こちらの飛びかかりに対する相手の対応は迎撃。身体を素早く横に向け、体勢を低くして少し溜めた後に勢いよく押し出す。
こちらの鎧と相手の重厚な外殻がぶつかり合うが素早く相手の身体に前脚をまわして相手の上に乗る。相手から驚愕の声が聞こえるが気にせずに前脚を相手の頭部に振り下ろし地面へと叩きつける。このまま更に追撃をと思ったが相手の下腹部あたりから水色のガスが噴出してきてるのを目にしたので追撃はやめて距離を取る。
ーー多分吸うと効果が出るって感じだと思うけど無難に下がる方がいいよな。
こちらが飛び退いても一度出しかけたガスは止まらないのかそのまま噴出される。ゲームの時みたいに頭と尻尾が範囲外になるのなら攻撃するつもりでいたが予想は外れ、相手の身体全体が容易に隠れる量が噴出される。
暫く待つとガスが晴れて相手の姿が見える様になる。結構な力で地面に叩きつけた筈だがその身に傷は無く、まだまだ戦えるとこちらを見据えている。
ーーダメージがある様には見えないな。叩きつけた衝撃で歯ぐらいは砕けるかと思ったんだけど。
次はどうするかと考えていると相手が動き出す。頭を下げて脚で勢いをつけると同時に身体を丸める。ウラガンキンといえばコレといわれるローリング攻撃だ。勢いよくこちらに転がってくるのをステップで躱し、通り抜け様に尻尾をお見舞いする。こちらの尻尾による攻撃で体勢を崩しかけるが直ぐに持ち直し、途中で曲がると再びこちらへと突撃してくる。
ーーワールドだとハジケ結晶とか当てたら転倒するがリアルならどうだ?
転がってくる相手に鉱石弾を撃ち込むが、弾を轢き潰しながらこちらへと転がってくる。先程と同じようにステップで躱して今度は側面に鉱石弾を撃つが効果なし。
ーーまぁ、ゲームならまだしもリアルであの巨体にハジケ結晶とか当てても転ける訳ないか。
鉱石槍なら有効打がありそうだが、正面から撃ち込むとさっきと同じように轢き潰されそうだし、効果がありそうな側面だと撃ち込む前に通り抜けられるだろう。しかしこちらには対策がある。
ーー似たような状況なら解決策を含めて見たことがあるんだよなぁ!
思い出すのはアイスボーンのティガレックスの初クエストで流れる登場ムービー。ティガレックスの方へ転がってくるラドバルキンに対してティガレックスはそれを正面から受け止めて相手に噛みつきそのまま仕留めてみせた。
ーーラドバルキンとウラガンキンで肉質とかいろいろ違いそうだけど姿形はほぼ一緒だし対して変わらないだろ。多分。大丈夫だよな?
……っしゃぁ!来い!!
不安感が湧き上がるがそれを抑えて再び曲がってこちらへと転がってくる相手にタイミングを合わせて後脚だけで立ち上がり覆い被さるように受け止める。
こちらの鎧と相手の突起が擦れ合い、辺りに火花と音を撒き散らす。前脚で押さえ付けようとするがなかなか相手の回転が止まらない。
ーーよし、このままムービーみたいに首筋に噛み付いて窒息死させればこちらの勝ちだ。このまま噛み……噛み…、噛みつけねぇ!そもそも口が届かねぇ!
