GBN:アラカルトダイバーズ   作:守次 奏

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投稿先を間違えたので初投稿です。


「それぞれの第二次有志連合戦/side:命の選択」

 ELダイバー。

 電子の海に生まれ落ちた一つの命、「サラ」が奇跡を起こしてみせたことで、一度マスダイバーとブレイクデカールによる被害を受けたGBNは奇跡的な復興を遂げることができた。

 しかし、その結果として全サーバーにばら撒かれた「サラ」の因子は新たなバグの温床となり、またもGBN全体を崩壊の危機へと陥れる結果になってしまったのだ。

 

 これに対し、運営はELダイバー「サラ」の削除を試みた。

 妥当な判断だと多くのダイバーたちがその決定を支持する中で、ただ一つ異議を唱えたフォースがあったのは、知っての通りである。

 ビルドダイバーズ。彼らがもたらした代案は、「サラの命とGBN、そのどちらも救うこと」であったが、その成功確率はわずか十二パーセント。ほとんど失敗するに等しいものだった。

 

 本来であればそのような主張は受け入れられない──運営権限でサラの消去を強行すべきであったが、またもそれに異を唱える者が現れたのも、知っての通りである。

 チャンピオン。GBNにただ一人君臨する絶対強者、個人ランキング及びフォースランキング一位の男、クジョウ・キョウヤである。

 彼の提案により、再び結成された有志連合と、フォース「ビルドダイバーズ」及びそのアライアンスによる変則フラッグ戦を行うこと、そしてその勝敗によりサラとGBNの処遇を決めるという、一見狂気の沙汰にも見える合意がなされたのだ。

 

 その結果が、今現在の混沌とした戦況だといえるのだろう。

 

『クソッ、「GHC」のやつら、寝返りやがったのか!』

『こちらアテナゲート! 通信妨害を受けて部隊が寸断されている! 誰か救援を!』

『次元覇王流!? なんだそりゃあ──!?』

 

 この第二次有志連合戦が幕を開けると同時に、真っ先に有志連合側を離反したフォースアライアンス、「GHC」こと、「グローリー・ホークス・カンパニー」が残した爪痕は大きかった。

 

『さて、親愛なる有志連合の諸君、私だ。「グローリー・ホークス・カンパニー」総帥……否、総統、アトミラールだ。この戦いを始める前に、我々から諸君らに送る言葉がある。僅かな時間を頂戴するが、聞いていただきたい』

「激励のつもりか、アトミラール?」

『ふっ……そのつもりだよ、ロンメル君。さて……我々から諸君らに送る言葉は一つ。「心に従え」。繰り返す、「心に従え」。この世界を守りたいと思うその心に、そして……サラ君を助け出したいと思う、その心に!』

 

 その演説に従って離反した直下の戦力が概ね二千、有志連合に参加していながらも立場を明確に決めあぐねていたダイバーや、最初から裏切るつもりだったダイバーも含めればその数は計り知れないだろう。

 爆炎と硝煙が立ち込める戦場の中、愛機である「ザウォート・マーセナリー・フルヘヴィ」を駆る、ワラビーのゆるキャラのような見た目をしたダイバー──ワラッカは、ぎり、と操縦桿を強く握りしめる。

 離反したダイバーを責めることはできない。

 

 すれ違い様に「GHC」が離反した証であるガミラスグリーンに染まったウィンダムをアサルトライフルの直撃弾で撃墜しながら、ワラッカもまた苦悩する。

 

「こちらGUND3、お客さんらのもてなしは上々ですぜぇ」

「……が、GUND4、す、3、及び、ふぁ、5の、か、火力、支援に……移り、ます」

「頼んだ。離反した勢力の大半は『GHC』だ……旗艦を落とせば恐らくこの騒動も収まることだろう」

 

 彼が率いているフォース、「GUND's Mercenary」のメンバーの顔が通信ウィンドウに映る度に、そして頭の中でサラという少女の怯えた様子を思い出す度に、ワラッカの中で鉄心が揺らぐ。

 本当であれば、どんな形であれ生まれ落ちた命を見捨てることなど出来はしない。それは理屈ではわかっている。

 だが、十二パーセントだ。わずか十分の一を少し超える程度の確率に賭けられるほどワラッカ自身は若くなかった。そして、なによりも。

 

「こちらGUND2なんだよ! GUND6以下の部隊と連携をとってるんだよ! 敵艦発見せり、なんだよ! 多分だけど、あれが総旗艦なんだよ!」

「朗報だ。ありがとう、GUND2。地上からも確認している」

 

