GBN:アラカルトダイバーズ   作:守次 奏

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二月も終わってしまうので初投稿です。


GBN:ダイバーズフラグメント
「アナザー・ウィンド/女王への挑戦状」


 

【バンデット・レースについて語るスレ part.429】

 

1.名無しの走り屋

ここはディメンション・シュバルツバルトの「エリア・ハイウィンド」で行われているイカれた競技、バンデット・レースについて語り合うスレッドです。ガンプラバトルとレースを融合させた究極のエクストリームスポーツについて存分に語り合いましょう。

 

【前スレ】

バンデッド・レースについて語るスレpart.428

https〜

 

 

 

121.名無しの走り屋

今夜は荒れるな

 

122.名無しの走り屋

いったいなにが始まるんです?

 

123.名無しの走り屋

話は聞かせてもらった! ストレイ・ハイウェイは崩壊する!

 

124.名無しの走り屋

いいだろう……隼人、説明してやれ!

 

125.名無しの走り屋

もったいぶってないで教えてくれないか

 

126.名無しの走り屋

走り屋はせっかち

 

127.名無しの走り屋

最速を求める走り屋だから多少はね?

 

128.名無しの走り屋

その最速の頂点に君臨してるのが紛れもない変態なのが草生えるんだよなあ

 

129.名無しの走り屋

変態という名の紳士だぞ、失礼な

 

130.名無しの走り屋

あれで中身はマジで紳士だから温度差で風邪ひきそうになるんだよな

 

131.名無しの走り屋

本人曰く親しみやすい格好を意識したらしいぞ

 

132.名無しの走り屋

ちょっとあの鳥たちは親しみやすいって言葉について辞書引いて調べてきてほしい

 

133.名無しの走り屋

それでなにが荒れるんだよ、今日開催予定のレースのオッズなら順当にパロッツ・パーティー安定だと思うが

 

134.名無しの走り屋

「ストームブリンガー」の連中も速いし巧いんだけどな、やっぱ鳥よ

 

135.名無しの走り屋

パロッツ・パーティーを破ったの、なんだかんだで今までたった三組しかないからな

 

136.名無しの走り屋

「AVALON」と「リビルドガールズ」と「アナザーテイルズ」だっけ?

 

137.名無しの走り屋

合ってる

 

138.名無しの走り屋

後ろ二つはジャイアントキリングだったから驚いたなあ

 

139.名無しの走り屋

無名のフォースが変態の編隊に勝つ、それもまたバンデッド・レースの醍醐味よ

 

140.名無しの走り屋

そういや「オラージュ・ワゾー」はあと一歩届かないんだったか、あんときは興奮したな

 

141.名無しの走り屋

ククク……今夜その「オラージュ・ワゾー」と「アナザーテイルズ」のマッチがあると言ったらどうなる?

 

142.名無しの走り屋

な、なんだってー!?

 

143.名無しの走り屋

マジかよ……シュンちゃん、リリカちゃんとのコネあったのか

 

145.名無しの走り屋

いや、特にないらしい

 

146.名無しの走り屋

ないのかよ

 

147.名無しの走り屋

ないけど鳥がマッチを提案したらしいぞ、ツイスタに書いてある

 

148.名無しの走り屋

あ、本当だ

 

149.名無しの走り屋

最速覇者vs無冠の女王……確かに荒れるなこいつは

 

150.名無しの走り屋

銭ゲバが目をキラキラさせてる

 

151.名無しの走り屋

ちょっと前まではロリとしての愛嬌で、今はスレンダー美人としての魅力を存分に発揮して俺らのBCを搾り取ってくる銭ゲバの鑑

 

152.名無しの走り屋

あの小生意気なロリが俺好みのスレンダー美女に成長しやがるからちくしょう!

 

153.名無しの走り屋

「おにーさん、走り屋として……賭けていきますよね? 聞いてくれますよねぇ? チィからのお・ね・が・い♡」

 

154.名無しの走り屋

罠でもいい……罠でもいいんだッ!(画像略)

 

155.名無しの走り屋

アナザーテイルズvsオラージュ・ワゾー、オッズは結構拮抗してるからどっちに賭けるかは好み次第になりそうだな

 

 

 

………………

…………

……

 

 

◇◆◇

 

 

 

 招待状がハートから再び届けられたとき、シュンとストラは正直なところ、何度目かもわからないリベンジマッチに挑む心づもりでいた。

 それは何回も戦ったから飽きてきたとかそういう類の話ではなく、何度戦っても尚「最速」の座を譲ろうとしない「パロッツ・パーティー」との戦いに向けていつものように気合を入れた、という意味合いだ。

