牝馬三冠に関する設定や、声の設定もあくまでも妄想ですので間に受けないように。
ただ、声は想像しながら読むと面白いと思います。
その事件は唐突に起きた。
とは言え、我々が起きたことに気付くまでは穏やかな一日だった。
トレーナーがホワイトボードの前で何やら書き込みながら言った。
「じゃあ、二人ともティアラ路線で良いな」
「はい」
「はーい」
ダイワスカーレット(声 木村智咲)とウォッカ(声 大橋彩香)の二人がそれぞれうなずく。
今日はそれぞれの目標と計画の為にチームスピカ内でのスケジュールを立てていた。
それぞれが思い思いの計画にあーでもこーでもないと話し合っていたのだが、不意にスペシャルウィーク(声 和氣あず未)が不思議そうに尋ねた。
「そう言えばティアラ路線とクラシック路線の違いって何ですか?」
その言葉に全員の動きがピタリと止まる。
トウカイテイオー(声 Machiko)が隣のメジロマックィーン(声 大西沙織)に尋ねる。
「そう言えば、違いって何だろ?」
「あんまり考えたことありませんわね……」
不思議そうに首を傾げる二人。
サイレンススズカ(声 高野麻里佳)が隣のゴールドシップ(声 上田 瞳)に尋ねる。
「知ってますか?」
「えーと……確かあれだろ? 昔は身分が低いウマ娘が出られるレースだったんだろ?」
それを聞いてくすりと笑うトレーナー。
「まあ、正解と言えば正解だな。詳しく言えばオークスが身分の低いウマ娘が出られる最高の賞だったんだ」
「へぇー」
スぺがあんまりよくわかって無さそうに相槌を打つ。
「そもそもクラシック路線は明治時代に欧米にレースを合わせる形で生まれているんだが、その時に身分の高い華族のみが出られるダービーとそれ以外が出るオークスに分かれていたんだ」
「なるほど」
納得するスズカだが、トウカイテイオーが不思議そうに尋ねる。
「じゃあ、桜花賞や秋華賞も?」
「その二つは元々レースですらなかったんだ」
「「「「えっ?」」」」
その場に居たゴルシ以外の全員が驚く。
ゴルシだけがどや顔になる。
「確か美しさを競うんだっけ?」
「正解。桜花賞は元々ウマ娘のミスコンだったんだよ」
「「「ミスコン!!??」」」
驚くチームの面々にドヤ顔で答えるトレーナー。
「欧米のミスコンテストが導入された際に、ウマ娘同士が美人を競ったのが桜花賞。そこで走る美しさを競っていたら、レベルが上がりまくって最終的にクラシック路線と肩を並べるようになったわけ」
「なるほど」
「歴史があるんですね……」
納得するテイオーとマック。
「だから八大競争に桜花賞、オークスがあるわけだ」
「あれ? でもそれだと秋華賞が無いんじゃ?」
スぺの言葉に今度はダスカが答える。
「秋華賞はウマドルのコンテストなんです。だからごく最近に出来たので、八大競争には入ってないんです」
「そうなんだぁ」
スぺもようやくどういった物かわかってきた。
ゴルシがにやけながら言う。
「ほら、昔はテレビでウマドルが大人気だったろ? ものすごい数のウマ娘が応募してきて、一時的にダービーより勝つのが難しいと言われてたぐらいらしいぜ?」
「そういうこと。それでレベルが上がったんだ」
トレーナーが説明する。
「今でこそ、レベルに大きな差は無くなったけど、今でも芸能活動を中心に考える時はまずティアラ路線にって話しになる。それ以外にも活躍の場が広がるしな」
トレーナーの言葉を聞いてダスカが笑顔になる。
「あたしはウマドルとしてナンバーワンになるの!」
「俺が一番になるんだよ!」
「「ぐぬぬぬぬ……」」
いつものように睨み合いになる二人。
それを見てトレーナーは少しだけ顔を曇らせる。
「そういや、昔に比べたらウマドルも大分優しい世界になったよなぁ……」
「??????何かあったんですか?」
「いや、お前達は若いから知らんだろうけど、昔は色々あったんだよ」
そう言ってトレーナーが何かを話そうとしたその時だった。