 自分が率いているフォースは、「GUND's Mercenary」に所属しているメンバーは、リアルでなんらかの障害を抱える人間たちで構成されている。

 その障害とは様々だ。自分の力で歩くことができない者。喋ることができない者。誰かと上手く繋がることができない者。

 それぞれがそれぞれの傷を抱えて集まった寄り合い所帯。それこそが、「GUND's Mercenary」なのだ。

 

 健常者である自分がGBNを失うことはまだ我慢ができる。

 ワラッカは「GHC」の主力艦の一隻である「グローリアス・ジョージ」を照準に収めてそう歯を食いしばった。

 だが、彼らが。仲間たちが、このGBNでしか笑うことができないほどにつらい現実と戦い続けている者たちの拠り所が失われれば、皆はどこに行けばいい?

 

 その答えが不明瞭である限り、不明確である限り、自分はやるしかないのだ。

 引くしかないのだ、この引き金を。

 ワラッカはかつて酒を酌み交わしたこともある、いわば友ともいえるアトミラールの顔を思い浮かべ、そして、自らの死に怯えるサラの瞳を思い浮かべ、それでも、尚。

 

『識別コード認証! SMMです!』

『くっ、ジャミングがかえって仇となったか……回避運動! アリカ君! 弾幕を展開し続けたまえ!』

『無理です、総統! きゃあっ!』

 

 引き金を引いた。

 ワラッカのザウォート・マーセナリー・フルヘヴィの左背部に装備されているミサイルランチャーから対艦ミサイルが一本発射され、「グローリアス・ジョージ」の艦底に風穴を開ける。

 周囲の状況はジャミングのせいで混沌としているが、それはむしろアトミラール自身が口にした通り、自分たちにとっては有利に働く。

 

『三時方向に多数のザウォートタイプ……この統率……例の傭兵団です!』

『……彼らも必死だろうからな。二番艦と四番艦に迎撃に回せ、残りはこのまま前進する。三番艦はダメージコントロールをしつつ戦列を離れよ』

『敵機直上!』

『対空! なにを──!?』

 

 どうやら、GUND2が率いる航空部隊による爆撃も到着してくれたらしい。

 ティックバランの下部を改造して大量の爆雷投射機に仕立て上げたそれによる空爆は、いかに堅牢な「イラストリアス級」であったとしてもただでは済まない。

 正確には雷撃戦とでもいうべきなのだろうが、この際はどうでもいい。

 

「……リーニアたちは、戦うんだよ! みんな! 力を合わせてGBNを守るんだよ!」

『応!』

 

 まだ幼い赤毛の少女、GUND2ことリーニアの激励が、苛烈な弾幕に晒されている航空部隊を奮い立たせる。

 実際に何機かの味方は撃墜されてロビーに強制送還されてしまったが、それでも尚空から、陸から、様々な形で「GUND's Mercenary」のダイバーたちは「GHC」の艦隊を迎撃していた。

 ワラッカは次の対艦ミサイルの照準を旗艦である「イラストリアス・ウェールズ」の甲板に設置されているデスラー砲へと向ける。

 

「GUND1、こちらGUND17、敵旗艦の位置をそちらに量子通信で転送します」

「こちらGUND1、確認した。外しはしない……!」

 

 二発目の対艦ミサイルがランチャーから放たれ、白煙の尾を引きながら「イラストリアス・ウェールズ」の甲板に設置された巨大な砲台に亜音速で迫っていく。

 これでいい。

 この戦いは、自分たち有志連合側に大義があるのだ。例え友と銃火を交えることになったとしても、一つの命を消すことになったとしても──これで、いいのだ。

 

 ワラッカは、自分に強く言い聞かせるように三発目の対艦ミサイルを発射する準備に入る。

 だが、その刹那。

 

「こちらGUND17! 敵艦が迎撃機を下ろし──」

「……よくやってくれた、GUND17。GUND3、4、5はおれに続け! お客さんの歓迎パーティーだ!」

「アイアイサー! GUND3以下、了解でさぁ!」

 

 対地爆撃用のミサイルランチャーを投棄し、対MS戦装備のみを装備している仲間たちが「GHC」の四番艦から降下してきた敵のガンプラを、それぞれが選び抜いた武装で迎撃する。