 だが、彼らから送られてきた招待状に記されていた名前を見たとき、思わず椅子からひっくり返りそうになってしまったことは記憶に新しい。

 

 ──アナザーテイルズ。

 

 かつて自分たちをこの最速の世界へと誘った憧れであるガールズフォースと、今夜バンデッド・レースで勝負する。

 なにもかもが急な話で、正直なところシュンとしては理解を超越していたが、受けない、という選択肢は最初から存在しなかった。

 それにしても。

 

「はぁ……『アナザーテイルズ』かぁ……!」

「あのときの、白いガンダムの人たちですよね? シュンは、緊張してますか?」

「うん。正直憧れの存在と戦えるっていうだけでもう手が震えて……」

 

 かつて自分とストラの脳裏に刻み込まれたあの伝説の一瞬。

 機体を自壊させることを覚悟の上で、「時が加速した」かのような超加速でゴールをもぎ取っていった「アナザーテイルズのリリカ」と直に会って戦うことができるのだ。

 緊張するな、というのが無理な話だろう。

 

 ストレイ・ハイウェイ──このエリアのメガロポリスを生かしている大動脈の麓に佇むバーでは、今も勝つのがアナザーテイルズか、それとも自分たち「オラージュ・ワゾー」かという談義に走り屋たちが花を咲かせ、蠱惑的な仕草で客のネクタイをほどきながら、なけなしのBCをトトカルチョに突っ込ませようとするチィの姿があった。

 

「……チィちゃん、おっきくなりましたね……えへ、えへ」

 

 メレンダが呟いた通り、ここ何年かで、かつて「銭ゲバロリ」と呼ばれていたチィはなにがあったのか急に大人っぽく成長していた。

 もっとも、自覚した色気を使ってまで金を搾り取ることに執心しているところはなにも変わっていないが。

 そんなチィの口車に乗せられる形で、今日も客たちは宵越しの銭はもたないとばかりにBCを熱狂の中にばら撒いているのだ。

 

「あのお方は相変わらず……まあいいですわ。ところでシュン、ストラ」

「はい」

「どうしたの、ドラリンド?」

「『アナザーテイルズ』とは誰ですの? 聞いた話だとあなたと因縁があるようですけれど」

 

 ドラリンドの問いかけに、シュンはそういえばそうだったな、と思い返す。

 自分がバンデット・レースに参戦したきっかけとなった出来事については一応「オラージュ・ワゾー」内で共有していたが、「アナザーテイルズ」の名前はほとんど出していなかった。

 と、いうのも単純に、教えたくないとかではなく、単に憧れの相手を気安く呼ぶのはどうなんだろうとか自分なんかが「リリカ」のことを呼ぶ資格があるのか……と、シュンがぐるぐる目になって考え込んだ末の結果である。

 

「前に話したよね、私がバンデット・レースに参加するきっかけになったフォースのこと」

「ええ、確か初陣で『パロッツ・パーティー』に勝利を収めているとか」

「その人たちが……『アナザーテイルズ』で、そのとき私が憧れたのが『アナザーテイルズのリリカ』さんだよ」

 

 シュンは昔を懐かしむように虚空を、浮かんだ星を見つめるような目で一瞥する。

 彼女の瞳の中に焼きついている一等星はいったいどんな人物なのだろうかと、ドラリンドは思案する。

 あの「パロッツ・パーティー」が直々に招待状を書いて招いたというのだから、やはり彼らに負けないくらい濃いフォースなのだろうか、と頭を抱えていたそのときだった。

 

「……え、えっと……『オラージュ・ワゾー』の皆さんですよね……? きょ、今日は……よろしくお願い、します……っ!」

 

 一体どれほど珍妙な格好をしているのだろうとドラリンドが身構えている間に姿を現したのは、学生服のような衣装を身に纏っているダイバールックの、小柄な栗色の髪の少女だった。

 しかし、信じられないほど覇気がない。

 よくいえば人畜無害、悪くいうなら臆病な小動物といった風情の少女は、緊張しているのか、あわあわとボディランゲージを交えながらしどろもどろにドラリンドたちのことを確認している。

 

「……メレンダさんみたいな方ですわね」

「……な、仲間……ふへ」

 