『おい! 凄い事になってるぞ!』
『見に行こうぜ!』
何やら外が騒がしくなってきた。
「何だぁ?」
不思議そうに窓を開けるトレーナー。
丁度そこに外に居るウマ娘の言葉が聞こえる。
「会長が正座させられてるらしいぞ!」
「すげぇ! 見に行こうぜ!」
その言葉を聞いてトウカイテイオーの耳がぴくりと動いた。
「……どういうこと?」
会長大好きのテイオーにとっては聞き捨てならない言葉だった。
とは言え、他のメンバーにとっても耳を疑うレベルだった。
「嘘だろ……」
「あの会長が正座?」
「何があったの?」
チームスピカの全員が驚く。
シンボリルドルフ(声 田所あずさ)と言えば生徒はおろか、先生ですら上座を譲るほどの実力者だ。
日本ウマ娘協会にも発言力があり、自他ともに認める最高のウマ娘の一人である。
それが正座させられるとなればかなりの大事である。
「行ってみよう」
トレーナーの言葉に全員がうなずいた。
会長室の前はすでに沢山のウマ娘がごった返していた。
あの会長が正座させられている姿を一目見ようと生徒たちが集っていた。
「こら、見世物じゃない!」
「入るな」
エアグルーヴ(声 青木瑠璃子)とナリタブライアン(声 衣川 里佳)が人払いをしているが遠巻きに見ようと生徒が集まっている。
「ちょっと通してくれ」
トレーナーが慌てて生徒を押しのけて会長室前に来る。
「何があった?」
「それが……あの方が来て、逆鱗に触れてしまって……」
「あの方?」
怪訝そうなトレーナーの耳に会長室から声が聞こえた。
「あたしを誰だと思ってんの! 誰のおかげでウマドル出来ると思ってんの!(声 水樹奈々)」
「それは勿論、ハイセイコーさんのお陰です……」
沈鬱な表情で項垂れるシンボリルドルフが正座していた。
その前には50歳くらいの昔は美人だったと感じる程度のやたら若作りをしている女性が仁王立ちしていた。
その姿をみて愕然とするトレーナー。
「ハイセイコーって……あのハイセイコーか!」
「はい……そのハイセイコーです……」
エアグルーヴの言葉を聞いて困った顔になるトレーナー。
「それで正座か……」
「はい……」
二人とも沈鬱な表情になる。
「と、とにかく理事長を呼んだのか?」
「はい……今、連絡させたとこなのですが、出先らしくてすぐには来られないそうです……」
「まずいな……」
トレーナーが困った顔になっていると、チームリゲルのメンバーが集って来た。
ビワハヤヒデ(声 近藤唯)が言った。
「話は聞きました!」
「よし、手分けして野次馬を遠ざけるぞ」
そう言って野次馬を離そうととするチームリゲルの面々。
それを見て安心したトレーナーはチームスピカの元へと戻る。
「トレーナー。会長はどうなったの?」
不安そうなテイオーに沈鬱に答えるトレーナー。
「厄介な人に捕まったみたいだ……どうもハイセイコーさんの逆鱗に触れたらしい」
「ハイセイコーさんですか?」
不思議そうなスズカの声にダスカの顔が青くなる。
「げっ! ひょっとして芸能界のウマドルのドンって言われてるハイセイコーさん?」
「どーりで会長が正座させられるわけだ」
名前を聞いてウォッカも顔を青くする。
スぺが不思議そうに尋ねる。
「ハイセイコーさんって何ですか?」
「まあ流石にスぺは知らんよな……」
困り顔でトレーナーは説明する。
「ウマドルという枠組みを作ったウマ娘だ」
「ウマドルを…………作った?」
不思議そうなスズカにダスカが言った。
「元々、レースしかやらないのがウマ娘だったんですけど、ウィニングライブを初めてやるようになったウマ娘なんです」
「そうなの?」
不思議そうなテイオー。
「そう言えば聞いたことがありますわね。おばあ様もお母様もウィニングライブなんてやらなかったって。あれをやるようになったのはごく最近と言ってました」
マックも小首をかしげているが、聞き覚えがあるようだ。
