GBN:アラカルトダイバーズ   作:守次 奏

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レイドバトル編本格始動なので初投稿です。


Phase-02 「進軍のSフィールド」

「総員傾聴! 本レイドバトルにおいて我々地球連合・オーブ連合艦隊並びに歌姫の騎士団は、レクイエムの発射阻止、並びにアルテミス要塞の攻略、そしてレクイエム本体の破壊が勝利条件となる!」

 

 NPDが操る「ミレニアム」の両翼のうち、右翼に配備されている真紅に染まったスーパーミネルバ級戦艦、「ゲヘナ」のブリッジからアトミラールはオープンチャンネルでプレイヤーたちに呼びかけていた。

 

「そのためには現在我々が配置されたSフィールドを通過し、レクイエム本体があるNフィールドに向かう攻略部隊と、レクイエム側面から奇襲をかけるWフィールド攻略部隊、そしてアルテミス要塞攻略のためのEフィールド攻略部隊が必要となる!」

 

 投影されたマップには、参加したダイバーたちと各フィールドの戦力予想図が広がっている。

 アトミラールの予想では、激戦が予想されるのはやはり本丸となるNフィールド及び、物語上重要な役割を果たしていたアルテミス要塞があるEフィールドだった。

 直進する都合、Sフィールドも安全とはいえないだろう。ならば手薄になるのはどこか。

 その答えは自明──この戦場においてなんの意味も持たず、ただ区分けとして配置されているだけのWフィールドだ。

 

「我々はこのSフィールドとWフィールドを制圧し、レクイエムに正面、側面双方からの全力攻撃を仕掛ける! 全ダイバーが我々『GHC』に協力してくれとは言わない! だが、各々の心に従い、最善を尽くしてくれることを祈る、以上だ!」

 

 アトミラールの演説に、割れんばかりの歓声が巻き起こる。当然のように、連合・オーブ・コンパス連合艦隊の全員が彼の声に応えているわけではないが、こうして影響力の高いプレイヤーが先立って作戦を示すことで、「船頭多くして船山に上る」ような事態は避けられる。

 ここでプレイヤーに求められることは当然、アトミラールが立てた作戦に従う……だけではない。

 トウヤは愛機のコックピットの中で、「歌姫の騎士団」……つまり本丸であるレクイエムを落とすための突入部隊として選ばれた意味を考えては反芻する。

 

「……Sフィールドには間違いなく四機のブラックナイツがレイドボスとして現れる、それにエネルギーの損耗を抑えて戦えっていうのか」

「できるんじゃないですか? トウヤなら」

「……無茶言うなよ、ミウ」

 

 クリア不可能だのなんだのと煽ってきた以上、NPDといえども油断はできない。

 原作におけるシン・アスカのように惜しみなくエネルギーを使っての戦いやゼウスシルエットという切り札がない以上、トウヤにできる現実的な作戦は情けないが、「なるべくブラックナイツとの交戦を避けつつNフィールドに到達する」ことだった。

 ミウが駆る、イモータルジャスティスを量産機風に改修した「インテグラル」の背中に愛機──デスティニーガンダムとライジングフリーダムをミキシングした「パラディオンデスティニーガンダム」を着地させて、トウヤは来るべき会敵に備え、神経を研ぎ澄ます。

 

「斥候部隊からの報告! 敵艦隊、距離千二百! ダイバー及びNPDの数、測定不能! まもなく会敵します!」

「始まったか……いいねぇ、まとめてぎっちょんしてやらぁ! 死にたいやつからあたしとゲニーアルケーにかかってきな!」

「アリムに一番槍は渡すかよ! 野郎ども、かかれー!」

「ヒャア我慢できねえ! 天誅だァ!」

「殺せー!」

「もう滅茶苦茶ね……そうなれば私の役割はここでとどまって戦力の損耗を防ぐことね。ユーナ、久しぶりのメタバースだけどやれるかしら?」

「もちろん! 任せてよアヤノさん!」

 

