誰かが軽率に口を増やすから(震え声
能力の発動方法がわかり、色々試してみたがどうやら全ての口の奥に同じ器官があることがわかった。取り敢えずそれらの名前を鉱石袋にする。少し安直かも知れないが分かりやすいのでこのままにする。それから自分は雑食ではなく鉱石食に変わっていたらしい。恐らく他に何を食べても問題はないが鉱石以外を食べると喉奥で能力発動の感触がするので、そこで鉱石に変換してから飲み込んでいるのだろう。まだ岩しか試していないので確信は出来ないが多分これで間違ってないだろう。それから喉奥の器官がそれぞれ同じ所に繋がっていることに気づいた。何回か能力発動を繰り返して漸く気づいた箇所でこれが自分の能力発動の核部分だろう。これは鉱玉でいいか。これが活性化することで能力を発動するのだろう。
ーーよし、ならこの鉱玉を意識すれば…!
鉱玉に力を込める感覚を行いつつ、自分の前脚に意識を込める。するとピシピシと前脚から音がして鉱石に覆われていく。
ーーやった!成功だ!後はこれをマスターするだけだ!
前脚に意識を向けつつ、鉱石の状況を確認する。脚首辺りまで覆われている鉱石は、暗い白色で澱んでいる。更に増殖させる意識を向けると関節部分まで伸びてきて、覆った部分を少なくする事は出来ないが砕く意志を向ければ、呆気なく砕けて粉になった。
ーー少なくするのは無理だから解除したい時はその部位の鉱石を砕かないと駄目と…次は鉱石の特性かな?
自分の能力設定では「独自」の鉱石の生成・操作・増殖なので何か特性がついてる可能性が高い…はず。この色が特性だよなんていわれたらショックだが流石に無いはず…無いよね?
ーーこれもまた時間かかるんだろうなぁ…取り敢えず一個ずつ試していくかぁ
能力発動の発覚までにかかった時間を思い出しつつ、少しうんざりしながら思いついた事を試していこうと行動する。
案外すぐ見つかった。自分の鉱石の特性は圧縮による硬度の硬化だ。力を込めれば込めるほど鉱石は小さく硬くなっていき、限界まで硬化した鉱石は自分の爪でも砕けないし、口でも噛み砕けない。また、全体を薄くすれば刀のような物にもなり、試しに圧縮した鉱石を尻尾に纏い鉱石に振ってみたところ驚くほどするりと切断することが出来た。他にも思いついたものは試してみたが、上手くいったのは圧縮だけだったので、これが特性ということにする。
ーーよし、大体試せたし次は鎧化だな。これが成功すれば大まか設定通りだ。
能力発覚からスルスルと確認作業が進み気分が良くなりこのままいけばいいなぁと身体全体を鉱石で覆っていくが顔の部分はまだ少し怖いのでそこは除去する。顔を除く全身を覆いつくし、成功だと思いながら動き出そうとするが動けない
ーーう、動けねぇ…そりゃ関節部分とかもガッチガチに鉱石で覆えば動けなくなるのも当たり前かぁ…口も開かないし
完全に鉱石に覆われて動けない醜態を晒しつつ、胸口に力を込めてもうんともすんともいわない姿に久しぶりにため息を吐く。さっきまで順調にいっていただけに気分は更に落ち込む。
ーー取り敢えず鉱石は砕いて対策を考えるかぁ
鉱石を砕き粉にする。身体が動くことを確認すると伏せて考える。
ーーさて、どうしようか?完全に覆うと身体は動かない、動きやすさを重視すると覆える部分が脚の一部と顔ぐらいになるかな?胴体を覆うと身体を曲げることが出来なくなるし、尻尾や首も同じ…うーん、久々に難問が来たなぁ
一番のメインと考えていただけにショックは大きく、何とか実現したいが考えが思いつかない。
ーー何も思いつかないなぁ、鉱石操作の練習をすれば何とかなるか?
考えを巡らせつつ、鉱玉に力を込めて前脚を鉱石で覆いそれを砕く。乱雑に砕けた鉱石に意識を向け、再生するように念じるが動かず、なら増殖しろと命じたところ、石サイズの鉱石群が音を立てて大きくなる。
ーー元の形には戻らないけど、砕けたものは増殖することが可能でそれでも増殖可能な量は決まっていると…増殖可能時間とかあるのかな?
