同級生の朝比奈さん   作:高菜チャハーン

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 秋田さん。書いて欲しい書類があるから、放課後に会室まで一緒に来てもらっても良いかな?勿論、部活動が終わったらでいいから。あっ、終わったら連絡が取れるように連絡先の交換してもらっても良いかな?


3話 セカイに行く秋田さん

 ゴリゴリの優等生フェイスで朝比奈さんが話しかけてきたのが今日の昼休憩のとき。

 

 お昼は母さんの作った弁当を速攻で平らげて、残った時間は気の向くままにふらふらと校内を徘徊する。そんな私の習慣を知ってか知らずか、午前中の授業を終えて活気立つクラスメイトの中。朝比奈さんは私に接触して来た。

 

 つまり、衆人環視の中、有名な優等生が業務の名のもとに、有無を言わさぬスケジューリングと連絡先の交換を迫ったのだ。

 

 断ることは許さない。というよりは周囲に対してのアピールだろうか?今日の放課後、朝比奈さんと私は用事がある。私情ではない。連絡先を交換するほどにこれから接触が増える。というような。

 

 情報を自ら明かし広げることで他者の行動を牽制し、出刃亀を抑制し、今後の行動をしやすくしていると取るなら……

 

 今日の放課後に時間がある、人気は無い方がいい、そして。簡単に説明出来るものではない。というところだろうか、優等生としての朝比奈さんの立場を利用した上手い手口だ。

 

「オッケー、じゃあさくっとトモダチに登録しようか」

 

「うん!面倒だからって忘れちゃダメだよ」

 

 ……一瞬。ハイライト仕事して無かったな。朝比奈さん圧を掛けるの天才的だよ…表と素の顔完璧に使い分けてない?それとも無意識でこのクオリティなの?末恐ろしいよ。

 

 

 

 

***

 

 ガチャ…ガチャ…ガチャリ、プール場へと続く道を忘れ物が無いか確認しながら施錠していく。

 徒歩で通学している私なら電車のダイヤを気にしなくても良いから、と申し出てはや数ヶ月。部活終わりの戸締まりは私が行っている。

──その方が都合が良いし。

 

 鍵を職員室に持っていくのは朝比奈さんの用事が済んでからで良いかな。……さて。片付けもすんだし、朝比奈さんに連絡してみるかな。部活も終わってる時間だし、通話でいいか。

 

『お疲れー。部活は終わったけど、会室に向かったらいいの?』

 

『そう』

 ……うん。朝比奈さんの近くに他の人は居ないみたいだね。素のときの声のトーンだ。

『オッケー、じゃあこれから向かうよ。何か必要なものとかある?』

 

『特に無い』

 

『わかった。それじゃあ、またあとでね』

 ……こんな時間に個室で二人っきりとか、朝比奈まふゆにバレたらとっちめられそう……

 

 そういえば。今まで朝比奈さんに嫌われてるものだと思っていたけど、今日の朝の様子を見るにそういう訳じゃ無くて。優等生を演じている朝比奈さんとは、別の側面の朝比奈さんとして私と接していただけなのか。

 

 ただ、朝比奈さんの言い口からして、優等生としての自分ではない一面……今朝のような─まぁ、仮に素の朝比奈まふゆとするか。その、素の朝比奈さんが受け入れられるものではないのだと感じている節を感じた。

 

 なんだか私の対応にずっと疑問を持っていたみたいだし。いや、優等生と素のときで一切の変化無く対応しただけなんだけどね。嫌われてるんだろうとは思ってたけど別にそんな事どうでもいいし……あ、これがおかしいのか?

 

 

 

 

***

 

 

「お待たせ。待った?」

 

 朝比奈さんが所属している学級委員の会室に向かうと、テーブルの上に数枚のプリント用紙を並べてあり、それを眺めるように朝比奈さんが座っていた。

 

「別に。それよりこれ書いて……話はそれから」

 

「オッケー……水泳大会の賞状の受賞者名の確認と、それを学校のPRに使って良いかの承認のサイン…こんなのあったっけ?去年も賞状何枚か貰ったけどこんなの無かったよ?」

 

「…今年の新入生に何人か、特殊な人が居るからだと思う。アイドルと、御令嬢?ってクラスの誰かが言ってた」

 

「へー、朝比奈さんはあんまり興味無さそうだね」

 私も興味無いけど。と返しながら書類に秋田小町と記入していく。…それにしてもこの名前、何度も書いてると名付け親に沸々とした怒りががが。

 

 名字が秋田で8月18日に産まれたからって娘の名前を米の品種と同じにするとかなに考えてんだあの阿呆共。二人とも過労で頭狂ったとしか思えないんだけど──

 

「……終わった?」

 ─おっと。頭の中で親に毒づきながら、書類を確認して名前書いてたけど。さっきので最後だったみたいだ。朝比奈さん?終わった瞬間聞いてきたってことはずっと見てたってこと?ちょっと恥ずいぞ?

 

「うん。問題ないよ」

 書類の後で話すって言ってたし、今朝の一件以降私のスマホに保存されている音楽ファイルについてだろう。

 

「[Untitled]についてだけど、見て貰った方が早いと思う」

 曲を再生して。と言われて自分のスマホを操作する。朝比奈さんもスマホを取り出してるけど、同じ曲なら一つの端末で良いのでは?あと、聴くじゃなくて見るってどういう?

 

まぁ、とりあえず再生してみるか

 

 

***

 

 

───綺麗だ。

 

 どこまでも続く世界は仄暗く、微かな光を放つ円形と三角形。そして、上空から差し込む柔らかな光芒。

 

 所々に突き出た三角錐、あらぬ方向へと伸びる鉄骨………一つだけ人工物なのなんで?

 

 それはともかく。暗さといい、静けさといい。なんとも言えぬ無機質感と幻想的な風景。それでいて実家のような安心感………私死んだんか?いや、ちょっと居心地が良すぎて逃げたくなっちゃうな。

 

 

 ──思い返せば[Untitled]を再生したとき。スマホの画面を見ていた私は強烈な光に見事に目を焼かれ、某大佐よろしくのたうち回って。ふらつく頭で周囲を見渡したら、そこは明らかに別世界。

 

 あまりの綺麗さに見惚れていたけど。一緒に居た筈の朝比奈さんの姿は見当たらない……まぁ、朝比奈さんの言動から[Untitled]を再生したらこの世界に来ることは知ってたみたいだし。手慣れてたから、何度か来たことがあるんだろう。

 

 それなら…ちょっと散策してみても良いかな?朝比奈さんだって、見て貰った方が早いって言ってたし?オタクとしては、こんな不思議体験にワクワクするなって言われても無理だからね!

 

 ……あ、リピート再生にしておいた方が良いかな?曲が終わったら強制帰還とかされたら、朝比奈さんと合流出来ないかもしれないし。

 いやー、楽しくなってきたなぁ!

「~♪~~♪」

 




……っ!この音。ミク…

うん、まふゆと一緒に来た子。……なんだか楽しそう

………そう。
(でも、ここにこれたってことは。秋田さんも……)
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