やぶからぼうに何?別に私がどう思おうと勝手でしょ!」

 

「それはそうですが・・・」

 

 つい怒鳴ってしまった。今の私は精神的に不安定になっているのかもしれない。

 

「それとも何?また私に喧嘩売ってる?だったら受けるわよ?今度は非公式でね!」

 

 非公式───判定人を介さずに行うルールなしの対人戦だ。非公式対戦を好む所謂デュエリストと呼ばれるリリィ達も存在する。もちろん生徒会に見つかれば厳しい罰が待っている。下手をしたらリリィの身分を剥奪されるかもしれない。

 

「そこまでは言ってませんわ。わたくしはただ・・・」

 

「悪いけど今は一人にさせてくれない?今の私じゃベスに何するかわからない・・・」

 

 咄嗟に言ってしまったが、何をするかわからないのは本当だ。せっかく仲良くなったばかりなのにその関係を自ら壊しに行きたくはない。

 

「・・・わかりましたわ。なるべく早く戻ってくださいな。円さんが心配してますわ」

 

 

 

 

 

 

「・・・やっちゃったかな」

 

 ベスはおとなしく引き下がってくれたものの、あまり良くは思ってくれていないはず。

 

「明日香ちゃん」

 

 今度は意外な方が私の元にやってきた。

 

「・・・琴乃・・・様?ですよね?・・・どうしてここに?」

 

「円ちゃんが心配してるよ?寮に戻らないの?」

 

「ベスにも同じこと言われました。それで・・・わざわざここまで?」

 

「それだけじゃないけどね」

 

 言いながらニコニコしている琴乃様。が、表情を変え、真剣な眼差しになった。

 

「明日香ちゃん。あまり京夏ちゃんを攻めないでほしいな。あの子明るく振る舞ってるけど、自分を抑え込んじゃうところあるから」

 

「・・・」

 

「京夏ちゃんね・・・自分の守護天使を亡くしてるの・・・理不尽な理由でね」

 

「理不尽な理由って・・・」

 

「それは私からは言えないわ。けどね、これだけは言える・・・今の京夏ちゃんには支えになる子が必要なの。もちろん、守護天使の意味は分かってるわよね?」

 

「それはもう。百合ヶ丘リリィの憧れですから」

 

「なら、考えてくれないかな?今後の私たちのためにも、ね」

 

「・・・少し時間をください。今は頭の整理が付いてなくて・・・それと琴乃様。ちょっとご相談が・・・」

 

 

 

 

 

 

「・・・明日香ちゃん。顔が怖いよ?大丈夫?」

 

 寮に戻り、円ちゃんに言われた一言。

 

「え?私そんなに怖い顔してる?」

 

「怖いっていうか・・・考えてる?」

 

「・・・京夏様の守護天使の申し入れはすごい嬉しいんだけどね。私どうしていいかわかんなくて・・・」

 

「私、明日香ちゃんが羨ましいな」

 

「えっ?」

 

「あ。守護天使が・・・ってことじゃないよ?そりゃあ私がなれたらもちろん嬉しいけど、百合ヶ丘に入ったばっかりでそんなの贅沢・・・じゃなくて!」

 

一旦息を整えた後、

 

「そんな悩みがある明日香ちゃんがうらやましいなあって・・・私は、今をどうしようかで必死だから・・・」

 

「あ、そうだ。明日さ、ちょっと付き合いってほしいんだけど」

 

 

 

 

 

 

 翌日の講義終わった後、隣のクラス───李組にやってきた私と円ちゃん。

 

「あ。いた。咲良ちゃん!」

 

 程なく私たちを見つけ、こちらにやってきた。

 

「ごきげんよう明日香さん。なにか用でしょうか?」

 

「昨日の赤髪の・・・みどりちゃん・・・だっけ?いる?」

 

「みどりちゃんなら上級生に会いたいからーって講義終わってすぐ出ていきました。あの子楽しいこと見つけると見境いなくなるみたいで縮地使って飛んでいきました・・・」

 

 と少々苦笑い。っていうか、日頃からレアスキル使ってるのかあの子・・・。

 

「上級生探しかぁ・・・難易度高いなぁ・・・」

 

「それと明日香さん、円さん」

 

「なに?」

 

「よろしくおねがいします!」

 

 深々と頭を下げる咲良ちゃん。

 

「あの後京夏様のところに行って正式にLGのメンバーになりました。なのでご挨拶を・・・」

 

「そこまでかしこまらなくていいよ。同い年でしょ?」

 

「そうだよ咲良ちゃん。それだと話かけづらいかな・・・」

 

「もっと普通に話せない?それだと上級生と話してるみたい」

 

「普通・・・ですか?」

 

「あー!」

 

 後ろから耳を抑えたくなるような大声。

 赤髪ショートボブのリリィ───みどりが立っていた。

 

「あ。みどりちゃんおかえりー。早かったね」

 

「あのとき喧嘩売った子!」

 

「失礼ね。喧嘩売ったんじゃないわよ?アドバイス」

 

「じゃ、あたしはこれで・・・」

 