 案の定とでもいうべきか、「GHC」の制御を外れたプレイヤーたちが、一番槍の栄誉を手にするために先陣を切った。

 その中に見える青いヤークトアルケーや、クロスボーンガンダムとダブルオークアンタ、そしてV2ガンダムをミキシングし、二本の刀を携えた「クロスボーンガンダムXQ」と、カミキバーニングガンダムのレプリカモデルをベースとした「アリスバーニングガンダムブルーム」たちを筆頭にした野良プレイヤーたちが、ここで殿を務めるべく、最初からリソースも考えずに敵陣に突っ込んでいく。

 大半のプレイヤーがレイドバトルの熱に浮かされているだけだとしても、「GHC」の統制下にある部隊は後方で速度を抑えて進軍している以上、少なくとも戦線の瓦解は避けられるだろうとトウヤは睨んでいた。

 

「『トリニティ』麾下の部隊はWフィールドに向かいます、提督、ご武運を!」

「ありがとう、キリカくん。そちらも気を抜くことなく、な。例え手薄なWフィールドであったとしてもだ」

「了解!」

 

 間もなく敵部隊の先遣隊と飛び出していった野良プレイヤーたちが激突しようとしているタイミングで、スーパーミネルバ級戦艦「トリニティ」が引き連れた部隊はWフィールドに向かって最大戦速で向かっていく。

 あとは武運を祈るだけだ。

 トウヤが「トリニティ」麾下の部隊にできることはそれだけだった。だからこそ、敬意を込めて敬礼で見送るのだ。

 

「トランザムライト! 切り裂け、『無銘朧月』! 『無銘天照』!」

「おおおおっ! ハイパー炎、パーンチ!」

『俺のマックスターが拳で負けるなど……アバーッ!?』

『た、太刀筋が見えぬだと!? おのれ……これが最上位ランカーの……うおおおお!?』

 

 ザフト・ファウンデーション軍の先鋒として先陣を切り突っ込んできたガンダムマックスターが、アリスバーニングガンダムブルームの燃え盛る拳に打ち負けて爆発四散する。

 それと同時に、発生した黒煙すらも断ち切るような鋭い太刀筋が、肘のブレードでガードしようと目論んだその刃ごと、なぜかビームマシンガンを両手に持ったガンダムシュピーゲルを断ち切った。

 

『よくもブルーチーズ兄貴を! 全員囲めー! 最上位ランカーだかなんだか知らんが囲んでボコれば大概の敵は倒せるんだよ!』

『頭幕末かよ! だがそうでもしなきゃ、「辻斬撫子」のアヤノには……うおおおおっ!?』

「悪いけれど、悠長に囲まれてあげるほど暇ではないの」

 

 それなりの実力者だったらしいガンダムシュピーゲルがあっさりと撃破されたことでにわかに動揺していた敵軍の隙をつくように、指令を飛ばしていたホズラーⅡと、その護衛についていたガンダム試作二号機をアヤノが即座に天誅する。

 天誅の「て」の字を言い終わる前には身体が自動で反応していなければいけない。

 まことしやかにそんな噂が囁かれている魔境、「幕末」で鍛えたその太刀筋は、ガンダムメタバースにおいてもまた恐怖の象徴として顕現していた。

 

『野良はこれだから使えねぇ……いくぞ! 我ら傭兵連合「リベレーター」の力を見せるときだ!』

『応!』

 

 ロービジカラーに彩色されたガンダムアストレイブルーフレームセカンドLが、なぜかわざわざクルクルと一回転し、シュピン、と気取ったポーズで配下の機体に指示を出す。

 

 その仕草こそ珍妙なものだったが、彼がこのメタバースでそこそこ名の通っている中堅クラスの傭兵をかき集めただけあって、統率された動きでバビやブースターザクウォーリアといった機体群は野良プレイヤーを盾に対空砲火を潜り抜け、「GHC」の前衛艦隊に到達していた。

 

 しかし、ここで怯まないのが「GHC」だ。

 戦列を決して崩すことなく、改クラップ級巡洋艦を護衛とし、アガメムノン級「ビスマルク」を中心とした前衛艦隊は密度の高い対空砲火で傭兵連合を牽制し、その足を止めさせる。

 

