美味しいものが食べたい。最近の自分が考えていることは基本こればっかりである。
ことの発端は空から飛んできながら無傷なキチガイハンターが捨てていった鉱石を口にしたことだった。緑色のした鉱石だったので恐らくドラグライト鉱石だろう。今までそれは食べたことが無かったので楽しみにしながら口にしたら今まで食べてきた鉱石よりも一段上という感じがする美味しさにかなり驚いたものだ。ドラグライト鉱石でこの美味しさならこれ以上のレアリティの鉱石はどんなものだろうとワクワクしていたのだ。
そんなワクワクが止まったのは次の日の朝、飛行船が来ていなかったのでのびのびと最近の楽しみであるリオレイアの巣の中にあるガラクタを求めに行った時だ。中に入るといつもの雛の声はなくそういえば昨日ハンターに狩られてたなと思い出したのだ。ならガラクタも全部食べるかといつものガラクタ置き場に向かったらそこには何も無かった。
恐らくリオレイアを回収しにきたギルドの人間が一緒に持っていったのだろう。そこで漸くご馳走が置かれることはなくなったと気付いたのだ。そこから更にご馳走がなくなったら自分の食べ物がまた味の薄い鉱石とアプトノスしかなくなってしまったことに気付いてしまった。最後に食ったのがドラグライト鉱石ということもあってこの数週間、ずっと美味しいものに飢えているのが現状だ。
ーーこんなことならあのハンターを攻撃したらよかったかな?けどそれをしたら確実にバレるしなぁ。
飛行船が飛んでいたので攻撃するのをグッと我慢していた後悔が今になってやってくる。
ーーだぁぁあ!!決めた!移動する!美味しいのが食べたい!!
いつものように味の薄い鉱石を食べてる時に我慢の限界が来た。とはいえまた適当な方角を決めて移動するのでは美味しいものに出会えるのか分からないが今回はキチンと行くべき箇所は決めてある。
ーー目指すはあの薄ら見えてた火山!鉱石の宝庫なんだから美味しいものもいっぱいあるはず!
善は急げとばかりに口の中に入れていた鉱石を噛み砕き水分を補給してから火山に向けて走り出す。
走り出すこと数十時間、予想よりも遠かったことからかなり時間をかけてしまったが何とかたどり着くことが出来た。時刻はすっかり夜で空には綺麗な満月が辺りを照らしている。
ーー着いたぞ火山!何か近くで見ると見たことある感じがするけどそんなことより鉱石だ!待ってろ美味しい鉱石達!!
見覚えのある火山だが美味しいものに飢えている現状ではそんなことより美味しいものが食べたいという気持ちの方が大きいので後で考えたらいいやと疑問を投げ捨てて火山へと突入した。
数時間後、火山の麓でへばっている竜が一匹。というか自分のことなんだがな。
ーーまさか火山がこんなにも暑いとは思わなかった。ドリンク抜きだとあのハンターでさえダメージを受けるって時点で気付くべきだったな。
意気揚々と火山に突入したところまではよかったのだ。しかし入って数歩であまりの熱に脚を止めてしまった。だがこの身は竜であり、この気温の中でも行けると根拠のない自信で再び脚を進めて探索を始めた。
そんな自信もある程度奥まで進むとなくなってしまった。気温は更に上がり、歩くのが辛くなってきたのだ。人間時代の経験からこれ以上は危ないと分かっていたのでかなり惜しいがその場を後にして火山から出てきたのだ。その後に火山近くの水辺でへばっている。
ーー火球とかは大丈夫なのに暑さはダメとか、属性の耐性と環境の耐性は別ってことか。
このままでは当初の目的である鉱石探しがやりづらくなる。それはとても困る。しかし自分にはこの暑さに対する克服手段を持っている。
ーーここまで使い道は無かったが今こそ出番だぞ、適応能力さん!これさえあれば暑さなんて何のそのってやつだな。ははは、勝ったわ寝床探してこよう。
すぐに鉱石探しが出来ないのは悔しいが数日後には火山で鉱石を貪っている自分の姿を思い描きながら気分良く寝床とついでに食料を探しにいった。
ーー進歩ダメです!!!あの〜、適応能力さん。まーだ時間かかりそうですか?
あの日から数週間、近場に何もない洞窟を見つけそこを寝床にしながら毎日火山に突入しているが一向に暑さを克服する様子がみれない。
入ってから数日で前までと違う感じがした時は克服出来たと思い気分が良くなっていたが数時間後にへばってしまって、ただ慣れてただけと気付いた時のショックは凄かった。
それでも諦めずに火山に突入する日々を続けたがここまで続けても克服する様子がみれないと流石に諦めた。
ーーこのまま続けても流石に無理だよなぁ……となるとどうやって探索しようか……
自分が火山の中で動けるのは大体六時間、探索するのには十分だと思うが帰りの時間も考えなければならず、更にこの火山は思ったより広いので目的のものを決めておかないと間に合わない可能性が高い。
ーーっていうかこの火山って3シリーズの時の火山だよな、見覚えあると思ったよ。中身はゲーム通りって訳じゃないけど。
見覚えのある火山だが中は違った。思ったよりも入り組んでおり、見たことある場所もあれば全く見覚えのない場所もある。
ーーゲームだとハンターが通れる場所だけがエリアって感じで表示されてたのかな?見たことない場所はハンターだと通れなさそうな道の先にあったしな。
見たことのない場所の道は溶岩に沈んでいる場所が多く、ハンターだとまず通れないだろう。自分は溶岩を飛び越えられるので問題はなかった。
ーー取り敢えずこの火山での行動方針を決めないと。
火山の中で生活するのは確実に無理だ。かといってのんびり探索して鉱石を探すことも出来ない。ならどうするか?
