月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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16:妖精國と水晶工

「ふむ、ほうほうほう・・・・・・上出来ですな!まさか今一度この作品を目に出来るとは。」

 

 

「いえいえ、特注品とはいえスプリガン様の注文に沿っただけのこと。これぐらいは造作もありませんよ。」

 

 

 鉄と煤の町ノリッジ、その領主であり土の氏族長でもあるスプリガンの住まう金庫城に、一人の来客があった。

 

 

「流石はモルガン陛下お墨付きの水晶工。いやはや、模倣品を頼んでしまったのが惜しいですなぁ。」

 

 

「残念ながら、立て続けのご依頼はお断りしてますので。また縁があればお引き受けいたしましょう。」

 

 

「えぇ、是非ともお願いしますよ。代金は此方に。」

 

 

「・・・確かに受けとりました。では私めはこれで。言うまでもないとは存じますが、『厄災』にはご気を付けを。」

 

 

 札束を受け取り、そのままノリッジを去る妖精。その名はエリドール。妖精國ブリテンを旅する水晶工である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、みんな!エリドールだ!水晶工エリドールがやってきたぞー!」

 

 

 女王モルガンに反旗を翻す者が集う『円卓軍』、その本拠地である廃都ロンディニウムにエリドールが足を運ぶ。

 

 

「突然の来訪、失礼。パーシヴァルはどこに?」

 

 

「はっ、団長であれば鍛治場に—。」

 

 

「おぉ、エリドール殿!お久しぶりです。」

 

 

 『選定の槍』を携えた大柄の人間が鍛冶場から出てきて、来訪した妖精に歩み寄る。

 

 

「久しぶり。どう?そろそろキャメロットに出頭する気にはなった?」

 

 

「いえ、答えは変わりませんよ。その根気強さだけは受け取らせていただきます。」

 

 

「まぁまぁ、言ってるだけだよ。わかりきってはいるけど、今ならまだ仲介できるかもだから。」

 

 

 お決まりと言っていいやりとりを交わしていると、先程パーシヴァルのいた鍛冶場から人間の子供達や妖精が出てくる。

 

 

「エリドール!ほら、石英!加工術見せてくれよ!」「伯爵が用意してくれたんだ!お金もちゃんとあるからな!」「こら、お前たち。エリドールにあまり迷惑かけるなよ。」

 

 

「そんなに急がなくても・・・そうだな、明日の明け方まではいるから、他にお客様がいれば声を掛けるように。さ、ちゃんと並んで。5モルポンド均一でお一人様一回だぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜、やはり一仕事終えたあとは気分がいいな。」

 

 

「お疲れ様です、エリドール殿。女王派であるにも関わらず、『円卓』の皆にもその腕を振るっていただけること、感謝します。しかし、このお金は・・・。」

 

 

 パーシヴァルの手には、スプリガンの屋敷で受け取ったものと同じ厚みの札束が握られていた。

 

 

「ん?あぁ、予定より長く居座ったしな。それ相応の滞在料を支払ったまでだよ。なぁに、そこのところウチの()は寛大だ。遠慮なく受け取れ。」

 

 

「・・・エリドール殿、アナタはモルガン陛下の政策に異を感じてはいないのですか?」

 

 

「おっと、それは遠回しな勧誘か?まぁ、無駄とだけ言っておこう。モルガン陛下には大恩がある。商売はすれども、支援・援助は一切しない。そこのとこ、わかってくれよ?」

 

 

「そう、でしたね。『取り替え(チェンジリング)』でこのブリテンに来て身寄りの無いアナタを厚遇したのは、他でもない陛下なのですから。無粋な問い、失礼しました。」

 

 

「いいよ別に。さ、もう行くよ。時間潰しにノリッジに寄ったはいいものの、そろそろ約束の日程が近いのでね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベリル・ガット殿、ご注文の品をお届けに参りました。」

 

 

「おう、待ってたぜ!毎回すまねぇな。さて、体内の様子は・・・おぉ、よく見えるよく見える!でもコレ、本当に位置合ってんのか?」

 

 

「イ"ッ!?ギャァァア"ア"ア"ア"ッッ!!」

 

 

 水晶玉とは逆の手にナイフを握ったベリルは、ベッドに括り付けられた人間の腹にそれを突き立て、内臓を抉り出した。

 

 

「おっ、マジで肝臓だな!不具合もねぇとは、良い仕事っぷりだな!」

 

 

「御身は陛下の夫なのですから、度を超えた注文でない限り手を抜くわけに、わっ!?」

 

 

 突如飛来した糸がエリドールを襲うも、それらは間一髪で避けられる。

 

 

「オイ、ガラスのヒールしか作れねぇザコがなんで私の領地に入ってんだよ。」

 

 

「こ、これはこれは妖精騎士トリスタン様、お久しゅうございます。モルガン陛下の娘でありニュー・ダーリントン領主であるアナタの許可無く入ったのは誠に申し訳な—。」

 

 

「御託はいいからとっとと死ね。」

 

 

「うおぉっ!?で、ではベリル殿。またのご注文お待ちしております。」

 

 

「オーケーオーケー、しっかり生き延びてくれよ?」

 

 

「逃がすと思ってんのかこのヤロウ!」

 

 

「ご容赦を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、さっきブラックドッグに襲われて思い出したんだけどよ。エリドールのヤツ、ブラックドッグとかモースとかにあったらどうしてんだろうな?」

 

 

「エリドール?あの、その方は一体・・・?」

 

 

「マジかアニス、エリドールも知らねぇのか!?妖精騎士と同じぐらい有名なんだぜ!」

 

 

「・・・水晶妖精エリドール。決まった住処を持たず、ブリテン中を旅する水晶細工師だ。女王暦400年頃に『漂流物』として流れ着いて以来活動し続けてる大ベテランだ。今となっては、ヤツの作品はグロスターのオークションぐらいでしかお目にかかれない。」

 

 

「そんなにすごい方がいらっしゃるのですね・・・!お一人で旅をしているのでしょうか?」

 

 

「あぁ、そりゃあ・・・どうなんだろうな?別に会ったことあるわけじゃねぇけど、従者や護衛の一人や二人はいるだろうよ!アニスは『予言の子』だからその内会えるかもな!」

 

 

 時は女王暦2017年。絶対的な女王『モルガン』が統治する中、それを打ち破る『予言の子』が現れると予言された年である。しかし、このお話は物好きのために水晶を操る者の道行、その末路を描くことにしよう。




 一気に情報量増しましたが、まぁ今回は女王暦編のプロローグ的なものということで。ちなみにエリドール、というのは水晶に関連する妖精の名を拝借させていただきました。
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