「ここを抜かれれば提督……いや、全社の笑い者だ! 各艦、各機奮戦せよ! 前衛艦隊として、なんとしても本隊と『歌姫の騎士団』をレクイエムに送り届ける!」

「イエス・マム! アイ・マム!」

「各員聞いたな! 迎撃機を降ろせ!」

 

 その言葉を合図とし、戦闘空母の飛行甲板に待機していた「GHC」カラーのウィンダムが一斉に発艦、爆撃を図ろうと突っ込んできたザクマインレイヤーの群れにビームライフルを連射し、破壊していく。

 パイロットやクルーの練度でいえば、「GHC」前衛艦隊も傭兵連合「リベレーター」もそう大きくは変わらない。

 だが、決定的な差がそこにあるとしたら、それは、傭兵という存在はどこまでいっても「個」を優先するのが信条だというところだろう。

 

『どうした、爆撃の手がぬるいぞ、怖気付いたのか!?』

『うるさい、これ以上やってられるか! 俺は前金だけ受け取って帰らせて……ぐわああああ!』

『ええい、腑抜け共が! もういい、多少早いがギミックを使わせてもらうぞ!』

 

 ブルーフレームセカンドLを操るプレイヤーであり、「リベレーター」を束ねる男、ムラサメ・ケイは機体のコンソールを操作し、「爆撃支援」のコマンドを躊躇いなく実行した。

 それは基本的に不利なファウンデーション側に用意されたステージギミックの一つであり、そして。

 周囲の空間に突如として出現したファウンデーションの無人機、ディン-Rが、全身のミサイルポッドやハンドミサイルをぶちまけながら、「ビスマルク」と前衛部隊の直上に急降下する。乱れ咲く連爆の華によって、「GHC」は体勢を崩してしまう。

 

「敵機直上!」

「撃ち落とせ!」

「無理です! 間に合いません!」

「無理でもなんでもやれ! ここで本艦を沈めるわけには……!」

 

 突如として出現し、アガメムノン級「ビスマルク」の頭上に迫ったディン-Rの群れが四方八方からミサイルの雨を降らせる。

 副長が艦長の女性へと叫ぶが、突如として文字通りに「無から生えてきた」ディン-Rへの対処が不可能なことは彼女にもわかっていた。

 対空砲火を掻い潜り、ミサイルが「ビスマルク」の直上に迫った、刹那。

 

 後方から飛来した二筋の光条が、その全てを舐めるように、あるいは飲み込むように薙ぎ払う。

 

「腕は悪くないのね、貴方」

「……曲がりなりにも『歌姫の騎士団』に配属されてるからな」

 

 全身を悪魔のような黒と紫に染め、右手にはもはやアンチマテリアルライフルと見紛うほどの長大なビームマシンガンを手にしたストライクフリーダムの改造機、「ケイオスフリーダムガンダム・ゲヘナ」を駆る少女──カミオが、ようやく一仕事終えたとばかりに小さく息をついてトウヤに語りかけた。

 あのミサイルを薙ぎ払ったのは、彼女とトウヤがフルバーストでの援護によるものだ。

 トウヤの愛機であるパラディオンデスティニーガンダムは腰部にビーム砲を、そして背部に二振り備えた対艦刀の柄にも同じくビーム砲としての機能を増設しているため、フリーダムさながらのフルバーストが可能なのである。

 

「やはりとでもいうべきかしら。ディン-Rが突然湧いてくるのは予想できなかったけれど、この戦い、評判通りにファウンデーション側に相当なテコ入れが入っているわね」

「……あんたの言う通りだ、だが」

「だが?」

「……いや、なんでもない。俺たちは陣形を維持しつつ前線部隊の援護に当たろう」

「……そうね、余計な推測は無意味だもの」

 

 今、そこにあることが事実。ただ、結果のみが真実。

 言葉こそなくとも、カミオとトウヤは視線で語り合い、スーパーミネルバ級戦艦「ゲヘナ」の直掩から少しだけラインを上げる。

 だが、トウヤの中でも、カミオの中でも、飲み込んでしまった推測は喉に引っかかった小骨のように違和感を激しく主張していた。

 

