アサルトリリィ~もうひとつの物語   作:武士道の犬

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アステリオン

 LG(レギオン)結成から1ケ月が経ち、私たちの連携もようやく慣れてきた。今だラージ級と戦っていないのは幸いだが、違う課題も見えてきた。

 

「やっぱり・・・どうしてもブレちゃう・・・」

 

 (まどか)が嘆いている。

 この日は私と、円、ベスの3人で近くの廃墟となった街に来ているのだが、遠くの廃墟ビル目がけて訓練弾を放つ、という自主練だ。もちろんレアスキルはなしで、だ(特に円。

 私はともかく、ベスは焦りすぎて、撃つときに少しブレるようだ。まあ援護向きではないと思うので特に問題にはしていない。心配なのはフィニッシュショットのときぐらいか。

 

「うーん・・・私のCHARM貸してあげたいけど・・・コアの付け替えが必要だしなぁ・・・」

 

「コア?」

 

 と言って、指である一点を指す。

 

「CHARMを動かしているマギの宝玉のことですわ。扱えるかはともかく、入れ替えれば琴乃様のフリングホルニも使うことができますの」

 

「・・・例えが極端すぎ。でもまあ、そういうこと。御台場にいるときはヨートゥンシュベルトも持たされてたから自分で付け替えてはいたけど、百合ヶ丘に来る時置いてきちゃった」

 

「ヨートゥンシュベルトって第1世代のCHARMですわよね?どうしてまた?」

 

「デュエルで戦うときの御台場での基本戦法。御台場のリリィは全員ヨートゥンシュベルトが1振りずつもらえるんだけど、メインで使ってヒュージを弱らせて、タングズニルで最後・・・ってやつ。最後のほうはメンドくさくなって最初っからタングズニルでやっちゃってたけどね」

 

「へぇ・・・」

 

「で、そのことをメンテのときに乃莉子さんに話したらめちゃくちゃ怒られてさー・・・・『だめですよ!そんな簡単に扱ったら!下手をしたら二度とCHARM使えなくなりますよ?』だってさ・・・」

 

 工廠科との温度差、ということか。

 

「と、とにかく!円さんのCHARMの扱い方がうまくなってるのは良いことではありませんか。そこは喜ぶべきですわ」

 

「それはそうなんだけど・・・なんか納得いかないー!」

 円は不満そうな顔だ。

 

 

 

 

 

 

「ということなの。乃莉子さんなんとかならない?」

 

「うーん・・・なんとかって言われてもなあ・・・」

 

 工廠科の乃莉子さんの工房。

 乃莉子さんは頭をかきながら言う。

 

「確かにグングニルは初心者にも扱いやすい作りにはなってるんだけど・・・銃芯とか伸ばせるような構造になってないのよ・・・だからそこをどうにかするってのは・・・あ?ちょっと待って・・・」

 

 ガサゴソ・・・

 

 思い出したかのように工房の後ろのほうを探す乃莉子さん。

 

「えっと確か・・・あった!」

 

 と言って持ってきたのは───

 

「アステリオン?・・・これ、誰のです?」

 

 少々ガタが来ているようだが、間違いなくコアの入っていないヒヒイロカネのアステリオンだった。

 

「前に知り合いから譲り受けたんだけど・・・ほら、私のって自分で作ったユニーク機だから部品とか使い回せないし・・・誰かのリペア用にって取っておいたやつ」

 

「なるほど・・・で、これがどうかしたんですか?」

 

「だ・か・ら!これをベースに魔改造しちゃおうか、ってこと。アステリオンの良さを活かしつつ・・・えへ・・・えへへへ・・・」

 

 ま、まずい・・・スイッチ入った。どうしよう?

