今日も森は異常なし。最近は一定範囲の森を見回るのが習慣になってきた気がする。朝に起きるとまず嵐の状況を確認し、その後は森の空けたところで日向ぼっこをしながら自分が使えそうな技を模索して、思いついたのから試してみる。それで有効打になりそうなものは戦闘中にもしっかり使えるように練習を重ねる。技を考えただけで何も問題なく使えるようになるとは自分では思えないのでこの練習は必須だ。なんなら前まで使っていた技の練習もしている。繰り返し同じ技を使っていると「こうした方が良くないか?」や「ここでこの技を挟んでみるといいかも」などの改良点が見つかることが多いので意外と楽しい。今のところ増えたのは鉱石槍の胸口版である鉱石砲、尻尾に鉱石で剣を作ったり、先端に鉱石塊を作ってハンマーみたいにして振り落としたりする技も作ってみた。しかし鉱石の剣は尻尾の一部が固まり、使いづらくなるので使う場面はしっかり考えなければならない。ちなみに鉱石砲を試し撃ちしてみた時に通りすがりのジャギィに直撃し爆散した。正直済まんかった。
満足いくまで練習をした後は川に向かって水を蓄えに行く。この身体は水を溜め込めておけるのか、飲んでいる最中は喉が潤う感覚ではなく身体に何かが溜まっている感覚がする。なんなら数日間は飲まなくて大丈夫だが、急に川が枯れたりしたら怖いので常に満タンになるようにしている。
今までの行動中にジャギィが来れば食糧に、来なければ洞窟内の鉱石を食べるようにしている。自分の出現地点の洞窟とは違い、ここの洞窟は数日でまた鉱石が生えてくるので食糧に問題はなさそうだ。こういうところはゲーム基準なのね……
これが最近の自分の一日である。人間時代の時とは違い、伸び伸びと動けるのが気に入っている。この森には自分以外の大型が存在せず、なんなら中型も数週間前に潰したドスジャギィだけだったので、今この土地に生息しているのは自分と少しのジャギィだけだ。草食竜は嵐のお陰でつい先日、完全に姿を消した。それに伴いあんなに溢れるほどいたジャギィも数が減ってきている。自分としては鉱石食なのであの洞窟の鉱石が尽きるまで(尽きるのかな?)食糧に困ることはないし、嵐の主の威圧感に慣れるためにこの地に残っている。あの威圧感に慣れることで次の大型モンスターが自分より強大だとしても怯まず立ち向かえるのではないかと考えての行動だ。勿論、敵わないと確信すれば逃げることも厭わない。自分の最優先事項は生きることであり、そのためには今の生活を容易に捨て去ることが出来ると胸を張って言える。
ーー最悪は大咆哮で吼えながら逃げるかぁ…
咆哮しながら全速力で後方ダッシュする自分の姿を想像しながら、もしものための逃亡手段を確立させる。ついてこられたらどうするのかはその日の自分に丸投げしとこう。ヨシ!
ーーやることやったから寝るかぁ、明日も良い日になりますように!おやすみなさい!!
ーーおは!!?何この気配!!?
恒例になった挨拶をしようとした途端、凄まじい気配と怒気に一気に目が覚め飛び起きる。急いで洞窟を飛び出して発生源を見ると嵐が勢いを増し、こちらからでも確認出来るほどの暴風雨を発生させていた。
ーーうわぁ……すっごい怒ってる。相手はハンター?それともモンスター?こっちからだと強者同士の戦いってことしか分からないけどね…
何週間も嵐の下にある土地って大丈夫なのか?と的外れなことを考えつつ嵐を見つめる。嵐は勢いが収まるどころか増していき、更に範囲を拡大させていく。
ーーうーん、嵐の主がやられたらこっちも嵐の動向を確認しないで済むから助かるんだけどなぁ……勢いは増してるけど動く気配は無いし、いつもより少し早いけど森の見回りに行こうか
自分がこのまま見ていても意味がないと判断し、森の中に入る。森の中は本来なら鳥の囀りや獣の声などが聞こえてくるのだが今は静かで木の葉の擦れる音しか聞こえない。流石のジャギィも嵐の主の怒気に怯えて巣穴に篭っているようだ。静かな森の中を歩き、いつもの日向ぼっこ兼練習場に辿り着く。いつもなら日向ぼっこを行うところなのだが嵐の主のお陰で空は薄暗く、とても行える状況ではない。
そこで趣向を変え、今回は別のことを行うことにする。
ーー前々から思ってたけど動かないと周りからは岩か何かと思われてるんだよなぁ、ならゴツゴツした擬態形態でも作ってみようかな?
流石に今の棘が生えた鎧姿で動かなくてもモンスターを騙せてもハンターは無理だろう…ならゴツゴツしたこれぞ岩!って感じなのを作ればいいのでは無いかと考えた次第である。
早速棘の部分を砕き、ただ身体を鉱石で覆っただけの姿に戻る。その状態から自分の身体に背負うように鉱石の塊を生成する。ある程度生成した後、自分の尻尾でなぞるように触ってみる。
ーーうーん、すっごくバサルモスだね!逆に森の中にあったらバレるわ!
リアルのバサルモスがあの岩を背負った姿なのか知らないが知ってるハンターが見ると逆に目立つだろう。
ーーそれに鉱石を背負ってるだけなんて潜るわけじゃ無いんだから擬態にもならないよ!
