過酷な世界で生き抜くために   作:フドル

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 評価バーに色がついてました。ありがとうございます。
今回は前より更に長くなってしまいました。

てな訳で15話です、どうぞ〜


15話

 「ルゥ!!」

 

 血飛沫と共にルゥの身体が地面に落ちるが、それを何とか抱える。下半身を噛みちぎられ、軽くなった体重がルゥの現状を教えてくる。

 

 「ルゥ!ルゥ!しっかりするニャ!」

 

 「ニ……ャ……」

 

 必死に声をかけるが返ってくる声は弱々しく、今にも消えそうだ。何とかルゥを助ける方法は無いのかと頭を回転させる。

 

 「隊長!危ないニャ!!」

 

 「……!?」

 

 そんな時にシールの声が届き、ハッとする。自分とルゥの周りを影が覆っており、上を向くと竜が脚を振り下ろそうとしていた。

 反射的にルゥに覆い被さるように地面に伏せる。こんな事をしても意味は無いのだがこれしか思いつかなかった。

 しかし攻撃が来ることはなかった。竜が攻撃する直前にその顔が爆炎で覆われたからだ。リオレイアが自らの目的を果たすためには目の前にいる竜は邪魔だと判断し、排除しようとしているようだ。

 火球攻撃をもらい先程までの事を思い出したのだろう。竜の顔がリオレイアの方へ向き、こちらの上を通り過ぎリオレイアに飛び掛かる。

 大型同士の戦いがすぐ近くで始まったがそんなことより先ずはルゥだ。血が絶えず流れ出ていて、その命は長くない。しかし助けられるアイテムを自分は持っている。

 

 「ルゥ、聞こえてるかニャ?これを食べるニャ、それで助かるはずニャ」

 

 ポーチから取り出したのは大きなドングリだ。モウイチドングリと呼ばれるこれはハンター達が使う秘薬などのアイテムを参考にして作られたがこちらの方が遥かに効果が強い。例え腕を食い千切られようが脚が潰されようが動けないほどの重症を負ったとしてもこれを食べれば直ぐに回復するのだ。

 しかしその回復力の代わりに身体にかかる負担は大きく、一気に使用できるのは二つまで、三つ目はしっかりと休息をとってからだ。

 これがあればルゥが助かる。そんな思いで差し出そうとするがその腕を誰かに掴まれる。

 

 「何するニャ、アムタ?その手を離すニャ」

 

 「……隊長、それは駄目ニャ」

 

 「そんな訳ないニャ、これを食べればルゥは助かるニャ」

 

 「ルゥはもう手遅れニャ。例えモウイチドングリの力でも助かりはしないニャ」

 

 アムタの淡々とした返しにこちらも熱くなってしまう。

 

 「何故ニャ!!そんなもの試してみないと分からないニャ!!?」

 

 「それでルゥを苦しめるのかニャ!?隊長だって分かってるはずニャ!!」

 

 分かっている。ルゥがモウイチドングリの回復力に耐えれない事は。ただでさえ痩せこけていたのだ。耐えられる程の体力なんて残っている訳がない。それでも「はい、そうですか」と諦められるはずなんてない。

 

 「でも、でも!!」

 

 「隊長の思いは分かるニャ、けど無理なものは無理なのニャ」

 

 モウイチドングリの回復力に耐え切れなかった者の末路は知っている。不完全に腕や脚が生え、血反吐を吐きながら苦しむのだ。数分苦しんだ後、息を引き取る。そんな目にルゥを合わせたくはないがもしかしたらと思ってしまうのだ。

 何とかアムタの手を振り払おうとするがシール達も加勢し完全に動けなくなる。そんな自分の反対の手を自分達よりも小さな手が掴んだ。

 

 「ルゥ……」

 

 「ボク……死ぬ……ニャ?」

 

 短く問いかけられたその言葉にそんな事は無いと叫びたいがルゥの胴体から流れる血がそれを否定する。

 死に行くルゥを前にしてもうアムタ達を振り払う気は無くなってしまった。そんな事よりも目の前の死に怯えるルゥを少しでも安心させたい。

 

 「大丈夫ニャ、ルゥは今夢を見ているだけニャ」

 

 「ゆ……め……?」 「隊長?」

 

 「そうニャ、長い、長ーい悪夢ニャ。最近何か悪い事をしたかニャ?」

 

