月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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20:暫しの別れと変わりゆく情勢

「いやぁ〜、流石は『予言の子』。『静脈回廊(オドベナ)』に住む魔獣珍獣相手でも余裕だね。」

 

 

「ハベトロットさんとエリドールさんの援護のおかげです。『予言の子』としてはまだまだ力及ばずかも知れませんが・・・。」

 

 

 『静脈回廊』内の迷宮には岩や鉱石を纏ってたり、それそのものだったりする怪異が生息しているが、それらはマシュの怪力と盾により次々と粉々になっていく。近づくのが厄介な敵には、ハベトロットの糸やオレによる目眩しのサポートで盤石な体制を築いていた。

 

 

「『予言の子』ねぇ・・・・・・まぁ、そこは追求しないでおこう。ほら、ノリッジまであともう少しだ。ここまでくれば、魔獣も出てこないだろう。」

 

 

 道案内は白い狼・フレキが買ってくれているが、あとどれくらいなのかを伝えることはできないので、進行度を伝える役目はオレが請け負っている。休憩を取る目安にもなるしな。

 

 

「その・・・聞きそびれていたのですが、エリドールさんは1600年もの間ずっと旅を続けられていたのですか?」

 

 

「オレの話?あぁ、確かにこの数日間そういう話はしてなかったな・・・まぁ、1600年前から水晶細工を売り物に旅してきたのはホントかな。今も売れ続けてるから良い仕事見つけたと思ってるよ。」

 

 

「ボクの作った花嫁衣装の中にも、エリドールの作った装飾品付いてるヤツ幾つかあるしな!」

 

 

 ハベトロットの言うようにオレも注文次第で花嫁衣装の製作に噛むこともあったりする。もっとも、シェフィールドでボガードの花嫁に衣装を作るようになってからは無くなっていた仕事だが。

 

 

「そうなんですね!あっ、それとお一人で旅をしているのでしょうか?」

 

 

「そうだけど、それが何か?」

 

 

「いえ、モースに遭遇された時とかはどうなされているのかと気になったのですが・・・。」

 

 

「・・・あ〜、そういう時は—。」

 

 

「心配しなくていいぜマシュ、コイツは妖精騎士や氏族長の次ぐらいには強いからな!」

 

 

「そ、そんなにお強かったのですか!?」

 

 

「・・・ハベトロット。」

 

 

 濁そうとしたらしっかりバラしやがったこの糸紡ぎ。折角マシュが苦戦するような敵もいなかったから援護に徹せられて誤魔化せてたのに。

 

 

「いいだろこれぐらい?おっ、アレ出口だろ!さっさと行こうぜ!」

 

 

「あ、本当ですね!私たちも行きましょう!」

 

 

 出口に向かって駆け出すハベトロットとマシュ。すでに案内役のフレキは外におり、無事『静脈回廊』の迷宮を抜けることができた。

 

 

「くぅ〜、やっぱ外の空気サイコーだな!さっ、早くノリッジに!」

 

 

「はい!・・・あ、アレ?エリドールさんは・・・。」

 

 

 オレを探して周囲を見渡すマシュ。まぁ、洞窟の出口で座ってるだけなんだが。

 

 

「あ、エリドールさん!もしや、疲れが溜まっていたのですか?でしたら休憩を—。」

 

 

「オレの事は気にせず。オマエ達を見送ったら、そのまま『静脈回廊』に戻るよ。」

 

 

「えっ・・・。」

 

 

 面を喰らったような表情をするマシュ。なるほど、そういう慣性でなければハベトロットもここまで付き合わないだろう。

 

 

「オマエは『予言の子』なんだろ?なら女王派のオレからしたら邪魔でしかない存在だ。『静脈回廊』内なら目が無いからいいが、これ以上表だって助けるわけにはいかない。」

 

 

「で、でも・・・。」

 

 

「そもそも、オマエを助けたのはハベトロットを思ってのことだ。オマエ個人の思想に付き合う義理はない。」

 

 

「・・・まぁ、そんなとこだろうと思ってたよ。マシュ、残念だけどエリドールとはここでお別れ。次会う時は・・・敵同士かもな。」

 

 

「そんな、だって、この数日間いっぱい助けてくれて・・・。」

 

 

「・・・よし。ならマシュ、そんなにオレと一緒にいたいなら一つ提案しよう。『予言の子』としてキャメロットに向かえ。あぁ、命の保障は約束しよう、女王陛下もそう公言しているしな。」

 

 

「そ、それは・・・!」

 

 

 まぁ、今キャメロット向かえば拘束されなかったとしてもノリッジの『厄災』には間に合わない。どちらかを取るしかあるまい。

 

 

「なら早く行け、急に気が変わって強引に連れてくかもだぞ?オレの強さはそこにいるハベトロットのおかげでわかってるだろう。」

 

 

「・・・エリドールさん、手を貸してくれて、ありがとうございました・・・っ!」

 

 

 そう言ってマシュは背を向けて走り出した。一方ハベトロットはすぐに追わずに、こっちを真っ直ぐ睨んでいた。

 

 

「エリドール!マシュ泣かせるなよなー!いくら昔馴染みだからって許さないぞ!」

 

 

「悪かったよ。あぁそうそう、念のため言っておくけどモルガン陛下に謁見することがあれば『静脈回廊』でのオレのこと内緒で。」

 

 

「もう知るか!エリドールのバーカ!!」

 

 

 こうしてハベトロットも去り、フレキもいつまにか姿を消していた。一人残ったオレは、身体を起こしながら一つ呟いた。

 

 

「・・・花嫁の味方なら、オレに構わずさっさとついてやれよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「—『静脈回廊』の様子は以上です。他の調査結果はこちらに。」

 

 

「ご苦労、報酬として500万モルポンドを取らす。この調査結果の分も後に算出しよう。」

 

 

 『静脈回廊』からキャメロットへ戻り、鉱石関連は口頭で、それ以外は紙へと書き纏めてモルガン陛下に報告を行った。そして、ここに至るまでの間に事態は大きく動き出していた。

 

 

「・・・して、モルガン陛下。『予言の子』及び『異邦の魔術師』を招くと耳にしたのですが。」

 

 

「余計な手間とはいえ、ノリッジの『厄災』を払った功績は認める。ガウェインの護衛もあって到着までは2日といったところだが・・・エリドール、当日にキャメロット及びその周辺への滞在は許可しない。」

 

 

「!?も、モルガン陛下、しかし—。」

 

 

 ゴンッ!!と杖を突いた音が玉座の間に響き渡る。『予言の子』はまだしも『異邦の魔術師』に対する警戒があったのだが、口答えは不味かった。

 

 

「・・・失言、失礼しました。女王陛下の仰るままに。」

 

 

「そうだ、オマエはいつものように(・・・・・・・)旅を続けていればいい。」

 

 

 女王陛下に頭を垂れながらこの先の事を考える。敵は『予言の子』や『異邦の魔術師』だけでない、反女王派の者もいれば増え続けるモース、そして臨界を迎えようとしている『大穴』。改めて見れば問題は山積みだ。恐らくは、妖精國始まって以来最大のターニングポイントと言っても過言ではないだろう。

 余談だが、『静脈回廊』から持ち帰った袋4つ分の水晶はその内3袋分押収された。虚しい。




 ここからストーリーとはまた離れて進めて行きます。尺の短縮とかそういう下心はありませんきっと多分メイビー。
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