 

「乃莉子ちゃーん。あれ?明日香さんごきげんよう。どうしたんですか?メンテならこの前出してませんでしたっけ?」

 

 よかった・・・困ったときの助け舟、咲良ちゃんがたまたま来た。

 

「あー・・・ごきげんよう。今日はちょっと相談ごとをね。あ・・・乃莉子さん。例の機構も実装してもらえる?あの機構絶対円向きだと思うのよ。細かい設計図なんかは最初に渡した資料にあるから」

 

「りょーかい。にしても明日香さんも物好きよねー。普通あんなの組み込まないわよ?」

 

 物好きと言われてしまった。

 

「あ、あとそれともうひとつ相談が・・・あ。これ円にはナイショで」

 

 

 

 

 

 

「え?グングニルのブレードの強度を落とす?」

 

 それはそうだろう。普通は逆なのだから。

 

「ただCHARM替えろって言っても本人は納得してくれないと思うの。だからキッカケを作りたくて・・・それと、次のメンテのときにわざと古い銃芯使ってほしいの」

 

「あー・・・なるほど・・・つまり、壊れた・・・って(てい)にしたいんだ」

 

「これは後で京夏お姉様にも言って相談するけど・・・勝手なことやって怒られないかな・・・咲良ちゃんどう思う?」

 

「あの・・・話が全く見えないんですが・・・」

 

 今日あった一通りのことを説明。

 

「なるほど・・・確かに今の円さんならグングニルだとちょっとスペック足りませんね。思い切って乗り換えちゃってもいいのかも・・・」

 

 今の円はLGに入った時に比べると格段に強くなっている。スモール級ヒュージを倒すのに初花様や京夏お姉様の力を借りてやっと・・・だったのが、今では咲良ちゃんと肩を並べてもおかしくないぐらいにまで成長している。

 

「けど本人は初めてのCHARMで愛着あるだろうし、そう安々とはいこれ、って乗り換えると思えないのよね・・・とにかくありがとう乃莉子さん。で、どのぐらいかかりそうなの?」

 

「2週間。それでなんとかするわ」

 

 え・・・2週間って・・・早くない?

 

「私なんかまだまだよ・・・百由(もゆ)様に比べたら」

 

 あー・・・。

 

「まあ百由様は次元違うから比較することはないんじゃない?とにかく京夏お姉様に話が通るまではちょっと待ってて。オーケーが出たらすぐに連絡するから。じゃ、ごきげんよう」

 

 

 

 

 

 

 

「ということなんです京夏お姉様」

 

 翌日訓練が終わった後。いつもの足湯にきた私たち。

 

「そうね・・・確かに今の円ちゃんにはグングニルじゃないほうが良いと思うわ」

 

「じゃあ・・・」

 

「円ちゃんのことを一番理解してるのはあなたでしょ?反対する理由なんて、ある?」

 

「ありがとうございます京夏お姉様。不思議に思ってたんですけど、なんで私のことをそんな大目に見てくれているんです?」

 

「もしかして・・・気づいてない?」

 

 え?

 

「明日香を信頼しているのもあるけど・・・あなたが1年生のみんなを引っ張っていってくれてる。サブリーダーみたいなものよ」

 

 私が・・・サブリーダー・・・。

 

「サブリーダーだなんて・・・そんな・・・」

 

 ピンッ!

 

「いたっ」

 

 京夏お姉様にデコピンされてしまった。

 

「自分に自信を持ちなさい明日香。そうやって他の子を励ましてきたんでしょ?」

 

「・・・」

 

「それと、リリィはなにかしらの悩みとトラウマを持ってるわ。それを克服できればもっと強くなれる。私にも言えることだけどね・・・」

 

 と言って海のほうを眺める京夏お姉様。いつもとは違い、どこか寂しげな顔をしている。こんな表情をするお姉様は初めて見た。

 

 

 

 

 

 

「明日香ちゃんどこ行ってたの?」

 

「工廠科。ちょっと相談をね」

 

 部屋に戻って来て円とのやりとり。

 

「・・・最近乃莉子ちゃんと仲いいよね?もしかして何か企んでる?」

 

 まさか・・・気づかれた?そこまでカンがいいとは思えないが、

 

「・・・なにするの。まあしたとしてもCHARMのモードの切り替えもっと早くできない?とかぐらいしかないよ?」

 