 ワラッカもそれに倣って、アサルトライフルの掃射とビームキャノンの連射で、ガミラスカラーに染まり、ジェットストライカーを装備したウィンダムや105ダガーを撃ち抜いていく。

 一つ敵を撃ち抜くごとに心を殺し、己の心を鋼で覆っていくように務めながら。

 

 しかし、どうしても撃ち漏らしというものは発生する。

 有志連合と名前はついてこそいるが、実際のところ、およそ一万二千の兵力全てが連携をはかれているわけではないからだ。

 そしてなにより、「GHC」艦隊も相当な手練だ。簡単に釣瓶打ちにされてくれるわけではない。

 

 二番艦と四番艦から降下してきた部隊が次々とそのスリーマンセルによる連携で、個々の統率が取れていない有志連合側の機体を撃墜していく。

 圧倒的な劣勢に押し込まれて尚諦めることのないその姿は、本来であれば賞賛すべきところなのだろう。

 だが、今頃「AVALON」と「ビルドダイバーズ」が戦っているであろう本丸への救援に向かいたい自分たちにとっては邪魔でしかない。

 

「……そうは思いたくないものだったがな」

 

 ガンプラバトルとは互いに敬意をもって、お互いをリスペクトしてやるべきものだというのがワラッカの信念だった。

 だが、今自分はそれを曲げてしまった。

 そして、引き金を引いてしまった。心を閉ざさなければ、自分たちは大義のもとにそうしているのだと思わなければとてもじゃないがやっていられないほどに、その事実が両肩に重くのしかかる。

 

『ならば考えられないようにしてあげましょうか!? この忌々しく薄汚い「傷持ち」共が!』

 

 そのスラングで、「傷持ち」という名で自分たちを、「GUND's Mercenary」を罵るのは、内部事情を知っている人間だけだ。

 そして、それを知っている人間となれば更に限られてくる。

 加えて更に絞り込むのであれば「GHC」の関係者、それも社長であるアトミラールに近い人間であることは明白だ。

 

「──マキヤか!」

『ええ、ええ……よくぞ言い当ててくれましたともねぇ! しかし傷持ち風情が私の名を気安く呼ばないでいただきたい!』

「……傷持ち。か」

『この「デューク・O」の手で直々に沈めて差し上げること、光栄に思っていただきたい!』

 

 ドムトルーパーとジ・Oをミキシングしつつ、随所にオリジナルのギミックを仕込んでいるのであろうそのガンプラ──「デューク・O」の出来もまた賞賛すべきものだった。

 だが、ワラッカは今マキヤを褒めてやれるほど冷静ではない。

 その誹りを受けたことは、目の前で白手袋を叩きつけられたに等しいのだから。

 

「相手をしよう。かかってこい」

『どの口が言うんですかねぇ!』

 

 手招くように挑発し、ワラッカはザウォート・マーセナリー・フルヘヴィを飛翔させる。

 随所に重装甲化が施されつつも、フルヘヴィはテールユニットとして土星エンジンを組み込んでいるため、身軽なのだ。

 空中は地上に増して魔境だったが、それも道理だろう。GBNでは飛行スキルが必須スキルとして扱われているため、多くのダイバーは空中戦を好む傾向にある。

 

 だが、空中というのは地上と違って下からの攻撃も考慮に入れなければいけない。

 無数の弾幕を掻い潜りつつ、ワラッカはマキヤのデューク・Oを照準に収めてアサルトライフルのトリガーを引く。

 装弾数に優れていることしか特筆すべき点がない標準的な火器だが、それゆえに使いやすく、手に馴染んでくれる。

 

「我ながら。野良犬らしい」

『どうやらご自分の立場は認識されているようで』

 

 しかし、元が重量級の機体であることを感じさせないマニューバでマキヤもこれを回避し、ブースターが備えられたビームランスでの突撃を敢行する。

 

「……だが。野良犬には野良犬の意地がある! おれたち以外がその名を呼んだのならば、死の鉄槌を!」

『黙りなさい! 新たに生まれてくる命の、それも電子生命体という貴重な存在の価値を認められない野良犬が、人の言葉を喋らないでいただきたい!』

「どうやら本当に死にたいようだな! マキヤ!」

 

 ワラッカはビームキャノンの出力を引き上げて、ビームランスを構えて接近してくるデューク・Oに向けて照射する。

 怒りに駆られるのが自分らしくないとはわかっている。だが、その言葉は自分以外にも向けられた侮蔑だ。

 仲間に向けて、「GUND's Mercenary」の皆に向けて中指を立ててきたというのであれば、自分が我慢してやる道理もまたない。

 

