月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
「少しお早いですが、向こう一ヶ月分の出品作です。どうぞお納めを。」
「えぇ、ご苦労様です。流行が去ってもアナタの作品を欲しがる物好きは一定数存在しますから。」
流行と歓楽の街『グロスター』。その領主であるムリアンの『妖精領域』に覆われたこの町は、女王モルガンの支配を受けることなく独立しており、外交という形で関係を保っている。
そんな場所にもオレは足を運び、水晶細工を売り渡っている。違いがあるとすれば、毎夜行われるオークションのために個人宛ではなく万人受けする作品を作っているというところだ。
「取り分はまた落ち着いた頃に取りに来ようかと。今のご時世、物騒な事になりそうなので。」
「『予言の子』と『異邦の魔術師』の登場により、エインセルの予言が信憑性を増してきていますからね。もっとも、私としては中立を保たせてもらいますが。」
「わかっていますとも。モルガン陛下もグロスターからの援助は期待していないでしょうし。」
ムリアンの『妖精領域』の前では、例えモルガン陛下であろうと迂闊に手を出せない。『予言の子』に対する援軍などは出さないにしても、『鐘』はならされることになるだろう。
「・・・ま、この話はこれぐらいにしておきましょう。ムリアン様とも長いですし。」
「えぇえぇ、なにせグロスターでオークションを始めた頃からのお付き合い。できれば私の町に留めたいところでしたが・・・。」
「残念ながら私はモルガン陛下の支持者。ムリアン様がモルガン陛下につくなら考えなくもありませんでしたが、叶わぬ要望ということで。」
席を立ち、ムリアンの部屋を出ようと扉に向かうと、手をかける前にそのドアは開かれた。
「あら、もうおかえりですか水晶工様?」
「・・・あぁ、もう用は済んだからね。そういうわけでそこをどいてくれると助かる。」
扉を挟んで目の前の化狐・コヤンスカヤを睨む。コイツと何かしら商売したら必ず損するような気がしてならないので、かなり苦手だ。
「ハァ、相変わらず馬が合いませんのね。」
「とんでもない!妖精の中でもここまでやりやすいお方はいませんもの♪」
「・・・こっちからしたらやりにくいことこの上ない。側に置いているムリアン様の度胸には感服するほかありませんよ。」
「エリドール、アナタはコヤンスカヤを嫌い過ぎです。コヤンスカヤもあまり虐めないように。」
「申し訳ありませんムリアン様。エリドール様を前にするとどうにも嗜虐心がそそられてしまって。えぇ、今後は控えますとも。」
「それでは今度こそ行くとしますか。オークションの盛況、楽しみにしております。」
「ふむ、次はどこに行くか。『厄災』の影響でモースが増え始めてるし、長旅は禁物。近くの街といったら—。」
そう考え込んでいるその時だった。ブリテン中にそれが響いたのは。
「—・・・巡礼の、鐘。そうか、ならあそこにでも行くかな。どうせいるだろう。」
次の一歩は思い切り踏み出し、ブリテンの平原を駆け抜ける。女王モルガンと『予言の子』、その戦いが幕を開けた。
モルガン陛下が次のイベントの特効入ってて狂喜乱舞してるのは作者だけでないハズ。
ところで妖精領域って固有結界みたいで結構チートだと思うんですけど、その中でよくムリアン倒せたなって。誰とは言いませんけど。