 同類を見つけたからか、メレンダは心なしか嬉しそうに小さく笑う。

 話を聞く限り、とてもそうとは思えないが、この今にも泣きそうな顔をしている女の子があの「アナザーテイルズのリリカ」とやらなのだろうか。

 いや、違う。もっと珍妙な格好をしていて溢れんばかりの覇気を放っているような女帝じみた人物こそが「アナザーテイルズのリリカ」に違いあるまいと踏んで、ドラリンドは問いかける。

 

「ええ、よろしくお願いいたしますわ。ところでフォースリーダーの、『アナザーテイルズのリリカ』さんはどちらにいらっしゃいますの?」

 

 瞬間。ぴしり、と空気が凍りつく。

 なにか言ってはいけないことを言ってしまったような、自分の推測が根本から間違っていたかのような違和感。

 そんな窮屈さがドラリンドの両肩にのしかかってくる。

 

「……えっ……?」

「えっ?」

「……ぁ、あの……その……『リリカ』は……わたし……です……」

 

 ぼそぼそとか細い声で、申し訳なさそうに、少女は──リリカはドラリンドからの問いにそう答えた。

 自分がフォースのリーダーとしてあまりに覇気がないことを内心気にしてはいたのだが、初対面の相手からすらリーダーだと思われない程度には根暗陰キャオーラが出ているのだろうか。

 リリカの眦に、じわり、と涙が滲む。

 

「ご、ごめんなさい! ドラリンドも悪気があったわけじゃないんです!」

「……ぁ……いえ……慣れてるので……」

「わー! ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

 シュンは傷ついた様子で俯くリリカに何度も頭を下げるが、リリカの大きく丸い琥珀色の瞳からは、ぽろぽろと涙の雫がこぼれ落ちていた。

 正直なところ、シュンもまた、リリカがメレンダと似たような人物であると思っていなかったところはある。

 その傍ら、一人で落ち込んで一人で涙をこぼすリリカに対してなんとなくシンパシーを抱いて、メレンダはえへえへしていた。

 

「……失敬失敬、リリカちゃんを泣かせたのはキミでいいのかな?」 

 

 そして、リリカの後ろに控えていた、彼女と瓜二つの顔と格好をしている少女がじとっとした目でドラリンドを見つめる。

 全体的にふわふわぽわぽわした見た目の美少女であるのに、意訳すると「よくもこんなことをしてくれたな、貴様を墓場に送ってやる」とでもなりそうな視線を向けているのにはシュンもさすがに恐れを抱く。

 どうしよう、これ。事情がよくわかっておらず、小首を傾げているストラとえへえへしているメレンダを横目に、ドラリンドとシュンは気まずそうに視線を突き合わせた。

 

「間違いは誰にでもありますわ、ミワ。失礼、こちらも貴女たちを威圧するつもりはありませんことよ」

「えっと……ありがとうございます。カエデさん」

「あら、わたくしの顔と名前を覚えていてくださるとは光栄ですわね。今宵のレース、お互いに全力を尽くしましょう」

 

 ゴスロリ服を纏っている赤毛のダイバーことカエデが前に出てミワを制止しつつ、シュンに向けて手を差し伸べる。

 本物のお嬢様ってこんな感じなのかぁ、と、そのスマートな所作にどこか圧倒されながらも、シュンは差し伸べられた手をとった。

 ドラリンドも一応はお嬢様ロールで通しているが、彼女の場合割とすぐにメッキが剥がれることもあって、余計にそう思えたのだ。

 

「ふふ……」

 

 その間、和ゴスな黒い着物を着崩している少女が妖艶な笑みを口元に浮かべてゆっくりとストラに歩み寄っていく。

 

「えっと……どなたでしょうか?」

「ふふ、ユユのことをご存知でない……?」

「はい、ストラの記憶にはありません!」

 

 ストラと、ユユと名乗った和ゴス少女はそんな、どこか頓珍漢なやりとりを繰り広げていたが、実際のところ申し訳ないがシュンにも彼女の記憶は存在していなかった。

 

「……ふふ、仕方ないですね。ユユは最後に『アナザーテイルズ』へ加入しましたから」

「なるほど! つまりユユは新人さんということなのですね!」

「……ふふ、新人……ふふ」

 

 ちょっとツボに入ったのか、ストラの無邪気な受け答えにユユは腹を抱えて笑う。

 そんなストラの純真爛漫なところに相変わらずだなあ、とシュンも頬を綻ばせて、泣いていたリリカとそれを宥めていたミワも、一様に微笑みを浮かべていた。

 カエデとドラリンドも顔を見合わせて互いに苦笑し、その手を取り合う。

 

