月で死んだと思ったら異世界に召喚された   作:鮭のKan2me

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25:揺れる思惑と消え去る名、次なる一手は誰が為に

「やぁエリドール、この間の作品見事だったよ。また頼んで貰ってもいいかい?」

 

 

「えぇ、依頼内容にもよりますが、期日以内には完成させましょう。」

 

 

「エリドール、前に頼んだ作品なんだけど、もうできてるか?」

 

 

「もちろん。ですがこの場に持ってくるのは無粋と思ったもので、また後日お待ちさせていただきます。」

 

 

 妖精舞踏会が始まって少し経った頃、オレは沢山の妖精から声を掛けられていた。ここに集まるのはそれなりの立場を持つ妖精ばかりであるが、オレはその全員に水晶細工を作っており、その腕を認められている。ムリアンの敷いたルール上、見知らぬ者に対しては認識阻害が働くが、オレにはあまり効果はない。

 

 

「エリドール!やっぱり噂通り、無料(タダ)で頼んだ作品は素晴らしかったよ!今まで作って貰った中でも最高のモノだ!」

 

 

「そう言って貰えるのは嬉しい。けど、忘れてないだろうね?」

 

 

「あぁ、【タダで作ったらもう二度と依頼は受け付けない】だろ?大丈夫、アレ以下の作品なんて欲しいとは思わないから!」

 

 

「ふふ、それはそうでしょうね・・・。なにせ一世(・・)一代の自信作(・・・・・・)ですから。」

 

 

 実のところ、金や材料の用意が無くても水晶細工は作ることにしてる。その対価がタダ、だ。ただし、それで頼んだ客には二度と水晶細工を作らない。

 タダより高いモノ(・・・・・・・・)はない、と言うだろう?

 

 

「あら、久しぶりねエリドール。」

 

 

「おぉ、これはこれはオーロラ様。お変わりなき美しさ、それを見ていると私の胸は張り裂けそうになってしまいます。アナタ様の美しさに見合う水晶細工、それを作り上げることができないのだから。」

 

 

 風の氏族長・オーロラ、ソールズベリーの領主にして美しい翅を持つ妖精。世渡りの上手い妖精でもある。

 

 

「いいのよ、アナタは代わりの作品を沢山作ってくれるもの。前のは、えーと・・・。」

 

 

「スノードームのことで?」

 

 

「そう!そのスノードーム、今でも大切に保管してあるのよ?汎人類史にはあんなものもあるのね!」

 

 

 前回贈ったのは万華鏡だけどな。

 

 

「それは光栄にございます。今すぐとまでは行きませぬが、いつかアナタのお眼鏡に叶う作品をこさえてみせましょう。」

 

 

 そう締めてオーロラから離れる。ちなみに付き添いには妖精騎士ランスロットがいるのだが、どうやら今は『予言の子』の元に向かっていたらしい。

 

 

「先程はどうも。」

 

 

「おや、ランスロットの次はキミかい?」

 

 

「オーロラ様の相手をしていたところ、ランスロット様が近くにおらず探してみれば、アナタ方といるのを見かけた次第にございまして。」

 

 

「・・・なんか、さっき会った時とは態度違う?」

 

 

 応対したのは杖を持った幼子と人間の男。幼子の方はダ・ヴィンチと呼ばれていたか。

 ・・・いや待て。ダ・ヴィンチとは、あのレオナルド・ダ・ヴィンチか?!何故このような姿に・・・??疑問が尽きないが、これは時間をかけて解明するレベルの謎な気がする。切り替えるとしよう。

 

 

「あぁ、あの時はあまりの衝撃につい素面で話してしまいまして。普段はこういう口調なのですよ。」

 

 

「・・・なんか、エラく虫唾が走る口調だな。」

 

 

「ははは、2000年以上も続けておりますからね。そろそろ違った話し方を模索しましょうか。」

 

 

(そういう問題じゃねェんだけどな・・・。)

 

 

 さて、わざわざ挨拶するためだけに話しかけたわけでもない。この人間の男、恐らくはベリル・ガットと同じ『異邦の魔術師』であろう。モルガン陛下程の魔術ではないにせよ、どのような魔術を使うのかは興味がある。せめてその系統だけでもわかればいいのだが・・・。

 そう思ってその人間に視線を向ける。しかし、それと同時に他の妖精が訪ねてきた。

 

 

「おや、水晶工様。少し失礼するよ。」

 

 

「・・・いえ、お気遣いなく。何か依頼でも?」

 

 

「あぁいや、用があるのは・・・そう、そこの人間の男だよ。」

 

 

 『異邦の魔術師』を指差して用件を述べる妖精。簡潔に纏めると、この会場にあるテラスへの誘いだった。それも妖精騎士からの。

 

 

「どうします?妖精騎士からの誘いであれば断るわけにも行きませんけど・・・。」

 

 

 アルトリアが連れに目配せしてると、その次にオレに視線を向けた。・・・まぁ、考えてることはなんとなくわかる。

 

 