ただ鉱石の塊を背負っている四脚の竜なんて座って動かなくてもハンターからしたらバレバレだろう。むしろ奇襲されるわ!
ーーとにかく!脚にも鉱石塊をつけて座っていても岩場っぽくしよう。首もゴツゴツにして頭は岩場が削れて少し飛び出ている感じにして尻尾は地面に埋まっている岩の上部が少し出ている感じにして、どうだ!
尻尾で身体を触り出来を確認する。触った感触から脳内でどんな感じかを想像し、岩場に個人的には見えたのでこれで行くことにする。
ーー後は動かずにジッとする練習かぁ、地味にめんどそうだけど擬態も使えるようになれば奇襲出来るかも知れないから仕方ないか……
その場で伏せ、脚の位置を岩場に見えるように置き、尻尾も地面につけてジッとする。
ーー取り敢えず今日一日はこのままジッとしておくか……
ノルマを決めつつどうせならと尻尾以外の関節部分の鉱石を硬化させ物理的に動けなくする。準備は出来たのでジッとしながら今後のことを考える。
ーーこの擬態状態でどこまでいけるか確かめたいな。けど今のここには何もいないから場所を変える?明日の状況で考えようかな?明日も嵐が続いていたら移動しよう。消えていたら草食竜達も戻ってくるだろうしもしかしたらそれを追いかけて大型も来るかもしれないからもう少し待ってみよう。出来たら気配に敏感な奴が来て欲しいな、そいつ相手に試してみてゆくゆくはハンターにも効くかどうか試しt「先輩!森が空けますよ!」!?
飛ばしていた思考をすぐさま戻し、意識を切り替える。今のは明らかに人の声だった。擬態中のため動けないのがもどかしい。話し声は後ろから聞こえてきて、徐々に近づいてくる。
「静かに話しなさいと言ったでしょう?何処に何が潜んでいるのか分からないんですよ?」
「こんなに静かなんだから大丈夫ですって!」
なんて話しているのかは分からないが、こっちはそれどころでは無い。いつかは出会うと思っていたが流石に今だとは思わなかった。
一人は騒がしくボーン装備をした操虫棍を持つ青年。もう一人は静かにこちらに近づいてくるルドロス装備をした太刀を持つ女性
ーーどうする?今すぐ攻撃するか?いや、ここはチャンスだこの擬態の効能を確認させて貰おう。
自問自答しつつ、この擬態を向ける最終目標が現れたので焦る気持ちを抑え、ジッと我慢する。
「それにしても本当に静かっすね?本当に討伐対象いるんすか?」
「それを調べるのも含めてのクエストよ。それに気になるのも出来たからね」
女性ハンターが地面に視線を下に向ける。そこには自分が動いた時に砕ける鉱石粉があった。
ーーあー、辿られたのか。普通に考えたらこんな見たことがない痕跡があったら確認に来るか。
女性ハンターの動きから何故こんなところに来たのか理解する。鎧化の気付いてなかったデメリットが今発覚したが、対策の仕様もないため改善は諦める。そんなことをつらつらと考えていると女性ハンターが急に武器を取り出し、突き刺してきた。
ーー!!??気づかれた!?
急いで擬態を解き動き出そうとするが関節部分も鉱石で覆っており動けない。ならば尻尾で反撃をと考えたところで女性ハンターは武器をしまい男性ハンターと話し始めた。
ーー気づいた訳じゃないのか?それじゃあなんで攻撃してきたんだ?
突然攻撃された理由が分からず悩んでいるとハンター達は休憩することにしたのかこちらに座り始めた。
ーー見た感じ男性ハンターは警戒が弱いな?それに比べて女性ハンターは警戒を欠かしてないな。狙うなら先に男性ハンターか?
残念だが自分はハンターを見つけた時点で逃すつもりはない。自分の痕跡を見つけた以上、帰られたら何を報告するか分からないからだ、調査隊などを派遣されるリスクがあるなら、可能性自体を無くすしかない。
ハンター達が休憩を終えたのをみてゆっくりと尻尾を持ち上げる。ハンター達はこちらが休憩中に手を出さなかったことで気付く様子はない。
男性ハンターの後頭部を狙い尻尾を突き刺す!
「!?伏せなさい!!!」
「え?はい!」
刺さる直前に女性ハンターがこちらに気づき男性ハンターに向かって叫ぶ。男性ハンターもハンターの端くれなのか、喋りながらも素早い動作で伏せた。しかしこちらの攻撃は終わっていない。尻尾を伏せた男性ハンターに振り下ろす。
「なにこれ!?どっからの攻撃!?」
「あの岩からよ!早く離れなさい!」
慌てて転がりながら尻尾攻撃を避ける男性ハンター、そこで女性ハンターが走り寄り、太刀でこちらの尻尾をそらす。
ーー範囲外に出たか、それじゃあ本番と行こうか
関節部分の鉱石と擬態形態の鉱石を砕き立ち上がる。ハンター達がこちらに驚いている間にいつもの鎧姿に戻る。
ーーハンターとの初めての戦いだからな、リアルでは何が出来て何が出来ないのかを確かめさせてもらう。
ゆっくりと構えをとり、ハンター達を睨みつけた。
最初ハンターの会話分を「ーー!ーーーーーーーー!」的な感じで描こうとしてたんですけど読みづらいと思い変えました。
次はハンターサイドからです