てな訳で20話をどうぞ〜
噴出していたガスが止まり、こちらを押し退けようとしていた身体は徐々に力が弱くなっていき、尻尾は力無く垂れ下がる。
暫く待っても抵抗する様子が見れない為、相手を噛みついたまま持ち上げ近くの崖に放り投げる。崖が崩れ相手が埋まるがお構いなく胸口を開けて生成しておいた鉱石砲を埋まってる場所に目掛けて撃ち込む。
鉱石砲は相手の身体に突き刺さるがそれでも動く気配が無い。
ーーこれは絶命したって事でいいな。ふぅ、流石に落ち着いた。
昂っていた気持ちを落ち着かせて、開けていた口を閉じる。ヒビ割れた頭部の鎧を纏い直し、深呼吸をする。
ーーラングロトラのお陰ですぐに気絶から目覚めれたけど、ラングロトラのお陰で気絶したんだよなぁ。思い返してもあの乱入とそれに気付かなかった自分に腹が立つ。
それに逸れたから良かったけどあの顎が眼に直撃してたら失明してた可能性があるぞ。現に鎧の中だとかなり硬度が高いところが砕けてたし。
顎の反撃を貰ってから意識が途絶え、弱い衝撃で目覚めた時に最初に見たものはラングロトラの顔面だった。
目覚めてすぐは何故こいつがこんなに近くにいるんだと疑問だったのだが気絶する前の記憶を辿っていくと段々と怒りが込み上げてきた。
その間にもラングロトラはこちらに攻撃をしており、それが更に怒りを募らせる。全身に力が入り、四肢の口が無意識に開く。鎧が身体の筋肉の膨張に適応するようにミシミシと音が鳴る。
こちらの変化に気付いたラングロトラは流石に不味いと思ったのか逃亡を開始しようとしたが咆哮を上げて動きを止める。その間に距離を詰めて前脚で押さえつけてから頭部に噛みつき、力任せに引っこ抜いた。
それでも収まりがつかずに残った胴体部分を滅茶苦茶に踏み潰し、頭部を噛み砕こうとしたところでウラガンキンがいないことに気付いた。
頭部を食ってる場合じゃねぇ!となって痕跡からなんとかウラガンキンに追い付き、今さっきトドメを刺したって所だな。
ーーそれにしても怒り状態ってあんな感じなんだな。普段の思考にプラスで破壊衝動に近いものが湧いてくると。
こちらに害するもの、害したものを潰したい・壊したいという気持ちが怒り状態だと表に出て来やすくなるって感じなのだろう。だから普段なら逃してもいいやって思うウラガンキンの逃亡にも追いかけてトドメを刺した。ラングロトラ?あれは許さん。
ーー無意識の力の上昇は魅力的だけど、なろうとしてなれるものじゃないしボーナスタイム的なものと思っておこう。
初めての怒り状態の考察をしつつウラガンキンを引っ張り出し、そのまま胸口で喰らっていく。
ーー巨体だから食い応えがあるな。それだけで仕留めた甲斐があったというもの。次の個体を見つけたら餌候補として有りだな。
ローリング攻撃を受け止めてから押し倒して首に噛み付けばいける筈。睡眠ガスの対処法も分かったからもう効かないしな。
睡眠ガスは吸えばアウトというのは分かっていたので胸口で噛み付いた時に前もって胸口の鉱石袋を鉱石でギッチギチに詰めておいた。それで胸口は呼吸をしない開閉する口になるし他の部位は吸い込む心配はない。
ーーというか噛み付いたならそのまま鉱石槍とかを撃ち込めたんじゃないか?……うん、次に試してみることにして帰ろうか。
ウラガンキンを食べ終えたので火山に戻ろうと身体の向きを変える。自分の来た道を見ればそこには怒りのままに走ったお陰で足跡がくっきりと残っていた。
ーーうわぁ、これ全部消さないといけないの?けど消さないとハンターに見つかる可能性が上がるしなぁ。はぁ……頑張るか。
ため息を吐きながらチマチマと自分の足跡を消しながら帰る。怒り状態の意外な弱点かもしれないなぁ、これ。