 アムタ達の戸惑う声が聞こえてくるが無視する。モウイチドングリを手放すとアムタ達も手を離したのでルゥをしっかりと抱き抱える。

 

 「お魚……つまみ……食い……した。」

 

 「きっとそれで今バチが当たってるニャ、起きたらいつもの家で布団の中にいるはずだからしっかりとお母さんに謝るニャよ?」

 

 少しでも死に行く恐怖を和らげられるように赤子をあやすようにリズム良く背中を叩きながらこれは夢なのだとルゥに語りかける。

 

 「う……ん……マ………マ……ごめ…んな…さ

 

 夢だと信じたのか少し安堵の表情を見せながら言葉の途中でだらりと腕が垂れ下がり、ルゥは動かなくなった。

 ルゥの亡骸を地面へとそっと置く。何が悪夢だ。もっとマシな事を言えなかったのか。自分の不甲斐無さで手が強く握りしめられているのが分かるが意識してそれを和らげる。

 

 「シール、アムタ、ルクユ。悪いけど覚悟はいいかニャ?逃げても文句は言わないニャ。」

 

 「隊長……、うん、オトモするニャ」「「隣に同じくニャ」」

 

 立ち上がり、後ろへと振り返る。そこには決着がついたのだろう、森へと飛んでいくリオレイアとそれを見送る竜がいた。

 きっとこれは無謀だと誰もが言うだろう。けど目の前で仲間を殺されて黙って逃げれる程、自分は強くない。

 

 (最低でも一発はその面に攻撃を入れてやらないと気が済まないニャ!覚悟するニャ!!)

 

 

 

 

 

 ーーせっかく二匹同時に仕留められるチャンスだったのにバカスカ火球撃ち込んできやがって、痛くは無いけど熱いんだぞ!?

 

 森へと飛んでいくリオレイアを見つめながら先程までの出来事を思い返す。洞窟の真似事みたいな感じで胸口を開けて擬態している時に探していた子供アイルーが胸口に飛び込んで来たのだ。ラッキーと思いすぐに噛み殺そうとしたが他のアイルーが四匹も近づいて来たので少し待つことにした。

 そうしていると一匹が中に入る素振りを見せたので後三匹をどう始末しようかと考えていた時にリオレイアが飛来した。

 リオレイアの攻撃にもしかしたら全匹が逃げる為に胸口に入るのでは無いかと火球を受けながらも待ち続けたのだが、いつまで経っても入ってくる気配はなく、リオレイアの拡散ブレスが直撃した時に流石に我慢の限界が来た。

 擬態を辞め、中にいた子供アイルーが飛び出ようとしたので噛み千切り、トドメを刺そうとしたらリオレイアに邪魔をされて、ならお前からじゃぁ!とリオレイアに飛び掛かり、そして今に至る。

 リオレイアの火球を無視して突撃し、向こうのサマーソルトに合わせる形で尻尾に噛みつき地面へと叩きつける。これが決め手となったのかリオレイアは飛び去って行ったが、何か目的があるのだろうか。途中で止まり森の中に降下していった。

 

 ーー邪魔者は居なくなったし、これで集中出来るな。

 

 視線をアイルー達の方へと向けるとアイルー達もこちらを見ていてそれぞれの武器を構えている。

 

 ーージャギィ装備とバギィ装備とクルペッコ装備。んで最後がジンオウガ装備か。そういえば自分に睡眠は効くのか?

 

 バギィ装備のアイルーを見つめながら状態異常の事を考える。恐らく鎧がある限り効くことは無いと思うが生身なら効く可能性が高い。

 

 ーーハンターやアイルーの武器なら大丈夫だと思うけど他の大型モンスターの時は気を付けた方がいいかもしれないな。お、来るか

 

 こちらが状態異常の事を考えている間に向こうも準備が出来たようだ。ジャギィ装備とバギィ装備のアイルーがブーメランを投げ、その間に残った二匹がこちらに走ってくる。

 片方のブーメランはこちらの鎧に弾かれる事なく突き刺さるが身体にまで届くことは無いので無視して走り寄ってくる二匹に向けて飛び掛かる。しかし距離があったからなのか余裕をもって回避された。その隙にジンオウガ装備のアイルーがこちらに取り付くが無視してクルペッコ装備のアイルーを潰そうとするがクルペッコ装備のアイルーは回避に専念しておりなかなかこちらの攻撃が当たらない。

 