「……申し訳ありませんわ、リリカさん」

「……い、いえ……ごめんなさい、ドラリンドさん……気を、遣わせて……わたし、ちょっと涙脆くて……」

「ですけど、あの『パロッツ・パーティー』に勝利を収めたのでしょう? その腕前、期待していますわ」

「……ありがとうございます。がんばります……全力で……!」

 

 これでお互いに因縁はないとばかりにリリカとドラリンドは視線を交わし、戦いの舞台であるストレイ・ハイウェイへと向かっていく。

 客たちはそんな彼女たちに思い思いの激励や野次を飛ばして、レースに向けての期待を煽り立てる。

 治安こそ良くないものの、これこそがバンデット・レースにおけるある種の醍醐味や風物詩のようなものであり、今宵も一人、ひりついた空気の中で胴元たるチィが一人ほくそ笑み、ビルドコインを指先で弾いていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

【バンデット・レースについて語るスレ part.430】

 

1.名無しの走り屋

ここはディメンション・シュバルツバルトの「エリア・ハイウィンド」で行われているイカれた競技、バンデット・レースについて語り合うスレッドです。ガンプラバトルとレースを融合させた究極のエクストリームスポーツについて存分に語り合いましょう。

 

【前スレ】

バンデット・レースについて語るスレpart.429

https〜

 

 

 

12.名無しの走り屋

立て乙

 

13.名無しの走り屋

おつおつ

 

14.名無しの走り屋

いよいよ"開始"っちまったか……かつての"最速女王"と"銀翼の挑戦者"……

 

15.名無しの走り屋

銭ゲバの色仕掛けに負けて全額ツッパしちまったから頑張ってくれアナザーテイルズー!

 

16.名無しの走り屋

負けてて草

 

17.名無しの走り屋

大人の色気を身につけた銭ゲバは正直勝てない

 

18.名無しの走り屋

衣装もレオタードから丈がギリギリなタイトスカートに変えちまってよ……!

 

19.名無しの走り屋

まあなんだ、ここにいる全員財布はすっからかんなんだからあとはレースを楽しむだけだな!

 

20.名無しの走り屋

いつもの光景ヨシ!

 

21.名無しの走り屋

しっかしこれマジでどっちが勝つかわかんねえな

 

22.名無しの走り屋

単純な加速力だけなら「オラージュ・ワゾー」なんだが妨害の手札や戦闘力って意味だと「アナザーテイルズ」に軍配が上がるって具合だと思う

 

23.名無しの走り屋

特にミワちゃんのスナイプをどう掻い潜るかは課題になってくるだろうな

 

24.名無しの走り屋

ビギニングファントムシヴァルバーならそう簡単にブランシュアクセルに競り負けることもないと思うが、遠距離からの神エイムスナイプでズドンもありえるからなあ

 

25.名無しの走り屋

そこは「オラージュ・ワゾー」の腕の見せ所やろなあ

 

26.名無しの走り屋

役割的には遊撃手二人でユユちゃんとカエデさんを足止めしつつスナイパーのミワちゃんに好き勝手させないって感じか……いやキツくね?

 

27.名無しの走り屋

多分ドラリンドが真っ先に砂を潰しにかかるとは思うんだがあのユユちゃんがそれを許してくれるかなんだよなあ

 

28.名無しの走り屋

「アナザーテイルズ」の盾だからな、ユユちゃんは

 

29.名無しの走り屋

そう考えると「アナザーテイルズ」に賭けるのが無難な気がしてきたなあ

 

30.名無しの走り屋

「オラージュ・ワゾー」に勝ち筋があるとしたら先行逃げ切りか?

 

31.名無しの走り屋

その辺は始まってみないとなんともだな

 

32.名無しの走り屋

少なくとも負けた方が叡智なASMRを出してくれれば僕は満足です(威風堂々)

 

33.名無しの走り屋

もしもしガーフレ?

 

34.名無しの走り屋

こんなとこにも変態は湧くんだな……

 

35.名無しの走り屋

でもリリカちゃんの囁きASMRならちょっと聞いてみたいかも

 

36.名無しの走り屋

もしもしミワちゃん?