「私のことなら大丈夫ですよ。テラスから戻ってきたらまた話しましょう。」

 

 

「えぇ、では行きましょうか!」

 

 

 テラスへと向かうアルトリア達を見届ける。その後会場を見渡すと、確かに妖精騎士の数が足りていない。しかし、姿が見当たらないのは3騎中2騎だ。

 

 

(ランスロットはいるが、バーゲストとトリスタンがいない・・・?まぁ、トリスタンは妖精舞踏会が始まってすぐベリルと共に挨拶に向かって以来気にかけられなかったが・・・。)

 

 

「皆様、ご歓談中失礼します。メインイベントの開始時刻が迫っているため、ステージへの移動をお願い致します。」

 

 

 模索して考え込んでいると、ムリアンの使いの妖精がそう呼びかける。集まった妖精達は次々に指定された場所へ向かい、仮面を取り出す。オレも持参の仮面を持ってステージの観客席へ移動する。ステージ中央はまだ照明が付いていないため良く見えない。

 そこから暫くして、ムリアンのアナウンスが響き渡った。

 

 

「表の妖精舞踏会など目眩し。ここはグロスター、刺激と破滅、興奮と悲劇が無くては物足りない。そんな皆様のためにとっておきの舞台を用意させていただきました。さぁ、嘲笑と羨望が混ざり合うメインイベントを始めましょう!!」

 

 

 ステージ上のライトが一斉に照らされると、そこにはベリル・ガットと妖精騎士トリスタン。更には、『予言の子』の一向の姿が。

 

 

「・・・確かに、先日のグロスターでの一件とムリアンの周到さを考えればこうなるか。」

 

 

 妖精騎士トリスタンとアルトリアは、前にもグロスターのオークションで矛を交えたという。恐らくは、その雪辱を晴らすためにトリスタンは『鐘』を賭けてでも再戦の舞台に乗ったのだろう。

 

 

「さて、どう転ぶか・・・って、引っ込んだ、だと?」

 

 

 なんと『予言の子』はステージに上がらないどころか、姿を消してしまった。急な展開ではあるがこれは『鐘』を鳴らすまたとない機会、それを前に引くとは・・・。元より低かったが、オレの中での評価は落ちたな。そう思った次の瞬間、『予言の子』は再び姿を現し、連れの『異邦の魔術師』と共にステージに上がった。

 ・・・とりあえず結果だけ述べよう。妖精騎士トリスタンはアルトリアに敗北した。それによりギフトまでも失い、かつて蘇りの『厄災』を引き起こした吸血妖精バーヴァン・シーであることが知られてしまった。非難で溢れ帰った会場を逃げるように去ったバーヴァン・シーを確認したオレは早足で会場を後にし、そのままグロスターから出た。

 

 

「・・・違う、アレ(『予言の子』)は違う。乱されるな、オレはエリドール、オマエはエリドール(・・・・・・・・・)。水晶細工師、ブリテンを旅する陛下の忠臣。そうだ陛下だ、オレは陛下(モルガン)に忠誠を誓った。決してアイツ(■ネ■■)では・・・いやダメだ、アレを引き合いに出すな・・・!」

 

 

 頭が、いや、身体全体がグチャグチャに掻き回される感覚が襲ってくる。なんとかオレ自身を保たなければ、そのための■化だろう。

 しかし、その現象はピタリと止む。声がしたからだ。オレを導く声が—。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、ガウェインに引き続きトリスタンまで!妖精騎士はあと1騎・・・!」「あんなヤツらどうでもいいけど、これからオレ達どうなるんだ?」「ウッドワスも期待ハズレだったし、こうなったら『予言の子』が勝つんじゃプェ—。」

 

 

 『予言の子』の勝利を口走った妖精は、一滴の血を残すことなく消えた。玉座に座るモルガンの手によって。

 

 

「・・・今のは警告だ。これより我が敗北を示唆する言を述べた者は、即刻首を刎ねる。」

 

 

『は、はっ、申し訳ございませぬ陛下・・・!』

 

 

 牙の氏族長ウッドワスに加え、妖精騎士2騎のギフトが失われた。ここまで敗戦が続けば、キャメロットの上級妖精であろうと不安に思うだろう。

 

 

「とはいえ、トリスタンも敗北したとあって何もしない訳にはいかぬ。ここは一つ手を打つとしよう。」

 

 

 おぉ、と妖精達が静かに騒ぐ。モルガン直々の裁量であれば、必ずや良い成果が出るだろうと。

 

 

「・・・無能共め。まさか別用途の駒(・・・・・)を引っ張り出さねばならぬとは。」

 

 

 小声でそう呟いていると、玉座の間の扉が開かれる。扉の前に居たのは—。

 

 

「—来たか、我が右腕よ。」




 ぶっちゃけもうエリドール=誰なのかわかりきってると思いますが、敢えて隠し続けようと思います。
 次回は久々の戦闘回。しかも我らが藤丸君も参戦。カルデア側のサーヴァントも複数騎出す予定なので乞うご期待!
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