「嘘うそ、冗談だって。真に受けないでよ」

 

「あのさ円」

 

「何?」

 

 分かりにくいように聞いてみるか。

 

「もし・・・もしもの話ね。グングニルが壊れたらどうする?」

 

「そりゃあ・・・工廠科の、乃莉子ちゃんのところに持ってって修理してもらうかなあ・・・」

 

 普通はそう答える。

 

「じゃあそれで持ち込んで、修理不可だって言われたら?」

 

「・・・」

 

 円は答えなかった。というよりは()()()()()()()()、が正解か。

 

「そういう可能性もあるってこと。知ってると思うけど、汐里さん。扱いはアレだけど、致命傷になるまでの大破はさせてないみたい。円も気をつけてよ?いくら新しいって言ってもいつそうなるかわからないから」

 

 とは言ったが、嘘も方便で実際のところその程度でグングニルは壊れない。マギリフレクターにでも当たらない限りは、だ。

 

 

 

 

 

 

 2週間後。

 乃莉子さんから連絡が入ったので早速工廠科の工房へ。すると普段見慣れないリリィが来ていた。

 

「おう。明日香か。それにしてもモノ好きじゃの。わざわざ魔改造頼むとは」

 

 ミリアム・ヒルデガルド・(ふぉん)・グロピウス───乃莉子さんの隣の工房にいる同じ1年生のアーセナル兼リリィだ。

 

「ごきげんようミリアムさん。いや、使うのは私じゃなくてルームメイトの円なんですけどね」

 

「なんでお主が頼んどるんじゃ?本人が直接頼めばよかろう?」

 

 もちろん事情を知る由もないので小声で耳打ちする。

 

「・・・ふむ。なるほどのう」

 

「話は終わった?」

 

 と別な作業をしているっぽい乃莉子さん。

 

「ごきげんよう。出来上がったって聞いたから。で、どんな?」

 

「正確には出来上がった・・・というか、最終調整がまだなのよね・・・」

 

 あー・・・思い出した。

 

「バランスウェイトですか?」

 

 実は私のタングズニルには仕掛けがしてある。銃芯のところにわざと重りをつけてシューティングモードのときのみ手元が重くなるようにしてあるのだ。なので魔改造の塊であったりもする。

 その仕様に関してはメンテのときに困るだろう、と当時やってもらったお台場専属のアーセナルから設計図面の写しをもらって事前に乃莉子さんに渡してある。

 

「一応明日香さんのを参考にはしてるけど・・・どうなのかなあ・・・」

 

「私のコア移してもらっていいですか?ちょっと見てみます」

 

 アステリオンなのだが、ガタの来ていた部品は新品になっているので見た目上は整備されたCHARMにしか見えない。唯一違う点はブレード部分が若干小さくなっていること、モード変形機構部分とホールド部分が大きくなっている点だろう。

 

 

 

 

 

 

 訓練棟の射撃場。たまたま誰もいないのが幸いだ。見られたら困る、というのもあるが万が一のことを考えてのことだ。

 

「ちょっとやってみますね」

 

 ガチャン!

 

 シューティングモードに切り替える。

 アステリオンは予備隊にいたときに何度か遊びで交換して使ったことがあるが、それよりも格段に持ちやすくなっていた。

 バランスウエイトの位置も私基準なのでしっくり来るのは当たり前だが、特に問題はないようだ。

試しに1発撃ってみる。

 

 パンッ!