 ビームランスの突撃を押し返したワラッカは、全力で機体を加速させ、デューク・Oの背面に回り込んだ。

 

『なっ、この機体のどこにそんな速さが──』

「終わりだ! マキヤ!」

 

 そして、三発目の対艦ミサイルを含めた全ての火器を一斉射する。

 いかにデューク・Oの装甲が分厚かろうと、イラストリアス級の底部に穴を開けた対艦ミサイルを含めた総火力が直撃すればひとたまりもない。

 バカな、と言い残す時間さえなく、デューク・Oはテクスチャの塵へと還っていった。だが、ワラッカの心に灯った怒りが消えたわけではない。

 

「各機に通達! これより『GUND's Mercenary』は『GHC』旗艦に向けて総突撃を敢行する! 適宜兵装を切り替えてこれに臨め!」

『了解!』

 

 そうだ。沈めなければならない。

 例え信念を捨てても、友情に背いても、道理を踏み倒してでも。

 癒しきれない傷を、今でも傷み続ける傷を抱えてこのGBNに救いを見出した、このGBNにしか救いを見出せなかった仲間たちのために。

 

 土星エンジンに点火したワラッカは、立ちはだかるウィンダムの群れを蹴散らしながら、真っ直ぐに旗艦である「イラストリアス・ウェールズ」へと向かっていく。

 さしもの「GHC」といえどこの圧倒的な物量を前にしては無事では済まなかったようだ。

 総旗艦である「イラストリアス・ウェールズ」は健在ながらも随所から黒煙を噴き出している。そして、なにより。

 

『やはり来たようだね……ワラッカ君』

「アトミラール……!」

 

 提督であるはずのアトミラールが、愛機である「フラッグP-38L/Mナイトライトニング」で出撃していることこそが、彼らの疲弊を示す証だった。

 

『君とは銃火を交えたくはなかった……残念だよ』

「それは。おれも同じ気分だ……だが!」

 

 アサルトライフルの掃射をフェイクとして、ナイトライトニングを正確に狙ったはずであったビームキャノンによる一撃を、アトミラールは急上昇からの急速変形という荒業で回避してのける。

 

「……これが。英傑の本気というわけか!」

『僕とて三桁ランカーではあるのでね!』

 

 ワラッカが振り抜いたビームサーベルと、アトミラールが引き抜いたプラズマソードがぶつかり合って火花を散らす。

 

「そうだよ……リニたちは、すっごく……すっごく苦しいんだよ! 痛くてつらいんだよ! でも、GBNがあるから笑えるんだよ! いやしくてもなんでもいいんだよ、リニは……そんなみんなの笑顔のために、戦うんだよ!」

「俺たちは……俺たちには、GBNしかないんだ!」

「GBNがあったから笑顔になれた! 『GUND's Mercenary』の皆がいたから、初めての……生まれて初めての友達ができたんだ!」

「私たちは……GBNを壊されたくない!」

 

 仲間たちが声を上げる度、ワラッカの瞳に涙が滲む。この引き金を引く指には、傷だらけで悲鳴を上げる心には、彼ら彼女らの想いがこもっている。

 だからこそ、退くわけにはいかない。

 なにがあっても、なにがあったとしても。

 

『新たに生まれてくる命がある、その価値は君にもわかっているはずだ!』

『テートクのいう通りデース! 新たに生まれてくる命以上に尊いものなどありマセン! だから、ここは絶対に……!』

「ならば。今を生きている者はどうなる……!」

『……ワラッカ君!』

「GBNでしか喋れぬ者がいる。走れぬ者がいる。繋がれぬ者がいる。今を苦しみ続ける命にとっての楽園を否定するのであれば、おれは引き金を引くのを躊躇わない! いくぞアトミラールぅぅぅッ!!!」

『ぐう、っ……!』

 

 ワラッカが振るったビームサーベルによる渾身の一撃が、アトミラールのナイトライトニングの左腕をもぎ取る。

 ティックバランを放棄して自由飛行に移ったリーニアたちの波状攻撃が、アトミラールを庇おうとして飛び出してきた「コンゴウ」の「レギンレイズ・ブレイズ」に容赦なく浴びせかけられる。

 それは声を失った者の叫びだった。それは今という時間()に縋る者の慟哭だった。

 

