月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
『大穴』に関わる情報を求めてはや五ヶ月。今は亡き『雨の氏族』の壁画と『鏡の氏族』に伝わる口伝、果てには人間達が残した書物や各地に点在する遺跡を巡り廻り、遂に決定的なものを発見するに至った。
「ふむ、やはりここにある春、夏、秋はそれぞれの名がついた戦争と一致してると見て間違いなさそうですね。」
「だが、そうなると冬が控えていることになるな。それに、無事に乗り越えたとしてもこの記述は・・・。」
オレ達が見つけた『巫女の予言』、それはブリテン島最初の人間である祭神の巫女が残した『破滅の予言』。気になるところばかりではあるが、まずは仮説を立てるしかない。
「えぇ、間違いなくこのブリテンの崩壊を意味するでしょう。そしてそれを成しえる程のものがあの『大穴』にはある。」
「・・・ケルヌンノス、かつてこのブリテンに存在したただ一柱の神。記憶違いでなければケルト神話の神だったハズだが・・・こういうこともあるか。」
基本的に己の魔術に活かせるものしか学ばなかったオレだが、月の聖杯戦争へ赴くにあたって数々の説話・伝承を漁りに漁ったこともあり、こういう歴史や神話にも多少は詳しい。
ケルヌンノスはギリシャ神話のハデス、メソポタミア神話のエレシュキガルと同じ冥界の神としてケルト神話に名を残している。そんな神の死骸がこのブリテンの『大穴』の底の底に存在しているのだ。トネリコによれば、その亡骸が星をも滅ぼす程の呪いを発し続けており、更にはブリテン中に降る灰もそれが原因とか。
「まぁ実を言うと、これに関しては
「・・・・・・?」
ハッタリではないのはわかるが、あまりの信じられなさに言葉が出てこなかった。アレをどうにかできる手段など、このブリテンに存在するのだろうか・・・?
「えぇ、それはもう大船に乗ったつもりで構いませんよ。まぁ、使うことになるのは大分先になると思いますし、あとはウーサー君やマヴに託すこととします。」
そう、話は変わってしまうが、もう『戴冠式』の日まではそれこそ一週間も無いのだ。トネリコも出席しなければならないため、つい先日旅を切り上げてロンディニウムへと向かう道中なのだ。だからこそ、最後の最後にこの予言に辿り着けたのは幸運と言える。
やはり、ここまで
「トネリコ、その話なんだが—
—実はウーサーとマヴ、全く結婚の準備してないぞ。」
「・・・・・・はぁ!??」
唐突な事実を告げられて少しの間固まり、様々な感情がないまぜになった声を上げるトネリコ。
「ちょっ、ちょっとどういうこと!?全面戦争したとはいえ、あの二人そこまで仲悪いわけでもなかったよね!?というかモードレッドそれいつ知ったの!?」
「いや、実際どうなっているかは知らないが、ロンディニウム出る前にオレ達でそういう話したから間違いないだろ。」
「・・・
淡々と喋っていると、トネリコの声色は段々と低くなってきた・・・これ下手すれば殺されるな。出るならもう今しかないぞ・・・!
「トネリコ!ホラ、見てくれよ!『戴冠式』の衣装!マシュに聞いたんだけど、
「えっ・・・花、嫁?えっと、何言ってるの?」
「マヴもウーサーも、オマエが妃に相応しいというものでな。そもそもその婚姻を決めたのはオマエの強情さによるものだ。なら、こちらも強引に出ても文句はあるまい。」
思えば、発端はトトロットがトネリコのための衣装を仕立てようとエクターに教えを乞いたことからだった。トネリコが『戴冠式』用の服は要らないからと述べたため、トトロットが代わりに作ろうとしたのだ。
しかし、ここにきてトトロットの記憶容量の少なさが支障をきたす。今まで問題視しなかった分、その様子はひどく痛ましいものであったが、なんとマシュのサポートによって克服、そこからは一流と言っていいほどにまで裁縫技術を極めていった。・・・それでもなおエクターほうが上なのは目を丸くしたが。
「勝手に決めたのは申し訳ないと思う。ただ、みんなオマエのためを思って動いたのだけは認めてほしい。それがオマエへの裏切りだとしても。」
「・・・だから、私は『戴冠式』が終われば・・・。」
「ウーサーと最期まで一緒に過ごしてからでもいいんじゃないか?10年にも満たない時間ではある。だが、このブリテンで過ごした時間の何にも勝るハズだ。」
そうだ、このままただ救うだけ救って去るなんてあんまり過ぎる。ここまでしたなら例え少しでも、あと少しでも長く居ていい。このブリテンが辿る事になる新しい時代、人間も妖精も争わない平和な国ができる切っ掛けを作ったのは他でもないトネリコなのだから。
「全く、何ウジウジしてやがる。テメェの望んだ結果になるにはもうウーサーの妃になるしかねぇだろうが。」
「ほら、トネリコ大好きなライネックだってこんなこと言ってるぞ。ここまで言われてまだ迷うか。」
「ハァッ!?お、おい、なんでオレがト、ト、トネリコの事を・・・。」
「ライネック、残念だが全員気づいとったぞ。もちろんトネリコ本人もな。」
闇夜にライネックの咆哮が轟く。それを聞いたマシュやグリムも何事かとやってきて、最終的に全員で夜が明けるまで語り合うに発展した。そこから仮眠を取って出発した昼頃、救世主はロンディニウムの騎士の元へと帰還した。
ちなみに本小説のトネリコとウーサーの恋度合いは
トネリコ→→→←←←←←ウーサー
ぐらいの比率です(本編だとどのぐらいか知らないけどまぁ、ラブラブにはなるでしょ)