月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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17:糸紡ぎとシェフィールド

「息災か?ハベにゃん。」

 

 

「だぁぁぁもうっ!仕事持ってくんな・・・って、エリドールじゃんか!ひっさしぶりだなコノー!」

 

 

「しー、しーっ!大声出すなよ、お忍びで来てるんだから。ボガードのヤツに出禁喰らってるんだよ。」

 

 

 城塞都市シェフィールド、そこに存在する仕立屋の工房にひょっこりと顔を出す。久々に会った仕事仲間、糸紡ぎの妖精『ハベトロット』は多忙の毎日を過ごしているようだ。

 

 

「え、じゃあオマエどうやって入ってきたんだよ?門が開かなきゃ入って来れないだろ。」

 

 

 シェフィールドは城塞都市の名の通り立派な城壁で囲まれており、妖精の手によって概念的な護りである『(ルール)』も備えられている。そのため基本的には門が開いてる時にでしか入れないのだが・・・。

 

 

「水路っていう裏口があったんでそこから不法侵入したってわけさ。もちろん帰りもそこから行くつもりだ。」

 

 

「そこまでして何しに来たんだよ?」

 

 

休暇中(・・・)の暇つぶし・・・というのは冗談だ。警告しに来たんだよ。」

 

 

 おちゃらけた雰囲気を止め、真面目に語り出す。

 

 

「ボガードが反旗を翻してもうそれなりに経つ。このままだと女王の軍が攻めるのも時間の問題だ、城塞都市といえど必ず落ちる。ボガードの意志が固まってるのは重々承知だ。だからオマエを逃すついでに非戦闘員だけも助けてやろう、と思ったんだが・・・。」

 

 

 個人的にも反女王を掲げ続けるボガードは生かそうとは思わない。だからこそ、見知った顔だけは助けようとした。だがハベトロットはそんなヤワな妖精ではない。

 

 

「悪いけど、僕の仕事は花嫁を送ることだ。それを成し遂げるまで、ここを離れる訳にはいかないな。」

 

 

「送る花嫁がどこにいる?今溜まってる仕事は鎧と鞄、果てには槍の裁縫だろう。」

 

 

「そりゃそうなんだけど・・・でもボクにはやらなくちゃいけないことがあるんだ。そればっかりは例え昔の仲間であろうと譲れない。」

 

 

 ハベトロットの眼差しには強い意志が宿っていた。こうなってしまったハベトロットはもうアイツでないと・・・いや、それでも止められないだろうな。

 

 

「・・・はぁ〜、わかった。これ以上は何も言わない。ただし、仕事は請け負わせて貰うぞ。」

 

 

「えっ、いいの?でも、本業以外のことさせるのもなぁ・・・。」

 

 

「本業じゃないのはオマエも同じだろ?ホレ、現物の場所教えろ。」

 

 

 依頼書を手に取りながら保管場所について催促する。軽い裁縫であればそれなりにできる。いざとなれば水晶を使って溶接することもできるが、それは多方面に敵を作りかねない行為になるのでよしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜数日後〜

 

 

「ハベにゃーん、新しい仕事だよ。ハベにゃーん・・・。」

 

 

「またかよ、ってマズッ!エリドール、コイツ被れ!」

 

 

「うぉっ、と。」

 

 

 ハベトロットから一枚の大きな布が投げ渡される。確かにオレが今ここにいることはハベトロットだけしか知らない。故にここは誤魔化す必要がある。

 

 

「ハベにゃん?ソイツは一体・・・。」

 

 

と、通りすがりのアシスタントでーす。」

 

 

「そ、そうか。それよりハベにゃん、新しい花嫁が—。」

 

 

 なんとか誤魔化せたようだ。ここで衛士に見つかれば、ハベトロット共々ボガードに処刑を言い渡されてしまうだろう。作業を続けながら顔を見られないように最新の注意を払っていると、突如としてハベトロットが大声を出した。

 

 

「やっとまともな仕事が来た!待ってた甲斐がありましたー!用意はとっくにできてるから、すぐに寸法を・・・と、その前に衛士とエリ、アシスタントは出てった出てった!一日はかかるから他の仕事はそのアシスタントに任せるように!」

 

 

「ちょっ、ハベ・・・締め出されちゃったよ。」

 

 

 勢いのまま衛士と共に追い出され、オマケに仕事まで押し付けられた。唖然としていると、その衛士と目が合う(俺は布越しだが)。

 

 

「な、なぁ、ハベトロットのヤツ結構仕事溜め込んでたと思うけど・・・大丈夫か?」

 

 

「・・・まぁ、なんとかするさ。ハベトロットには花嫁衣装の製作に集中してもらいたい。さ、仕事が終わったらアンタの鎧も届けに来てくれ、肩の辺りほつれてるからな。」

 

 

 そうして友人の仕事を肩代わりしたオレは、寝る間も惜しんで消化し続けた。ちなみに押し付けた張本人はボガードの新しいお妃にかかりきりで全然顔出さなかった。いや、それもアイツの仕事の範疇だから文句はないが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キサマ、何故シェフィールドにいる?」

 

 

 バレました。水路からの侵入の痕跡や謎のアシスタントなど、断片的な情報とはいえかき集めれば確信にまで至ったらしい。そんなわけでオレはお縄にかかってボガードの前に座らされている。

 そもそも出禁を喰らった原因だが、根っからの女王派であるオレが反女王を掲げるシェフィールドで活動すると士気が移ろいかねないためだ。最も過ぎてぐうの音も出ない。

 

 

「仕事仲間の様子を見るだけだったけど、こうならば話は別か。・・・率直に言う。ボガード、悪いがオマエはもう助からない。陛下は何があってもオマエ達を潰す。だがここに住む民は別だ。今すぐに避難誘導を開始しろ。」

 

 

「フン、女王の盲信者め。自分の立場がわかっていないようだな。ここではオレが法だ!キサマ如きの戯言に耳を傾けると思うな。牢獄に放り込め。」

 

 

「はっ!」

 

 

 こうして牢屋に閉じ込められはしたが、予定通り来るべき時までは大人しくすることにしよう。それにしても死刑にしないとはまだまだ情が残っているな。もしくは、実力差はしっかり測れていたというところかな?




 書いてる時に2部6章見返してて疑問に思ったけど、シェフィールドの城壁は門が開かないと通れない。でも妖精騎士ランスロットは崩れる前から空中から内部に攻撃できているという。
 個人的には多分神秘の格の差だろうなって(龍種の冠位は伊達じゃない)
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