月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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7:人間と北の女王

「・・・ここも、ですか。」

 

 

「あぁ、ひどい有り様だな。」

 

 

 ライネックの件から700年程が経ち、『大厄災』がやってくる時期となった頃。そんな時に、妖精達の暮らす村が幾つか潰れ始めていた。

 

 

「やはり他の事例同様、北に痕跡が続いている。これは間違いないだろう。」

 

 

「・・・北の妖精の仕業か。全くこんな時期に面倒事を増やしおって。」

 

 

 破壊痕はあちこちにあるが、それでも相当の頭数で移動した痕跡は今まで調査したどの村でも残っている。これが自信の現れでなければただのマヌケという事になるが・・・。

 

 

「フンッ、北の妖精共が幾つも村を滅ぼせるとは思えんがな。どういう手を使ったかは知らんが、一筋縄ではいかんようだ。」

 

 

「えぇー、考えすぎじゃないかライネック(・・・・・)?ムリアンのヤツもそんなこと言ってたけどさー。」

 

 

 こういう時のライネックの意見はグリムの次に参考になる。戦闘に於いての観察眼はこういう場でも遺憾なく発揮されるようだ。

 ・・・ライネックがオレ達の仲間になった経緯はかなり複雑なので機会があれば話そう。

 

 

「ねぇエクター、モードレッド。一つ違和感があるのですけど・・・。」

 

 

「オマエさんも気づいたか。血の痕がないのはここらだけだ。」

 

 

 村の中だけでなく、外にまで続く血痕。しかし、たった一箇所だけ破壊されてはいても血の流れていない場所があった。

 

 

「人間小屋、だな。相変わらず逃がさない作りだけは立派だよ。」

 

 

「・・・まさかとは思うが。」

 

 

「そのまさかかと。北の妖精は人間を連れ込むことで戦力を増強しているのでしょう。」

 

 

 ブリテンの妖精は近くに人間がいるというだけで力を増す・・・だけでなく幸福感すら感じる。つまり、妖精にとって人間は生きるエネルギータンクのようなものなのだ。

 そして逆説的に考えれば生きてさえいればいいので、遊び道具として死に至らないまでの仕打ちをしたり、最悪人数が多ければ一人ぐらい減ってもいいだろうと実際に殺してしまうことも少なくはない。

 北の妖精が人間を攫うのはそうした供給が不足しているのか、あるいはただ遊び道具が欲しいのか・・・。

 

 

「今日はもう撤収しましょうか。これ以上の収穫は無さそうだし、何よりみんな疲れてるだろうしね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば、不自然だったのだ。何故わざわざ人間を攫ったのか。何故南の妖精から奪う必要があったのか。オレ達の知るケースであれば村の中で殺し合いなんてこともあるが、ここ最近はそういった話は飛んでこなかった。

 故に、目的そのものが別だったことを追求すべきだった。

 

 

「全くグレイマルキンのヤツ!ボク達への扱いが雑なんだわ!あのにゃーにゃー声もイヤになりそうだ!」

 

 

「まぁまぁトトロット、そこは報酬を貰えるだけありがたいと思いましょう。そういうところだけはキチンとしてますから。」

 

 

 救世主使いの荒い、もとい上手いグレイマルキン(クソネコ)の依頼を終えた道中、不満を漏らすトトロットとそれを宥めるトネリコ。そしてオレのすぐ側にも不機嫌なヤツが。

 

 

「チッ、あのクズめ。やはりあの時殺して置くべきだったか。」

 

 

「ライネック、言うまでもないと思うが・・・。」

 

 

「わかっている!・・・フンッ、つくづく性に合わん事だ。」

 

 

 最早殺意を出すまでに至るほどの嫌悪感を抱くライネックに申し訳程度に釘を刺す。

 ここだけの話、トネリコやトトロットよりも突っ込まないので本当に助かっている。その分手に負えなくなった時が辛いが、それでもこちらの負担量が軽減されるのは助かる。いやこれ以上増えたら胃がやられかねない、サーヴァントなのに。

 

 

「おい、そろそろ次の村に—。」

 

 

「?どうしたエク・・・。」

 

 

 妖精は超自然的な存在であり、間違っても人間が敵う相手ではない。だからこそブリテンの人間は家畜同然にされていたのだ。

 しけし、エクターの視線の先、そこには村の妖精が人間の手によって倒されるという残酷かつ不可思議な光景が広がっていた。

 

 

「トトロット、モードレッド!人間達の食い止めをお願いします!他の三人は私と一緒に救助活動!」

 

 

「任せろ!モードレッド、行くぞ!」

 

 

 トネリコの指示に従い人間と妖精の間に割って入る。人間達が持っている武器を投擲用の水晶の剣で抑えようとしたが、少しの鍔迫り合いで砕かれてしまった。

 

 

「・・・なるほど。」

 

 

「邪魔をするな!」

 

 

 再度攻撃を加えようと、武器が大きく振りかぶられる。それに焦ることなく、オレは砕け散った水晶片を触媒に魔術を行使する。

 

 

「ゴァッ!?」

 

 

「普通ならそれで意識は落ちるハズだが・・・もう少し威力を上げても問題無さそうだな。」

 

 

 四方八方からのガンドにより体制を崩した人間を手刀で失神させ、後続に意識を向ける。オレの戦い方を見て、すぐには攻めずゆっくりと機を伺い始めたが、攻める前にこの戦いの幕は下された。

 

 

「アナタ達、一体何をしているのかしら!」

 

 

 突如この場に響き渡る声、それを聞いた人間達が一斉にその方向を向く。

 

 

「じょ、女王様!これは・・・。」

 

 

「皆まで言わなくて結構。大方私のために一人でも多く南の妖精を殺しておこう(・・・・・・・・・・・)って魂胆でしょう?意気は認めますが、報告も無しに動いた罰は与えます。」

 

 

 女王と呼ばれたその者は妖精であった。しかし、妖精というにはあまりにも凄まじい威圧感。ライネックのそれとはまた別のベクトル、圧倒的強者ではなく上に立つ者としての器量が感じ取れた。

 

 

「・・・いきなりで失礼ですが、アナタは?」

 

 

「あら、アナタ噂の救世主ね?ふーん・・・ま、他の妖精よりはマシってところかしら。いいわ、教えてあげる!私は影の国(アイルランド)の女王マヴ、北の妖精や人間達を統べるもの。そして純血龍アルビオンの加護を受けたブリテンの支配者(・・・・・・・・)よ!」

 

 

 今回の『大厄災』は北に住む妖精や人間に与えられた龍種の加護そのもの(・・・・・・・・・)という決まったカタチがないもの。そしてその影響を大きく受けた女王マヴこそが、近い未来『夏の戦争』を引き起こすことになる張本人である。




 設定等を確かめにアヴァロン・ル・フェ見返したらその度に精神がやられます()
 何度見ても慣れないし感動するとかいうある意味ヤバい章ですわ・・・。

 ところで話は変わりますが、遂にモルガン陛下とトリ子の二人がメインの礼装来ましたね!まさに理想郷の一つなので入手したいところ。
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