「……いくら運営がテコ入れしたといっても、いきなり無からディンが生えてくるか、ミウ?」

「それは……どうなんでしょう。運営側だったら自在にスポーン位置は変えられるでしょうし」

 

 でも、それをやるのかって話ですよね。

 ミウがそう零した通り、このレイドバトルは「よりガンダムSEED FREEDOMの世界観に近づけるため」、事前に仕様変更を行う旨を発表しているのだ。

 それが、いかにファウンデーション側が不人気で不利だからといって、世界観を無視した強制スポーンという形でフォローするだろうか。

 

 違和感を抱いたまま、トウヤは機体のエネルギー残量をチェックする。

 フルバースト一回でもかなりの余裕を残しているが、切り詰められるものは切り詰めるに越したことはない。

 なぜなら、この戦いはまだ前座に過ぎないのだから。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「レイドバトル『ガンダムSEED RAID BATTLE FREEDOM』について語るスレ part.158」

 

1.名無しのアコード

このスレッドは現在開催中のレイドバトルイベント、「ガンダムSEED RAID BATTLE FREEDOM」について語るスレです。機体の構築はビルドスレへ、作品について語りたい方は雑談スレまでお願いします。

 

【ガンダムメタバースまとめwiki】https:〜

【ビルド相談スレ】https:〜

【チームメンバー募集スレ】https:〜

【雑談スレ】https:〜

 

 

 

141.名無しのアコード

早速始まってんじゃん

 

142.名無しのアコード

ワイファウンデーション民、アヤノさんに天誅されて無事死亡

 

143.名無しのアコード

本気出した「GHC」が歌姫の騎士団側にいるの無理だろこれ

 

144.名無しのアコード

野良でどっちに組み分けされるかは事前に希望出せるとはいえAI任せだからなー、こればっかりは仕方ねえよ

 

145.名無しのアコード

ぼっちにはつらいレイドバトルだぜ

 

146.名無しのアコード

そもそもレイドバトルはぼっちで参戦するものじゃないのでは?

 

147.名無しのアコード

>>146

やめろ

 

やめろ

 

148.名無しのアコード

言うて運営直々にテコ入れしますって発言してたからワイはファウンデーションを信じるで

 

149.名無しのアコード

うわー、初っ端からもうめちゃくちゃだよ

 

150.名無しのアコード

ディン生える

 

151.名無しのアコード

本当に生えてくるやつがあるかバカ!!!

 

152.名無しのアコード

世界観とは

 

153.名無しのアコード

いうて「GHC」を本気で倒すならこれぐらいしなきゃ無理やろ……

 

154.名無しのアコード

落ちろ! 落ちたな(慢心)

 

155.名無しのアコード

ファッ!?

 

156.名無しのアコード

あの距離からミサイルぶち抜けるんか……

 

157.名無しのアコード

カミオちゃんカワイイヤッター!

 

 

158.名無しのアコード

メタバースをゼロから駆け上がってきた女だ、面構えが違う

 

159.名無しのアコード

隣の男とデスティニーはなんか見ない顔だな

 

160.名無しのアコード

カミオちゃんもランク戦不参加だし俺らの知らん不参加勢じゃねーの?

 

161.名無しのアコード

不参加勢でこんな恐ろしい芸当やってのけるやつがいるとかメタバースは魔境もいいところやでほんま

 

162.名無しのアコード

というかお前ら戦闘中にどうやって書き込んでんだよ

 

163.名無しのアコード

思考補助システムを使えば多少はね?

 

164.名無しのアコード

正面窓でコンソール見て複窓で掲示板見てる

 

165.名無しのアコード

真面目に戦え

 

166.名無しのアコード

真面目に戦いながら掲示板に書き込んでんだよ

 

167.名無しのアコード

しっかし傭兵連合もよく持ちこたえるもんだな

 

168.名無しのアコード

ムラサメ・ケイのやつが燻ってる上位〜中堅どころの傭兵はかき集めるだけかき集めたとか宣ってたからな

 

169.名無しのアコード

まあその傭兵連中もアヤノさんに辻斬りされてるわけだが……

 

170.名無しのアコード

一桁ランカーやぞ

 

171.名無しのアコード

胸がない以外は欠点のない女だ、面構えが違う

 

172.名無しのアコード

>>171

死んだな(確信)

 

173.名無しのアコード

やめてやれよまな板のことアヤノさんって呼ぶの

 

174.名無しのアコード

そうだぞ! うっすら和服を押し上げるささやかな膨らみがいいんだろうが!

