GBN:アラカルトダイバーズ   作:守次 奏

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アトミック初投稿です。


Phase-03 「策謀のEフィールド」

「やれやれ全く、提督殿も人使いが荒い……」

 

 Eフィールド、アルテミス要塞攻略のための総旗艦としての役割を担うアークエンジェル級二番艦「ドミニオン」のブリッジで、ムルタ・アズラエルそっくりなアバターをした青年……「村田アズラエル」は小さく溜息をつく。

 

 原作とは異なり、レイドバトル仕様に調整されているアルテミス要塞付近の防備はガチガチに固められていて、その上でネームドNPDとしてシュラ・サーペンタインの出現が予想される以上、その攻略は一筋縄ではいかないだろう。

 

 ファウンデーション軍の総旗艦である、十二連装陽電子砲などというアホな武装を持った戦艦と対峙しなくて済むだけマシではあるが、と、村田は戦局を俯瞰しつつコーヒーに口をつける。

 

 Eフィールドはアルテミス要塞をファウンデーションが乗っ取っているだけあって、敵チームに分けられているガンプラにもガンダムタイプやGN-XⅣなどが多く散見される。

 

 アルテミス要塞の制圧と、中で囚われているNPDのラクス・クラインを救助すること。それこそが村田たちに課されたミッションであり、原作ではアスラン・ザラという無法の男がなんとかしてくれていたが、レイドバトルではそうもいかない。

 

 ラクスを救助するメリットは一つ。

 それは、「いつ発射されるかわからないレクイエムの発射タイミングを予告してくれる」ことだ。

 敗北条件に「レクイエムの発射」と書いてあるのはいいのだが、どんな条件でそれが満たされるのかがわかっていない以上、そのリスクを捨て置く──つまり、レイドバトルにおいてはお助けNPDでしかないラクスを見捨てるというチョイスは、リアルでは森林保護団体をやっているビジネスマン、村田アズラエルの中には存在しなかった。

 

 だからこそ、このミッションも熾烈な戦いになることが予想されるのは自明の理。

 ならば、団結し、協力し合ってアルテミス要塞を陥落させることこそが肝要なのだが。

 

「ヒャッハー! 殺せー!」

「逃げるファウンデーションはいいファウンデーションだ! 逃げないファウンデーションはよく訓練されたファウンデーションだ! 本当に戦場は地獄だぜ、フゥハハハハー!」

「なにも考えるな、目に映ったやつから天誅していきゃそれでいいんだよ」

「君ら要塞を落とす気あるんですかねぇ!?」

 

 村田が向かった戦場は、なんの因果かモヒカンとチンパン、そしてウォーモンガーのヴァルガ民で固まった地獄の様相を呈していた。

 それが味方だけであるなら頭痛を覚える程度で済んだものの、最悪なのは、敵にも趣味の悪いモヒカンカスタムが跳梁跋扈していることだ。

 全身にリベットやらスパイクを埋め込んだり、鎖を巻いていたりするザクウォーリアやドムトルーパーが巨大なヒートナタを振り回せば、前衛として前に出させた改クラップ級が両断され、ならばと「GHC」が得意とするスリーマンセル戦術で対抗しようにも、それ以上の数で囲んで殺しにかかってくる。

 

「ああもう、こんな地獄だと知ってりゃあ僕は引き受けてませんでしたよ! モビルスーツ隊は散開してください! ヴァルガの蛮族共に常識が通用するとは思わないことです、いいですね!? 空母部隊は第二次攻撃隊を発艦! アルテミス要塞のバリアを破壊するんです! やれますよねぇ!?」

 

 半ばヤケクソになった村田アズラエルをクルーたちは可哀想なものを見るような目で見つめる他になかった。

 しかし、そこは訓練された「GHC」の構成員だ。彼の命令には忠実に、航宙空母に待機させていたリ・ガズィカスタムを隊長機とし、ムラサメ改を随伴させて発艦させる。

 Eフィールドでの戦いが始まって以来、何度かアルテミス要塞への直接攻撃は試みていたが、敵味方がここまで入り乱れている戦場ではドミニオンのローエングリンは使えず、かといって、要塞を叩こうと思えば。

 

『あっはははは! 無理だよ! ここは通させないんだから!』

「う、うわああああっ!」

「隊長ー!」

「なんてこった、あいつ、空間ごと切り裂いてやがる! 避けようがねえ!」

『名付けて次元断! さあ、戦いたい人はどんどんかかってきて!』

 

 ストライクEのカスタムモデルと思しき金色の機体が、容赦することなく発艦した攻撃隊を、彼らが断末魔として残した通り、「そこにいる空間」ごと両断し、要塞に近づくことを許さない。

 心の底から楽しそうに笑っている、金髪をショートボブに切り揃えてカチューシャを頭に乗せた少女、プレイヤーネーム「Sola」は、いかにも年頃の少女といった風情だ。

 しかし、彼女には「敵と味方の区別がついていない」。村田はそう見立てていた。

 

 現に、あのストライクE──「ストライクガンダム・ドレイク・スケイル」は、弾き飛ばされて近づいてきたファウンデーション勢力のグフイグナイテッドを、羽虫でも振り払うようにそのレベルタブレードで切り裂いている。

 

 あれは化物だ。そうでなければ怪物だ。

 Solaと知己であるからこそ、村田は歯噛みする。

 アレをどうにかしろというだけでも厄介だというのに、更に最悪なのは。

 

「『ネルソン』、『サウスダコタ』轟沈! 完全に死角からの狙撃です!」

「ちいっ……! 化物だけじゃあなく狙撃手まで潜んでいるとか冗談じゃありませんよ! やむを得ません、少しばかり予定より早いですが、彼女たちを戦線に投入します!」

 