石サイズから一回り大きくなったそれらに目を向けつつ、確認事項が増えたなぁなどと呑気に考える。
ーー食糧が厳しい時に増える確認事項、こうなったらとことんやってやらぁ!けどその前に不貞寝する!
自分の中の設定が頓挫しかかっていることに思ったよりダメージがあるので今日は眠ることにする。お休みなさい!!!
時間は流れ、鉱石能力について分かったことが色々ある。まずは鉱石の切り離しからの増殖は時間制限があったことだ。これは寝る前に鉱石を「そのまま」「石サイズ」「粉」まで砕いた後に時間を置き、増殖を試したところ反応が無かったことから発覚したことだ。そこから時間ごとに試してみたが、一時間が増殖限界時間だ。しかし自分が触るとそれはリセットされるらしく、触ってから増殖を命じると問題なく増殖した。次は鉱石弾を発射出来たことだ。鉱石ブレスを吐く練習をしていたところ圧縮したらどうなるんだろと考え、実行したら石サイズの鉱石が鉱石袋に形成され、それを溜め込んだ息と共に放出することで発射出来たのが実情だ。更にこの鉱石はまだ大きくすることと形状を変形させることが可能であり顔口いっぱいの大きさで先端を尖らせ発射したところ、洞窟内の一部をぶち抜き、ついでに崩落した。お陰で洞窟内の生活圏が少し小さくなりました。はい。
そこから副産物で発覚したのだが、どうやら自分の肺は空気を元からある程度溜め込んでいるらしく、数時間程度なら息を止めることが可能で、その空気のお陰でさっきの鉱石弾を実現できたみたいだ。
最後に1番深刻なのが、食糧問題だ。岩を鉱石に出来るのだから問題ないとタカを括っていたのだがどうやら岩を鉱石化させるにあたる消耗と鉱石化させた岩の補充量が一緒みたいで食っても食っても全く意味がありませんでした!!お陰で洞窟内の鉱石を食い荒らし、今は薄暗い洞窟で生活している。
そう、薄暗いのだ、周りの鉱石は全て食べ、あと残っているのは上で光を放つ鉱石だけなのだ。それもあらかた食べてしまったので後ほんの少ししか残ってないのだ。そのため少しでも消耗を避けるため動くことは極力せず、能力の練習だけ行なっているのが現状だ。
ーー食糧はあと僅か、後数本を食ったら外に出ないといけないだろう。何とか鎧化の実用にいけたらいいんだけど…
伏せて動くことなく生成した鉱石をどうにかしようと考えを巡らせるが上手くいかない、最近は食糧の節約を開始しているので余計に思考がぼやけてくる。
ーーどうする?外に出るか?しかし外は過酷な世界、少しの油断が命に関わる。出来れば万全な状態で挑みたい…
思考が外に出ることをすすめるが、やはり万全な状態で出たいと待ったをかける。少しでも能力向上を行えないかと鉱石の生成と破壊を繰り返して増殖させる。
ーーあーあ、あの増殖した鉱石で腹満たせたらいいんだけどなぁ…消耗と補充が一緒だから意味ないし…
砕けて増殖する鉱石を視界に入れて思考を巡らせる。その鉱石を口に入れても鉱玉の消費と補充が一緒だから腹は空く一方なのだ。勿体無いから食べるけど…
ーー砕けた部分の増殖かぁ…何かに使えないかな?
自分の能力向上に役に立つかもしれない事は思い付いたことから何に使えるか考えてみる。今回は砕けた部分の増殖…部位破壊された所の再生か?
ーーもし破壊されたらそこの部分に鉱石を生成してから操作の能力で操る。それが出来たら不意をつけるか?
恐らく相手も破壊した部位には意識を緩めるだろう。そこに不意をつけば有効打を打てるかもしれない…
ーーこの使い方は一考の余地があるかもしれない。他にも使い方はあるかなぁ?
破壊された部位の再生かぁ、盾を生成したら役に立つか?もし砕けても即座に再生する盾か…ん?んん?