ティガレックスと自分では骨格も大きさも違うので当たり前なのだが、止めるまでの動きしか頭に無く、骨格とかの関係で無理だとは全く思っていなかった。
何とか噛みつけないかと頭を下げたり胸口を開けたりしてみるが、頭はどうやっても首には届かないし、胸口は相手との接触面が胴体なのでこちらも意味がない。
そんな無駄な奮闘をしてる間にも徐々にだが押し込まれており、後ろの眼で後方を確認すると近くに溶岩が流れていて、このままだと相手ごと溶岩に突っ込んでしまう。相手は平気だろうし、こちらも直ぐに出れば問題ないだろうが相手がそれを許すかはわからない。例え上手く出れてもこちらは鎧を一回解除しなければならず、一気に不利になる可能性が高いだろうし、出れなければ確実に死ぬ。
急いで後脚の鎧を変形させる。巨大な鉤爪のような形にして地面に食い込ませる。
それでも暫くは押されていたが徐々に相手の回転が遅くなり、やがて完全に止まった。
ーーやっと止まった。前脚で押さえ付けてるのに全然止まる気配を見せないんだからかなり焦った。
久々に感じる命のやりとりに心臓がバクバクだがそれを抑えつけて自分が押さえ込んでいる相手を無理矢理地面へと仰向けに押し倒す。
相手が暴れ始めるので左前脚を相手の頭部に、右前脚を相手の胸辺りに置いてついでに爪を食い込ませる。外殻を貫き己の身に侵入する爪に相手が更に暴れるが許容範囲内。この拘束から逃れられることは無い。
ーー後は首に噛み付いて相手が窒息死するのを待てばいい。
相手の無防備な首に噛み付く。鮮血が溢れてその痛みに相手が叫び必死に暴れ出すがまだ大丈夫。これで勝ちだなと思っていると、また相手の下腹部あたりから水色のガスが漏れ出したため一度口を離し、息を止める。
ーーこのガスが止まったらまた噛み付いて今度こそこちらの勝ちだな。
ガスを連続で出せる可能性を考えたが別にそれはそれでいい。何度出されようがその度に息を止めて、止まったらまた噛み付けばいい。この体勢になった時点で相手にこちらを押し退ける力が無ければこちらの勝ちは決まったも同然だ。
ーーいっそのこと喉を噛み千切るか?少し時間がかかるかもしれないけど噛み千切れたら窒息死を待つ必要も無くなる。まぁ実行するのはガスが終わってからだな。
相手を押さえつけながらガスが終わるのを待つ。その間にも相手が暴れ続けていて少し押さえつけるのがしんどくなってきた。
ーーこれいつまで出るの?なんかさっきから徐々に力が強くなってきてるんだけど……
相手もここで拘束を解かないと死ぬと分かっているのか抵抗が激しくなる。それも徐々に力が強くなるおまけ付きだ。
ーー息を止めたまま噛み付くか?けどリスクが高いよなぁ……
止めたまま噛みついても無意識に息を吸ってしまう可能性もある。リアルだと眠ってしまった場合、ゲームと同じで一撃を貰うと起きれるのかどうか分からないため有利な今、そんな賭けに出る必要は無いだろう。
ーーそろそろ押さえつけるのもキツくなってきたし一度仕切り直すか……。あぁ、勿体無い。
既に押さえつけていられるギリギリまで力が強くなってきたので一度拘束を解き、ガスの範囲外まで下がる。
拘束が無くなったからか相手はすぐに起き上がり、こちらの飛びかかりが届かない所まで下がった。
ーー捕まったら死ぬって思われてるのかな?このまま走り寄って捕まえることは出来るけど、最後の力の強さ的にこいつリミッター外しかけてるんだよなぁ。
力が互角近くになっている為、さっきみたいに捕まえてから無理矢理押し倒すのは無理かもしれない。ならどうするか?
ーー有効打を決めてから怯んだ隙に致命傷を入れる。これかな?
ローリング攻撃はさっきと同じで受け止める方向で、地形の真ん中あたりで受け止めればまだいけそう。溶岩近くだと受け流す方向でいこう。
相手から目を離さずに少しずつエリアの真ん中に移動する。移動が終わると脚の鎧を変形させて掴みやすい形にする。
ーーこれでローリング攻撃が来てもさっきみたいに押し込まれるってことにはならないだろう。
相手も身体を揺すって自身に付着している火薬岩を周りにばら撒いている。それを眺めていると相手は尻尾を勢いよく振ってこちらの近くまで火薬岩を飛ばしてくる。辺りを地雷原にしてこちらの動きを牽制しているのだろう。
近くの火薬岩に近づきそれをあえて踏み潰す。もちろん火薬岩は爆発するが鎧に守られてこちらにダメージは通らない。
踏み潰した方の前脚を相手に見せつけてダメージにならないことを知らしめる。相手は唸り声をあげて、こちらの近くに火薬岩をばら撒くのをやめた。
ーーローリング攻撃は受け止められる。ガスは注意しとけば効かないし、炎のガスになったら攻撃チャンスでもある。火薬岩は鎧がある限り大丈夫。顎はまだ怖いけど、相手の動きなら見てからでも十分に躱せるしカウンターさえ入れれる。ほぼ勝ったようなもんだな。
相手の攻撃手段を思い出してみるがほぼ全部を回避、もしくは効かないと判断したので既に詰めの段階だ。
ーー今回は相性も良かったからな。相手からすれば力と巨体が武器なのに、どっちも上の奴が出て来たって感じだしな。
どうやって仕留めようかと考えていると相手が再び丸まりこちらへローリング攻撃を仕掛けてくる。受け止めようと体勢を整えるが相手の身体が突如炎上。驚いて躱してしまった。
ーーあ、火薬岩を踏んだのか。急に炎上されたら流石にビビるって。
相手が炎上しながら再びこちらに突っ込んでくるが、炎上した理由も分かったので先程と同じように受け止める。
ーー?思ったより力が無いな、死にかけじゃ無くなったから馬鹿力が出なくなったのか?