「ここから先は、Not passデース……通りたければ、覚悟をするデェェェェス!!!」

「覚悟ならできてるんだよ! だから、リニたちは負けないんだよ!!!」

 

 鬼神の如き形相で、コンゴウが操るレギンレイズ・ブレイズが繰り出す発勁が一人、また一人と「GUND's Mercenary」の仲間たちを撃墜していく。

 リーニアはそれを巧みに回避して、紙一重で必殺技のスロットを選択する。

 傷つき、尚健在な「イラストリアス・ウェールズ」に狙いを定めて。

 

「これで、終わるんだよぉぉぉ!!!」

『まずい、あれは核だ! コンゴウ!』

『Goddamn! 私たちの艦が……!』

 

 渾身の怒りと憎しみを乗せた「核弾頭」が、リーニアの操る「ザウォート・マーセナリー・リニ」の右背部に接続された榴弾砲から放たれた、刹那。

 

『そんなこと、させはしないわ!』

 

 戦場を切り裂く艶やかな叫びと共に飛来したカマが、核弾頭の弾頭部分だけを切断して投擲した主の手元に戻っていく。

 それだけで、ワラッカは──否、この戦場にいる誰もが、誰を敵に回したのかが一瞬で理解できてしまった。

 あれは、魔物だ。善なる者、善に立ち続けるからこそ悪に牙を剥く二桁の魔物。

 

「マギーさんか……!」

『……ラッちゃん。もうやめにしましょう』

 

 戦場に降臨した優しき魔物、個人ランキング二十三位の「マギー」と「ガンダムラヴファントム」が、慈悲をかけるようにそう呼びかける。

 

「やめにするだと……? ふざけるな! ならば、たった十二パーセントしかない、失敗も同然の確率にかけるのを黙って見ていろと!?」

『たった十二パーセントなんかじゃないわ! その確率はあの子たちが……ビルドダイバーズの皆が精一杯頑張って導き出した確率よ!』

「……その頑張りは認めよう。だが、今を……今を苦しむ仲間たちから、GBNを奪うことは……失敗は……許されないんだぞ!」

 

 土星エンジンをオーバーヒート寸前まで加圧して加速させ、ワラッカはマギーのラヴファントムに向けてビームサーベルを振り抜く。

 しかし、巧みなカマ捌きでそれをいなして、マギーはワラッカへ呼びかけを続ける。

 

『アナタ、気づいているんでしょう!?』

「……っ……!」

『今を生きる人たちの気持ちはよくわかると言ったら失礼かもしれないけれど……アタシもGBNがなくなるのなら反対よ!』

「ならば!」

『でも、サラちゃんだって今苦しんでいる! 消えたくないって、死にたくないって、泣いている! よりにもよって、アナタがそれを無下にしてはいけないでしょう、ラッちゃん!』

「……おれは。おれはァァァッ!!!」

『この……わからず屋さん!』

 

 土星エンジンがオーバーヒートする寸前までに、臨海寸前までに圧力を高めて加速した一撃も見切られて、ラヴファントムのビームカマによって、とうとうフルヘヴィも四散する。

 ──ああ、そうだ。

 サラもまた、今苦しんでいる、今がつらくて、心が痛くてどうしようもないと叫んでいる命の一つなのだ。

 

 それを、自分たちが。

 傷持ち同士で寄り添い合って、巡り会った「GUND's Mercenary」が見捨てるなんて、きっと最初からおかしな話だったんだ。

 でも。

 

「……それでも。おれは行くと決めたんだ、この道を……だから、アトミラール……マギーさん……」

 

 ──あんたたちが正しいっていうのなら、このおれを踏み越えていけ。

 

 ただそれだけを最後の言葉にして、ワラッカは四発目の対艦ミサイルを「イラストリアス・ウェールズ」に向けて撃ち放つ。

 ダメージが限界を超えていく中で、テクスチャの塵へと還っていくワラッカが見たものは。

 果たして、最後の対艦ミサイルをその拳で打ち砕く、コンゴウとレギンレイズ・ブレイズの姿だった。

 

 母は強し、か。

 そう呟くワラッカの口元は微かに綻んでいた。野道に咲く花のように。

 そしてその心もまた、雲の中から差し込んだ一筋の光に照らされたように、穏やかだった。




母は強し

【Tips:】

【GUND's Mercenary(ガンズ・マーセナリー)】
GBN/ガンダムメタバースの中に存在しているフォースの一つ。メンバーの乗機が全員ザウォート系列で統一されており、これにより戦場での継戦能力を高める狙いがあると目されている。実際にその連携能力は高く、GBN/メタバースに蔓延る傭兵集団としては上位クラスだと情報屋からは目されているが、メンバーが多くを語らないため、まだまだ謎が多いフォース。

