「も、もしもし?俺だが…今中高浜公園にいるんだが、じ、時間大丈夫か?」
「ん?どうしたの?ヒッキー?」
深呼吸…俺はここで逃げるわけにはいかない。
「大事な話があるから…来てくれ」
「…!すぐ行く!」
っと言い、電話が切れる。
「頑張ったぞ…俺」
そう自分に問いかけながら、由比ヶ浜を待つ。
しばらくして「ヒッキー!」という掛け声が聞こえる。
「おう、来たか」
「おまたせ!ヒッキー」
ちょっと息切れする由比ヶ浜を落ち着かせ、少し時間を置いてから本題に入る。
「あのな、看病してくれた時あったろ?」
「う、うん」
「そん時からかお前に意識するようになったんだよな」
「うん、え?…それって」
「あぁ、まぁつまりだが」
俺はこの一言で…集中力を最大限まで…
「好きだ…付き合ってくれないか」
すると、由比ヶ浜の目から涙が零れる。
「遅いよ…ヒッキー」ポロポロ
「由比ヶ浜…?」
ダキ
俺の体全身に柔らかい感触を感じる。そして由比ヶ浜の泣く姿。いつもなら振り払うが…できるわけないだろ。
「待たせたな、由比ヶ浜」
「違う…」ポロポロ
「ん?」
「結衣って呼んで」
まぁ俺はたった今、由比ヶ浜の恋人になったからな…しょ、しょうがない。
下の名前を呼ぶのは小町だけだったから物凄く緊張した。由比ヶ浜の上目遣いに負けてしまった。
「ゆ、結衣…///」
俺は噛みそうになる舌をどうにか抑えて名前を呼ぶことができた。
「えへへ…///」
彼女は少し嬉しそうに…自分のお団子を弄る。
俺は多分、赤面して上手く会話することは出来ないだろう…。
由比ヶ浜を直視する事が出来ないのが物語っている。
「私もさ…これからは名前で呼ぼうかな…///」
「お、おう」
「八幡…これからよろしくね!」
彼女のその笑顔は…今まで見てきた笑顔とはまた違う笑顔のように感じた。
「あぁ、よろしくな…結衣」
やはり、名前呼びは慣れないものなんだな…
付き合ってから、結衣は母親と料理の練習をしているらしく、最近は弁当を作ってくれるようになった。中々上達して、今では普通に食ってる。
最近は2人で遊びに行く事も多くなってきた。家デートでもいいんだが、結衣は外であそびたいらしく、結構振り回されている。まぁ楽しくないわけではないけどな…
そして、あっという間に月日は流れ…俺達は進級し高3になった。
「ヒッキー!一緒に帰ろ!」
高3の夏。今年の夏は猛暑で毎日ヒッキーしたいくらいだった。あっいつもか…
「おう、今日はハニトーいいのか?」
「暑いから食べる気分じゃないんだよね…あはは」
やっぱりいつもの呼び名がいいということで、俺はまたヒッキーと呼ばれる事になった。ヒッキーって引きこもりのヒッキーって意味かと最近思うようになった。だって小町が言うんだもん。俺のせいじゃない。
「だよな、アイスでも食いに行くか?」
「うん!行こう!」
こんなに暑いのに…俺達は手を繋ぐ。お互い汗をかいていて、少し照れながらも手を離さない。
「最近暑いね〜」
結衣は手をパタパタさせながら言う。
「だな…今年は去年より気温が高いらしいぞ」
「えぇ!?まじ!?」
こういった日常会話が楽しい時間になった。
ぼっちだった俺には夢のような日々を送っている。こんな俺に寄り添ってくれる仲間ができた事で俺は変われた気がする。本物を手に入れた…と信じる。
「てか、アイスはどこで食うんだ?」
結衣は少し照れながら、俺の前に立つ。
お団子頭を撫でながら、ニコニコしている。
「ヒッキーのお家、行きたいな」
「…//」ポリポリ
そういや、俺の家に来るのは久しぶりだったか、
彼女とはいえ…いや、彼女だからこそ家に招き入れるという事に、色々考えてしまう。
決してやましい気持ちがあるわけてはない。本当です。男の子だからといってそんな事考えない。嘘です。小さくなった時とかめちゃくちゃ緊張しました。ごめんなさい。
「お、おう」
情けない声で返事をする。
俺の頭の中何を考えているのか、自分自身にも分からない。ただ涼しい部屋でアイスを食いながら駄べるだけだ。何も考える必要はない。