 

37.名無しの走り屋

ガチの暗殺はやめてくれないか

 

38.名無しの走り屋

夜道でなくても気をつけることだな……一キロ先からでもヘッショキメられるぞ

 

39.名無しの走り屋

あの子のエイム力どうなってんの本当

 

40.名無しの走り屋

お、そろそろレースが始まるみたいだぞ

 

 

………………

…………

……

 

 

◇◆◇

 

 

 

「シュン、この戦い……!」

「わかってる、ストラちゃん。絶対に……!」

 

 ビギニングファントムジヴァルバーのコックピットで、刻まれるスタートまでのカウントを聞きながら、シュンは操縦桿をキツく握りしめる。

 負けるわけにはいかない。

 カウントがゼロになると同時にシュンはファントムライトを展開、初手からビギニングファントムジヴァルバーを最高速で始動させる。

 

 それに少し遅れる形でリリカの新機体──「ガンダムAGE-1 マキシブランシュ」が背中のトライフレームホルダーから赤いビームマントをはためかせて、その後ろに追従する。

 最高速で先陣を切ったレーサー二人に対して、少し落ち着いた速度で後ろを走っている遊撃組は、いつ「仕掛ける」のかのタイミングを測っていた。

 当然、「オラージュ・ワゾー」からすれば最優先で排除したいのはスナイパーたるミワの新機体「スナイピングストライクフリーダムルージュ」だろう。

 

 だからこそ、ドラリンドは自機である「バンシィD-END」の背部に装備されているアームド・アーマーDEから放たれるメガキャノンで先制攻撃をお見舞いしようとしたのだが。

 

『ふふ、戦端を開いたのはそちらでしたね……?』

「Iフィールド!? くっ……!」

 

 ユユの愛機であるG-イデアがそれを咎めるように全身のifsユニットからIフィールドを発生させて、ドラリンドの前に立ちはだかる。

 

『ミワさんを狙うことで狙撃手を封じようとしたのでしょうが……そうはさせませんことよ!』

「う……っ、一撃が、重い……!」

 

 ならばとばかりにメレンダが先行すれば、シザーソードを抜刀したカエデの「ウイングガンダムゼロヌーベル」がディキトゥスのビームアックスを受け流し、メレンダの「ザク・デスティニー」をストレイ・ハイウェイの壁面に叩きつける。

 実力の差を痛感しつつもなんとかメレンダは機体を立て直し、続くツインバスターライフルによる追撃を回避、自身も「光の翼」を展開することで加速していく。

 手強い。パロッツ・パーティーと戦っていたときは純粋なレースの技術で競り合っていたが、今回はどちらかというとガンプラバトルでの競り合いの比重が大きいのもあって、その辺りは「アナザーテイルズ」に一日の長があるといったところだろう。

 

『さぁさぁ、勝負はまだまだ序盤戦! 第一コーナーを抜け出した中でも飛び抜けて早いのはシュン&ストラねーちゃんのビギニングファントムジヴァルバー! それを追いかける形でリリカねーちゃんのAGE-1マキシブランシュが後ろについてる感じだねぃ!』

 

 チィによる実況でなんとか超加速の中で戦線を把握しつつ、シュンはパロッツ・パーティーの如く、ブレーキを極限までカットしたコーナームーブでマキシブランシュを引き剥がしにかかるが、そこはそれ、マキシブランシュも伊達にレーサーとして頭を張っているわけではない。

 正直にいってしまえば、シュンとしてはここで大きく引き剥がせないのは流石にもどかしく、厳しいものがある。

 メレンダもドラリンドも奮闘してくれているが、武闘派ガールズフォース相手にはどこまでもってくれるか、というのが正直なところだろう。

 

 そうなってくると、自分たちは枚数不利を背負っている上に、使える妨害手段も限られているということだ。

 切り札もあるにはある、残されてはいるが。

 歯噛みしつつアクセルをベタ踏みして、目の前に見えてきた第一関門であるトンネルをシュンは睨みつける。

 

「っ! ストラちゃん、ブレーキかけるよ!」

「わかりました、シュン! でもどうして──きゃあっ!?」

 

 そこだ。

 絶対に仕掛けてくると思っていた。

 ミワの徹甲榴弾による長距離狙撃は見事にトンネルの入り口を崩落させて、フルアクセルで突っ込んでいれば間違いなく即死していたであろうことを予見させる瓦礫の山を作り上げる。

 

 そう、これがバンデット・レース。

 コース外からの妨害以外なら「なんでもあり」。

 極論、前を走っている相手と素直に競争してやる必要もない、撃ち落としてしまえばいいという話も通じるのがこの「最速」を競う戦いなのだ。

 