 

「普通のアステリオンより扱いやすい・・・不思議・・・」

 

「アックスモードを省略したからね。円さんがあれ使う機会なんてなさそうだし、思い切って取っちゃった」

 

 だからか。

 

「私が使いたいぐらいだわ。ウエイトの位置は問題ないと思う。もしこれですごく重いって感じるようなら気持ち軽くしてもいいかな」

 

「了解。後はグングニルか・・・」

 

 乃莉子さんの部屋に戻り、コアを戻してもらったときだ。

 

 端末に連絡が入る。出撃司令だ。

 

「タイミング良すぎ・・・ごめん、行くね。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 連絡を受けてやってきたのは住民が住んでいる地域から近い所だ。ここは小規模ながらもエリアディフェンスが敷かれているので通常ヒュージは発生しないはずなのだが・・・。

 

「京夏お姉様、ヒュージの数は?」

 

「スモール級ね。大したことはないわ。ただ・・・」

 

「・・・数が多い。私たちだけで裁き切れるか、怪しい・・・」

 

 灯音様によればゆうに100体以上いるとか。100・・・か・・・。

 

「確かに厳しいですわね・・・琴乃様に酔狂の月(ルナティックトランサー)はあまり使わせたくないですし・・・」

 

 今回ばかりは(まどか)に頑張ってもらうしかなさそうだ。

 

「円。ちょっと大変かもしれないけど、お願いね」

 

「できるだけやってみる」

 

「行くわよ、みんな」

 

「はい!」

 

 パンッ! パンッ!

 

 今回はとにかく数が多い。マギは極力消費したくない。冷静に、確実に狙っていく。

 

「ああっ、もう!ほんっとに数多すぎ!」

 

 目に付くスモール級はとにかく仕留める。CHARMがオーバーヒートしなければいいのだが・・・。

 オーバーヒートというのはCHARMにある保護機能が働くなる現象のことの通称だ。本来の意味はマギを過剰に流し込み、ヒュージを一気に叩くという戦法で、ラージ級以上に有効な方法なのだが、負荷があまりにも高すぎる上に、コアの再起動までに時間がかかるため、特定CHARM以外には使用できないようになっている。さて円は───

 

 パンッ!

 

 肉眼で見えない範囲のスモール級を狙い撃ちにしているようだ。琴乃様は、

 

「はああああっ!」

 

 ズバッ!

 

 フリングホルニを振りかざし一体一体人海戦術で仕留めていた。まあ、シューティングモードを使うよりはこのほうが格段に早いのだろう。

 

「灯音様!今回ネストもケイブもないんですよね?」

 

「そのはず・・・今見る限りでは見えない・・・」

 

「うりゃうりゃうりゃ!」

 

 みどりも縮地を使ってなるべく遠くのスモール級のところに行っているようだが、あの子のことなので調子に乗りそうで正直不安だ。

 

「1人10体としても・・・お釣りが来るわね・・・」

 

 状況を楽しんでいるのか、京夏お姉様は分からないことを言っている。

 

「冗談言ってる場合?いくらスモール級とはいえ、キツいわね・・・」

 

 普段華麗(?)なCHARM捌きを見せる初花様でさえも音を上げていた。

 

 パンッ!パンッ!

 

 さすがにこれだけいると単純作業化してきてしまって何か刺激が欲しくなってくる。

 

「円!私と交代して!」

 

「え?ムチャだよ明日香ちゃん!だってレアスキル・・・」

 

 パンッ!

 

 言い終わる前に1発放つ。目標は肉眼ギリギリ見える範囲のやつだ。

 

 GYAAAAAAAA・・・

 

 よし!一丁上がり。

 

「ええっ!?」

 

 円はビックリしている。それはそうだろう。

 

「どうなってるの・・・」

 

「どうなってるって・・・私は普通に撃ってるだけだ・・・よっ!」

 

 パンッ!

 

 もう1体。これは後で円に説明しよう。

 

 結局私と円だけで合計40体近く駆逐していたらしい。ベスは、

 

「ああっ!もう!1体ずつなんてまどろっこしいですわ!テスタメント!」

 

 パアアアアアア・・・

 

 レアスキル発動。テスタメントは攻撃やレアスキルなどの範囲を広げる効果がある。

 

「咲良さんこれで一掃しましょう!さっさと終わらせますわ!はあああああ!」

 

 シュバッ!