「じゃ、帰りにスーパーかコンビニ寄るか、アイスがないんだわ…」
小町が全部食ってしまったからな。
「うん!」
相変わらず元気な声で返事をする結衣は、とても可愛く思えた。
家の近くのコンビニでアイスを買い、家に入る。
家には小町もいない、親もいない。つまり、2人っきりの状態である。部屋で2人っきりってだけで緊張してしまうのは初々しい証拠なのか…
俺だけではなく結衣も少し赤くなっている。熱中症かと思うくらいに…
「涼しい〜!!」
エアコンを付けて涼しくなった部屋に座り込む俺達。
だが帰ってきた時は汗だく状態。
風邪引かないように気をつけないといけない。
「風邪引かないようにな」
「は〜い!」
俺も結衣もお互いを看病した仲だ。ほんとあの時は奇跡?なのか知らんが、風邪を移した割にはタイムロスが生じる。一体何だったのだろうか。
「ヒッキーは大学決まった?」
「あぁ決まったぞ」
「あたしもヒッキーと同じとこにしたいなぁ」
俺が受験する大学は私立の中でも難関とされる大学。
3教科とはいえ難しい。俺は模試でB判定しか取れなかった。
「教えてやるよ」
「本当!ありがとう!」
俺も正直結衣と一緒にいたいからな。べ、別に離れて寂しいとかないんだからね!勘違いしないでよね!
鞄から教科書とペンケースを取り出した結衣はガッツポーズをし、教科書を開く。
俺は古文の参考書を取り出し、問題を解く。
数学をやらなくていいのは便利だ。
ちなみに俺が受ける大学は第一志望を3学部、第2志望1学部。
商学系と文学系と社会科学系を受ける予定だ。
「結衣は学部決まったか?」
「うーん…あたしは教育系に行こうかな」
俺達が受ける大学は学部が別でも同じ講義を受けられるらしいから、受かりやすさを考慮した方がいいか。
「そうだな」
「勉強頑張ろ!」
結衣は春から俺と勉強してきたため、偏差値は少しずつ上がっている。このまま頑張れば受かる可能性はある。
「お前成績は上がってるからな、行けると思うぞ」
「ありがとう!!頑張るね!ヒッキーも頑張って!」
互いに同じ目標。
モチベーションが上がる。
ガチャ
「あれ?お兄ちゃん帰ってきてたの?」
「おう小町」
「やっはろ〜!小町ちゃん!」
「結衣さんやっはろ〜!」
やっはろ〜一族は里を追い出されたはず…と頭の中で某漫画とコラボさせている俺は間違っているのだろうか。くだらない事を考えてしまった。
夏休みは勉強やデートをしたり、充実した夏だった。いつもの俺ならお家でゲームしたり読書してるはずだが、やっぱり結衣と一緒にいるのは楽しいんだよな。
夏が過ぎ、普通に学校がある平日。
相変わらずの日々。戸塚は可愛い。結衣も可愛い。最高である。だがそれ以外はぼっちと変わらない。
てか関わりが少なすぎるって事だが…
放課後になり奉仕部へ向かう。
「ヒッキーここ分かんない…」
「漢文か」
最近依頼は来ない。材木座も受験するんだろうか、執筆をたまに本人が来る。
「ハチマーン!ここ教えてくれ!」
「うるせぇ…ここはな」
材木座も社会は出来るから意外と凄い。たまにすごい。
「由比ヶ浜さんそこ間違ってるわよ」
「えぇ!まじ!」
国立理系志望の雪ノ下がめちゃくちゃ教師っぽい事をしている。
ガララ
「先輩〜今お時間よろしいですか?」
一色が書類を持って部室に入ってくる。
「生徒会の手伝いなら出来ないぞ」
「あっいえいえ、確認だけしてほしいなって!」
「おう、ならいいぞ」
一色も最近は小町達と一緒に生徒会を頑張っているらしい。八幡は嬉しいぞ。
書類作成も上手くなっているし…
生徒会長としての威厳を保っている。
「えっへん!」
俺が褒めるとドア顔をしてえっへんポーズをする。
「頑張ったな〜」ナデナデ
「…!///」カァ
おっと癖が…
小町にいつも撫でてるから癖がついちまった。
「むぅ!ヒッキー!あたしも!」
「お前はいつも頑張ってるな、偉いぞ」ナデナデ
「えへへ、好きぃ」
「ぐふぅ」
材木座が死んだ。
「比企谷くん…私もいいかしら」キリッ
小さくなったおかげでハーレムってか…どういうギャルゲ?
