ヘリのハッチ内部、私は携帯食を食べて待機している。
『ムラクモ、まもなく降下ポイントに到着。作戦開始タイミングは現時刻より30秒後とします。』
「了解。」
ヘッドセットからオペレーターの声が聞こえる。
それに対して私は簡潔に応答した。
これから私が相対するのはケモノ。
既存兵器では傷ひとつつかない強靭な肉体を持つ異形の怪物。
いつ、どこに、何体現れるかも分からない人類の敵。
そいつらを駆除するのが私たち"特務機装部隊"。
ケモノを狩る為だけの政府機関。
『5、4、3、2、1…ハッチオープン。作戦開始。』
カウントダウンが終了すると同時に眩しい光が目に入る。
眩しさに慣れて見えてきた眼下の街は、既にケモノで溢れかえっていた。
「ムラクモ、出ます」
タン、とハッチ内の床を蹴り空中へと身を投げ出す。
パラシュート無し、安全性など一般の観点からすれば微塵も見られない。
ーーー私は懐の紅い短刃を抜いた。
「出番だ、"アメノムラクモ"ッ!」
呼び声と共に短刀が紅く輝き、その光が全身を包み込む。
指先からつま先まで全身の衣服が戦闘服へと再構築されていく。
先程の輝きと同色のインナースーツ、アーマーを身に纏う。
これが特務機装部隊の"ハンター"である私が纏う"猟具"
『アメノムラクモ』だ。
「はァッ!!」
着地と同時に近くのケモノを短刀から転じた刀で一閃。縦に一刀両断する。
次いでの二撃目は周囲を薙ぎ払う様に回転斬りを放つ。
ちょっとした牽制ではあるが…
「いやに多いな…」
刀を握り直し周囲を見据える。今回は数が多い…厄日かな?
そう思っているうちに、ケモノが眼前まで迫って来ていた。
「ッ!」
大きく横に跳んで爪を避ける。
猟具を纏い、身体能力が上昇したこの身体なら造作もない。
そして跳んだ先にあった家屋の外壁に足を着けて、蹴る。
「やあッ!」
先程までいた場所に戻って来ると共に、ケモノに対して刺突を放つ。
かなり力が込められているからか刃は柄まで突き刺さってしまっている。
が、そんなことは気にせずに突き刺したケモノごと別のケモノを斬る。
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッッ!!」
「グッ…!」
流石に数が多く後ろから更に別のケモノが躍りかかってきた。
何とかそれを受け止めるが、たかが1匹に対して動きを止めるのは失策だった。
それを隙とみた残りのケモノ達は一挙に私へと飛びかかってきた。
ピンチに見える。
しかし、切り札はある。
「来い、"オロチ"」
私が呟くと飛びかかってきたケモノ達の足元が膨れ上がり破裂した。
いや、正確には破裂したのではなく飛び出てきたのだ。
紅い装甲にライトグリーンのラインが入った鋼の大蛇、その数八つ。
上半身しか穴から出ていないのにも関わらずそれぞれの頭がケモノを口に咥えて噛み砕いている。
「ッと」
そして私もどんどんケモノを切り捨てていく。
オロチの方を見れば好き勝手ケモノを食い荒らしていた。
これ以上は街もボコボコになるだろう。それは指示に反する。
「下がって、オロチ」
そう指示するとオロチは地鳴らしを起こしながら地面に中に引っ込んでいく。
毎回思うけどどこから来てどこに帰って行くんだろう。
「こちらムラクモ、作戦終了。」
インカムを通してオペレーターに作戦完了を伝える。定型文だ。
『了解、ムラクモは猟具を解除して待機して下さい。』
勿論帰ってくる返事も定型文だ。
言われた通りに猟具を解除する。もちろんこの時には衣服も戻っている。
私の髪と同じ白のワンピース。
「晩御飯、どんな味かな…」
瓦礫に腰掛けながら、遠くに見える私を回収しに来たヘリを見つめる。
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〜特務機装部隊本部〜
帰還して直ぐに私は自室に戻された。
時計を見ればもうすぐお昼時だ。
食事はいつも自室に運ばれてくる。
ランダムに味付けされた練り物がトレーに乗せられているものだ。
時々飴がついてくる。あと水もある。
ちなみにだがその練り物は身体に必要な栄養を全部補えるらしい。
『食事です。』
噂をすれば室内にアナウンスが流れた。
ドアの隣にある食器受け渡し口からトレーが出てくる。
今日は黄色、多め、飴あり。
「豪華だな。」
見た目の感想を述べたところで実食。
黄色のこれは…うん、美味しい。甘めの味付けは好物だ。
どんどんスプーンを動かして口に入れていく。
ねちゃねちゃしているが穏やかな甘みが口に広がっていく。
「美味しかった…」
水で口の中をリセットして、飴を口に放り込む。こっちは…酸っぱ。
顔をしかめながらトレーを食器受け渡し口に入れる。
あとは寝るなり筋トレするぐらいしかない。
窓もないこの部屋だとやることが本当に限られている。
お風呂、トイレ、ベッドも完備のこの部屋。
だから出撃時以外は出ることはない。
「…寝よう。」
やることも無い、ちょっと疲れたし。
うん、寝よう。そうしよう。
軽くシャワーを浴びてから寝間着に着替え、ベッドに身体を横にする。
元々疲れていたというのもあってか、いつの間にか眠りに落ちていた。