 それしかないとばかりにクルーたちは頷いて、オペレーターの女性が発信要請を出す。

 ドミニオンのカタパルトが展開するのを見遣りながら、村田は人差し指で肘掛けを叩く。

 ファウンデーション側の戦い方は、妙だ。

 

 やろうと思えばあのSolaを解き放ったり、見えざる魔弾でドミニオンを直接狙うこともできる──つまるところ、ファウンデーション側が一気に片をつけてしまうことは理論上、可能なのだ。

 だというのに、こちらの作戦をわざわざ一手ずつ丁寧に潰していくような迂遠な戦い方をしているのは、村田としては妙だとしか感じられなかった。

 切り札というのは切りどきを見誤ればただの負債になる。そういう意味では、地球連合・オーブ・歌姫の騎士団三勢力を潰したいファウンデーション・ザフト連合が初手からこちらを潰しにかかってこないのは、端的にいってしまえば、致命的に「間違って」いる。

 

「警戒と対空監視を厳にしておいてくださいね! 各艦は密集せずに回避運動! 僕のことは気にせず己の生存とアルテミス要塞の攻略に注力してくださいよォ!」

 

 違和感の正体もわからないまま、深い霧か、そうでなければ猛吹雪の中に迷い込んだような感覚で、村田は必死に指令を飛ばしていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「そうそう、必死になるもんさ」

 

 アルテミス要塞の裏側に潜んでいた男──コーチは、「試作型ハイザックハザード」のコックピットで一人ほくそ笑んでいた。

 次に投入されるのはアルテミス要塞での対人戦を考慮して連合・オーブ側が温存していた「ブラックバンガード」の四人。

 次に、異次元の狙撃がどこから飛んできているかを探るためにミラージュコロイドでその身を隠したムラサメの派生機──「オオツキガタ」の改造機が戦列を離れてこっちまで接近させる。

 普通は想像だにしない「アルテミス要塞の裏側」まで想定して攻略しようとするのは村田の指揮官としての有能さゆえだろう。だからこそわかりやすい、そして、そんなことなど関係なく、コーチには「わかって」しまう。

 

「なぁオイ、これ、俺ら完全に悪役じゃねえか?」

 

 赤く塗られたもう一機のハイザックハザード試作型に搭乗している男──オズマが、コーチのえげつない戦術にドン引きしながらそう問いかける。

 

「もちろん、ファウンデーションにつくと決めたときからこうなるのはわかってただろ?」

「お前が勝手に決めたせいだがな! ナナカにバレたら死ぬまで追いかけ回されんだぞこちとら!」

「いいじゃないか、素敵だぜ? あのお嬢さんなりの愛ってやつさ」

 

 オズマからの苦言をさらりと流して、コーチは再び、今度は艦載機の全てを発艦させたことで置物と化した航宙空母に狙いを定めて、アグニ砲を構える。

 

「リフレクターの調整頼むぜ、オズマ?」

「これ俺いらねえだろ……ったくよ、こんなことならレグルス持ってくるべきだったぜ」

 

 赤いハイザックハザード……ハイザックハザード試作型二号機が背負っている「リフレクトストライカー」から射出された、ミラージュコロイド搭載型のリフレクタービットが、コーチから指示された通りの座標に展開する。

 

「ああ──サヨウナラ。哀れな下働き諸君」

 

 そして、なんの面白みもなく引き金を引けば、最初から「わかっていた」通りにアグニ砲のビームをリフレクタービットが反射して、航宙空母のエンジンブロックを寸分の狂いもなく射抜く。

 こんな迂遠な戦術をとっているのはある種アトミラールに対する皮肉のようなところが、というよりは皮肉そのものだった。

 だが、彼がいないことは少々コーチにとっては退屈だった。いや、そもそもこのレイドバトルそのものが退屈だが──

 

 そう思った、そのときだった。

 コーチの背筋に、ぞくりと粟立つような快楽に似た感覚が走る。

 なるほど、わかった。これはある種の運命だ。

 

「なあ、オズマ」

「なんだよ?」

「少しは、退屈しなくて済むようになるぜ?」

「……あー、そうだな。そんな予感がしてきたぜ畜生!」

 

 二人にしかわからない言葉で通じ合ったコーチは愉快そうに笑い、オズマはがくりと肩を落として、こんなことなら本当にレグルスを持ってくるべきだったと頭を抱えた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「レイドバトル『ガンダムSEED RAID BATTLE FREEDOM』について語るスレ part.178」

 

1.名無しのアコード

このスレッドは現在開催中のレイドバトルイベント、「ガンダムSEED RAID BATTLE FREEDOM」について語るスレです。機体の構築はビルドスレへ、作品について語りたい方は雑談スレまでお願いします。

 

【ガンダムメタバースまとめwiki】https:〜

【ビルド相談スレ】https:〜

【チームメンバー募集スレ】https:〜

【雑談スレ】https:〜

 

 

 

12.名無しのアコード

(スレの消費が)はえーよホセ

 

13.名無しのアコード

そりゃ実況スレも兼ねてるし多少はね?

 

14.名無しのアコード

うわー、Sフィールド抜かれたかー!

 

15.名無しのアコード

WとNに今んところは動きがねーのは不気味だな

 

16.名無しのアコード

こちらEフィールド、助けてくれ

 

17.名無しのアコード

なにがあったし

 

18.名無しのアコード

ヴァルガ民が敵にも味方にもわんさかいるせいで敵味方の区別がつかねえ連中で大乱戦になってんだよ!!!!!