「勉強できねぇ」
秋模試が終わり、自己採点をする。
「お、記録更新だ」
目標点を大きく上回った。
志望校に少しずつ近づいてきた気がした。
緊張が解れ、ふぅっと息を吐く。
「ヒッキー!」
少し騒がしい教室の中で結衣の声がハッキリと聞こえた。
なんで教室かって?秋模試終わって自己採点する気力がなかったので教室で自己採点をしていた。
睡魔には勝てないんだよ。許せ。
「おう、結衣はどうだった?」
「目標点超えたよ!!」
どうやら結衣も点数が安定しているらしい。
まさか結衣がちゃんと勉強できるようになったとは…教えた甲斐があったってもんだな。
「この調子でやっていこうな」
「うん!あとさ…」
結衣は顔を赤くし、体をモジモジさせながら…お団子頭を撫でる。結衣の癖なのかっと疑問に思いながら、話を聞く。
「いつもみたいに…その、撫でて欲しいな!」モジモジ
最近結衣が成長する度に撫でている。それは結衣のモチベーションを上げる良い素材となっている。それが俺の手だ。ソースも俺。
「おう」ナデナデ
「えへへ〜」テレテレ
リアジュウバクハツシロ
ウラヤマケシカラン
ボッチダッタクセニ
オシアワセニ
ボクモハチマンニナデテホシイナ
なんか周辺から睨まれてる気がするのは気のせいだろうか。戸塚…何回でも撫でてやるよ。
「じゃあちょっとお手洗い行ってくるね」
「おう」
結衣が席を立ち、教室を後にしたあと、葉山が近づいてきた。
「ヒキタニ君、どうだい?成績は」
「順調だ」
葉山は確か雪ノ下と同じ国立志望だっけ…
やっぱ勉強も運動もできる奴は違うな。
「結衣をよろしく頼むよ」
「唐突だな…」
「いや、君が変われた気がしたからね」
「まぁ、そうだよな」
俺は確かに変わった気がする。だが断言はできない。
また最悪な選択をするかもしれない。
結衣を悲しめる言葉したくない。結衣は俺を選んでくれた大事な人だ。
もう、後悔はしたくないからな。
「もう結衣達を悲しませたりしないでおくれよ?」
「当然だ」
葉山は微笑みながら頷き、グループの方へ向かう。
「復習するか」
時間の流れは早く感じる。
もうクリスマスである。外は雪が降っており家でカタツムリになっている小町とカマクラ。
俺は暖房が付いた部屋で過去問演習をしている。
クリスマス当日、結衣との予定が入ってなかった。
「そういや、連絡ないな」
いつもなら連絡してくれるはずだが、今日に限ってなかった。
「メッセージしてみるか」
俺は状況を把握するべく、[受験勉強どうだ?]っと送った。
それからしばらく経ち、携帯が鳴る。
[ごめんねヒッキー…風邪引いちゃったw]
どうやら風邪を引いたらしい。
俺は荷物の用意、着替えを済ませ…小町に一言入れてから家を出ることにした。
「ちと行ってくるわ」
「はーい、結衣さんとデート?」
「ん、まぁそんなところだな」
「楽しんでね!」
デートみたいなもんかな、俺が好きになったきっかけが風邪だからな。
「さむ」
外は凄い寒い。だが夏よりはいいな。着れば着るほど暑くなるからな。
地面が凍ってないおかげでチャリで結衣の家まで行くことができた。歩いて行くと時間がかかるからな。
