同級生の朝比奈さん   作:高菜チャハーン

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「おはよう!朝比奈さん!今日も早いねー。あれ?ハイライト仕事してなくない?あの…えっと……う~ん、顔がいい」


2話 前の席の秋田さん

秋田小町さん。

私と同じクラスで、席は私の一つ前。

テストでは大体80点前後の点数を取っている。配点の高い問題は全て正解しているのに、基礎問題は空白で提出することが多い。どうしてか聞いてみたら「ささやかな反抗、かな?皆には内緒だよ?嫌われちゃうからね」と返された。

 

よくわからない。

 

日頃から、授業で解りづらい箇所を聞いて来たり。想定されるケアレスミスを話し合っているし、秋田さんは意図的に100点を取らないようにしているように見える。クラスメイトと答案用紙を見せ合いながら、「いやー、時間見てなかったよ」なんて笑っていたけど。毎回解答時間の残り20分位になると前の席からペンを走らせる音が止むことを私は知ってる。それなのに、私がいつものように100点を取ると、「朝比奈さんは凄いね!」なんて言ってくる。

 

やっぱり、よくわからない。

 

部活動は水泳部に所属していて、クラスメイトが言うには、2年に上がる頃にはすっかり部のエースだったらしい。それを聞いていた秋田さんは、「そうだね!私だけ胸が小さいままだったからねぇ!何でだよホントによぉ!」と教室を飛び出してしまった。体育の授業でペアになった時も、別に運動神経が悪いようには感じない、それどころかとても良いと思う。

 

私が部活から帰るときもまだプールに明かりが点いていたりして、秋田さんが毎日熱心に部活に取り組んでいたのは知っていたし、「胸なんて大きくても困ることばっかりだよ?」と言うと「朝比奈さん…それフォローだとしても他の娘に言っちゃダメだよ?戦争が起きちゃうから…」

 

そう言った秋田さんの顔は今までに見たこともないくらいにしかめっ面だったのに、「ま。それはそれとしてフォローは嬉しいけどね。ありがと、朝比奈さん」なんていつもの笑顔を浮かべていた。

 

ますます、よくわからない。

 

秋田さんは先生やクラスメイトから信頼、されてる、と思う。[いいこ]の私と同じ様に頼られて。応えて。それが当たり前みたいに笑ってる。

思い返してみると、秋田さんは[いいこ]の私によく似てる。勉強ができて、運動神経が良くて、皆に頼られる。それでも、秋田さんが優等生と呼ばれているのは聞いたことがない。

 

何が違うのか、よくわからない。

 

 

 

そういえば、秋田さんには[いいこ]を演じていないときの私を見られたことがあった。学校内ではあったけど閉校時間も近づいていて、周囲に私以外の人の気配もなかった事もあり油断していた。いつもと違うことといえば、その日は前日に[25時、ナイトコードで。]名義で作品を投稿していたはず。秋田さんと曲がり角でぶつかって目があった瞬間は、突然のことで[いいこ]の演技が追い付かなかった。

 

「………っ!」

 

「おっと、ごめんね!……朝比奈さんは大丈夫?」

 

「…うん!大丈夫!こっちこそごめんね秋田さん」

 

「?どこか悪いとこがあったら言ってね、我慢して悪化するのが一番良く無いから。あと………いや、気をつけて帰ってね!」

 

「?うん!またね!」

 

あの時、秋田さんは間違いなく[いいこ]じゃない私を見ていたのに。それでも、秋田さんはいつもと同じように私と接していた。お母さんや友達に求められ続けた[いいこ]じゃなくて、自分のことも解らなくなった[ワタシ]と目があったのに。

 

なんだか、胸がざわざわした。

 

理由はわからない、けど試してみようと思って。秋田さんにワタシとして何度か接してみた。その度に、いつもみたいに笑って、秋田さんは応えた。

 

 

 

一回きりなら、ただの偶然だと思えた。気のせいにするならそれに乗じたし、踏み込んで来るなら誤魔化した。でも、[いいこ]の私に似てる秋田さんが[ワタシ]を見て、何も変化の無いことが、今も。目の前で椅子を向かい合わせて座って、いつもみたいに笑っている秋田さんが証明している。

 

「……ワタシを見ても、驚かないんだね」

 

「あ、おかえり。う~ん…前からちらほらその目をする朝比奈さんを見たことがあって、嫌なことあったのかな?とか、女の子の日なのかな?とか思ってたけど……今リラックスしてるみたいだし。こっちの朝比奈さんが素なんだなって思ったから、かな。ずっと顔見てくるから何事かと思ったよ」

 

「……それだけ?」

 

また、胸がざわざわした。

 

「うん。あとは~…優等生としての朝比奈さんは見てて頑張ってるなーって思ってたよ。仕事中のキャリアウーマンってこんな感じなのかなって。だから…お疲れ?ブラックコーヒーでも奢ろうか?」

 

「…要らない。どうして、ワタシにもいつもと同じように笑って接してくるの?」

 

 

求められた[いいこ]の私、解らなくなった[ワタシ]。全然違うのに、同じように笑ってる秋田さん。

 

もっと、胸がざわざわした。

 

「?…朝比奈さんは朝比奈さんでしょ?違う一面だったとしても、全部含めて朝比奈まふゆって人間だと私は思ってるんだけど……え?別人格だったりするの?」

 

「…違う。…………秋田さんは、他の人とは違いすぎて。よくわからない」

 

 

ざわざわしていた胸が静かになって、まるでアクアリウムを眺めてるときみたいに……?違う。けど、セカイでミクと居るときとも、違う。………やっぱり、よくわからない。

 

「あはは!よく言われるー。私自身、私のことよくわからないんだよね。でも、変える気も無いし。間違いだとも思ってないからなー。う~ん、末期。いや、手遅れ?」

 

 

 

………………え?

 

「…え?」

 

「あ、そろそろ他のクラスメイトが来る頃だね。今日も頑張るかー!あぁ、そういえばさっき朝比奈さんに見られてたときに[Untitled]って曲がインストールされたんだけど、何か知ってる?」

 

 

……………え?

 

「う、うん。…」

 

「よかったー。じゃあ今度時間があるときに教えてね!」

 

「…うん」

 

……………え?




ねぇ、我がクラスが誇る美少女二人がずっと無言で見つめ合ってるんだけど、これ見ても大丈夫なやつ!?
ちょっと!そんなに騒いだらバレちゃうって!
あ。秋田さんがこっち見た
( ̄b ̄)シー

(^-^)ゝ゛バタッ

(^_^ゞ

(^-^)/

あ。倒れた
ちょっ!鼻押さえて保健室!
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