ゴルシが上を見上げて思いだしながらつぶやく。
「確か抜群のプロポーションに超が付く美人で、地方から中央に出てきたことでも話題になったって…………」
「そうだ。それ故に当時はハイセイコーが来ただけで客が倍になったと言われている。ついでに当時人気だったアイドルのコンサートみたいなことを競馬場でやるようになったのがウィニングライブの始まりなんだ」
「そうだったんですね…………」
スズカが静かにつぶやく。
その間にも会長は怒られていた。
「あんたねぇ! いい気になってるみたいだけど! あたしが一言言ったらどうなるかわかってんの!」
「はい……もちろんです……」
ルドルフ会長の疲れ切った声にいたたまれない気持になるチームスピカ。
するとゴルシがスマホを見せた。
「ほら、この人だよ?」
「へぇ……これが抜群のプロポーションをした美人ウマど……る?」
スぺの顔が曇っていくが、それは彼女だけではない。
ハイセイコーを知らない面々は不思議そうに首を傾げる。
美人と言えば、まあ美人だろうが、それはあくまでも当時としてである。
確かに今でも通用する美人だが、何と言うか素人系美人である。
さらに言えば体型も寸胴で全体的に平べったい。
思わず自身の体を見てしまうスズカ、マック、テイオーの三人。
「あまり私と変わらないような……」
「これなら私の方が大きいですわ」
「それに美人って言うほどかな?」
失礼なことをしれっと言い放つ三人に、トレーナーは沈鬱な顔になる。
「当時の話だ……と言うか、今のレベルが上がり過ぎたんだ……」
「……上がり過ぎた?」
不思議そうなスズカの言葉に沈鬱なトレーナー。
「さっきも言ったろ? 全体のレベルが上がってクラシック路線と肩を並べるようになったと。それは走る能力だけじゃない。顔とか体型とか歌唱力とか頭とか色んな物のレベルがあがって、下の世代とは到底肩を並べられなくなったんだよ……」
悲しいかな。レベルが上がると同時に前の世代が下位互換になる。
最初はトップレベルだったのに、後から来た連中に追い越されて泥を舐める羽目になる。
競争率が低い内は最強だったのに、競争率が上がり過ぎ太刀打ちできないぐらいになってしまう。
「ハイセイコーはウマドルとして大成功したが、それ故にウマドルを夢見るウマ娘が増えた。結果、顔も頭も体型も走りも良いウマ娘が増えたんだ。これでも当時はお嫁さんにしたいウマ娘ナンバーワンだったんだぞ?」
「楽な時代だったんですねー」
しれっと言い放つスぺだが、トレーナーは首を振る。
「確かにあの時代に生まれてたら、お前達なら簡単に天下を取れてただろうな……続けられるならの話だが」
「?? どういう意味ですか?」
「その時代の良さはあるのは確かだが、悪さも必ずあるってことだ」
そう沈鬱に語るトレーナーだが、後ろから声が聞こえた。
「すまんがどいてくれないか?(声 田村ゆかり)」
「そこを通してくれ(声 堀江由衣)」
二人の50歳ぐらいの品の良いおばさんが会長室へと向かっていく。
それを見てトレーナーはほっと胸をなでおろす。
「理事長があの人達を呼んでくれたのか……」
「あの人達は誰です?」
「タイテエム(声 田村ゆかり)とランドプリンス(声 堀江由衣)だよ」
スズカの言葉にトレーナーが嬉しそうに返す。
その間にも中からは怒声が聞こえてきた。
「大体! 誰のおかげで紅白にウマドル枠が出来たと思ってんの! あんたらが紅白出れるのは誰のおかげなの!」
「それは勿論……ハイセイコーさんのお陰です……」
泣きそうなシンボリルドルフの声が聞こえたその瞬間にタイテエムとランドプリンスの二人が入って来た。
「後輩虐めんなよ! 何やってんだよ!」
「そうだよ! お前はまだ良いじゃねぇか紅白出られたんだからよ!」
「あんたらは! タイテエム! ランドプリンス!」
二人が乱入したことでシンボリルドルフが少し解放される。