変形させた鎧のお陰で、今度は押し込まれることなく受け止めることが出来た。このままさっきと同じ流れで仕留めようとするが相手の動きが変わる。回転する身体を傾けてこちらの押さえつけから逃れた。
真正面からなら受け止められるが斜めに傾かれるとこちらも押さえきれない。こちらの身体を通り過ぎて暫く走ると停止、反転してまたこちらへと来る。前脚の鎧を更に変形。相手を掴み取ると同時に身体を傷つけられるように変える。
タイミングを見て立ちあがろうとした瞬間、相手がローリングを解除、勢いよく飛び上がりこちらへと顎を叩きつけようとする。
幸い立ち上がる直前だったのでバックステップで躱す。更に地面へと顎を叩きつけて隙だらけの相手に向かって勢いよく突進する。
ぶつけた衝撃で相手の顔が上を向き、首がガラ空きになる。明確な隙を見せたので前脚に力を込める
ーーこのまま思いっきり首を切り裂いて終わり。例え生き延びても呼吸困難か血液が肺に入って息が出来ずに死亡。今度こそ自分の勝───
勝ちを確信したその時、横からドンっと衝撃が来る。
ーー………あ?
素早く衝撃が来た方向に目を向ける。そこには前に崖下へと落とした赤い玉があった。
ーーはぁ!?ラングロトラ!?なんでこんなところに!?って今はそれどころじゃ!
乱入者に向けていた視界からすぐさまトドメを刺そうとしていた獲物に視線を戻す。そこには上げられていた顎を更に上げて今にも振り下ろそうとしている相手がいた。
ーーあ……やっば
本来ならこの程度の不意打ちでもそこまで効果がなかっただろう。四つ脚で直ぐに体勢を立て直し、反撃さえ出来た。
しかし今回は獲物を仕留める為に前脚を上げており、不安定な体勢になっていた。そこから崩れたバランスをとるために頭を下げているわけで……
頭頂部の眼が相手を見る。そして
溜めに溜めた顎の攻撃がこちらの頭部に振り下ろされた。
地面にめり込んでいる竜を見る。最後に赤いのが乱入に来なければ確実にこちらが死んでいた。
この火山に棲家を作ってからかなりの時間が経つ。ずっとこの火山の支配者だった溶岩を身に纏う竜は爆発する拳を持つ青い竜に殺された。その青い竜もそこらにいたニャーニャーうるさい奴らを追い出した後にこの地を去っていった。
そうなれば天敵のいないこの地は天国となった。こちらを殺せる敵は居らず、食料を奪い合う敵もいない。有頂天だった。
そんな生活も終わりを告げようとしている。今地面にめり込んで気絶しているこの竜のせいだ。
実力はこの竜が上、食べるものも同じ。自分の攻撃を受け止め、ガスは効かず、捕まったらほぼ終わり、そんな中でギリギリに舞い込んできた幸運によって今、俺は立っている。
俺の渾身の力を込めた最大の攻撃はこの竜の外殻にヒビを入れ、地面にめり込ませる程度でしかなかった。今までこの顎の攻撃をくらった竜は皆、等しく潰れていたのに……だ。
考えた結論は早かった。この地を捨てて逃げる。俺はこの竜に勝てない。次に会えば確実に殺されるだろう。多少の抵抗は効くかもしれないがどうやっても死ぬのはこちらだ。幸運は何度も起こらない。
今、気絶している竜に追撃をすれば殺せるのではと考えたがそれでトドメをさせなければ気絶から目覚めたこの竜に殺されるのは確定だ。
そんなリスクがあるのに攻撃するのは馬鹿のすることだ。俺は確実に生き延びれる逃亡を選ぶ。
火山の外に向けて身体を丸めて転がる。赤いのが未だに竜の近くに居たのが気にかかったが、気にしても意味がないと頭を振って新天地を目指して逃亡を開始した。