自分の頭に電流が走った感覚がした。もしかして鎧化問題を解決できるかもしれない!
即座に立ち、自分の身体に鉱石を纏っていくが今回は本来より薄く、動けばすぐに砕ける程度の硬度にしておく。やがて全身を覆い尽くし鎧化が完了した。
ーーこっからが本番だ…頼むから成功してよ…
祈るように身体を動かす。関節部分などを纏っていた鉱石が砕けるがそこに増殖の能力を働きかける。すると砕けていた部分が再生し、動き終わった時には問題なく鎧姿のままだった。
ーーやった!成功した!後は砕けていないところを圧縮して砕ける部分は自分の力で破壊できる程度の硬度にすればいい
最終問題を解決でき、歓喜に包まれる。飛び跳ねたいところだが前回の過ちは繰り返さないように静かに喜ぶ。
ーー常に鉱玉に消費を強いるけど身を守るためだ。本来より食う量が増えるだけだしそこまで問題はないだろうし、動いた時に砕けた鉱石は罠にも使えるかもしれない。
デメリットより得られるメリットの方が多いためこの方法でいこうと決定し、動いても砕けなかった鉱石部分の圧縮を開始する。
ーー少し重くなったけど動けない程じゃない。後は頭部も覆えば鎧化は完成だな…
頭部に鉱石を纏ってから眼を開くが周りが暗い白一色だった。
ーーあ、そっか、全部覆えば見えなくなるか
少し眼の部分の鉱石を薄くし、視界を確保する。ついでに各口部分に工夫を施し、問題なく開くようにする。更に砕ける部位の鉱石の硬度も調整し、今ここに鎧化が完成した。
ーーよし!これで完成したぞ!これが俺のオリジナルだ!
ここに旅立つ準備は整った。後は上の鉱石を食らい、外に出るだけだ。
ーーついに始まるんだ、生存競争が…外に出たら問答無用で始まるんだ。何処まで出来るか分からないけど、必ず生き延びてみせる。
改めて自分の決意を呟き、鉱石を食う。ここにある光源は後一つ、これをライト代わりにしてここを旅立つ。その前に英気を養うため、眠ることにする。ギリギリ準備が間に合ったお陰か、安堵感を感じると共にすんなりと眠気がきて夢の世界に旅立った…
目が覚め、自分の鎧化が解除されていないことに安堵しつつ、最後の鉱石を咥え、壁際に進む。顔口が使えない為、胸口で深呼吸をし、覚悟を決め、洞窟の壁に自分の剛脚を叩きつけた。
洞窟内に響く轟音と振動、壁は崩れ上からは岩が落ちてくるが鎧化の鉱石に守られて何かが乗っかった感覚しか感じない。そのまま黙々と作業を続けて進み続け、とうとう自分は外に出た。
外の世界で最初に目にしたのは木々だった。緑が生え揃い、聞こえてくるのは鳥の囀りと何かの唸り声。唸り声?
疑問に思うまま唸り声の聞こえる方向を向くとそこには赤色とところどころ青色の甲殻に包まれた身体。そして本来なら水色に近い色をした大剣の尻尾は赤熱している。
ーーあれー?ディノバルドさんどうしてここに?ついでになんでそんなにお怒りになられていらっしゃるのですか?
明らかに感じる怒気に心の汗を滲ませ構えるが、ふと下を見るとそこには砕けた青い鉱石のようなものが。
ーーあー、これ俺が砕いて出てきた所がお気に入りの剣研ぎ場だったりする感じかな?そりゃそんなに怒るよねぇ!
自分のやらかしに戦慄している合間にディノバルドは戦闘体制を整えて吼える。
「ギャギィァァァァァアアアン!!!」
金属が擦れたかのような咆哮を上げるディノバルド相手にこちらも覚悟を決める
ーーもっと小型とかで狩り方学んでからやりたかったんだけどなぁ!畜生!やってやらぁ!!
モンスターの声は筆者が聞いた声をパッと文字にするならこんな感じかな?と思ったのを打ってます。「こんなんじゃねーよぉ!」と思っても優しい心でお許し下さい!