 ーーすばしっこいなぁ!あのアイルー達みたいに簡単に潰れて欲しいんだけどなぁ。あとなんか肩あたりがチクチクする。

 

 一撃さえ当たれば向こうが死ぬのは分かっているため集中して潰そうとするがさっきからチクチクと身体の一部が痛む。ブーメランかと思ったがずっと飛んできているブーメランは全部弾いているし突き刺さる方はもう無くなったのか飛んで来なくなったので恐らく別のものだ。視線を痛む場所へと向けるとそこにはジンオウガ装備のアイルーがいた。武器を振る度に電気が走り、そのタイミングで痛みも来る。

 

 ーーアイルーの武器でこちらにダメージが来るとは思えない。ってことはこの鎧、電気通すのかよ!?

 

 弱点属性の判明に思わず狼狽える。その間にもジンオウガ装備のアイルーは攻撃を続けており、チクチクと痛みがくる。

 

 ーーあぁ、もう!取り敢えず降りろ!!

 

 地面を転がりアイルーを振り払う。ついでに尻尾を振りジンオウガ装備のアイルーに攻撃したが変な体勢だからか、あまり力が入らなかったので他のアイルー達の方へと吹き飛ばすだけになった。

 

 ーーこれ鎧を介して電気が来てるのにそれでも痛いってことはこの肉体も雷属性に弱いのか?せめて鎧と肉体で弱点違ったら良かったのに……

 

 一貫する弱点の判明にゲンナリとする。その間にもアイルー達に攻撃を仕掛けているが全然当たる気配が無い。

 

 ーー鉱石槍などの遠距離攻撃は確定であたる時に使いたい。けどこのまま攻撃していても向こうが疲れてくるまで当たらないだろうなぁ。

 

 自分から見て一番前にいるアイルーを優先的に狙っているのだが全て回避される。ならばと後ろのアイルーを気にしていないふりをしながら狙ってみるが普通に回避される。

 

 ーーうーん、当たらん!一匹ずつ狙うから駄目なのか?ならいっそのことシンプルにいこう。

 

 ゲームでも数多のモンスターが使ってくる攻撃……突進。それだけの数が使うってことはそれだけ有効打になりやすいということだ。

 頭を下げて地面につける。本来の視線は地面に向くが頭頂部の眼はアイルー達を捉えている。ついでに前脚と胴体の鎧を大きくして自分の下を潜り抜けれないようにする。

 

 ーー自分の巨体はアイルー達からしたら数十歩ぐらい走らないと逃げれないからこれは回避し辛いでしょ。では、突撃!!

 

 脚に力を込めて突進する。地面を削りながら突撃する自分にアイルー達は各々に回避行動をとるがかなりギリギリみたいだ。

 アイルー達を通り過ぎて暫く進んだところで片脚を地面に突っ込んで固定する。そしてその脚を軸にして反転、再び突進する。片脚に自分の運動エネルギーなどが一気にかかり骨が折れる可能性があるが自分の頑強な肉体と鎧がその問題を解決する。

 二回目の突進はさっきよりかは危なげなく躱される。そのまま三回目と行きたいが回避されるのは明白なので違う手段で攻撃する。

 ある程度突進するがアイルー達が回避行動に入る前に停止する。それと同時に前脚を地面に叩きつけてアイルー達に土と礫を飛ばし、更に顔口から自壊能力をつけた鉱石槍を飛ばす。

 急な遠距離攻撃にジンオウガ装備とクルペッコ装備のアイルーは反応し回避をしたがジャギィ装備とバギィ装備のアイルーは反応は出来たが回避は間に合わなかったようだ。

 土煙が晴れるとアイルー達の様子が見える。そこには二匹のアイルーが防具を貫かれて鉱石槍の破片が突き刺さっているのが見える。

 

 ーー頭と胸はなんとか庇ったって感じかな?他の部位は破片が身体を突き破って刺さってるし明らかに重傷だな。ほっといても死ぬだろ。

 

 そう考えて残った二匹のアイルーに視線を向けるが二匹のアイルーは貫かれた仲間を一目見ただけですぐに視線をこちらに戻す。

 その姿に疑問を覚えて視線を貫かれたアイルー達に戻す。そこには震える手でドングリのような物を取り出し食べているアイルーがいた。

 ドングリを食い終えるとアイルーの身体から破片が抜ける。中の肉が再生して破片を押し出したようだ。

 