 

19.名無しのアコード

 

20.名無しのアコード

あいつらチンパンだから人間の違いがわからないんだ、許してやってくれ

 

21.名無しのアコード

チンパンジーは凶暴な生き物定期

 

22.名無しのアコード

ヴァルガ民が敵も味方も関係なく暴れてるから前線は大混乱、おまけにどっから撃ってくるかわからん狙撃まで飛んでくるから堪ったもんじゃねえんだが

 

23.名無しのアコード

味方同士のFFで更にギスってるからなー

 

24.名無しのアコード

故意じゃないとか故意でやったとかで揉めて結局野良の連中は陣営関係なく殴り合ってるからな、「GHC」は要塞落とそうと頑張ってるけどこりゃ無理だろ

 

25.名無しのアコード

ラクスの救出って勝利条件だっけ?

 

26.名無しのアコード

いや実はそうでもない、アルテミス要塞さえ破壊できればいい

 

27.名無しのアコード

なら「A・BB!」の連中呼んできたらええやろ、もう敵も味方も関係ないしはよう核まみれになろうや

 

28.名無しのアコード

レグフィナの姿が見えないの不気味すぎるんだよなあ……あいつファウンデーションに配置されたの? 連合に配置されたの? どっちに配置されてても不安しかねえんだが?

 

29.名無しのアコード

わからん

 

30.名無しのアコード

許せねえ

 

31.名無しのアコード

核なんて撃ったら村田アズラエルがキレるだろ!

 

32.名無しのアコード

地上じゃないからセーフ

 

33.名無しのアコード

その点地上で自国の領土に核を三発ぶっ放してたファウンデーションは格が違った、核だけに

 

34.名無しのアコード

は?

 

35.名無しのアコード

ほ?

 

36.名無しのアコード

つまんねーこと言うなよ!

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「前線は混乱していると聞いたが、ここまでとは……!」

 

 錯乱して襲いかかってきた「GHC」のウィンダムを苦々しい表情で撃墜しながら、サリエ──カギウ・サエリは新たなる愛機である「ブラックナイトバンガード・ギロス」でアルテミス要塞へと進撃する。

 サリエの後ろに付き従う形で、彼女と同じくブラックナイトスコードをベースに、クロスボーン・バンガード機の意匠を組み込んだ三機の「イルス」、「ゼラ」、「ギナ」が、味方も敵も関係なく襲いかかってくるガンプラの群れを薙ぎ払う。

 

「……結局こうなるのね」

 

 モヒカンカスタム・ディランザが、キザシこと、シバウラ・ミキの駆る「ゼラ」の放ったヴェスバーによって正面装甲ごと撃ち抜かれて爆散する。

 

「つらいですねぇ、苦しいですね……味方から撃たれる……過去はいつだって私たちを追いかけてくるんですね……」

 

 レジェンドガンダムのバックパックをそのままシールドに転用したことで使用可能になったドラグーンシステムで、モヒカンやチンパン、そして錯乱した味方を一網打尽にしながら、「イルス」を駆るヒョウリことヨリがそう嘆いた。

 

「だけど、向き合わないとわたしたちは前に進めない。行こう」

 

 そして、サリエたちに守られていたリブラこと、サジョウ・イツコの「ギナ」は美しい銀色の装甲に傷一つ負うことなく、味方を鼓舞する。

 元々、イツコたちとこのメタバースがメタバースになる前、つまりGBNにはちょっとした──というには少しばかり複雑な因縁がある。

 だから味方にも狙われているのだと彼女たちは勘違いしているのだが、あくまでも戦場がしっちゃかめっちゃかになっているだけだというのは、彼女たちの知るところではなかった。

 

「全ては虚しく、徒労である……か、だが、それでも私は足掻くと決めた! 止められるものなら止めてみろ!」

 

 海賊旗を掲げるかのようにショットランサーを天高く突き上げ、サリエは叫ぶ。

 そしてそこには、ミラージュコロイドを使うことで頭上から彼女を天誅しようとしていたネブラブリッツが突き刺さっていた。

 当然これは偶然などではない。戦士として研ぎ澄まされたサリエの感覚が成した超越技巧の片鱗とでも呼ぶべきものだ。

 

「うわぁん! どうせ過去が追いかけてくるなら……仕方ないですよね……!」

「……そう、仕方がない」

「でも、いつか……」

 

 勘違いをしたまま高度な連携を見せる「ブラックスクワッド」の四人に圧倒された敵も味方もなくなったプレイヤーたちは、次々と屍の山を築いていく。

 

『クソッ、なんだこいつら!?』

『ブラックナイトスコード……ファウンデーションだろ!? 殺せ! もういい、ファウンデーションじゃなくても殺せ!』

『ヴァルガ民には敵も味方も関係ねえ! 目の前のやつはポイントボックスだ!』

 

 さっきまで野良プレイヤーのガンダム・バルバトスルプスと刃を交えていた「GHC」のウィンダムが、そしてそれを漁夫の利天誅しようとしていたホワイトライダーが、サリエの「ギロス」を狙ってそれぞれの得物を振りかぶった、刹那。

 

『な、っ……!?』

『エネルギーが、吸われ……!?』

『クソッ、動けホワイトライダー! なぜ動かん!』

「マガノイクタチ……サっちゃんたちには手出しさせない。もう守られてばかりの私じゃない」

 

 リブラの「ギナ」が前に躍り出て、バックパックに搭載していた「マガノイクタチ」で襲いかかってきた機体のエネルギーを吸い尽くした。

 そして、リブラは小悪魔のような笑みを口元に浮かべ、そのまま三機を放置してアルテミス要塞へと直進していく。

 案の定とでもいうべきかエネルギー切れを起こした三機は、モヒカンカスタムの餌食と化して宇宙の藻屑と成り果てたのであった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「さて……来たかな?」

「来やがったみてえだな……!」

 

 オズマはリフレクトストライカーをパージして、付近のデブリに偽装していた武器庫からバルバトスルプスのソードメイスを取り出す。

 コーチもまた、バスターストライカーをパージして、武器庫に隠していた「本気の装備」をその身に纏う。

 