次の日、いつもの様に火山に入り鉱石を探す。何回かスカがあるがゲームの採掘ポイント近くは比較的鉱石を見つけやすい。どうやらあのウラガンキンがここの支配者だったらしく、制限時間までゆっくりと探すことが出来た。
ーーそれにしても火山内ってウロコトルとリノプロスしか居ないな。てっきりアイルーもいると思ってたから前から考えてた広範囲攻撃を使えるかなって思ったんだけどなぁ。まぁ、居ないなら居ないでいいか、始末する手間が無くなるし。
リノプロスはこちらに向かって突進してきては勝手に気絶している。ゲームの時は肝心な時に突進してこちらを吹き飛ばす敵側からすればファインプレーを何度も繰り出してくる奴だが今となっては可愛いものだ。
近くを通れば必ず突っ込んでくるがこちらとしては犬がじゃれついて来ているように感じてほっこりする。鉱石が見つからなかった日は食料にもなるので助かる。
ーー後は一回ウロコトル達の巣にも行ってみたいんだけどあの細道はどう頑張っても無理だよなぁ、リスクが高すぎる。
自分の記憶が正しければ確かあそこには二つほど採掘ポイントがあった筈なのだがあの場所に行くには道中にある細い道を通らなければならない。下は勿論溶岩な為、少しでも足を滑らせると即座に死亡が確定する大変危険な場所だ。一度別のところからよじ登ることも考えてみたがそちらも上から溶岩が滝のように流れているので諦めた。
ーー奥に行くほど鉱石のランクが上がってくるのは分かったから行きたかったんだけどなぁ。上がダメなら下に行くしかないか。
ゲームだと存在しない地下は意外と道が続いており、しっかり注意しながら進めばまだまだ深くまで行けそうだ。
ーー次は地下の探索だな。出来ればもっとレア度が高い鉱石も食べてみたいな。
次の目的が決まったので、火山を後にする。暑さの耐性が欲しいなぁ。
あれからかなりの時間が経っているが地下の探索は意外と難航している。こちらに時間制限があるのも原因の一つだが、地下は落石などで道が塞がれてたり、自分の身体が通り抜けれない道があるので壁を砕いて通れるように広げたりと進むのに一々手間がかかることが多いのだ。落石なんて砕いたらいいと最初は思ってたのだが、それが溶岩を堰き止めていたりする場面が時々あるので迂闊に破壊することは出来なくなっている。
ーー落石を潰した途端、溶岩が流れて来た時は死んだかと思ったよ。一気に胸辺りまで沈んだし、本当に都合良く近くに高台があってよかった……いやマジでほんとに。
ちなみにその溶岩は違う位置から落石を持ってきてキチンと塞いでおきました。じゃないと使える道がなくなるからな。
そんなヒヤッとすることもあったが収穫もあった。メランジェ鉱石などのレア度が高い鉱石を見つけたことだ。味についてはコメント出来ないくらい美味しかったし、ここまで来てよかったと思えるぐらいの価値はあると思う。しかしメランジェ鉱石などのレア度だとなかなか見つからないので帰りを考えると一個食べれたら十分というレベルだ。
ーーいやぁ、ポポを食べに凍土に行くティガレックスの気持ちが分かるわ。確かに美味しさを知ってたら自分に合ってない環境でも行こうとするわ。
そんなことを考えつつ道を作っていく。メランジェ鉱石などを効率良く食べる為に自分が通りやすいかつ使いやすい道を自作している最中なのだ。一から道を作ってるのと溶岩溜まりに注意して壁を砕かないといけないので時間がかかったがその甲斐あってかなり奥深くまで来ている。
ーーここまで来たらもういいかな?後は横にも道を作って他の場所に繋げたら完成だな。ってあれ?道が繋がったか。