 真面目にレースができている時点でそいつは既に一流だ、と誰かが言ったように、数多の妨害を潜り抜ける速度と判断力、それこそがバンデット・レースには求められる。

 崩落した入り口を避ける形でシュンはトンネルへと突入したが、さっきの足止めのせいでリリカとの距離は詰められてしまっている。

 恐らくリリカが攻撃してこないのは、ファントムライトに対しての有効打をマキシブランシュが保持していないからだろう。

 

 だがそれは、逆に考えればファントムライトによる防護がなければいつだってリリカは自分の後ろをキープしながら仕掛けてこれるということだ。

 脳神経が弾けるような感覚と共に、シュンは唇の端を吊り上げる。

 ──楽しい。この最高にヒリついた空気が、生きるか死ぬか壁のシミになるかという最速への挑戦が。

 

 それは通信ウィンドウに映るリリカも同じなのか、大人しく温和なさっきの印象とは真逆に、目を見開いて攻撃的な笑みを浮かべていた。

 全く。

 これだから、バンデット・レースはやめられないのだ。

 

 

◇◆◇

 

 

【バンデット・レースについて語るスレ part.431】

 

1.名無しの走り屋

ここはディメンション・シュバルツバルトの「エリア・ハイウィンド」で行われているイカれた競技、バンデット・レースについて語り合うスレッドです。ガンプラバトルとレースを融合させた究極のエクストリームスポーツについて存分に語り合いましょう。

 

【前スレ】

バンデッド・レースについて語るスレpart.430

https〜

 

 

123.名無しの走り屋

来たな、大動脈

 

124.名無しの走り屋

ここで中央分離帯に激突してオジャンなんてつまんねー結末見せてくれんなよー!

 

125.名無しの走り屋

シュンとストラの機体制御もかなり磨かれてきたな……

 

126.名無しの走り屋

リリカちゃんがなんか怖い笑みを浮かべてて変な性癖に目覚めそう

 

127.名無しの走り屋

本当に怒らせると怖いのは普段気弱なやつだってそれ一番言われてるから

 

128.名無しの走り屋

戦況は膠着……ってほどでもないな、メレンダも頑張ってはいるがカエデさん相手じゃ……

 

129.名無しの走り屋

砂を完全フリーにさせちまってる時点で既にもうやべーからなあ

 

130.名無しの走り屋

それでもドラリンドなら……ドラリンドならどうにかしてくれる……!

 

131.名無しの走り屋

相手は個人ランキング64位のユユちゃん様ゾ

 

132.名無しの走り屋

こうなると本当に遊撃組がいかに根性で持ち堪えてシュンがいかに先行逃げ切りを維持できるかなんだが……

 

133.名無しの走り屋

相当無理してんのか冷却カートリッジの消費ペースがヤバいな、これ最終ストレートまでもつのか?

 

134.名無しの走り屋

私にもわからん

 

135.名無しの走り屋

だが速度勝負では純粋に勝っているシュン&ストラがトップを維持し続けることで「アナザーテイルズ」も奇策を撃ちづらいというわけよ

 

136.名無しの走り屋

それはどうかな?

 

137.名無しの走り屋

なにっ

 

138.名無しの走り屋

な、なんだあっ

 

139.名無しの走り屋

ミワちゃんが完全フリーになっているという事実をお前らは過小評価している、あのストフリのカスタム機、実はめちゃくちゃ素の足周りはいい方なんだぞ

 

140.名無しの走り屋

なるほど、つまりどういうことだってばよ?

 

141.名無しの走り屋

極論やってないのとシュンたちの速度が振り切れてるからなんとかなってるだけでいつだってビギニングファントムジヴァルバーをキリングレンジに収めてるってことだ

 

142.名無しの走り屋

怖、ホラーかよ

 

143.名無しの走り屋

それにリリカちゃんもまだ隠し球を残している可能性が考えるとミワリリ姉妹のキリングレンジをすり抜けない限り「オラージュ・ワゾー」に勝利はないってことか……

 

144.名無しの走り屋

それもドラリンドとメレンダが持ち堪えてる間っていう時間制限つきでだ

 

145.名無しの走り屋

ブルっちまうぜ、ったくよ……

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「シュン!」

「わかってる、ストラちゃん!」

 

 遠距離からの狙撃が機体を掠めて壁を破壊する。多少のダメージは誤差だと割り切って強引に突破してはいるが、それでも推力の低下と出力の維持が難しくなったところは無視できない。