 

 ブレードモードに切り替えて一気に2体、

 

「はい!」

 

 咲良ちゃんも同じく2体。

 

「灯音様、残りは?」

 

「500m先に2体いるだけ・・・かな・・・」

 

「分かりました!よーし・・・」

 

 聞いて構える円だが様子がおかしい。

 

「あれ?動かない・・・」

 

「え?どういうこと?」

 

「わからない・・・」

 

 と思っていたが、よく見るとマギクリスタルコアが赤く点滅している。CHARMのオーバーヒート警告だ。これ以上使うとおそらくは・・・。

 むしろこれはチャンス、と思った私。

 

「円。その状態でも後2発は撃てるからやってみて」

 

「待って。それ以上使ったらCHARMが再起不能になるわよ?いいの?それでも?」

 

 と、初花様。

 

「あの・・・すみません。実は・・・」

 

 事情を耳打ちする。それで理解してもらえたのか、あーなるほど、とニヤニヤ顔で黙ってしまった。

 

「え?壊れるって?」

 

「いいからやって!私でもあの距離はムリ・・・」

 

「う、うん・・・」

 

 パンッ! パンッ!

 

 射撃音が響く。そして───

 

 シュー・・・

 

 グングニルから白い煙が上がる。

 

「えっ?ええっ!?」

 

 当然本人は困惑。

 京夏お姉様はあえて何も言わないようだ。

 

「CHARMのオーバーヒート・・・私初めて見ました・・・」

 

「確かに滅多に見られるものじゃないわね・・・」

 

「あの・・・これってどうなっちゃたんですか?」

 

 半分泣きそうになっている円。

 

「マギ弾1発に力を込めすぎるとCHARMの保護機能が働いて本来の力を発揮できなくなるのよ。それを続けていると保護機能も働かなくなってCHARMとしての役目が終わる・・・」

 

「え・・・じゃあ・・・」

 

「そのCHARMは部品を交換しても2度と使えないわ。けど、安心して円。実は前々から思ってたことがあって『わざと』そうさせたのよ。不幸中の幸いと言うのも何だけど丁度出来上がったばかりだからいい機会かな」

 

「どういうことですの?」

 

「あ、そっか。ベスにも説明してないんだっけ・・・。実は密かに『あるもの』を依頼してたのよ」

 

「あるもの?」

 

 

 

 

 

 

 ということで再び工廠科の乃莉子さんがいる工房へ。

 

「あらみなさんお疲れ様ー・・・って、どうしたのそれ!?」

 

 円のCHARMを見て驚いている。

 

「それが・・・例の話はなくなっちゃって・・・」

 

「見ての通りですわ」

 

 まじまじと眺める乃莉子さん。

 

「あちゃー・・・オーバーヒートかぁ・・・」

 

「そういうことなので・・・例のCHARM出してもらっていいですか?」

 

「あーはいはい・・・ちょっと待って・・・」

 

 と言って工房の奥のほうへ。

 

「CHARMが、どうかしたんですの?」

 

 ハテナ顔のベスと円。

 

「まぁいいからいいから。見ればわかるよ」

 

 しばらくして、

 

「お待たせー。あの後外装の色ちょっと変えたから」

 

 持ってきたのは───

 

「アステリオン・・・ですわよね?」

 

 確かにアステリオンだが、私が見たときは標準色(青)だったが、今は黄色になっている。

 

「そう。ただのアステリオンじゃないわ。名付けてアステリオン・ブリッジ」

 

「アステリオン・ブリッジ?」

 

「ヒヒイロカネのアステリオンは知ってるでしょ?」

 

「はい。確か・・・李組の王雨嘉(わんゆーじあ)さんが使ってるはず・・・それが、どうかしたんですか?」

 

 王雨嘉───アイスランドからの留学生で、円と同じレアスキル───天の秤目───の持ち主だ。

 

「アステリオンはブレード、シューティング、殴る目的のアックスモードが搭載されてるんだけど、このアステリオンはアックスモードを省略した代わりに本体の補強とブレードの強度向上、それに射撃距離が少し伸びるようにしてあるの。もちろんそれだけじゃないわ」

 

 乃莉子さんは続ける。

 