 ーーえぇ……、お前らもそんなアイテム持ってるの?これまた即死を狙わないといけないやつじゃん。

 

 ただでさえ攻撃が当たりずらいのに一撃で仕留めないと意味がないとかとても面倒くさいがやるしか無いので再び突進を開始する。

 アイルー達は再び回避行動に入るが今度はすぐに回避行動に入る。

 

 ーー前脚の鎧を大きくしたのは間違いだったかな?無理矢理反転しないと方向転換出来ない。

 

 回避するアイルー達を追尾したくても潜り抜け対策で大きくした鎧に脚がぶつかって上手くいかない。一度作り直そうかと考えたが一つ妙案が浮かんだのでそれが失敗してからでもいいだろう。

 アイルー達に突進して通り過ぎたら反転してまた突進。これを数回繰り返す。何回も同じ動きをしているとアイルー達も慣れてきたのか時々反撃を入れてくるようになったのでこちらも行動する。

 反転して突進、ここまでは同じだが途中で加速する。慣れていた速度とは違う速度で突っ込んできた自分にジンオウガ装備のアイルー以外は反応が少し遅れて回避が間に合っていない。

 纏めて轢き潰せると思ったがジャギィ装備のアイルーが残りの二匹を突き飛ばす事で安全圏へ移動させた。

 

 ーーならまず一匹、轢き潰す!

 

 今の自分に巻き込まれたらミンチは確定するだろうからそのまま突っ込む。しかしジャギィ装備のアイルーは轢き潰される直前でジャンプしてこちらの頭部に張りつこうとする。

 

 ーーむ、張り付いて轢き潰されるのを回避するか、なら吹っ飛べ!

 

 張りつかれる直前で頭部を振り上げてジャギィ装備のアイルーを森の方へと吹き飛ばす。そのまま追撃する為に再び突進する。

 

 ーーせっかく潰せるチャンスなんだ、これを逃す気は……って、およ?

 

 突進の向きを決めるべくジャギィ装備のアイルーに目を向けるが、その奥の森の木が揺れている。ジャギィ装備のアイルーはこちらの突進に備えている為、気付いていないようだ。

 

 「ギィギャァァァァァァアア!!」

 

 「ニャ!?ニャァァァァアアア!!!」

 

 「ルクユ!!?」

 

 森から姿を現したリオレイアが強襲しジャギィ装備のアイルーを掴んで空へと飛翔する。流石にこれは想定外だったからか後ろのアイルー達も驚愕の声を漏らしている。

 

 ーーリオレイアが狙ってたのってあのアイルーだったのかな?なら任せてもいいや、こっちの手間が減るし。けど逃がさないかは監視しとかないとね。てかこれ攻撃チャンスじゃない?

 

 後頭部の眼で残ったアイルー達を見ると全匹が空へと顔を向けているのでチャンスと思い攻撃の準備をする。尻尾に鉱石を纏わせて剣にすると同時に後ろへとバックステップ。攻撃範囲内にアイルー達を入れて尻尾を横に振り払う。

 

 「みんな危ない!ギィ!?」

 

 「「隊長!?」」

 

 この奇襲もジンオウガ装備のアイルーが気付いて他のアイルーを伏せさせるが自分は間に合わなかったようだ。腰から下を両断出来た。

 バギィ装備のアイルーがジンオウガ装備を担ぎ距離を取ろうとするが逃がす気は無い。再び近づき伏せても跳んでも回避出来ない高さで尻尾を振り払う。回避は無理だと思ったのかバギィ装備のアイルーがジンオウガ装備のアイルーを投げる。いつの間にか距離をとっていたクルペッコ装備のアイルーがそれを受け取りそのまま逃げる。

 

 ーー纏めては無理かぁ、けどこれで一匹!

 

 バギィ装備のアイルーは剣でこちらの攻撃を防ごうとしていたがそのまま両断する。地面に倒れたバギィ装備のアイルーを更に縦に斬り裂いて完全に絶命させる。

 

 「シール!!?ッ!!お前ぇぇぇえええ!!」

 

 「待つニャ!アムタ!」

 

 絶命した仲間を見て激昂したのかクルペッコ装備のアイルーがこちらへと向かってくる。ドングリを食べたジンオウガ装備のアイルーがそれを止めようとしているが耳に入っていないようだ。

 

 ーーこっちに向かってくれるならさっきよりかやり易いな。

 