 

175.名無しのアコード

このスレは随分死にたがりが多いみたいだな

 

 

 

◇◆◇

 

 

「『時雨』大破! 戦列を離れます! 『羽黒』、『妙高』轟沈!」

「まだだ、戦線を維持しろ! なんとしても前衛艦隊として持ちこたえるんだ!」

 

 SフィールドからNフィールドへの転送ポイントまでおよそ残り三割といった距離まで地球連合・オーブ連合艦隊は歩を進めていたが、その代償は極めて大きかった。

 旗艦である「ビスマルク」が中破、随伴艦隊も実にその六割を失った状態で、トップランカーや野生の猛者の力を借りてなんとかここまで来れたといった方が適切だろう。

 ファウンデーション軍の前衛部隊として戦う傭兵連合を束ねるムラサメ・ケイも未だ健在、NPDのディン-Rと連携した波状攻撃により、「GHC」の前衛艦隊を執拗に攻撃している。

 

 だが、裏を返せばそれは、未だに「GHC」本隊と「ミレニアム」が無傷であることの証明でもあった。

 敵も深傷を負っていることは確かであり、戦略的に見れば優位はまだ連合・オーブ側にあるといってもいい。

 慢心するつもりは欠片もないが、トウヤは内心でそう分析する。

 

「……この損耗率、そしてゲートまでの距離……そろそろ来るわね」

「……ああ」

「来るって、なにがですか? トウヤ、カミオさん?」

 

 そろそろ出現してもおかしくはないであろう「やつら」の襲来に備えて、二人が微かに身を強張らせていた中、ミウが素っ頓狂な声で問う。

 

「ブラックナイツよ。NPDとはいえ恐らく、相当な強化が入っているはず……」

『そういうことだ、悪りぃな嬢ちゃん!』

「ッ、ムラサメ・ケイ……!」

「……前衛艦隊を抜けてきたのか!?」

 

 ミウがリアクションを示す間もなく、黒煙を噴き上げながらなんとか航行している「ビスマルク」の対空砲火を掻い潜ってきたのであろう、ロービジカラーのブルーフレームセカンドLと、それに追従する、同じくロービジカラーのDIアダガがカミオとトウヤに向けて銃火を放つ。

 いよいよ前衛艦隊の陣形に致命的な穴が空き始めてきたか、と、トウヤが操縦桿を握り締め、ケイと相対しようとしたときだった。

 パラディオンデスティニーとインテグラルを制止するように、ケイオスフリーダムガンダム・ゲヘナが手を翳す。

 

「予定は変更よ、私が残ってこいつらの相手をするわ」

「……ブラックナイツは」

「前衛には『辻斬撫子』が健在。そして貴方もいる。不足材料は?」

「……買い被りすぎだ、カミオさん。おれは……」

『なんだか知らんが余所見は天誅だァ!』

「くっ!」

 

 背後から襲いかかってきたDIアダガをノールックで撃ち抜きつつ、トウヤはカミオからの信頼の重さにぎり、と歯噛みする。

 Eフィールドのアルテミス要塞まで進軍しているのであろう姉と自分は違う。

 なんなら、自分がなぜメタバースのAIに「歌姫の騎士団」を任せられたのかさえ、トウヤにはわかっていない状態だ。

 

「トウヤ、ビスマルクより広域チャンネルで入電です!」

「……繋いでくれ!」

 

 しかし、刻一刻と変化していく状況はそんな葛藤さえも許してくれはしない。

 気を抜けば僚機が撃墜され、一秒前までは言葉を交わしていた相手さえも刹那のうちに電子の藻屑と化すほどに、この「入り口」は地獄の様相を呈している。

 恐らく、「ビスマルク」は。

 

