月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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19:『静脈回廊』と女王の裁決

「っと。ハベトロットさん、手を。」

 

 

「サンキューマシュ!高低差あると地味にキツイんだわ。」

 

 

 シェフィールドから北の洞窟に逃げ込んだマシュとハベトロットは、『厄災』を止めにノリッジへ向かうため、『静脈回廊(オドベナ)』と呼ばれる地下迷宮を進んでいた。ガイド役には白い狼、付かず離れずの距離でマシュ達を導いていた。

 

 

「狼さん、どうしたのですか?」

 

 

 狼か次に進む場所を嗅ぎ分けていると、急に唸り声を上げて臨戦体制を取る。

 

 

「・・・フレキか。なるほどグリムめ、すでに召喚されていたか。」

 

 

 通路の角から一人の妖精が姿を見せる。

 

 

「あ、アナタは、あの時の・・・!」

 

 

「エリドール、わざわざこんなとこに何の用さ?」

 

 

「そうだな、オレもここに足を運ぶことは進んでしないさ。でも仕方ないだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 —女王陛下直々の依頼なんだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平伏せよ。献上せよ。礼拝せよ。従属せよ。」

 

 

 異聞帯ブリテンに存在する『大穴』、それを囲うように建てられた罪都『キャメロット』。

 

 

「この場に集いし30の大使、100の官司は静観せよ。」

 

 

 その玉座の間、多くの上級妖精が集う中、女王騎士は淡々と述べる。

 

 

「疆界を拡げる王。妖精國を築きし王。」

 

 

 最果てより戻り、この妖精國を2000年以上統治し続ける絶対的女王の名を。

 

 

「モルガン女王陛下の御前である。モルガン女王陛下の威光である。」

 

 

 冬の女王モルガン。その冷たい眼光は、正面で跪く一人の妖精にのみ向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、こうして女王陛下の前に来るのは、近年だとモルガン祭に出品する水晶細工の件だけになっていたが、まさかこのような形で会うことになるとは。

 

 

「エリドール、如何にオマエと言えど此度の一件は看過せぬ。その愚行にはそれ相応の罰を与えよう。」

 

 

「心得ております。仕事仲間を逃すためとはいえ、陛下の邪魔をしたのは紛れもない事実にございますから。」

 

 

 オレや陛下が言葉を発すると共に、周りの上級妖精達もざわざわ、ひそひそと話す。

 

 

「あの水晶工エリドールが、漂流妖精(はぐれものの)エリドールが『予言の子』に肩入れしたというのは本当だったのか!」「いくら人気があるっていっても、こうなればおしまいだな。」「まぁ、外の妖精だし別にいいだろ。」

 

 

 

「・・・キサマへの処罰はただ一つ、その財産の押収だ。」

 

 

「財産・・・というとまさか!」

 

 

「オマエの保有する水晶や工房の二割。そして魔晶核の四割を献上するがよい。」

 

 

「ま、魔晶核まで!?しかも四割・・・!」

 

 

 魔晶核とは、水晶を錬金術によって掛け合わせて作る『魔晶』、それを生み出すために必要な触媒である。先日の妖精騎士ガウェインの前に作りだした壁も、複数の水晶を組み込ませた『魔晶』の一つ。

 簡潔に言うならば、素材さえ揃えば即座に一級品の礼装を作り出せる高級品だ。

 

 

「異論でも?」

 

 

「い、いえ、ございませぬ・・・。」

 

 

 異論はあるハズもないが、核一個作るのにどれだけ苦労するか・・・。

 

 

「陛下!それだけで済ますおつもりですか!?陛下に楯突いた以上、もっと重い罰を与えるべきです!」

 

 

「それだけ、だと?バカめ、コイツにとってこれ以(・・・)上の罰はない(・・・・・・)。さてエリドールよ、処罰とは別に私から依頼がある。」

 

 

「なんでしょう・・・。」

 

 

 まだショックが残っているが、依頼を聞くためかろうじて持ち直す。

 

 

「『静脈回廊』の調査だ。サンプルとして鉱石の採取も許可する。オマエでしかわからぬ事実もあろう。」

 

 

「・・・承りました。」

 

 

「では行くがよい。もちろん、押収品を納めた後でな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「—というわけで、ここらの鉱石を取りまくってたわけだ。わかってくれたなら、フレキを引っ剥がしてくれると助かる。」

 

 

 経緯を話してる間ずっと噛みついてくるせいで、作業服ボロボロなんだが?

 

 

「え、えっとつまり・・・?」

 

 

「敵対はしないってことだな。でも、それがボクらを見逃していい理由にはならないと思うけど?」

 

 

「ハベトロット、汚職というのは口封じも大事だ。道案内手伝ってやるから、必要以上に採掘してた事は内緒にしてくれ、頼む。」

 

 

 直に補充すると、もう少しだけあと少しだけと止まらなくなってしまうので、普段は市場に出回ってる水晶だけでやりくりしているのだが・・・流石にこの量をサンプルというにはムリがある。

 

 

「歯止め効かなくなるのは相変わらずだな・・・別に構わないけど、モルガンはお見通しだと思うな!」

 

 

「お二人とも、仲が良いんですね。」

 

 

「・・・まぁ、職人同士の繋がりでな。マシュ、だったか?オレはエリドール、ここを出るまでの間は協力してやるさ。」

 

 

「はい、よろしくお願いします!あ、狼さん、もう噛みつかなくても大丈夫ですよ!」

 

 

 こうして女王の依頼と並行して『静脈回廊』攻略の手助けもすることになったわけだ。狼はまた進み始め、マシュもそれに続くが、ハベトロットはオレを引き寄せてヒッソリと話しかける。

 

 

「なぁなぁ、手伝ってくれるのはありがたいけど、マシュは『予言の子』だぜ?捕まえなくていいのか?」

 

 

「ハベトロット、オマエ冗談上手くなったか?マシュが『予言の子』でない(・・・・・・・・・)のはオマエもわかりきってるだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女王陛下、エリドールを野放しにしてよろしいのでしょうか?」

 

 

「構わぬ、好きなだけ泳がせておけ。アレは今回の様な事例でない限り私に不利益な事はしない。」

 

 

「しかし・・・。」

 

 

「だがそれも我が妖精國の上書きが完了するまでのこと。その時がくれば、もはや用済みだ。」




 今作品では水晶関連のあれこれが出てきますが、それについてはまた別の話で一気に纏めようと思います。オリ魔術出すなら前もって纏めた方がいいってハッキリわかんだね()
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