 脚を振り下ろして攻撃する。クルペッコ装備のアイルーは避けながら攻撃してくるが痛くはないし攻撃に意識がいってるのかさっきまでの余裕を持った回避ではなく当たるか当たらないかのギリギリの回避を繰り返している。

 なので相手がこちらのタイミングを掴み始めてきたところで更に脚に力を込める。

 さっきまでの攻撃とは違う地面を砕く一撃に向こうは体勢を崩したのでそのまま潰そうとするが上手いこと回避されてしまい腕一本しか持っていけなかった。

 腕を抑えて地面に倒れたアイルーに追撃をする為に前脚を振り上げようとするがここで邪魔が入る。

 スコッという音とともに左目の景色が少し変わり痛みがくる。初めての事態に驚き後ろに下がり何が起きたか確認する。

 恐る恐る前脚で左目に刺さっている何かを引き抜く。ある程度予想出来ていたが刺さっていたのはブーメランだった。この状況で投げれるやつは一匹しかいないのでそちらを睨み付ける。

 そこにはブーメランを構えたジンオウガ装備のアイルーがこちらを睨みつけていた。その少し前にはドングリを食べたのかさっきまでの怪我が一つもないクルペッコ装備のアイルーが合流しようとしている。

 そっちに顔を向けるとまたブーメランが飛んでくるが敢えて受ける。ブーメランは胸辺りに刺さり放電するがすぐに止まった。

 

 ーーブーメランの放電はすぐに止まったな、刺さってる限り放電し続けるとかじゃなくて良かった。あと左目に刺さったのはただの偶然かな?運良く眼までは届いてなかったから良かった。意識が逸れてなかったから敢えて胴体を狙ったって可能性もあるから注意しとかないと。

 

 次はどう攻めようかと考えていると上から何かが落ちてくる。上空での出来事はずっと見ていたので落ちてくる何かに視線を移す。

 暫くすると上から落ちてきていた何かが地面にぶつかりバラバラになる。全体的に黒ずんでおり残り火が所々に残っている。

 

 ーーうわぁ、コゲ肉ならぬ、コゲアイルーってか?このアイルー本当にリオレイアに何をしたんだ?

 

 上空には気が済んだのかリオレイアが今度こそ巣の方へ飛んでいくのが見える。狙いはこのアイルーだけだったらしい。

 アイルー達も暫くこの黒い何かを警戒して見ていたが一緒に落ちてきた物や身につけている煤けた防具に見覚えがあったのだろう。急に騒がしくなった。

 それを隙とみて飛び掛かるが流石に二回目はないのかしっかりと回避される。

 そのまま脚を振り下ろして攻撃するも余裕を持って回避される。

 

 ーーうーん、また振り出しか……また突進するか?

 

 今までで一番手応えのあった攻撃をまた行おうと考えたがその前に何かを話していたのかクルペッコ装備のアイルーがこちらへ走り出した。後ろにはポーチにぶら下げていた刃を繋ぎ合わせて巨大なブーメランを手にするジンオウガ装備のアイルーがいる。

 

 ーー確かに今のところの有効打は貫通ブーメランと電撃だけだもんなぁ。両方もってるジンオウガ装備のアイルーが隙を見て攻撃って感じか?

 

 クルペッコ装備のアイルーがこちらの攻撃範囲に入ったので脚を振り下ろす。さっきのような回避ではなく一定の範囲内で回避を行なっているようだ。ならばと先程と同じように力を込めて脚を振り下ろす。地面を砕いて隙を作り出そうとしたがクルペッコ装備のアイルーはこれを待っていたようだ。

 

 「ここニャ!くらうニァァァァアアア!!」

 

 地面が砕ける反動を利用して武器を構えこちらに突っ込んでくる。先を辿ると恐らく胸に刺さっているブーメラン。

 

 ーー更に衝撃を与えて奥へと突き刺そうとしてるのか?それともまだこのブーメランには何かがあるのか?それは兎も角、お前、忘れてるな?