 縮地で逃げられる───そう思った私はとっさにレアスキルを発動、みどりに近づいて制服の裾を掴む。

 

「なにすんだよー!」

 

「今日は逃げてもらっちゃ困るのよ。あなたに用事があるんだから」

 

「へ?あたし?」

 

「そ。だから付き合ってもらうわよ」

 

 ということでやってきた訓練棟の修錬場。一昨日私とベスが手合わせしたところだ。

 

「はい。2人ともCHARM出して?」

 

「あ、明日香ちゃん・・・ホントにやるの?まだちゃんと使ったことないんだよ?」

 

「それはみどりちゃんも同じじゃない?だよね、咲良ちゃん?」

 

「そうです。私もまだ・・・そこまでは教えてないので・・・」

 

「マギの入れ方はシューティングモードのときと同じ。ただ、入れ方次第でブレードの耐久性が変わる・・・んだけど、最初のうちは入れるところから始めよっか。そしたら・・・」

 

 遅れて琴乃様もやってきた。背中にはCHARMケー・・・ん?普通のより長いような・・・。

 

「みんなごきげんよう。遅くなってごめんなさいね。準備してたらこんな時間に・・・」

 

 準備?

 見ると手にはなにやら容器を持っている。

 

「琴乃様。昨日の打ち合わせ通り持ってきてくれました?」

 

「ええ。私のCHARMは百合ヶ丘でも有名だから知らない人はいないと思うけど」

 

 と、ニコニコしながらケースから取り出す。

 

「うわぁ・・・これが・・・」

 

 私は昨日直接聞いてビックリしたが、実物を見るとなおさらだ。

 

「ながーい・・・これが、琴乃様のCHARMですか?」

 

「私も、実物は初めて見ました。中等部は校舎が違うので噂だけは聞いてましたが・・・」

 

 と、感動ぎみの咲良ちゃん。

 

「そう。フリングホルニ。私が百合ヶ丘に来たとき、最初はグングニルだったの。けど、全然扱えなくて・・・」

 

「で、当時たまたま居合わせたユグドラシルの開発担当アーセナルが琴乃様のために作ってくれた、と」

 

 私が付け加える。 

 

「ええ。これのおかげで今の私があるって言ってもいいぐらいよ」

 

 特徴的なのはCHARMの長さだ。私の身長が158cmなのだが、それを遥かに超える。見た目はグングニルには似ているが、唯一違う点は可動部分がなく、銃芯と思われる部分が大幅に延長されている点だろう。一般的なCHARMは必ず持ち手が存在するのだが、このフリングホルニにはそれがない。

 

「でもどうしてユニーク機なんです?選択肢は他にもあったと思うんですが・・・アステリオンとか」

 

「長さが足りないのよ・・・」

 

「長さ?」

 

「ええ。構えるクセでこの長さじゃないとどうしても攻撃できなくて・・・」

 

 私には、琴乃様の言ってる意味がいまいちよく分からなかった。

 

「ごきげんよう。今日は何?みんなで合同訓練?それは関心だわ」

 

 京夏様もやってきた。今日は来ると聞いてなかったが、おそらく琴乃様が呼んだのだろう。

 

「ごきげんよう京夏様。今日は訓練というよりは講義のほうが正しいかも・・・」

 

「何?フリングホルニの話?ああそっか・・・みんなは知らないんだっけ。琴乃、私が説明してもいいわよね?」

 

 講義、とは言ったものの、今は皆がフリングホルニのほうに目が行ってるため、その話題になるのも自然な流れだ。

 

「ええ」

 

「琴乃はね。昔からやってる薙刀の師匠でもあるのよ」

 

「師匠じゃなくて当主。実家が道場なんだけど、私が寮に入っちゃったから今は弟に任せてるわ」

 

 琴乃様の苗字からしてなにかある、と思っていたが、まさかの結果に驚きを隠せない。

 

「私のCHARMの話はとりあえずおしまい。今日は手合わせするんでしょ?」

 

 ここでみどりが手を上げる。

 

「しつもーん!」

 

「何?みどりちゃん?」

 

「・・・手合わせって何?」

 

「練習試合みたいなものよ。今回みたいにね」

 

「あの・・・琴乃様」

 

「何、明日香ちゃん?」

 

「みどりちゃん・・・LGメンバーじゃないんですよ・・・なのでちょっと語弊があるかなーと・・・」

 

「とにかく2人ともCHARM起動して?」

 

 2人のCHARMにマギが入り起動する。

 

「で、これから2人には手合わせしてもらうわけだけど・・・本来同級生リリィ同士だったら判定人に上級生を立てなくていいんだけど、今日は琴乃様にお願いしたわ」

 

「そういうこと。なのでよろしくね。円ちゃん、みどりちゃん」

 

「はい」

 

「おう」

 

「2人とも初めてだからとにかく怪我のないように。ルール・・・じゃないわねこれは。分かってるとは思うけどレアスキルは禁止ね。勝利報酬・・・はどうするの明日香ちゃん?」

 

「あー・・・」

 

 実は全然決めていなかった。

 

「じゃあ、私からいい?」

 

「京夏様?」

 

「勝ち負けじゃなくて私から見て判断させてもらうわね。けど練習だからそんなに緊張しなくてもいいわよ・・・って言ってもムリか」

 

 苦笑いの京夏様

 

「えっと・・・」

 

 明らかにガチガチに緊張してる円ちゃん。

 

「いつでもいいよー」

 

 CHARMを起動させただけなのに大喜びしてるみどりちゃん。

 

「集中していればブレードにマギが入るから。そしたらそのまま始めちゃって」

 

 フォン!