壁を砕いていると少し広めの場所に出た。周りを見渡してみるが目の前に落石があるだけで他には特に目ぼしいものはない。
ーー自分の作った道以外から入って来れるのは人間サイズって感じだな。自分の作った道があるから広げる必要もないし無視でいいや。それで次はこの落石だな。
目の前の落石を見る。横から押してみると問題なく動くし溶岩が漏れ出てくることもなかったので退かしてみると塞がれていた先から熱風が襲いかかる。
ーー道を塞いでるタイプか。んでこの先はっと……広い空間だな。意外と歩けるところもあるけどそれ以外は溶岩の海だなこれ。
顔だけで覗いてみるとかなりの広い空間が広がっており、所々に遺跡みたいなものがあるがそれ以外の周りは溶岩の海でそのお陰か更に気温が上がっている。下を見渡してから地面へと降り立つと更にその全貌が見える。
ーー凄いなここ。この場所と壁以外全部溶岩の海だ。それと自分が降りてきたところはあそこか、壁から登っていけば戻れるから問題なさそうだな。
帰り道と帰り方を確認してから歩き出す。こんな奥地なのでそれ相応のものがあるに違いない。そんな思いで辺りを探索するが目ぼしいものは見つからない。
ーー何もないな、時間を損しただけかぁ。それにしてもこの場所も何か見覚えがあるんだよなぁ……
頭を捻ってみるが思い出せない。多分ゲーム関係だと思うのだがそれが出てこない。
ーーうーん、何だろう?一つのフィールドで他に移動する場所が無い……あ!決戦場か!思い出せてスッキリしたわ〜、はっはっはっは
……これもしかしてかなり不味い状況?
嫌な予感とは当たるもので今の状況を理解するとほぼ同時に地面から溶岩が噴出する。辺りに地響きが起こり、目の前から溶岩を押し上げながら巨大な大牙と黒い外殻を持った巨竜が姿を現した。
ーーあー、完全に思い出した。ここ溶岩峡谷かぁ、んで目の前にいる巨竜さんはアカムトルムだなぁ。どうしよこれ?
ゲームでは討伐のし易さの割に素材が高く売れるのでアカム銀行やらATMと呼ばれていたが目の前の巨竜は正しく別名である覇竜の名が相応しいと思う程の威圧感がある。
取り敢えず戦うのは論外、それに自分の制限時間がかなり迫ってきている。そんな状態で戦っても死ぬだけだ。
ーーうん、ダメだわ、逃げよう。
素早く決断し後ろに下がりながら脚の鉱石を変形させて壁を登りやすくする。その間にも相手は少しずつこちらに近づいてくる。
変形が完了したので後ろの壁に向かって全力疾走……と見せかけて相手の方へと走り出す。逃げると思っていたものが近づいて来るので相手は少し反応が遅れている。
ーー不意打ちで怯ませてから逃げる。じゃないと絶対に捕まる。
相手の実力を信用して前脚で頭部を叩き潰す振りをして後ろへ下がる。反応が遅れているのにも関わらず相手は見事にそのまま前脚を振り下ろしていた場合の場所に噛み付いている。
フェイントをしなかったら今頃自分の前脚は相手に噛み付かれている事実にゾッとしつつ相手が見せた明確な隙に反転し全力で尻尾を薙ぎ払う。相手の頭部に当たり少しだけ体勢を崩したのを後頭部の眼で確認してからそのまま急いで壁に飛び移り自分が入ってきた場所を目指して登っていく。
ーーうぉぉぉおおお!!!全力で爪を食い込ませて壁を這い回るんだ!
初めての壁走りということもあり、なかなか進めない。それでも進まないと死ぬので必死に登る。
自分の入ってきた場所に近づいたのでチラリと相手の様子を見てみると意外なことに最初にいたところから全く動いていない。
ーー壁に飛び移った時点で追いつけないって思ったのかな?けど何でこっちに軸合わせして踏ん張る体勢に入ってるのかなぁ?ははは、全速前進だぁ!急げぇ!絶対これ大技の準備してるだろ!!