トレーナーがほっとして呟く。
「二人ともハイセイコーの先輩でな。当時のウマドル枠を開拓したウマ娘の一人だ」
「そうなんですか?」
「ああ。言うなりゃ戦友みたいなもんだ。無下には出来ない」
そう言って胸をなでおろすトレーナーだが、ウォッカもダスカも首を傾げる。
「でもタイテエムもランドプリンスも聞いたこと無いですよ?」
「そうですよ。誰なんです?」
「いや、確かに人気はハイセイコーよりも劣るかもしれんが、あの時代のトップウマ娘の一人だぞ?」
「でも私も聞いたことありませんよ?」
不思議そうなスズカだが、再び困った顔になるトレーナー。
「うん……だって、ウマドルに味を占めたスポンサーが早いウマ娘に無理矢理歌を歌わせてウマドルに仕立てようとした結果、当時のウマドルってハイセイコー以外は全然売れなかったから……」
「それって……」
「人気スポーツ選手が調子に乗って歌出して爆死するってやつだな」
ゴルシが微妙な顔で要約する。
良くあるパターンであるが、この手のネタには枚挙にいとまがない。
「タイテエムもランドプリンスもG1は一個しか取っていない……歌も他の爆死したウマ娘の中では売れているが、メジャーに行けるほどじゃなかった……」
発展途上の分野には良くある話である。
トレーナーは微妙な顔で答える。
「今でこそウマドルになるおおよその道筋や効率の良い練習はあるが、当時は全部が手探りだ。トライ&エラーの繰り返しだからな。その中では失敗に埋もれたウマ娘も多い。あれでも二人とも大成功したんだぞ?」
「はぁ……」
「そうなんですね……」
スズカもスぺも絶対にわかっていない顔で同意する。
とは言え、当時のことは当時の人しか知り得ない。
並ぶ者の無いほどの一世を風靡した最強の人も年月を経て風化していくのだ。
まして2番手3番手ともなれば消えゆくのはもっと早い。
トレーナーが当時を思い起こしていると、ダスカがつんつんとトレーナーの肩をつつく。
「どうした?」
「終わる気配がないんですけど?」
「うん?」
会長室の様子はさらに激しくなっていた。
「お前は良いじゃねぇか! 結婚もして子供も出来て紅白にも出れたんだから!」
「あたしらは全部手に入らなかったんだからね!」
「それ言ったらあんたらだってねぇ!」
「あ、あの……そろそろ喧嘩は止めて……」
「「「うるさい!」」」
「……はい」
収集が付かなくなっていた。
シンボリルドルフと言えど、止められないレベルになっていた。
「凄い……会長が全く歯が立たないなんて……」
「……どうやったら収まるんですの?」
テイオーとマックが頭を抱えたその時だった!
「お前らうるせぇぞ!(声 野沢雅子)」
廊下に雷のように轟く声にしんと静まり返った。
「落ち着けよシンザン(声 田中真弓)」
「そうはいかねぇ。けじめはキチンとつけねぇとな」
恐ろしい覇気をみなぎらせた老ウマ娘二人が会長室へと入っていく……
それを見てトレーナーが凍り付く。
「嘘だろ……シンザン(声 野沢雅子)とウメノチカラ(声 田中真弓)だ……」
「ええっ!」
「あの人たちが……」
全員が伝説のウマ娘の姿に凍り付く。
シンザンはまだ存命のウマ娘で最古参の三冠ウマ娘である。
言うなればウマ娘界の最高のドンである。
シンザンとウメノチカラが会長室に入ると、ぽつりと呟く。
「椅子」
「はい!」
慌てて二人分の椅子を用意するタイテエムとランドプリンス。
そんな二人を見もせずにシンザンとウメノチカラが椅子に座る。
「全員そこ座れ。正座だ」
「「「「はい!」」」」
慌ててハイセイコー、タイテエム、ランドプリンスと、何故かシンボリルドルフの4人が正座する。
シンザンがタバコに火をつけ、ぷかりと吸ってから静かに煙を吐く。
「でっ? この騒ぎは一体なんだ?」
「「「「……………………」」」」
思わず黙り込む全員。
どう説明してもヤバい雰囲気に4人は息を飲む。
飲むのだが、その直後!