 

 このアイルー達には一度見せているので引っかかるとは思ってなかったが恐らく忘れているので遠慮なく使わせてもらおう。

 ガパァと胸口を全開で開ける。そこでクルペッコ装備のアイルーはこの存在を思い出したのか体勢を崩して回避しようとするが、既にジャンプしてしまっているのでどうにもならないようだ。ジンオウガ装備のアイルーが巨大ブーメランを投げて援護しようとするが焦っていたのか狙いが逸れて拡張していた鎧部分に刺さる。こちらには実害はないので無視する。

 そのままアイルーに噛み付く。すぐに噛みちぎってもいいがまだ使い道がある。

 ジンオウガ装備のアイルーが焦っているのが見える。それはそうだろう。向こうから見たら仲間が噛みつかれて下半身しか見えていないのだから。

 クルペッコ装備のアイルーも必死に脚をバタつかせて脱出しようとしている。胸口の中からも小さな衝撃がある事から武器を出鱈目に振っているようだ。

 少しずつ胸口に力を込める。それと比例して脚のバタつきが激しくなる。

 

 「アムタ!!」

 

 ジンオウガ装備のアイルーが焦りながらこちらへ走ってくる。やっと隙を見せたな?

 ずっと顔口に入れていた鉱石槍を発射する。少し間を開けて二発目、ほぼ連続発射の為、いつものものに比べると小さいがアイルー相手には大丈夫だろう。

 飛んできた鉱石槍をジンオウガ装備のアイルーは身体を捻りギリギリ躱すが二発目が片脚に当たり太ももから先を吹き飛ばす。

 更に追撃を、と思ったが素早くドングリを食べて後ろに下がったので諦める。

 

 ーーこれでまた迂闊に近づいてくるってことは無さそうかな?んじゃ、こいつはもう要らないか。

 

 人質ならぬ猫質はまだ効果はありそうだがさっきより薄そうだし、残り一匹なら自分が行って攻撃した方が早い。

 胸口に更に力を込めて未だにバタついているアイルーを噛み千切る。下半身は地面に落ちて上半身はとっとと食べる。ついでに落ちた下半身を踏み潰してポーチに入っているアイテムを使えないようにしておく。

 

 ーー落ちてたアイテムで逆転とか結構ありそうな展開だからな、念の為潰しておこう。

 あ、それなら両断したアイルーの方も潰しておいた方が良かったかも。

 まぁいいか、有効打のあるアイテムがあるならもう使ってるだろ。

 

 そんな思考をしつつジンオウガ装備のアイルーに視線を向ける、相手はぶつぶつと何かを呟いており少し不気味だ。

 

 ーー仲間が全滅しているのに怒ったりしないのかな?さっきのアイルーは動きが単調になったりしてくれたからやり易かったんだけどなぁ。

 

 「口が二つ?部位が大きくなったから身体の大きさを変えれる?……ってことはこいつが村を?それにアムタやシールも?

 …………お前!!お前ぇぇぇえええええ!!!」

 

 ーーうわ、急にキレた。このアイルーさっきからぶつぶつ呟いてると思ったら急にキレるし情緒不安定か?

 

 虚無顔でぶつぶつ呟いてると思ったら何かに気付いてしまったみたいな顔をして最後に凄い顔で叫び出した。表情は明らかに怒っておりさっきよりか明らかに感じる気迫が違う。

 

 ーーまぁ複数でチョロチョロされるのが鬱陶しいのであって一匹だと全然楽なんだけどね。

 

 力が怒りによって上がってもこの鎧を砕くには至らない、武器の電撃も確かに痛いが感覚的には少し強めのデコピンをされてる程度であり何度繰り返されようが致命傷になることは無い。不安要素は胸に刺さっているブーメランだが近づいて来れば胸口で噛み千切ればいい。

 こちらに走ってくるアイルーをそんな思考で迎え撃つ、前脚を振り下ろし踏み潰そうとするのに対してアイルーはそれを躱してその前脚に飛びつく。そのまま出鱈目に武器を叩きつけてすぐさま距離をとる。

 本来の姿より鎧を大きくしているため肩を攻撃された時よりかは痛みは軽いがそれでも鬱陶しいことに変わりはない。とっとと仕留めたいが指示を出す必要が無くなったからか先程よりかすばしっこくなっている。

 

 ーーさっきより面倒になってんじゃん!大咆哮で吹き飛ばすか?けど今日はガノトトスが湖にいたはずだしリオレイアが来てからちょっと水面が騒がしいから下手に刺激を与えたくないな。

 

 きっと大咆哮を行えばこの状況はすぐに打開出来るだろうが下手を打てば次はそのままガノトトス戦が始まる。今それは流石に勘弁して欲しい。

 いっそのこと尻尾の剣を巨大化させて強引にいくか?と考えたところで今回二回目のひらめきが浮かんだ。これならいけるかもしれない。

 アイルーの相手をしながら尻尾の剣をそのままに更に鉱石を生成、横に広がる様に作り出し、扇のような形にする。勿論、端の部分は鋭利にしており、こちらの目論見が外れてアイルーに直撃しても両断出来る様にしている。