『ほう、もうこのアメイジングアッガイの存在に気づくとは……君たちもまた、並々ならぬファイターということか!』

 

 宇宙の漆黒に溶け込んでいたその気配は、やがて隠れ潜むことはもはや無用だとばかりに輪郭を現していく。

 アッガイにアメイジングブースターを無理やり背負わせたようなその機体は一見すると珍妙なことこの上なかったが、それを駆る男が只者ではないことを、コーチもオズマもわかっていた。

 三代目メイジン・カワグチ。レギュレーションによってレイドバトルへの出禁を言い渡されているのにもかかわらず、今回また彼は総勢一名で参陣していたのだ。

 

「ハハッ、こいつはいい……試運転のつもりだったが、思ったよりいい土産になりそうだ!」

「畜生、メイジンと戦うんならマジでレグルス持ってくるべきだった! 色被りの恨みも兼ねてなぁ!」

 

 コーチが放った対艦ライフルを華麗な身のこなしで回避したアメイジングアッガイが、アイアンネイルを展開してオズマのハイザックハザード試作二号機へと襲いかかる。

 しかし、オズマもそれはわかっていた。

 超越直感。常人を超える勘の良さによって、振りかぶったソードメイスがアイアンネイルと激突する。

 

『色被りなど、ビルダーとしてはままあることだ! 現実を受け入れ、それでも自分の味だからと言い続け、前に進んでいきたまえ!』

「いきなり正論で殴ってくるんじゃねえよ!!!!!」

「ま、確かに……よりにもよってメイジンと被るのは気まずいよなぁ。ハハッ」

「お前はどっちの味方なんだよ!!!!!」

 

 鼻で笑うコーチにも怒りを燃やしつつ、目にも止まらない速度で──それこそ、ハイザックハザードの関節が悲鳴を上げる勢いで、オズマはソードメイスを片手剣のように軽々と振るう。

 しかし、伊達にメイジンも出禁を食らっているわけではない。その全てをアイアンネイルで受け流し、時にはロケット砲による一撃も交えることで、猛るオズマを寄せ付けず、間隙を撃ち抜こうとするコーチをも牽制してみせる。

 わかっていた。コーチには、その全てがわかっていたが、世の中には「わかっていても対処ができない」ことがあるから面白いのだ。

 

「だがそろそろ逝っちまいな!」

 

 ヅダの対艦ライフルと合体したアグニ砲を、オズマが巻き込まれることも承知でコーチは撃ち放った。

 

「オイてめぇ、わかっててぶっ放しやがったな!!!!!」

『ふっ……私も舐められたものだ!』

「あーあ、今の避けちまうか……ま、それもわかってたけどな」

 

 オズマが持ち前の直感で回避することも、メイジンが射線を読んでいることも、全てコーチにはわかっている。

 だからこそだ。

 わかっていても避けられるならどうすればいいのか? その答えは単純、「わかっていても避けられない次の手」を用意すること、ただそれだけだ。

 

『なんとッ!?』

 

 回避運動を取ったアメイジングアッガイが対比したところにあらかじめ敷き詰めていた、ミラージュコロイドで隠していた機雷が、機体と接触したことで盛大に爆発する。

 いかにあのアメイジングアッガイがソードメイスの乱撃に耐えられるほど頑丈に設計されていたとしても、あれだけの爆薬が炸裂すれば、耐えられるはずもない。

 そう──「アメイジングアッガイ」は。

 

 黒煙の中で、妖しくその単眼に光が灯るのを目撃したオズマは絶句し、コーチは歓喜した。

 

『素晴らしい……素晴らしいぞ! よもや私に、この姿を晒させるとは!』

「ザクアメイジング……いよいよ本気の本気ってわけかい、メイジン?」

『そうとも! このガンプラの……ザクアメイジングIIの全力で君たちの全力を引き出し、それに打ち勝ってみようとも!』

 

 かつての伝説が今目の前で蘇り、自分と対峙している。その状況に興奮を覚える程度には、コーチもまたメイジンの評する通り、「ファイター」だった。

 

「いやアンタ……どう考えてもアッガイ被ってた意味ねえだろ!?」

『ふっ……遊び心と言ってほしいものだな』

「アスランごっこしたかっただけだろうが! 本当に大人気ねえなアンタ!」

 

 ヒートナタを振り翳し、背後に回ってきたザクアメイジングを迎撃しながら、オズマは腹の底からそう叫んだ。叫ばずにはいられなかったのだ。

 

 

◇◆◇

 

 

 

『あっはははは! あっはははははは!!!』

「化け物め……!」

 

 いよいよ乱戦を抜けてアルテミス要塞へと肉薄していたサリエたちを待ち受けていたのは、敵も味方もその剣のサビにしてきたことで、どこか色気さえ感じさせる上気した頬で、狂った哄笑を上げるSolaとドレイク・スケイルだった。

 

『楽しい! 戦うってやっぱり素敵なことだよね! あなたたちも、わたしをいっぱい楽しませてね!』

「まるで人形遊びでもするように……!」

『? だってそうでしょ? みーんな、みんな。弱いから、わたしが守ってあげなきゃいけないんだもん!』

「くっ……ヒョウリはここに残って援護を頼む! リブラとキザシはアルテミス要塞へ!」

 

 支離滅裂なことを叫びながら、瞳孔を開いて切り掛かってくるSolaの斬撃を、手首を弾く形で受け流しながらサリエは叫ぶ。

 できることなら四人で突入したかったのだが、そんなことを言っている暇も余裕もなにもない。

 今目の前にいる相手は本物の化け物だ。幸いなことに──そして理解できないことに、アルテミス要塞を守ることには頓着していないようだが。

 