ピーンポーン
結衣の家に着き呼び鈴を鳴らすと、結衣のお母さんが出てきた。
「あらヒッキーじゃない、こんばんは!どうしたの?」
「こんばんは、結衣…由比ヶ浜さんが風邪引いたとの事で、お見舞いに」
「あら!貴方もお見舞いに来てくれたの?ありがとうね!さっすが結衣が選んだ彼氏だこと!」
貴方も?雪ノ下も来たのか…
「ささ!寒いだろうから上がって!」
「お邪魔します」
結衣の部屋の前に立ち、ノックする。
すると咳払いをしながらでも元気な声で返事をする声が聞こえる。
「邪魔するぞ」
「え?ヒッキー?」
コンビニで買ってきたポカリとかを机に置き、結衣の傍に寄る。
「来てくれてありがとう」
「大丈夫だ」
結衣は少し笑顔を見せ、もう一度横になる。
「お前、もう平気なのか?」
「さっきゆきのんが来てくれたから、だいぶ楽になったよ!」
やはり雪ノ下が来てたのか。
「えへへ、なんか久しぶりだね」
「だな」
小さくなってた時も、こうやってお見舞いに来ていた。小さかったから看病するの苦労したけどな。
「ヒッキーも体には気をつけてね!」
「当たり前だ。ガハマさんみたいに風邪引きませーん」
「な!?なんだと!?風邪引いたらニヤニヤしながら看病してやるからね!」
結衣はムスッとしながら言う。そして少し微笑んだ。
「夜景が綺麗だな」
窓の方に目線をやると月がハッキリと見えた。
「だね…ヒッキー」
俺は結衣の方に目線を向けると…
微笑みながら俺の手を握り…
「受験が終わったらはいっぱい遊びに行こうね!」
「おう」
その後は由比ヶ浜家で夕飯をご馳走してもらい、帰宅する。ガハママさんがグイグイきて、結衣を嫉妬させてた。可愛かった。
3月
受験を終え、今日が合格発表の日だ。
「緊張するな」
「だね…」
平塚先生に許可を得て、部室で合格発表を見ることにした。
番号が出て、指でなぞりながら確認する。
「「あった」」
俺達の番号があった。
つまり合格したって事か…
「やったな!」
「うん!やった!」
共に第一志望の大学に合格した。
同じ大学に合格したのだ
「ヒッキー」ポロポロ
「あぁ」ナデナデ
結衣はこの1年間良く頑張った。俺が保証する。
険しい道だったが諦めずに勉強して、偏差値も上げ、見事現役合格を果たした。
「ヒッキー」
「うぉ?」
結衣の手が俺の頬を挟む。
結衣は緊張がしながら俺に顔を近づける。
チュッ
「えへへ」
「…」ポリポリ
照れ隠しなのか、俺は何も言えなかった。
「やっとちゅーできた!」
「急にするなよ…心の準備ってのがな…まぁ、嬉しいけどよ」
「相変わらずツンデレなんだから〜」
結衣のニヤニヤした顔を見るのは何回目だろうか、見慣れた顔なのに…ファーストキスを取られてから、その顔を見ることができない。
今の自分の顔が情けない顔をしているのは自覚済みだ。
「これからもよろしくね!八幡!」
「あぁ!」
俺と結衣の関係を無くしたくない。
そう思いながら結衣を抱きしめる。
やはり俺がリア充になるは間違っていなかった。
誤字脱字などありましたら…教えてくれると助かります。