月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
「よっ、久しぶりだな。」
「・・・オマエか。まぁ、入れ。」
トネリコと別れてから400年近く経つ。あれからオレはブリテン中の坑道を巡り回り、工房とするのに最適な場所へと根を下ろしていた。そんな工房入り口の洞窟に来客があった。
「へぇ〜、中々できた工房だな。」
「そこまで言わせるなら及第点ってところか。ほれ、たまたま仕入れてた紅茶だ。」
「おっ、じゃあ遠慮なく。」
この馴れ馴れしい口調、一体誰かと思われるが、賢人グリムである。普段は神霊サーヴァントが表に出ることが多いが、素の性格はわんぱくなものだったりする。トトロットともよく喧嘩していたな・・・。
「それで何の用だ。ここはたまたまで来れるような場所じゃないぞ?」
「せっかちだなぁ、まぁ元気そうで何よりだ。用事の方だが・・・ちょっと疲れたんで休んでからにする。ここ、居心地良いしな。」
「・・・ハァ、勝手にしろ。茶菓子を持ってくる。」
休んでから用を話すと言っていたが、あのヤロウ何も言わず一週間も過ごしやがった。まぁ、魔術や戦闘研究の手伝ったり、思い出話に花を咲かせたりと悪くはない日常は送れた。
「よし、そろそろ行くか。」
「やっとか・・・おいちょっと待て、まだ用事について何も・・・!?」
昼食を取り次第、工房を去ろうとするグリムを引き留めようとしたが、グリムが入り口を出た瞬間、周辺に凄まじいほどの神性が感じられる術式が展開された。
「これがオレの用事だ。この『泉』なら、『大厄災』であろうと耐えれるハズ。」
「グリム、霊基が・・・。」
『泉』を張ったあとのグリムからはまるで神性、いやサーヴァントらしい気配すら消え失せていた。
「あぁ、賢人グリムはここで終わりだ。ま、元々そういう
約束、というのは彼に憑依していた神霊サーヴァントとのものであろう。だが、それではこの妖精は—。
「そんな顔すんなって!オレは別にきにしてない。
「そう、か・・・。」
「・・・じゃあな。ヴィヴィアンのこと、頼んだ。」
妖精は駆け出す。この広い平原をどこまでも征く。オレはそんな彼の背が完全に見えなくなるまで見つめ続けた。
「達者でな、賢人グリムとして生きた風の氏族の妖精よ。」
彼は元々どんな妖精だったのだろうか。いや、もしかすると役割も名前もないからっぽの妖精だったかもしれない。それでも、そんな彼が終わりの運命を受け入れてまで助けたい誰かに会えたのは、疑いようのないことだろう。
グリムの元となった妖精は、もちろんセタンタをイメージしております。そして次回、いよいよ女王暦編突入・・・!