「このままわたしたちは惨殺されちゃうんですねぇ……うわぁん! そうなるならいっそのことちょっとは抵抗した方がマシです!」

『みんな、みーんな! わたしが! あっはははは! 守ってあげる!』

 

 ヒョウリの「イルス」が放ったドラグーンのビームを空間ごと切り裂いて、Solaは哄笑する。

 なにがここまで彼女を歪ませたのか。

 純粋無垢なままに殺戮を楽しむような、さながら子供が昆虫の手足を無邪気に引きちぎるようなその態度に、サエリはただ恐怖を感じていた。

 

 だが、それを表に出せば負ける。

 一秒でも気を抜けば、あの空間ごと断ち切る斬撃で撃墜されかねない。

 サエリもまた相当な修羅場を潜ってきたという自覚はあったが、目の前の相手は次元が違う。どんな育ち方をしたら、こんなに「真っ直ぐに歪んで」強くなるのか。

 

『あはははははは! 一瞬でもわたしから目を逸らすとか、やっぱりわたし以外の人って、カズトモとお嬢様以外は脳みそちっちゃいんだね!』

「くっ……!」

 

 サリエは歯噛みする。

 Solaが無邪気に煽ったその言葉通り、まさしく一瞬の隙が致命となって「ギロス」の右腕が空間ごと断ち切られ、宇宙の藻屑と消えていく。

 ヒョウリがその後隙を取ろうと構えた狙撃銃もまた、二振りめの刃によって断ち切られた。

 

『あは、あはははは! 大丈夫! ちゃーんとみんなはわたしが守ってあげるから!』

「うわぁん! 支離滅裂すぎて意味がわからないです……! 対話ができないのはつらいですね……苦しいですね……人は暴力に縋るしかないのでしょうか……」

「……トラウマかなにかか、いや……どうでもいい。だが既に勝ったつもりでいるのは、こちらとしては屈辱だ……!」

 

 残った左腕に保持していたアサルトライフルを連射して、サリエはなお諦めることなくSolaのドレイク・スケイルをレティクルに捉える。

 しかし、その機動力は異常の一言に尽きた。

 ヴォアチュール・リュミエールを搭載している形跡すらないのに残像を生み出す──つまるところ、装甲の表面が剥離するほどの熱と機動力が「M.E.P.E.」現象を発生させ、照準は残像を本体と誤認してしまう。

 

『あっはははは! あなたのこの瞬間を守ってあげる! だからね、終わらせてあげる!』

「あっ……もうダメですね、おしまいです……わたし、先に逝って──」

 

 Solaの振りかぶったレベルタブレードが、武装を失ったヒョウリの「イルス」を真っ二つにしようとした、正にその刹那だった。

 

「ヒョウリ……っ!?」

 

 目を灼かれるほどに眩ゆい閃光が走る。

 なにがあったのかとサリエは目を疑うが、ちかちかと残光が瞬いているせいでよく見えない。

 歴戦のサリエをして手を止めさせるほどの閃光は、Solaの目をもまた眩ませていた。

 

『なになに? ちょっと、眩しいんですけど!』

「ちょっと出力調整ミスったか……ごめんナツキ。眩しかった?」

「あっはは! いいんじゃないハル? 効いてるみたいだしさ」

 

 もう死んだかと、そう思ってきつく目を瞑っていたリョーヒが目を見開くと、そこに佇んでいたのは、さながら比翼の鳥だった。

 アウトフレームを改造したのであろう、近接戦仕様のウィザードを背負ったガンダムと、アストレイにデスティニーの翼を背負わせたようなガンダム。

 ぴたりと息を合わせてその二機は抜刀し、一瞬という致命的な隙を晒したSolaのドレイク・スケイルへと斬りかかっていく。

 

『……ッ!』

「さすが『ナツキ』だね」

「いやいや、『ハル』には及びませんって」

 

 お互いの名前を新造した刀に付け合うことで改めて誓いの印とした──「春夏秋冬」の「ハル」と「ナツキ」の一撃は、Solaが咄嗟に突き出していたレベルタブレードをへし折っていた。

 そして、Solaはぞわりと自分の背筋を駆け抜けていく嫌な感じを覚えていた。

 屈辱。それはリュウザキの辞書にはない言葉。勝利し続ける、常に上で居続けることこそが使命だった自分の、知らない感覚。

 

『……はは、冗談キツいなぁ……』

「そうかな? あたしにはキミがちょーっと目の前の現実受け入れられてないように見えるけど」

「やめなよナツキ、事実だけど可哀想だから」

「ハルの方がよっぽどひどいって、それ!」

 

 夫婦漫才を繰り広げながらも、息の合った息もつかせないコンビネーションで、ハルとナツキはすっかり消沈したSolaを追い詰めていく。

 しかし、Solaは意趣返しのようにハルの機体、「ガンダムフォーカス」の手首を掴むと、ナツキの「ガンダムアストレイ・オーバースカイ」に投げつける形でぶつけ返した。

 ──そして。

 

『うん、わかった。殺すね』

 

 ぷつり、となにかの糸が切れたかのように呟くと、先ほどまでは哄笑を上げていたのが信じられない、能面の様な無表情となって、Solaはそう呟く。

 その溢れ出す殺意に呼応するかのように、金色だったVPS装甲が青空を、その「涯て」を思わせる蒼に染まっていく。

 折れたレベルタブレードからは流出するエネルギーが稲妻の刀身を形成する。

 

 さながら、それは鬼神の降臨だった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……まさか、この装備がこんなところで役に立つなんてね」

 