 ストレイ・ハイウェイの第四コーナーを抜けて最終ストレートへと差し掛かるまでの区間、待っていたのは案の定地獄の妨害だった。

 ドラリンドとメレンダは頑張ってくれたものの、それでも力及ばず撃墜されて、背後からは「アナザーテイルズ」が総出で攻撃してくるのだから、その全てを避け切ることは難しい。というか無理だ。

 

 気を抜けばG-イデアが差し向けたフォトン・ファンネルによる攻撃と、ツインバスターライフルによる砲撃、そして対艦ライフルによる狙撃が飛んでくるこの地獄は、例えようもないほどに厳しく、耐え難い。

 それでもなんとかなっているのは、ひとえにファントムライトと磨き上げてきたガンプラが応えてくれているからだ。

 勝負をかけるならば、どうしても最終ストレートまで持ち込まなければ勝ち目はない。だが、残りの予備冷却カートリッジは二個。

 

 最終ストレートまで持ち堪えられるかどうかは半々といったところだろう。

 自分にあって「アナザーテイルズ」にないものはと考えれば、それはこの「バンデット・レースに向けてチューンナップし続けてきたスピード」だ。

 だからこそ単純な「機動性」ではなく、「スピード」でカエデとユユ、そしてミワをなんとか置き去りに、とまでは言わなくとも追わせない程度の距離に留めていられる。

 

 逆にいえば、それを失ったときに、自分は負ける。

 最終ストレートまで差し掛かる最終コーナーへ、「アナザーテイルズ」も、かつては「リビルドガールズ」も、そして自分たち「オラージュ・ワゾー」も試してきた壁抜き区間だ。

 そう、切り札を切るならここしかない。

 

「ストラちゃん!」

「はい、シュン……っ!?」

 

 相手が自分を追うことに夢中になっている、その状況を利用してシュンは最終コーナー諸共「アナザーテイルズ」の三人を消し飛ばす算段でいたが、それは読めていたと……いや、「知って」いたとばかりに、無慈悲な狙撃が小型核弾頭をセットしたザンバスターを射抜く。

 

『惜しい惜しい……ミワにはちゃんと「視えて」たよぉ』

「だ、だとしても……っ! ストラちゃん、続けて!」

「はい! ワイルド・ウィンド! 嵐よ!」

 

 これで状況が好転するかどうかは完全に賭けだ。だが、恐れていては先に進めない。

 不発に終わった核弾頭を即座に切り捨てて、ストラは必殺技のスロットを選択、機体を巡行形態である「ミラージュ・ワゾー」に変形させる。

 残る冷却カートリッジは予備があと一つ。

 最終コーナーはまだ抜けられていない、それでも。だとしても。

 

「負けられない……ここで恐れてたら、なにもできない!」

『いいねいいねぇ……リリカちゃん』

『うん、お姉ちゃん……ここから先は、小細工なしでの全力勝負!』

『それでも妨害だけはさせていただきますわ、ごめんあそばせ』

『ふふ、ルールが悪いです、ね……?』

 

 オールレンジ攻撃、砲撃、狙撃を掻い潜りながら、シュンはストラに必殺技の発動タイミングを託して機体の制御に集中する。

 推進力の低下をミラージュ・ワゾー形態で補うことでなんとかマキシブランシュとの差を伸ばすことはできた。

 だが、それでもリリカのキリングレンジに自分が収まっていることには変わりない。

 

 ビギニングブレイサーを機首として高速回転を始めた愛機は戦場を貫く白銀の一矢となって、ストレイ・ハイウェイの最終ストレートへと一直線に駆け抜けていく。

 冷却カートリッジの予備はゼロ、これを使い切ればファントムライトは維持できない。

 ゴールまで間に合うか、そしてリリカが切ってくるであろう切り札に対抗できるか、その全てが未知数であり、それはシュンにも、ストラにも予測できなかった。

 

 だが、これ以上なく胸が高鳴っている。

 勝負の最終ストレート、吹き抜ける銀の嵐を呑み込むように、かき消すように、「白」が吼える。

 

『ブランシュアクセル・オーバーナイトロ!』

 

 恐らく、「パロッツ・パーティー」との戦いの中、最後に見せた切り札──必殺技の進化版といったところだろう。

 白い稲妻となってマキシブランシュが駆け抜ける。

 あと数百メートル。あと数十メートル──銀の嵐を食い破るように駆け抜ける稲妻と、吹き荒れる銀の嵐が火花を散らすデッドヒート。

 

「と・ど・けぇぇぇぇぇ!!!!!」

「……お願いブランシュ、届かせてぇっ!!!」

 