相手の顔がこちらを向く、その眼はこちらを見送るという感じは一切無く、確実に仕留めるというようにギラギラと輝いている。そしてそれを実行するかの如く地面を強く踏み締め、口を開く。
ーー保険は!!今からでも入れる保険は無いの
「ギュルアアアァァァァァァアアアアア!!!!」
ですかぁぁぁああ!!!
ソニックブラストというアカムトルムといえばコレと、いわれる咆哮が放たれる。さっきまで自分がいたところに竜巻状の衝撃波が直撃し、壁を粉砕する。安心するのも束の間、ソニックブラストを放ったまま相手が顔を動かす。
ーー待って待って、無理だから!躱せな──
壁を粉砕しながらこちらへ迫るソニックブラストをこちらが躱す術はなく、鎧を硬化させて甘んじて受けるしかなかった。
ーー生きてるって素晴らしいな……いや、本当に。
ソニックブラストの直撃を受けて壁に叩きつけられた後、粉砕された壁の先が運良く自分が入ってきた場所に繋がっていたので溶岩に叩き落とされることはなく命拾いをした。
ーー鎧を硬化させたのも良かったな。それでもボロボロだけど……
それにしてもリアル設定のアカムさんのソニックブラスト威力強すぎるよ……誰だよATMとか言ってた奴、一度このリアル産アカムとあってみろよ価値観変わるぞ。
地面に倒れたまま愚痴る、破壊された壁から向こうの様子が見えるがアカムトルムはこちらに興味を失ったのか溶岩へと潜っていった。
ーー命拾いしただけ良かったと思おう。制限時間もキツいし帰るか……
そういえばアカムって真紅蓮石とか獄炎石とか取れたっけ?それだと確かに奥地にお宝はあったって事になるなぁ、取得難易度はクッソ高いけど。
動くたびに全身が痛むが何とか立ち上がる。所々が砕けたりヒビが入ってる鎧を修復した後、身体を引き摺りながら歩き出し火山を後にした。
アカムトルムにぶっ飛ばされてから数日後、問題なく身体が動くようになったので再び火山にやってきた。最初はまたアカムトルムに遭遇するんじゃないかとビクビクしていたが少し奥まで来ても出てくる気配がないのでゲームの設定通りに火山奥地の溶岩峡谷から動く気はないのだろう。
ーーそれでも出てこないって決め付けはしないでおかないとな。あいつ生態ムービーで普通に奥地から出て来てるし。
周囲にアカムトルムの出現予兆がないかを確認しながら鉱石を掘る。見つけた鉱石は食べないで胸口に放り込む。
ーー順調に集まってるな。食べる時が楽しみだ。
寝床で休んでた時にあまりにやる事がなくて思い付いたことなのだが、自分の見つけた寝床は意外と奥行きに余裕があり、広い。そこでその場所を鉱石でいっぱいにしてから一気に食べるという贅沢喰いをしてみたいと思ってしまった。
それで今、その計画を実行するべく鉱石を食べないでこうして集めている訳である。
ーー取り敢えず、一週間ぐらいを目安に集めていこう。寝床いっぱいの鉱石って迫力あるんだろうなぁ。
そんなこんなで集め始めてはや一週間、自分の寝床ではいっぱいの成果があった。大半はドラグライト鉱石や紅蓮石だが、所々にメランジェ鉱石などのレア度が高い鉱石も入れてある。
ーーふふふ、この一週間、寝る前に何度喰おうと思ったことか……早速食べようって言いたいところだけど、さっき火山で腹ごしらえしてきたところだし起きてからにしよう。どうせならお腹が空いている時に食べたい。では、お休みなさい!
気分的には明日が楽しみで寝れない子ども的な感じだが、時間ギリギリまで火山で行動してたこともあってすんなりと意識が落ちていった。
ーーおはようございます!さぁ、鉱石達!今から食べてやるか……ら?
次の日、鉱石を食べる自分の姿を思い描きながら起きると、あんなにいっぱいあった鉱石は少ししか残っておらず、代わりにその近くでメランジェ鉱石に頬擦りしている女性が一人、それを苦笑いで見ている男性が二人いた。
ーー…………はぁ?
次回は他人視点スタートです。