 準備が出来たので足元にいるアイルーを無視してバックステップ、着地と同時に脚を踏み込み反転、アイルーの脚を斬り飛ばすように尻尾を振る。

 アイルーはジャンプして回避するがこちらもアイルーの真下あたりで尻尾を止めるとアイルーは扇状になった尻尾の上に着地する。

 次にアイルーが乗った状態の尻尾を上に振り上げ、アイルーを空へと飛ばす。

 

 ーー流石に空中にいたら身動きは取れないよね。

 

 アイルーが飛んだのを確認したと同時に尻尾の扇を破壊する。そのまま地面へと落ちるアイルーへ尻尾を全力で振り下ろした。

 アイルーはそれを見て回避は出来ないと判断したのか武器を構えて受け身をとる。尻尾が武器に当たる直前に直感が働いたのか腰につけていた魚の形をした剥ぎ取りナイフを取り出し武器に重ねて防御する。

 尻尾が武器に当たり武器が放電するがお構いなしに尻尾は進み武器を破壊する。そのまま剥ぎ取りナイフに接触するがそこで火花を散らし剥ぎ取りナイフを破壊することは出来なかった。しかし剥ぎ取りナイフの破壊は出来ずとも尻尾の威力はアイルーの力で耐え切れるものではない。剥ぎ取りナイフを破壊出来なかったので少し逸れたがアイルーの右腕を切断することは出来た。

 地面に叩きつけられたアイルーに更に尻尾で追撃をしたがこれも剥ぎ取りナイフで防がれ吹っ飛ばすだけとなった。

 

 ーーあ、両断したアイルーのところに飛ばしてしまった。道具を補給される前に殺さなきゃ。

 

 この距離なら鉱石槍とかより飛びかかった方が速いのでそのまま飛び掛かる。アイルーは少し躊躇う動きをしたが亡骸のポーチを漁りドングリを口にしてこちらの飛びかかりを躱す。

 視線をアイルーに向けると先程までの傷は無くなっており五体満足に戻っていた。

 

 ーーえぇー、また最初からかよ、流石にさっきの打ち上げももうくらわないだろうし次はどうしようか?

 

 ドングリの万能性とアイルーの不死身さにゲンナリしながらアイルーを見つめる。当アイルーは自身の手を見つめながら何か喜んでいた。

 

 「やったニャ!耐えれたニャ!!これでまだお前と戦えゴポォ!」

 

 アイルーが口から血の塊を吐き出す、更に鼻と目からも血が流れそのまま地面に倒れる。倒れるまでの表情は笑顔のままだった。

 

 ーーえぇ……、笑顔で血を吐くって、なんかこのアイルー怖いんだけど……血塗れになってるし。

 

 少し距離をとってアイルーを見つめる。笑顔のままで倒れたアイルーは今度は訳が分からない様な顔になり次に怒りの表情に戻った。

 更に様子を見ると血塗れになってもお構いなしに暴れ始め、ひたすらニャーニャーと喚きまくる。そこまでしていても立つことは出来ない様だ。

 

 ーーもう何もないかな?ならとっととトドメを刺してしまおう。

 

 アイルーに向かって歩き出す。向こうもこちらに目を向けてひたすらに何かを叫んでいる。

 

 ーー毒物でも入れられたのかな?それで渡してきた奴に暴言を吐いてるとか?まぁ長く苦しむよりか早く殺してあげた方がいいでしょ。

 

 トドメを刺すべく、アイルーの近くに寄り

 

 「お前さえ!お前さえ居なければ!!村のみんなも!シール達も!ルゥも!!みんな死ぬことなく生きていたはずニャ!!」

 

  前脚を

 

 「許さない!絶対に許さないニャ!お前を必ず殺してやるニャ!!絶対ニャ!!!」

 

   振り下ろした。




 モウイチドングリの効果をこの作品だと死ななきゃ全快出来るけど個数制限とかがあるよ!けど容量を超えたり消耗する体力が無いなら死ねになりました。
 そうはならんやろと言われると筆者はなっとるやろがい!と横回転しながら叫ぶことしかできないので広い心でお許し下さい!
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