月で死んだと思ったら異世界に召喚された 作:鮭のKan2me
「あの軍は、ガウェインの?ロンディニウムには向かわないのか?」
オックスフォードから北へ向かっていたオレは、その道中妖精騎士ガウェインとその軍隊を遠くから発見した。望遠鏡の様な礼装を片手に観察していると、背後から声をかけられた。
「そこで何をしている。」
「おっと、これはこれはランスロット様。一つお聞きしたいのですが、一体どこへ行くつもりで?」
遠くのガウェインを指差しながら後ろを振り向く。そこにいたのはブリテン最強の妖精騎士ランスロット、唯一無二の竜の妖精である。
「・・・ウェールズだ。陛下の命令でね。」
「—なるほど、そういうことでしたか。時間を取らせて申し訳ない。」
ウェールズというと、各地から追いやられた非力な妖精。主に虫の形を持った者が行き着く場所だ。そして、他にその森を住処にしているのは—。
「別に、ボクならすぐ追いつけるし。・・・そうだ、オーロラに頼まれてたモノは?」
「残念ながら、まだ納得の行くものが作れておらず。代わりに汎人類史に伝わる作品の一つをお贈りさせていただきました。オーロラ様も大層気に召していましたよ。」
「そうか、ならいいんだ。こちらとしても助かっている。」
「いいえ、作品をお持ちする度にそれ相応の代金を貰っている身からすれば、オーロラ様には頭が上がりませぬ。一刻も早く完成させるために工房に潜るとしますか。ではランスロット様、良い報告を期待しておりますよ?」
「コレとコレとアレ・・・って、そうだ陛下に徴収されたばかりだった。となると迂闊に研究には使えないから一時切り上げで別の礼装を—。」
その日の内に洞窟の中にある自身の工房に戻ったエリドールは、様々な道具や水晶を取っ替え引っ換えしながら依頼された作品や研究について考えを纏めていた。旅の道中で取り掛からない作業はこうした各地に点在する工房で行っているのだ。
「さ、て。ひとまず完成の近い作品を仕上げるとするか。」
数ある工房の中に安置していたソレをゆっくりと取り出し、その全体を覆う布が剥がされる。
「ん〜、鎧の装飾に立派な角、そして何より長大な体躯。文句なしの出来だ。」
笑みを浮かべて頷くエリドール。その眼前にあるのは、水晶によって作られた像が鎮座していた。そしてそのモデルとは—。
「まさかガウェインの像を注文するヤツがいるとは、それも原寸大。難しくはないが、それ故に手が込んでしまったな。」
ある妖精の依頼で作る事になった妖精騎士ガウェインを形取った像。もちろん頭から足まで水晶で作られたものだが、ただ形を真似ただけでなく配色もしっかりしたものとなっていた。
「ふむ、傍目から見ても中々。細かい造形もありながらバツグンの強度も備えている。これは陛下に献上しても文句はないレベ—。」
と、自分の仕事ぶりに感心している時だった。そのガウェイン像にヒビが入り、ガラガラと崩れ落ちたのは。
「・・・・・・・・・・・・は?」
「う、うぅ、度々間を空けていたとはいえここまでやるのに何年掛かったと・・・。今年は厄年か・・・!」
実際『厄災』が来たり、『予言の子』の存在によって戦争が始まっているので厄年なのに間違いはない。
「全く、ひとまず当社の注文通りの範疇でパッと作ったが・・・3日掛けたにしては不出来だな、やはり着色が無いと。・・・いや、いつまで拘ってても仕方がない。今日は別の依頼で作った作品でも持っていくか。」
ガウェインの像をしまい、新たにもう一つ布がかけられた像を取り出した。その中身は、排熱太公ウッドワスを模した像だ。
「本物と程遠いとはいえ、この毛並みの出来具合はほれぼれするな。これはもう作り手以前にベースが良すぎる。さ、そろそろ出るか。」
後始末をしながら工房を出たエリドールは、水晶の作品が入った袋を片手に南へと向かっていった。その途中、幾つか村に立ち寄ったが、決まって同じ話題で盛り上がっていた。
「ガウェインが、
ウェールズの森にて、ロンディニウムから駆けつけた『予言の子』に敗れた妖精騎士ガウェインは、そのギフトを失って本来の
故にこそ、それを破った『予言の子』に注目が集まる。それとは別に『異邦の魔術師』もそこにいただろうが、バーゲストを倒し切れなかったという時点で大体の実力は予想できる。
「それにしても、バーゲストが敗れたその時に水晶像も崩れ落ちるとは、不吉な事この上ない。」
やれやれと首を振りながら、依頼された村へと足を運ぶ。袋の中に入ったウッドワスの像が既に砕けていることには、まだ気がついていなかった。
イベントでの陛下がありとあらゆる面で最高でした。まさか今回だけでなくしょっちゅう単独レイシフトしてたとか規格外にも程がある(戦慄)
ロンディニウムの決戦は完全にすっ飛ばしました。もし向かってたら某ビーストと鉢合わせendが待ってます(白目)