 キザシは、愛機の「ゼラ」が手にしていた小型陽電子ランチャーで「アルテミスの傘」に風穴を開けることで、リブラと共に要塞内部に侵入することに成功していた。

 元々はスクワッドの砲手として、自分の「役割」を補強するためだけに作った装備だったが、それがなんの因果かNPDとはいえ人助けのために使えるというのは皮肉なものだ。

 そう自嘲しつつも、リブラと共に要塞内部で停留していたファウンデーションの戦艦をきっちりと破壊してから、キザシはロケットランチャーを担いで愛機を降りる。

 

「姫、こっち」

「了解」

 

 アサルトライフルを持ったリブラと共に、ファウンデーション軍のNPDを薙ぎ倒し、時にはロケットランチャーで爆殺する形で、キザシは記憶の中にあるラクスの部屋へと最短ルートで到達していた。

 

「まあ、貴女たちは……?」

「説明している時間が惜しい、早くこっちにきて」

 

 原作では確か、イングリッドとキラが愛と役割についての問答を交わすのだったか。

 愛。役割。

 前者は理解できなくとも、後者はキザシたちにとって非常に身近なところにあった。貧すれば鈍するというように、なにも持たず、世界に放り出されたのが自分たちだったのだから。

 

 ──でも。

 

 キザシは目を伏せて、穏やかに微笑みながら料理とガンプラ作りを教えてくれた恩人の顔を脳裏に思い浮かべる。

 彼と出会わなければ、自分たちはきっとどこかでのたれ死んでいた。それも悪くないかと、理不尽を疑うことすらせずに。

 NPDのラクスを米俵のように担いで、キザシはリブラの案内で侵入口へと引き返していく。

 

 思ったよりも生身での戦いが少なかったのは、これが「そういう」趣旨のイベントではないからだろう。

 

「とりあえずはミッションコンプリート、リーダーとリョーヒのところに帰還するよ、姫」

「わかった」

 

 NPDのラクスを補助シートに乗せて、キザシが「ゼラ」を起動させたその瞬間だった。

 轟音と共にアルテミス要塞の壁が砕けて、一機のモビルスーツがその姿を現す。

 それは、何の因果か、自分たちがミキシングの素体とした。

 

『おのれ……だがこれ以上はやらせんぞ!』

「シュラ・サーペンタイン……」

「わたしが前に立つよ」

「……お願い、姫」

 

 NPDとはいえ相当高レベルに仕上げられたブラックナイトスコードシヴァを相手取るには、砲撃戦用の「ゼラ」では厳しいところがある。

 もしもこの戦いに勝ち筋があるとするなら、それはリブラが盾となることでシュラの攻撃を引きつけて、その隙に自分が小型陽電子ランチャーを撃ち込むことだ。

 それさえ通じなければ、諦める他にない。

 

 そんなキザシの願いを嘲笑うかのように、リブラの「ギナ」がビームサーベルを引き抜いて、ブラックナイトスコードシヴァと相対すると同時に、「それ」は起こった。

 

『この俺の誇りにかけて……貴様らをここで討つ!』

「……っ、増えた……!?」

「なに、これ……」

 

 シュラがビームマントを展開するのと同時に、相対していたブラックナイトスコードシヴァのグラフィックがゆらりと歪んで、次の瞬間には十二機に文字通り「増えて」いたのだ。

 残像などという生易しいものではない。

 文字通りの分身。その全てが実体であることを、熱感知センサーが物語っている。

 

『終わりだ、雑兵!』

「増えたとしても、マガノイクタチで……!」

「危ない、姫!」

 

 マガノイクタチを展開しようとしたその一瞬、間隙を縫う形で、死角から肉薄してきた十二機に分かれたうちの二機が、脚部ビームサーベルを展開してリブラへと襲いかかる。

 しかし間一髪、NPDラクスを乗せているにもかかわらず、飛び出していたキザシの「ゼラ」が盾となったことで、リブラは致命傷を負うことなくマガノイクタチを起動することに成功していた。

 エネルギーを吸い尽くされた、合わせて四機のブラックナイトスコードシヴァが沈黙する。

 

 だが、キザシとリブラにできる抵抗はそこまでだった。

 残り八機のブラックナイトスコードシヴァの猛攻を耐え凌ぐことはできず、瞬く間に両手両足を落とされる形で、二人のコンソールにはレッドアラートが明滅する。

 ここまでか、と、キザシは天を仰ぐ。

 

 任せられた役割も全うできずに撃墜されたなんて知ったら、あの人は失望するだろうか。

 それどころか、リブラを──イツコを守ることすらできずに倒れたなどと知ったら、きっとサエリは怒るに違いない。

 でも、いい。全ては虚しいだけなのだから。

 

 怒られても殴られてもなにも感じない。

 ただ虚しいだけだから。

 それでも、サエリに首吊りやリストカットを止められたときは、少しだけ心が痛んだことをキザシは、ミキは思い出す。

 

 それは少しだけ嫌だな、と、思い、目を伏せる。

 だが、想像していた結末は、キザシの前に訪れることはなかった。

 

「クアドラプルハモニカ砲、はっしゃー!」

「キィィィィンケドゥゥゥゥゥ!!!!!」

 

 自分たちが侵入してきたところにはとっくに「傘」が貼り直されている。

 それはコンソールに表示されたデータが示していた。

 だが、突如として降り注いだ理外にして法外の火力は「アルテミスの傘」を突き破り、七機のブラックナイトスコードシヴァを巻き添えにしてアルテミス要塞に大穴を開けていたのだ。

 

 そこから侵入してきた機体は、一言で表すのであればレジェンドガンダムにクロスボーンガンダムX2の意匠を組み込んだカスタムモデルだった。

 

「フフ……感謝するぞ、『春夏秋冬』のセツ」

「どういたしまして!」

「素直な子は好ましい。真っ直ぐに育つといい」

 

 クアドラプルハモニカ砲なる、想像するだけでも恐ろしい破壊力を持った武装を手にしていたセツのイクスリベイクフルディバイダーは、満足したように踵を返して去っていく。

 