ドン!
シンザンが思いっきり床を蹴った!
「説明しろって言ってんだよ!」
「「「「はいっっっっ!!!!」」」」
完全にシンザンに飲まれる4人。
すると横に居るウメノチカラが穏やかに宥めた。
「まあまあ、そんなに脅かしちゃこの子らが可哀そうでしょうが」
「ふんっ…………」
シンザンはぶっきらぼうに鼻を鳴らした。
ウメノチカラは苦笑しつつ、シンボリルドルフに言った。
「生徒会長さんだっけ? すまないねぇ。話は理事長さんから聞いたよ。とりあえずあんたは理事長さんと話しといで」
「…………すいません」
シンボリルドルフは二人に一礼して会長室を出た。
そして、シンザンは静かに笑う。
「あんたらは説教だ。わかってるな?」
シンザンの静かな笑みに三人は凍り付いた。
数分後…………
「いやぁ…………珍しいもの見たなぁ…………」
「ゴルシ…………そんなに言い触らすなよ?」
ゴールドシップが感慨深げに声を漏らすとトレーナーが苦言する。
シンボリルドルフは会長室を出ると同時に泣き出したのだ。
流石に色々と思うところがあったのだろう。
会長と言えど、まだ思春期の若い女の子である。
あの説教タイムは辛い。
ちなみにチームリゲルのお華さんの胸に縋りついていおり、その様子を困り顔でテイオーが付いている。
今はテイオー以外のメンバーがスピカの部屋に集まっている。
「しかし…………ああは成りたくないですね……」
醜い大人の部分を見て顔を顰めてしまうスズカ。
だが、トレーナーは難しい顔をする。
「ああ……言いたい気持ちはわかるが、いまのお前たちが自分の目標を目指せるのはあの人達が道を切り開いたおかげなんだぞ?」
「…………そうなんですか?」
疑うような顔でトレーナーを見るスぺだが、彼は静かに言った。
「あの人達の失敗が教訓になり、その教訓を元にお前達を育成出来るんだ」
そう言ってこんこんとホワイトボードを指す。
そこにはダスカとウォッカの目標であるティアラ路線と書かれてある。
「このティアラ路線だってそうだ。ウマドルが無ければ秋華賞は無い。桜花賞はミスコンの延長として、オークスはレベルが低いままだったろうな。ダスカやウォッカは普通にクラシック路線しかなくなるから、進める道も変えられない」
「「「「…………」」」」
道を切り開く時は犠牲がつきものである。
だが犠牲となった側にとってはたまったものではない。
「ウマ娘全体のレベルが上がった最大の理由はハイセイコーが今まで以上にお客さんを集めてくれたからだ。実際、ハイセイコー以前と以後では名馬の知名度が全然違う」
「そんなに違うんですか?」
不思議そうなスズカだが、トレーナーは答える。
「大体、G1一勝すればそれだけで有力ウマ娘になれるし、今の時代はそれだけで名前が残ってるだろう? でもタイテエムとランドプリンスの名前はお前達も知らなかっただろ?」
「「「「…………」」」」
「それはウマ娘レース自体への世間の注目度が低かったからだ。ハイセイコーが一般人に受けたから、レース人口やファン人口が増えた。結果、一般人ですらウマ娘の話題をするようになったのはごく最近なんだぞ?」
「「「「…………」」」」
流石に難しい顔でトレーナーの話を聞く面々。
言いたいことはわかるのだが、納得が行かないのだ。
若さゆえに理解が出来ない…………そして理解したくもないのだ。
その様子を見てトレーナーは苦笑した。
「説教臭くなったな。今日は解散」
トレーナーの言葉はやけに全員の心に響いた。