火山の麓まで転がってきた。近くの水が溜まっているところで一度立ち止まり火山に振り返る。長年ここで生きてきたこともあり感慨深い。新天地を目指す為にここらで一度、水を飲んで今度こそここからさよならだ。そんな思いで水に口をつけようとした。
「「「「「「「◼️◼️◾️▪️▪️▪️▪️▪️▪️◼️◼️◼️◼️!!!」」」」」」」
!!?奴だ!奴の声だ!!火山で反響しているのか声が七つに分かれて聞こえてくる。声から感じられる感情は憤怒。
それは赤いのに向けたものか俺に向けたものかはわからない。ただ今すぐここから逃げなければと思った。
水を飲むのを中断して転がる。少なくともこの身の震えが収まるところまでは逃げなければ。
必死に火山から離れる。ドンドン離れてる筈なのに、この身の震えはドンドン強くなる。
崖に囲まれた道を転がる。ここを抜けると同族がいた筈。そいつに奴をなすりつけれるかもしれない。もうすぐ道を抜ける、そう思った時に後方から勢いよく飛んできた岩みたいな何かが崖の上部に当たり、崖が崩れる。
道を塞がれた!転がりを中断して震える身体を必死に抑えて振り返る。そこには胴体のない赤いのの頭部を咥え、前脚を真っ赤に染め、胸に大きな口を開けている竜がいた。四つ脚も口のようなものが開きそこから常に白い粒子が噴出している。そして頭部の欠けた部分から見える三つの瞳がこちらを睨んでいた。
先程の姿からの変貌に愕然としていると胸の口から何かが飛び出る。それはこちらを掠り、もう片方の崖に当たる。崖が崩れ、よじ登ることも出来なくなった。
竜が赤いのを噛み砕く、血が溢れ、竜の顎を真っ赤に染める。
「「「「「「「◼️◼️◾️◾️▪️▪️▪️◾️◼️◼️◼️◼️!!!!」」」」」」」
竜が吼える、視覚出来るほどの衝撃波が辺りに撒き散らされ、あまりの音量に怯んでしまう。
それは明らかな隙だったのだろう。気づくと竜が目の前にいた。
「ゴォ!?ガァ!?」
反応して動く前に突進される。先程より明らかに力が上がっており、拮抗すらせずに仰向けに倒される。
首を噛まれた光景がフラッシュバックする。これは不味い、今すぐ逃げないと!!
顔を上げようとすると目の前に大きな脚が見え、地面に叩きつけられる。胸の辺りにも重みを感じると同時に痛みがはしる。さっきと同じで爪が食い込んでいるのだろう。必死にもがく、しかし竜はそれを嘲笑うかのように咆哮を上げて首に噛み付いた。
先程より遥かに大きな牙が首に突き刺さり、息が出来なくなる。脚の隙間からこちらを見つめる顔が見えることから噛んでいるのは顔の口ではなく、胸の口だろう。
身体が酸素を求め、暴れる。しかし竜は微動だにしない。ならばと先程と同じようにガスをばら撒く。
これで竜は噛むのをやめて離れる筈、そのうちに地面に潜り崖を越えて逃げる。
そう考えていたが竜が口を離さない、それどころか更に噛む力が強くなる。なんで?どうして?疑問が頭に浮かぶが、息が苦しくなりそんな疑問も飛んでいく。
脚をバタつかせるが竜には届かない、小さな腕で竜の前脚を退かそうとするがビクともしない。
「ゴッ!コッ……コ」
視界が歪み、暗くなっていく。酸素が欲しい。頼む、離してくれ。そんな思いも竜には届かない。
次第に身体にも力が入らなくなる。ドンドン意識が遠のき、やがて何も見えなくなった。
書きたい表現を上手く文字に出来ない時のもどかしさがががが