ーー火山に突入した後、鉱石を食うだけ食ってすぐに出る。これかな?
好きな鉱石を選んで食べることが出来ないのは惜しいが文句を言っても仕方ない。火山に入れるだけの耐久力があるだけマシな方だ。
ーー心の中のティガレックスが言っている。環境適応外でも食欲があれば何とでもなる……と。てなわけでイクゾー!!
気を取り直して火山へと突入する。熱波が襲いかかるが脚を止めていては行動可能時間が勿体無いのでそのまま突っ込む。
ーー鉱石、鉱石、鉱石、鉱石、鉱石どこ!?
火山の中を走り回りながら、地面から飛び出るウロコトルを踏み潰し、全ての眼で辺りを見渡すが鉱石が見つからない。
ーーゲームではあった所にも無いし、何処にいったんだ?
ゲームでは存在しない所にも入ってみたがやはり鉱石は見つからない。やがて行動限界時間がきてこの日の探索は終了した。
次の日も昨日と同じで火山の中を走り回っていたがウラガンキンを見つけただけで特に何の成果もなかった。
ーーこのまま闇雲に探しても意味ないな。何日かに分けて何があるかを探した方が良さそうだ。
流石に森林地帯のようにゆっくり探索することは出来ないがそれは仕方ない。そんな訳で数日をかけてゆっくり探索した結果で分かったことが一つ。
ーー何で火山なのに鉱石が一つもないんだ……。おかしい、絶対におかしい。
どれだけ探しても鉱石が一つも見つからないのだ。まだ奥の方はそこまで探索出来ていないのでまだ希望はあるが、どうなんだろう。何か今までの経験上、無いような気しかしない。
いつかのように顔が皺くちゃピカ◯ュウになっている気がする。そんな感じで諦めきれずに探索していると坂路から赤い玉がこちらに転がってくる。
ーー何かデジャブ感がするなぁ、まぁいいか。タイミングを合わせて〜
尻尾の鉱石をハンマーのように変形させてタイミングを計って反転し、尻尾を薙ぎ払う。赤い玉は打ち返されて、運悪く崖下へと転がり落ちていった。
ーー何か落ちていった玉から叫び声が聞こえたけど気のせいだろ。あれはただの赤い玉、ラングロトラでは無いはず、うん。
驚愕といった感じの叫び声を無視して探索へと戻る。この日もいつも通り鉱石が見つかることはなく、このまま帰るかと考えた時にふと真横を流れる溶岩に目が移る。
ーーそういえば人間の感覚で溶岩は触れたら不味いって思ってたけど今の姿ならどうなんだろう?
一度疑問が湧いたら検証したくなるのが自分というものだ。恐る恐る溶岩に脚を入れようとするが直前で脚を引っ込める。
ーー大丈夫、大丈夫。ちょっとだけだから。ちょっと溶岩に耐性があるか確かめるだけだから……鎧もあるしいけるはず。
意を決して前脚を溶岩へと沈める。少し熱いが耐えられないほどではない。
ーーうーん、感覚的に耐えられなくはないってだけで大丈夫って感じではないな。あくまで我慢できるってだけかぁ。これが分かっただけでも収穫だな。ところで段々脚が熱くなってきたってアッツゥ!!
