月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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12:『大穴』と□□

「よーし、到着ですね!早速準備しましょうか!」

 

 

 マシュと出会った海岸から数日かけて『大穴』に着いた。各自トネリコの言われた通りに動き、調査の準備は着々と進んでいた。

 

 

「マシュ、ちょっとその体制のままじっとしてくれるか?」

 

 

「はい・・・えっと、何を?」

 

 

 マシュの腰辺りに三種の水晶玉が入ったホルダーを取り付ける。水晶のホルダーとは別にベルトも用意していたのだが、剣と共にぶら下げそうなのでそこに引っ掛けた。

 

 

「一つは観測用、もう一つは記録用、そして最後に照明用だ。素材にはかなり拘ったから、早々壊れはしないハズだ。」

 

 

「えっ、こちらの礼装、モードレッドさんが作ったものなのですか!?」

 

 

「ん?あぁ、トネリコから調査の方法を聞いた日には制作に取り掛かったが・・・。」

 

 

「そんな短期間で三つも・・・大切に扱わせていただきます!」

 

 

 いや、大切にすると言われても、物理的にも魔術的にも強固な一品ではあるし、何より保存したものを視聴・記録できれば壊すつもりの使い捨て型なのだが・・・。まぁ、照明用だけは長く使えるだろう。

 そんなやりとりもあって、いよいよマシュは『大穴』の中へ。トネリコの魔力付与(エンチャント)により強化されたトトロットの糸を命綱とし、それをエクターがいつでも引っ張れるように待機。そしてオレの水晶で内部の観察、必要に応じてトネリコがマシュに念話を送る。ちなみに『大穴』の側にはモースは湧かず、妖精も近寄りはしないが、念のためライネックとグリムが周囲を警戒している。

 

 

「あちゃー、ダメですね。マシュの姿しか映ってません。」

 

 

「・・・残念ながらこれ以上光量を増やすのは難しかったのでな。無事が確認できるだけ良しとしてくれ。」

 

 

 マシュに渡した各種水晶はオレの魔術回路と繋がっており、遠隔でも操作可能となっている。しかし消費魔力はそれ以上にもそれ以下にもできないため、予め決めていた性能しか発揮できはしない。

 

 

(・・・しかし、どれだけ深いんだこの穴は?ここまでくれば海溝クラスの深度だぞ。)

 

 

 信じ難いほどのものではあるが、現に目の前にあるのだから認める以外ない。そして、ここから事態は急変することになる。

 

 

「マシュ、聞こえますか!マシュ!?・・・エクター!早く命綱引っ張って!糸が汚染し切る前に!!」

 

 

 『大穴』の底にあるもの、それは近づいただけでも死へと至らしめかねないもの。現に底から立ち込める魔素がトトロットの糸を汚し、マシュの意識も刈り取って—。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —待て、それならマシュに持たせた水晶玉(・・・・・・・・・・・)はどうなっている?

 

 

 目線だけを向けると、先程まで中継用の水晶玉を構えていた左手はいつの間にか下ろされていた。もう少し視線を下げると、その下ろされた左腕にはところどころ黒い斑点が浮かび上がっており、黒く汚染された水晶が溶けるように手から零れ落ちていた。

 

 

(ッ!!?)

 

 

 痛覚すら感じさせない□□。それがマシュの持つ水晶玉と通じているオレの魔術回路に及んでいた。

 

 

「くっ・・・!」

 

 

 そこからどうするかは決めていた。しかし、それを留めるためのデメリットは幾らでも思い浮かぶ。だが、決断しなければその先は—。

 

 

「ガッ!??ァ"ァ"ア"ア"ア"ッッ!!」

 

 

「モードレッド!?何やってんだ!?」

 

 

 左腕の付け根・・・ではまだ□□されている可能性があるため、肺胞ギリギリを狙って水晶剣を突き刺し、左腕を切り離した。しかし、オレの水晶剣は切断には特化しておらず、激痛を走らせながら断ち切ったため、声を押し殺すことはできなかった・・・が、痛覚があるということはそこまで汚染は進み切ってなかったと見ていい。切断に使った水晶剣はそのまま崩し、傷口に無理矢理貼っつけて出血を塞いだ。

 

 

「オ"ッ、レはい"い・・・!早ぐ、マ"シュを・・・!!」

 

 

「っ・・・モードレッド、マシュの治癒が終わるまでガマンお願い・・・!」

 

 

 右手で傷口の水晶を抑えながら、トネリコの返答に頷く。オレの左腕でこの様なのだから、『大穴』に潜っていたマシュの汚染はこの比ではないだろう。

 

 

「おい、引き上げたぞ!どうだ!?」

 

 

「・・・マズイ、全身に呪いを帯びてる。こればっかりは私だけじゃ・・・トトロット!グリムとライネック呼んで来て!ソールズベリーの土地と『風の氏族』の協力があれば・・・!」

 

 

「わかった!マシュ、死ぬんじゃないぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、ソールズベリーの聖堂に運び込まれたマシュは、土地による力の作用と風の氏族の妖精の助力、トネリコの解呪によって一命を取り留めた。

 

 

「ふぅ、なんとかなってよかったな。」

 

 

「えぇ、本当によかったです。モードレッドも左腕の再生遅くなって申し訳ありません。」

 

 

「いや、もう少し魔力が回復してからでも良かったぞ?流石に疲れたろ?」

 

 

 マシュに帯びていた呪いを祓ったあと、トネリコはオレに魔力を供給し、左腕を完全に再生させた。ここまで完璧に再生させるとなるとそれ相応の魔力は使うため、遠慮はしたのだが聞く耳は持たれなかった。

 

 

「ハッ、左腕一本満足に再生出来んとはな。」

 

 

「オマエの再生力と比べられてもな・・・。」

 

 

 ライネックが部位欠損すること事態珍しいことだが、いざもげても瞬く間に再生する。流石は亜鈴返りだ。

 

 

「さて、落ち着いたところで『大穴』について整理しましょうか。今すぐに手を打つ事はできませんが、準備することはできますからね!」

 

 

 『大穴』、その底にあるものはいずれ対処しなければブリテンが滅ぶ程の厄ネタ。少なくともオレ達では何もできない。何故そんなものがあるのか、どうしてそうなったか、救世主一行最後の旅はそれを探るためのものとなった。




 タイトルや本文中にある□□についてのヒント
 1.妖精騎士モードレッドにとって重要になる要素
 2.漢字二文字
 3.魔術の特性
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