「諸君、こちら『ビスマルク』だ……! 本艦より入電! ブラックナイツ出現! あとを頼みます、提督……!」

 

 とうとうエンジンが限界を迎えたのか、はたまた出現したブラックナイツの手にかかったのか、前線を支え続けてきた「ビスマルク」が轟沈する。

 残存艦はおよそ四隻。比較的被害の少ない軽巡洋艦が三隻に重巡洋艦が中破状態で一隻と前衛艦隊としてはあまりにも心許ない。

 それに対して、アトミラールが下した判断は早かった。

 

「諸君、聞いたね。『ビスマルク』は勇壮に戦い抜いた……その意志を無駄にしないためにも我々本隊はこのまま前進する! 申し訳ないが、前衛を務める諸君にはここで殿をやってもらうことになる。頼んだよ」

「提督は無茶を仰る」

「いつものことだろ」

「全くだ!」

 

 正直なところ、壊滅的な被害を受けている中で、アトミラールの言葉は無茶振りが過ぎる。

 しかし、前衛艦隊も部隊も、そして最前線で暴れ回っている野良のプレイヤーたちも、誰一人として文句など唱えず、むしろ嬉々として前線に飛び込み出す者さえ現れ始めていた。

 統率が取れている本隊はともかく、ついていくことを選んだ野良プレイヤーは興奮が抑えきれなかったのだろう。

 

 様々なガンプラが飛び出していくのを横目に、カミオは左手に持った連結状態の高エネルギービームライフルでケイのブルーフレームセカンドLを牽制する。

 

『ハッ……最近ヴァルガで鳴らしているからどんなもんかと思えばその程度か! 甘いんだよ!』

 

 しかし、それをアーマーシュナイダーで切り払い、ケイはカミオへと肉薄してみせた。

 そして、つま先に仕込まれたアーマーシュナイダーを展開してケイオスフリーダムに蹴りかかっていく。

 だが、その一撃はフェイクだ。

 

 確かにこの男は多少「できる」のかもしれない。自分が最も得意とする愛銃「デストロイア」が不得手なクロスレンジまで飛び込んできて、なおかつ、誘うような仕込みまで織り交ぜてきているのだから。

 カミオはちっ、と小さく舌打ちし、大振りな蹴りをあえて受ける。

 内部フレームをフェイズシフト材ではなく、ガンダム・フレームに換装しているからこそできる荒技だ。

 

 どの道、あえてその一撃を受け入れなければ──踵から伸びる爆導索の餌食になっていたのだから。

 

「ストライクノワールのアンカーランチャーを改造したのね」

『チッ……なんでこいつ、初見で……!』

「だけど貴方はミスを犯した」

 

 そう、蹴りをあえて受けて吹き飛ばされるということが、「距離を離される」ことがなにを意味しているのか、ケイが気づいたときには既に遅かった。

 ヘビービームマシンガン「デストロイア」を構えたケイオスフリーダムは、カミオの意思と共に躊躇いなくその引き金を引き、唸りをあげて光弾を吐き出す。

 しかし、ケイはその攻撃を避けようともせずにほくそ笑んだ。

 

『甘いなァ! こちとらフェムテク装甲に換装してあるんだよォ!』

「そう……なら、受け切れるものか試してみたらいい」

 

 挑発に負けじとカミオも引き金を引く指を離すことなく、フェムテク装甲に換装されたブルーフレームセカンドLに「デストロイア」を放ち続ける。

 その結果は、思わず周囲のダイバーが目を疑うものだった。

 あまりの密度で、それこそ戦艦の対空機銃のように放たれるビームの弾丸に耐えきれなかったフェムテク装甲が徐々に溶解し、セカンドLのコックピットに風穴が開く。

 

『ば、バカなぁ!?』

「逃げるも歯向かうも貴方たちの自由……だけど、向かってくるなら容赦なく叩き潰す」

 