 

「おー!すげー!」

 

 先にブレードにマギが入ったのはみどりちゃんのほうだった。元々琴乃様みたいに何かしらの運動や習い事をしている子のほうがマギを入れるコツはつかみやすいと思う。

 

「明日香ちゃーん・・・どうしよう・・・マギが入らない・・・」

 

 こればかりは個人差だからなあ・・・アドバイスしようがない。

 

「余計なことを考えちゃダメ。自分はCHARMを使うんだ、っていうことを常に考えて」

 

 京夏様のアドバイスは的確だと思う。

 

「円ちゃん。参考になるかわからないけど、鬼龍院流の心得にこんなのがあるわ。『邪念を払い心を無に。体を成し、己の力となる』先代・・・お父様から良く言われたわ」

 

 はるか昔の本で剣豪が箸で蠅を掴んだ、というのを読んだことがある。集中していれば不可能はない、という例えだが、琴乃様の言う心得はそれに近いと思った。

 

「京夏様ー、もうはじめちゃうよ?」

 

 みどりちゃんが痺れを切らした。にしても早い・・・我慢ができないのだろう。

 

「おりゃあ!」

 

 キンッ!

 

「うわあっ!」

 

 マギが入ったCHARMで振り下ろされてどうにか受け止めた円ちゃん。

 

「こ、こんな重いんだ・・・」

 

 キンッ!キンッ!

 

 実に楽しそうにCHARMを振り下ろすみどりちゃんとは逆に、

 

「ううっ・・・」

 

 ただ受けることしかできない円ちゃん。一昨日の私の姿と重なって映ってしまった。

 

(止めたほうがいいのかな・・・)

 

 ブンッ!

 

「うわぁっと・・・」

 

 みどりちゃんは見ててややあぶなっかしい。

 

「どうしましょう?一旦止めます?」

 

 小声で琴乃様に相談する。

 

「もうちょっと待ちましょう。普通の子はすぐにマギは入れられないわ」

 

 さすが琴乃様、武道家だけあってよく見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 どうしよう?

 初心者なので当たり前といえばそれまでなのだが、ここまでお膳立てをしてもらってるのに何ひとつ成果を上げられていないことに焦りを感じていた。

 

(えっと・・・えっと・・・)

 

 焦れば焦るほど集中力が切れそうになる。

とにかく一旦落ち着こう、と思い目を閉じる。

 

(邪念を払い・・・心を無に・・・)

 

 琴乃様の言葉を思い出す。

 

「あれ?なんで目閉じてるの?」

 

 みどりちゃんの声が聞こえるが無視する。

 

 ボソボソ・・・

 

 少し離れたところで見ている明日香ちゃんと琴乃様からは何か話をしているのは分かったが、何を言ってるのかまでは聞こえない。

 

(無になるってこういうことなんだ・・・よし、これなら・・・)

 

 改めてCHARMに神経を集中する。これでマギは入るはず。

 

 フォン!

 

 やった!マギが入った!よし・・・!

 目を開けみどりちゃんに向かって一振り。

 

 キンッ!

 

「うわっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「ストップ!」

 

 京夏様が止めに入った。危険要素はないはずだが。

 

「どうしました?何か問題でも・・・」

 

「うーん・・・」

 

 京夏様が唸っている。

 

「あら・・・京夏ちゃんスイッチ入っちゃったわね・・・」

 

「スイッチ?」

 

「そう。何か閃いたときとか、考えたりするときは周りが見えなくなっちゃうのよ」

 

「なるほど・・・」

 

 しばらくして、

 

「みどりちゃん」

 

「何?京夏様?」

 

「こっち来てもらっていい?」

 

 なにやら小声で話している。こちらからは全く聞こえない。

 

「ホント?じゃあ、あたし、入ります!」

 

「あの・・・咲良ちゃん・・・」

 

「なんですか?」

 

 何の疑いもなくこちらを見る咲良ちゃん。

 

「まさか、とは思うけど・・・みどりちゃんって・・・」

 

「しーっ!」

 

 指を前に出し、

 

「明日香さん・・・それ本人の前で言っちゃダメですよ?それが彼女の良さなんですけど・・・」

 

 小声の咲良ちゃんのその言葉ですべてを理解した。

 だがそれは、何色にも染まっていないまっさらな状態ということでもある。京夏様がどう考えたかわからないが、LGの戦略として思うところがあって彼女───周防みどり───をLGに迎い入れようということなのだろう。

 

 




ようやくレギオンメンバー全員揃いました。ラーズグリーズ(一柳隊)よりも早いですがまあ気にせずに(笑。
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