急いで溶岩に沈めていた前脚を引っ張り出す。前脚の様子を見てみるといつもの薄暗い白色ではなく溶岩に沈めていた部分が真っ白に、その近くの部分が白から徐々に赤色に変色し、発光している。
ーーそういえば自分の鎧って鉱石製なんだから溶岩に入れたらこうなるのも当たり前か。それでも暫くは耐えれるだけマシな方だな。
発光している部分をもう片方の前脚で触ってみるとかなり柔らかくなっており、攻撃を防御出来るだけの性能は無くなっている。
ーーこれも当たり前か。溶岩近くにはあまり近づかないでおこう、暑いし。
白熱と赤熱している部分を砕くが、どろりとした粘性のある液体になりこちらの脚に纏わりついてきたので脚を振って周りに飛ばす。完全に飛ばしきったのを確認してから再度鎧を纏い直し火山を後にした。
今日も今日とて火山探索。地面からこちらを狙って飛び出してこようとするウロコトルを上から押し込み、丁重に地面へと送り返す。何かモグラ叩きをしている感じがして最近の探索中の楽しみにもなっている。
押し込んでるだけなのでウロコトルも諦めずにこちらに攻撃してくるし、自分もまた押し込むだけなので何度でも遊べる。仮にウロコトルが死んでしまってもその時は自分が食べるので問題ない。
火山探索といってる割にはこのモグラ叩きをしている比率の方が高いが楽しいのだから仕方ない。そのうち親玉が出てきそうだが探索中は見なかったのでこの付近にはいないのだろう。
並行して鉱石探しをしているが流石に剥き出しの鉱石はもう無いと理解している。ウラガンキンがいることからこの火山に鉱石があるのは分かるのだが何処にあるのかは分からない。闇雲に壁を砕いて探してもいいがそれだと時間がかかりすぎる。
ーーどうしよう?ゲームの鉱石があったところあたりの壁を砕くか?他の部分を壊すよりかそこら辺から探した方が期待値が高いよなぁ。よし、そうするか。
そうと決まればと早速火山へと入ってゲームの採掘ポイントへと向かおうとするが早速問題が出た。
ーーあれ?この道使えなくなってる。
いつもの奥の方に向かうための道が溶岩に沈んでいた。かなりの範囲が溶岩に沈んでおり、飛び越えられるか微妙な距離だ。
ーーそこまで急ぎではないし、別のルートから向かうか……
来た道を引き返し、別の道から目的地へと向かう。この道は遠回りになるだけなので一度通ってからは使ったことがない道だ。
暫く歩き目的地手前まで来た時、ふと壁のヒビが目に入る。普段の道からだと壁の影で隠れており見つからなかったのだろう。それより壁のヒビから微かに見える緑色の石に視線が固定される。
ーーおぉ?おおぉ!!?これはもしかしてもしかすると!?
ヒビへと駆け寄り慎重に壁を破壊していく。掘り出した緑色の石は間違いなくドラグライト鉱石だろう。そこから更に掘り進めていくとマカライト鉱石などもゴロゴロ出てくる。
ーーうっひょう!やっと見つけた!!しかも沢山!それじゃあ!いただきまーす!!
掘り出した鉱石を手当たり次第に顔口へと運ぶ。久しぶりの鉱石というのもありいつもよりもかなり美味しく感じる。
ーー美味しいですわ!モグモグですわ!!止まりませんわ!
思わず謎のお嬢様みたいな語尾がつくが気にしない。地面に転がっている鉱石を食べ尽くしても壁を砕くとまだ出てくるため気分はフィーバータイムだ。
ーー本当に久しぶりの主食だから余計に美味しく感じる!それに壁の中に鉱石があるって分かったんだから、これからは食べ放題だな。まずはこの鉱石たちを食い尽く
「ゴォォォォォォオオオオ!!!!」
してって何の声?
思考の途中で割り込んできた咆哮に身体を動かさずに眼だけで周りを見渡すと自分の後方に鈍い金色の外殻と背中に無数の立ち並ぶ突起を持ち、特徴的な巨大な顎がある竜、ウラガンキンがおり、こちらを睨んでいた。
ーーこんなに近くに来てるのに気付かないとか、何かに夢中になると周囲の警戒を疎かにする癖そろそろ直さないと、いつか痛い目にあいそうだな。
自分の悪い癖を反省しているとウラガンキンが自身の顎を地面に叩きつける。あまり敵意を感じないことから戦うというよりかこの場から去れという威嚇行為という感じがするので無視して鉱石を食べ続ける。
数度顎を地面に叩きつけても自分のことを見ようともせずに鉱石を貪っているこちらに痺れを切らしたのかウラガンキンがこちらに近づいてくる。
顎を上げていることから今度はこちらに攻撃してくるつもりなのだろう。こちらも攻撃されるのはごめん被るので尻尾の鎧を硬化させ反撃の準備をする。
ウラガンキンが更に顎を上げると同時にこちらの尻尾の範囲に入ったのでウラガンキンの顔を目掛けて尻尾を薙ぎ払う。
相手も急に反撃されると思ってなかったのか躱す素振りを見せずに顔に尻尾があたり、倒れた。暫く呆然として地面に倒れていたが自分が何をされたかを思い出したのか、急いで立ち上がった。
「ゴォォォォォォオオオオ!!!!」
先程よりも大きな咆哮を上げて顎を地面に叩きつける。感じる気配から完全に思考が排除に移ったようなので、こちらも鉱石を食べるのをやめて振り返り、戦闘態勢に入る。
ーーウラガンキンって確か鉱石が取れたはず。俄然やる気が出てきたぞ。
尻尾を地面に叩きつけ、ウラガンキンを威嚇する。こちらがやる気を見せたからか相手も再度顎を地面に叩きつける。
「グォォォォオオオオオ!!!」
「ゴォォォォォォオオオオ!!!」
お互いに咆哮を上げて、相手の出方を窺う。すぐに突撃してくると思ったが相手は冷静にこちらを見ている。
ーーそういえば自分から大型に攻撃するのって初めてじゃないかな?相手からは来ないようだし、こちらから行くぞ!!
地面に跡が残るほど強く踏み締め、ウラガンキンに飛びかかった。
適応能力「転生時に一人だけで生きていけるように精神面とかいろいろ適応させたのでもうリソース無いです」