 それがこの機体の意味だから、とカミオは続く言葉を飲み込んで、爆炎を前に「デストロイア」の銃身を優雅に冷却する。

 排出された冷却カートリッジがさながら、手向けの花束のように宙に舞った。

 これほどの逸材がGBNからの移行組でないことが恐ろしい──出現したブラックナイツの攻撃を掻い潜りつつ、Nフィールドへの転送ゲート近くまで到達していたトウヤとミウは、思わず目を見開く。

 

「……噂には聞いてたが、凄まじいな」

「でも、トウヤもあの人には勝てましたよね?」

「……わからない。確かなのは結果だけだ」

『なに余所見してんの? 今のうちに殺しちゃうよぉ!』

 

 NPDとは思えないほどの反応速度で肉薄する、リデラードのブラックナイトスコードルドラが、パラディオンデスティニーの横っ腹に対艦刀の一撃を叩き込まんとしていた。

 

 早い、と思うや否や、トウヤはその一撃をビームサーベルによるカウンターで受け流し、リデラード機のコックピットに強烈な蹴りからのコンビネーションで、腰部高インパルス砲「ケルベロスⅡ」の一撃をお見舞いする。

 

 いとも容易く、ブラックナイツの一人を処理してみせたトウヤだが、もし彼が並の反射神経の持ち主であれば逆に容易く撃墜されていたであろうことは、周囲に漂うディランザやガンダム・エアリアルの残骸が物語っていた。

 

『きゃあああああっ!!!』

「……全く、息つく暇もない……!」

 

 だが、ブラックナイトスコードは一機落とせた。それを確認すると、変形したインテグラルに飛び乗る形で、トウヤはNフィールドへと一足先に飛び込んだ。

 残るブラックナイトスコード──リューのそれも、アヤノとユーナの連携により、満身創痍に陥っている。

 

『ば、バカな! リデラードが、この私が!』

「……本気といっても所詮はNPDね、歯応えはあったけれど」

「それじゃあアヤノさん! 一気に決めちゃおう!」

「ええ、ユーナ!」

 

 アヤノはユーナのアリスバーニングブルームに「無銘天照」を手渡すと、自身もまた一刀流の構えでかつての仲間──カグヤの愛刀だった「無銘朧月」を翳して、ブラックナイトスコードルドラへと突撃する。

 

「バーニング!」

「ライト!」

『アサルト!』

 

 断末魔の悲鳴を上げさせることすら許さずに、二振りの刃はフェムテク装甲を貫通し、リュー機のコックピットへと突き立てられた。

 爆風を背に、アリスバーニングブルームとクロスボーンXQは残るブラックナイトスコードルドラ、二機を睨みつける。

 

「アトミラールさん! 今ですよ!」

「感謝するよユーナくん! 今だ! 最大戦速! 総員衝撃に備えよ!」

 

 そして突破口が切り開かれたことでできた敵陣の綻びを、ユーナに言われるまでもなくアトミラールが見逃すはずもなかった。

 既にトウヤたちをはじめとした何機かの遊撃隊として配置されたガンプラはNフィールドに突入しているが、本隊の直掩や艦隊はまだだ。

 密かに搭載していたゲシュ=タム機関と波動機関が唸りを上げて、スーパーミネルバ級戦艦「ゲヘナ」を旗艦とする「GHC」の連合艦隊は、決戦のNフィールドへと、戦艦とは思えない速度で突入していった。




幕開け

【Tips】

【アリム(原案:「X2愛好家」様)】
・「戦争の天才」「戦争屋」など、様々な異名で呼ばれる凄腕の傭兵プレイヤー。GBN時代からの古株であり、様々な専用機を使い分けているが、今回は青いアルケーガンダムのカスタム機である「ゲニーアルケー」のヤークト装備で参戦している。

【カミオ(原案:「X2愛好家」様)】
・メタバースから参戦し、メキメキと頭角を表していった凄腕の少女。本当はめんどくさがりだが、自分でやった方が早いからと何事も自分で抱え込んでしまう悪い癖がある。トウヤと同様にランク戦には参加していないが、ヴァルガでその姿を見かけることが多いらしい。愛機は「ケイオスフリーダムガンダム・ゲヘナ」。
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