「……あんた、は」

「……さて、ここでの私を君たちに見せるのは初めてだったか……さて。どこまで自分を捨てたものか……今私は、感情を制御できそうにない……!」

 

 その男、サビネ・タカトことTHE Bi-neはこんなこともあろうかとこっそり作っていた「レジェンドガンダムspec XⅡ」は手にしていたケルベロスとエクスカリバーの複合武装、「エクスベロス レーザー対艦刀複合バスターランチャー」を残り一機に減ったシュラへと突きつける。

 

『レジェンド……? 雑兵如きを庇うためにわざわざ旧式の機体を引っ張り出してきたか。しかし、所詮は悪あがきだ!』

「……如き、だと? クク……ヒャッハハハハ!!!!!」

『なんだ、こいつ……!?』

「今の私は感情を制御できないと言っただろう……たとえ塵芥と呼ばれようとも、そこから交わり、生まれるものがある! 消えろアコード! 私と、あの子たちの前からな!」

 

 エクスベロスの一撃が、要塞内部の隔壁を貫く。

 THE Bi-neの気迫に圧倒されつつも、シュラは残像を伴う高速機動でそれを回避、そのまま側面から攻撃を仕掛けようと試みた。

 だが、そこには既に罠が仕掛けられていた。

 

 ドラグーンを利用したビームネット。それは本来であれば、NPDとしては最高峰の才能を与えられたシュラが引っかかるような代物ではなかった。

 しかし、高速軌道と強化されすぎて「一対一に固執する」というAIの傾向も凝り固まってしまった結果がこれだ。

 

「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず、ただ結果のみが真実……本来であれば何度さようならしても足りないところではあるが、生憎私は向かわねばならぬところがあるのでな……この一撃でさようならぁ!」

『ぐあああああっ!!!』

 

 ビームネットに絡め取られたブラックナイトスコードシヴァのコックピットを貫いて、エクスベロスを放棄すると、THE Bi-neはキザシの「ゼラ」とリブラの「ギナ」を回収して、アルテミス要塞をあとにする。

 

「……なんで、助けてくれたの」

「……言っただろう、今の私は」

「……そういうのじゃない。本当の言葉で言ってよ」

「……大事だからだ。役割だとかじゃない。君たちがいてくれるから、いてくれたから、僕は『BLACK VANGUARD』の店長でいられる。それじゃあ、不満かな」

「ううん、ありがとう」

「……ありがとう」

 

 ──どういたしまして。

 およそロールプレイに似つかわしくない、あたたかな声音でTHE Bi-neは……いや、サビネ・タカトはキザシとリブラにそう告げて、「ドミニオン」へと一度帰投するのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

『あぁぁぁぁあああああッ!!!!!』

「めっちゃくちゃな太刀筋……! だけど、重い……! ハル、スイッチ!」

「了解、ナツキ! 三十秒!」

「もう一声!」

「……四十五秒!」

「任せた!」

 

 漆黒の宇宙に星座を描くような軌道で、Solaのドレイク・スケイルとナツキのオーバースカイは打ち合っていた。

 そして、僅か数瞬にも満たない隙を利用する形で役割をスイッチ、蒼く染まった逆鱗の龍を食い止めんと、今度はハルのガンダムフォーカスが実体剣「ナツキ」とロングビームサーベル「サクラ」の二刀流で割って入る。

 息もつかせぬ、という言葉がこれ以上なく似つかわしいこの戦いを漁夫の利天誅しようとしたモヒカンは宇宙の塵と化したことは、もはや語るまでもない。

 

 逆鱗に触れられ、己を見失ったSolaの強さは尋常なものではなく、ハルとナツキが全ての集中力を研ぎ澄ませたコンビネーションで持ち堪えるのが精一杯だった。

 だが、その分彼女の攻撃からは「精密さ」が失われている。

 力に任せた大雑把な破壊。それはまだまだ自分の力を持て余している証拠であり、そこに付け入る隙があると、ハルたちは確信していた。

 

 問題はそのチャンスが全くといっていいほど見えてこないことなのだが。

 かといって、このまま千日手を維持し続ければジリ貧になって負けるのは自分たちだということはわかっている。

 こんなことなら、メイジンとモミジさんを組ませるんじゃなかったと、ハルは次元断を手首を弾く形で受け流しながら溜息をつく。

 

 メイジンがコーチとオズマのところまで無事に辿り着けたカラクリは、なんてことはない。ドミニオンの裏に隠れていたハイザック・バトルスキャンが彼らを炙り出したからだ。

 そして、途中でThe Bi-neと合流してなぜか意気投合したセツはアルテミス要塞の攻略へ……といった具合だった。

 正直なところ、「春夏秋冬」が四人揃ったところで、暴走するSolaに勝てる気がしないのは確かではあったのだが、猫の手も借りたいというのが本音でもある。

 

「ナツキ、スイッチ!」

「了解!」

 

 そんな風に思考に雑念が混じり始めた辺りがスイッチのタイミングだということはハルにもわかっていた。

 ナツキと打ち合いを変わってもらう形で、肺に溜まった空気をゆっくりと吐き出す。

 なんとかこの状況を打開する方法が見つかればいいのだが、と、周囲を見渡していたまさにそのときだった。

 

「聞け! 今ここに、我ら『ブラックスクワッド』の手によってラクス・クライン嬢は救出された!」

 

 オープンチャンネルで飛び込んできた通信は、「合図」だ。

 どうやらダブル眼帯の人はやってくれたらしい。そうなれば、あとはやることは。

 

「ナツキ!」

「了解!」

『あぁああぁぁああああ!!!!!』

 