「明日香さんのタングズニルと同じようにシューティングモードのときだけバランスウエイトが働いて安定して射撃できるようにしてあるから長距離からの援護がかなり楽にできるはずよ」

 

「バランスウエイト?何それ?」

 

「初めて聞きました」

 

「明日香さん、CHARMにそんなことしてありましたの!?」

 

 驚くのもムリはない。

 

「あはは・・・」

 

 苦笑い。

 

「実はね、御台場にいたときから学園(ガーデン)外のビームライフルのスクールに通ってて、そのせいもあって、CHARMでも重量がないとシューティングモードでブレブレになっちゃうから当時の工廠科にお願いして作ってもらったの」

 

「だからあんなに安定して撃てるんだ・・・」

 

「使ってみればわかるけど、少し慣れが必要だから最初のうちは苦労するかも」

 

「じゃあ天の秤目なしであれだけ撃てるのは?」

 

「・・・気が付いたら出来るようになってたから」

 

「なんの話ですの?」

 

 ベスはそのときたまたま離れていたので知る由もない。

 

「えっとね、明日香ちゃんがレアスキルなしで500mぐらい先にいたスモール級撃ったからなんで?って」

 

「ありえませんわ!」

 

 と激昂するベス。

 

「考えてもみてくださいな。わたくしたちが見えるのはせいぜい良くて100mぐらい。それを500だなんて・・・」

 

「そうね。普通はありえないわね。もしかして、サブスキル持ち?」

 

「さあ・・・?今まで意識したことないからなぁ・・・」

 

 乃莉子さんさんに言われて気づく。それは考えたことがなかった。サブスキル───魔眼、か。

 けど、私の知る限りゼノンパラドキサでサブスキルを持っているリリィはいない。

 

「と、とにかく!コアを移して試しに撃ってみたら?明日も訓練あるし、今のうちに触っといたほうが・・・」

 

 

 

 

 

 

 2度目の射撃場は日は落ちかけすっかり夕暮れとなっていた。

 

「へぇ・・・アックスモードなしのアステリオン・・・考えたわね。ブレードも少し小さくなってるわ」

 

 京夏お姉様にも来てもらい、見てもらうことにする。乃莉子さんも一緒だ。

 

「よく分かりましたね京夏様!そうなんですよー!これがアステリオン・ブリッジのいいところで、小さくした分強度が出せるんです」

 

「円、持ってみて、どう?」

 

「うーん・・・なんか慣れないなあ・・・頭でっかちっていうか」

 

 見た目の印象だろうか。重量はどちらも変わらないはずだ。

 

「じゃあ・・・モード変えて撃ってみて」

 

「うん」

 

 ガシャン!

 

 モードの切り替わる音。

 

「うわっ!」

 

 円が体勢を崩しそうになる。バランスウエイトの欠点はこれ。モードが切り替わった際、本体に仕込んであるウエイトの位置が変わるためだ。まあ結局は慣れなのだが。

 

「おっと・・・」

 

 慌てて私が手を添える。

 

「重量はどう?」

 

 円が不思議そうにCHARMを眺めている。

 

「え?なんで?どうなってるの?」

 

「仕組みは教えられないけど、持ってみてバランスはどう?どっちかに重いってことない?あるなら調整するわ」

 

「ちょっと待って。よっと・・・」

 

 円がCHARMを構える。

 

「うわあ・・・すごい・・・構えてるだけなのに全然銃芯がぶれない・・・」

 

 円が感動している。

 

「でしょ?それを置いといても、元々アステリオンは長距離射撃向きだから円にはピッタリのCHARMだよ」

 

「乃莉子ちゃん。えっとね、もうちょっと後ろに重く、かな。手が疲れる・・・」

 

「はいはいちょっと貸してね。えーっと・・・ここをこうしてっと・・・」

 

 乃莉子さんは受け取るなりすぐ調整した。

 

「もしかして、これって自分で出来たり?」

 

 聞いてみる。

 

「できるようにはなってるわよ。けど、専用工具が必要だからちょっと厳しいかなー」

 

 と乃莉子さん。

 

「へえ・・・そんなに変わるものなのね。ねえ乃莉子さん、私のCHARMにも実装は可能?」

 

 京夏お姉様が乗ってきた。

 

「可能ですけど・・・(シルト)と同じ仕様にしたい、とかですかあ?もう・・・お暑いですなあ・・・」

 

「こら!そういうのじゃないわよ。純粋に欲しくなっただけ」

 

 もしかすると、LG(レギオン)メンバー全員がバランスウエイトを付ける日が来るかもしれない。

 

 パンッ!