 いかなる妨害も届かないほどの加速が、圧倒的なスピードが戦場の全てを置き去りにして、今ゴールに差し掛かる。

 コンマ数ミリ秒、それは言葉にするなら本当に僅かな差だったのかもしれない。

 バーで観戦している誰もが、掲示板で実況している誰もが──否、今この瞬間、ストレイ・ハイウェイを見ている誰もがその手を止めて、結末を見届けようと刮目していた。

 

『っ、ゴォォォォル!!! この激戦を制したのは、なんと!!! 「オラージュ・ワゾー」のねーちゃんたちだぜぃ!!!!!』

 

 同着に見えたものの、チィの観測によって、僅か──ほんの僅かな差だけ、先にゴールラインを切っていたと判明したのは、シュンとストラが操るビギニングファントムジヴァルバーだった。

 この結果に歓喜するダイバーもいれば、肩を落として落ち込むダイバーもいる。

 だが、ただ一つ確かなことが、この戦いを見届けた全員が共通認識として持っていることがあるとするなら、それは。

 

 ──今宵もまた、バンデット・レースに一つの伝説が生まれた。

 

 ただ、その一言に尽きるだろう。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「グッドゲームでした、リリカさん」

「……はい。グッドゲーム……とっても、楽しかったです」

 

 戦いが終わったのち、ストレイ・ハイウェイ近くのバーはあまりにも盛り上がっているからと、ひっそりと隠れ家的な店──「ラング・ド・シャ」に身を寄せていたリリカとシュンは、握手を交わしてお互いの健闘を称え合っていた。

 他に言葉はいらないとばかりに席に着くと、リリカとシュン、そしてぱたぱたと興奮したような足取りでかけつけてきたストラは注文したソフトドリンクのグラスをそっとぶつけて乾杯をする。

 勝ってしまった。しまった、という言い回しは変かもしれないが、憧れていた背中を追い越すことができたという事実は、感動となってシュンとストラの心に咲き誇っていたのだ。

 

「その……私、前も言いましたけど、リリカさんに憧れて、バンデット・レース始めたんです」

「……わたしに、ですか……?」

「はい。ストラちゃんも……あのとき、リリカさんたちが『パロッツ・パーティー』を追い抜くところを見なければ、きっと今頃GBNやめてたのかな、って……」

「はい! とってもすごくて、すごかったです!」

 

 リリカは少し気恥ずかしそうに頬を染めて、ソフトドリンクに口をつける。

 自分が誰かに憧れこそしても、憧れられる立場になるとは思っていなかったからだ。

 だが、その感覚はなんだかんだで悪いものではないのだろう。血液と共になにかあたたかいものが体内を駆け巡っていくような感覚に、思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「……ありがとうございます、ストラさん……」

「さん、なんて恐れ多いです……そんな」

「……じゃ、じゃあ……そ、その……す、ストラ、ちゃん……」

「はい。えっと……」

「……リリカ、で……いいですよ。ストラちゃんも」

「……ありがとう、リリカちゃん!」

「はい、ありがとうございます! リリカ!」

 

 ──グッドゲーム!

 

 もう一度乾杯を交わして、リリカとシュン、そしてストラは今日の夜を心に焼き付けるかのように、そして忘れないように、友情の契りを交わすのだった。




グッドゲーム!

【Tips:】

【シュン(原案:「青いカンテラ」様)】
ELダイバー「ストラ」の後見人にして、バンデット・レースに熱中している少女。その実力は確かなものであり、愛機である複座式の「ビギニングファントムジヴァルバー」はパロッツ・パーティーには届かずともかなりの実力派としてその名を轟かせている。

【ストラ(原案:「青いカンテラ」様)】
ディメンション・シュバルツバルトで生まれ、シュンに保護されたELダイバー。片翼なのが特徴であり、天真爛漫で快活なのが特徴。複座式のビギニングファントムジヴァルバーを操縦する際はストラが火器管制、シュンが操縦を担っている。

【ドラリンド(原案:「青いカンテラ」様)】
シュンとはリアルでの知り合いでもあり、バンデット・レースをすると決めた際にフォース「オラージュ・ワゾー」を結成した仲間であり友人。お嬢様ロールをしているものの、結構簡単にメッキが剥がれるとか。

【メレンダ(原案:「青いカンテラ」様)】
元傭兵にして若干……若干? 陰の者な気質があるメカクレ少女。ドラリンドに対してはなにかしらの思い入れがあり、距離感がバグっているようだが……?
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