実態としては「心、身体になにかしらの欠損を抱えた者の寄り合い世帯」といったところであり、メンバー全員がなにかしらの欠損を抱えている。それは自らの足で歩くことができない者であったり、自分ではどうにもできない孤独を抱える者であったりと性質は様々だが、皆一様に抱えているものがあることは確かである。そのため、メンバーがザウォートやザウォート・ヘヴィを改造した「ザウォート・マーセナリー」で乗機を統一しているのは「絆の証」であり、彼らのリーダーである青年への忠誠を尽くすという証でもある。

フォースリーダーは一昔前の海賊のようにトレンチコートを肩にかけたクオッカワラビーのようなダイバールックをした青年(推定)、ワラッカ。

名前の由来はGBN/メタバースを水星の魔女における「GUND技術が花開いた世界」と見立てて「GUND医療を受けた者たちの傭兵団」といったところ。そのため事情を知る者や、フォースメンバーが自虐的に自らを「傷持ち」と呼ぶこともある。

【ワラッカ】
一人称/おれ
三人称/名前、あんた、名前+さん

身長/
大体ロンメルより頭一つデカいぐらい

人物紹介/
トレンチコートを肩にかけている三頭身ぐらいのワラビー型のダイバールックに身を包んだ青年。ザウォート・ヘヴィに土星エンジンを搭載するなど、独自仕様にカスタマイズを施した「ザウォート・マーセナリー・フルヘヴィ」を愛機としており、傭兵としてオーダーされた戦場に合わせる形で装備を切り替えて戦っている。ゆるキャラそのものなアバターではあるが声は意外と渋い。リアルでは福祉事業に従事しているとか。面倒見のいい性格であり、困った人間を放っておけないため、GBN/メタバースの非公式ナビゲーターをマギー、カミオらと共に買って出ている。

サンプルボイス/
「おはよう諸君、おれはワラッカだ。メタバースの野良犬さ」
「仕事を始めよう。各位、装備は確かめたな?」
「ザウォートはいいガンプラだ。作りやすいしカスタマイズも豊富だからな」

【リーニア/オオトリ・リニ(鳳莉仁)】
一人称/リニ
三人称/名前+さん、あなた、あだ名

身長/
142cm

人物紹介/
傭兵フォース、ガンズ・マーセナリー(GUND's Mercenary)の副隊長を務める小柄な少女。しかし隊長のワラッカがマスコットキャラ並みの等身しかないので相対的には身長が高いバグが発生している。リアルでは聴覚に障害を抱えており、ガンダム作品と出会ったこともなかった。GBNを始めたのは両親が「フルダイブVRならもっとお喋りができる」という体でダイバーギアを買ってきたのがきっかけ。たまたま家電量販店で売れ残っていたザウォートでGBNを始めたが、案の定初心者への洗礼ヴァルガ送りの憂き目を見て絶望していたところをワラッカに助けられた過去がある。そのため、普段はワラッカの隣で人助けに勤しんでいる。ワラッカからはガンプラのカスタマイズ方法などを学んでおり、彼のことを「たいちょー」もしくは「ししょー」と呼んで慕っている。リアルでも筆談で色々なことを喋りたがる性格だが、GBNでは輪をかけてお喋り。第二次有志連合戦で「Morgan's Castle」と「ガンズ・マーセナリー」が手を組んだ際にとある吃音の少年と出会っており、歳が近いこともあって親交を深めている。そのことに対してルーフェアは肯定的だが、ワラッカは戦々恐々としているとか。結果的に世界もサラも救われたが、「皆とお喋りできる大切な場所」を壊す可能性が高い選択肢をとったビルドダイバーズには今でも少しばかり複雑な感情を抱いている。乗機はザウォートを改造した「ザウォート・マーセナリー・リニ」。

サンプルボイス/
「リニはリーニアなんだよ! この世界ではリーニアなんだよ!」
「ししょーからはいろんなことを教えてもらったんだよ! お喋りする仲間もいっぱいふえて、リニはたのしいんだよ!」
「みんながみんな上手に喋れないこと、リニは知ってるんだよ。だからリオくんもあせらずにリオくんの言葉でおしゃべりするんだよ!」
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