 

 訓練弾独自の乾いた音。

 

 パンッ!

 

 もう1発。撃った弾は的の中心より少し上に当たる。もちろん2発とも同じところだ。リリィになりたての円は的に当てるのもやっとって感じだったが、ここまでうまくなったのだ。

 

「これすごい!ありがとう乃莉子ちゃん!」

 

「お礼なら私じゃなくてルームメイトにね」

 

 と私のほうを指す。

 

「明日香ちゃん・・・」

 

「私は何もしてないわよ?相談しただけ・・・なーんてね。ホントはさ、2週間前にやった自主訓練のときに思ったんだ。円のブレ問題どうにか解決できないかなぁって」

 

「・・・」

 

「で、自分のことを振り返ったらバランスウエイトのことを思い出したから、乃莉子さんにお願いしてカスタムしてもらっただけ。タイミングを見計らってグングニルを壊れたことにしてこっちに・・・って思ったらまさかのタイミングでオーバーヒートさせちゃうしさ・・・ビックリしたわよ。もしかして、ベスってファンタズムでも持ってるとか?」

 

「あははは・・・」

 

「ファンタズム?なんのことですの?わたくしにはさっぱり・・・」

 

「ほら、先週の中庭での話。忘れた?自分で言ってたでしょうに・・・」

 

 あー、と手を打ち、

 

「あのときの・・・そういえばそうでしたわね。単なる偶然ですわ」

 

「これでレギオンの方針がやっと固まったかな・・・みんな、ちょっといい?」

 

 京夏お姉様が口を開く。

 

「なんですか?」

 

「ちょうど1年生ほとんどいるし、ポジションについて正式に話すわね」

 

「ポジションですの?大方決まってるんでなくて?」

 

「一応、ね。明確にしておきたいのよ」

 

 と、京夏お姉様。

 

「まず明日香。AZ(アタッキングゾーン)。琴乃と常に最前線にいることになると思うけど、一番の要だから慎重にね」

 

「はい」

 

「次、エリザベスさん。あなたも明日香と同じぐらい戦闘スペックは高いわ。けど、前にも言ったけど、勝手な判断をすることがあるから、そこだけ要注意ね」

 

「はい・・・ですわ・・・」

 

「それさえなければ常に前線で戦ってもらいたいぐらいね。円ちゃんは・・・CHARMは持ち替えたけど、太刀振る舞いはまだまだだから、私としては後方支援のほうに回ってもらいたいわ。明日香もそう思ったんでしょ?」

 

「ははは・・・その通りです。咲良ちゃんもかな、と思ったんですが」

 

「よく分かってるわね。そんなところかな。今はみどりがいないけど、縮地の利点を生かしてヒュージの引っ掻き回し役になってもらうつもりよ」

 

 それは大いに賛成なのだが、ひとつ不安が───

 ()()メンドくさがりのみどりがちゃんと命令に従うのかどうか。

 

「それなんですけど・・・多分大丈夫だと思います。みどりちゃんって、面白そうだったり、自分が興味あることには素直なんです。だからそこは問題ないかと」

 

「へえ・・・」

 

 今まで気にしたことがなかった。

 

「そんなところかな。乃莉子さん、後で工廠科行くから、さっきの話の続きを」

 

「りょーかい。では工房でお待ちしております!」




 ここまでが今まで書き溜めていた分になります。
 よって来週以降更新が遅れるかもですので気長にお待ち下さい^^;
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