 ハルのサインで、ナツキはきつく目を瞑る。

 そして、ガンダムフォーカスが構えたビームガンカメラが、最大の光量でフラッシュを焚くことで、Solaの目を、そしてドレイク・スケイルのセンサーを灼く。

 ガンカメラを用いた目眩し。相手が冷静さを欠いていなければ二度と通じなかったであろうその搦め手に引っかかってしまったのが、「強さ」だけでは、「力」だけでは得られない、Solaの限界といったところだったのだろう。

 ハルとナツキは機体の手を繋ぐと、「光の翼」を展開する形で、「ドミニオン」の方へと全力で退却していく。

 

 その理由はシンプルだった。

 空間が揺らぐと同時に、ひたすら前線の近くで待機を強いられていた「それ」が姿を現す。

 

「ハーッハッハ! アトミーック! 要塞破壊なら核! やはり核は全てを解決する! そうだろう、チャルル!」

「なんだかよくわかんないけどそうだねー!」

「うむ、実にベリーナイスな返事だ! さあ、アルテミス要塞よ覚悟するがいい! これが……我ら『アトミック・ブルーブレイカーズ!』の心意気と核の光ぃーっ!!!!!」

 

 だからこいつら雇いたくなかったんですよォォォォォ!!!!! と、村田アズラエルが哀叫する。

 

 しかし、その嘆きの声さえもかき消すように、ミラージュコロイドで全身を覆って前線待機していた、チェレンコフ光を纏う「アトミックデンドロビウムspecⅡ」のウェポンコンテナから、そしてメガビーム砲を改造したグレネードキャノンから放たれた核弾頭の数々が炸裂し、アルテミス要塞は瞬く間に核の炎に包まれた。

 

 ──当然のように、荒れ狂っていたSolaも、未帰還の野良ダイバーも、ファウンデーション軍も、要塞の裏で戦っていたコーチとオズマ、そしてメイジンも巻き込む形で。

 

 戦いはいつも虚しい。誰かがそう言った。

 そしてこのEフィールドにいるプレイヤーたちは、誰もがその言葉を実感することとなった。

 ただ一人、しれっとアメイジングブースターで脱出していた三代目メイジン・カワグチを除いて。




アトミーック!!!!!

【Tips】

【村田アズラエル(原案:「麻婆炒飯」様)】
・「GHC」と協力関係を結んでいる環境保全団体の盟主であり、ムルタ・アズラエルとよく似ている青年。その因果かどうかは知らないが、1/144でドミニオンをフルスクラッチするぐらいにはドミニオンが好きだとか。核はね、持ってて嬉しいコレクションじゃないけど地上でぶっ放すものじゃないんですよ。

【Sola/リュウザキ・ミク(原案:「麻婆炒飯」様)】
・皇財閥十二従家の一つ、「リュウザキ家」の当主にして、明るく快活な少女。空を飛ぶことと旅がなによりも好きで穏やかな少女に見えるが、その本性は苛烈なまでにエゴイストであり、「強者である自分が他の弱者たる人間を守ってあげなければ」という想いに取り憑かれている。ガンプラバトルの強さは計り知れないが、まだその強さを持て余している、とはコーチの発言。

【ブラックスクワッド(原案:「X2愛好家」様)】
・喫茶「BLACK VANGUARD」の看板娘、サエリ、ミキ、ヨリ、イツコこと「サリエ」「キザシ」「ヒョウリ」「リブラ」の四人で構成される小規模フォース。それぞれがブラックナイトスコードを改造し、クロスボーン・バンガードの機体とミキシングを行った「ブラックナイトバンガード」に搭乗して戦う。

【オズマ/ミドウ・カズマ(原案:「麻婆炒飯」様)】
・普段はあまり関わりを持っていない……というか家を飛び出してしまったため絶縁状態なものの、一応は皇財閥十二従家の一つ「ミドウ家」の当主候補だった青年。「トキ」という名前の双子の弟妹がおり、ミドウ家はトキたちが継いでいる。今回コーチと共に参加していたのは高額の時給を払われたからであり、乗り気ではなかった。なにかとメイジンと色被りを起こしてしまうジンクスに苛まれている。

【ハル/ナカノ・ハル(原案:「二葉ベス」様)】
・フォース「春夏秋冬」の中核を担うメンバー……というよりは四人でフォースを作るきっかけとなった女性であり、かつてはダウナーで眠たげだったが成長して、ナツキと正式に結ばれた今はちょっとめんどくさがり屋ぐらいなところに落ち着いている。なんだかんだで今回のレイドバトルに合わせてアウトフレームを改造した「ガンダムフォーカス」を拵えてくるなど、乗り気なときは乗り気な気質。ナツキの専属カメラマンでもある。

【ナツキ/シライシ・ナツキ(原案:「二葉ベス」様)】
・旧姓シライシであり、今は公私共にハルと結ばれた稀代のスーパーモデル。今回のレイドバトルの話を聞いていてもたってもいられずに参加した結果、とんでもない化物と戦うことになったりした割とエンカ運が悪めな明るめ女子にして、メタバースでも指折りの剣豪の一人である。

【フォース「春夏秋冬」(原案:「二葉ベス」様)】
・ハル、ナツキ、モミジ、セツの四人で構成されるフォース。かつてその名を轟かせたがメタバースではほぼ活動休止状態だったため、今回の集まりにセツはとても喜んでいたらしい。しかし悲しいことにセツの背丈が成長することはなかった。

【レグフィナ(原案:「青いカンテラ」様)】
・アトミーック!!!!!(挨拶)、核を撃つことに心血を注いでいるやべー少女にしてフォース「アトミック・ブルーブレイカーズ!」こと「A・BB!」のリーダー。チャルルという副官がいる。なぜかカミオと出会うとしわしわピカチュ○のようになってしまうらしい。
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